猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

地元のパブストリートを通訳付きで行く

 

第84話

地元のパブストリートを通訳付きで行く

 

「呑みに行こう」と約束はしたものの…

2日目の「ベンメリア」散策の後、次の日が早起き(4時起き)だった事もあり

2日目は止めて、3日目の夜に打ち上げも兼ねて、僕とジェイクは 地元のパブストリートに行く事になった。

 

今日の遺跡周りは、夕方に早めに切り上げた事もあり、ジェイクと 19時に宿の前で待ち合わせる事にした。

17時前には宿に帰って来ていた僕は、シャワーを浴びて、すぐに仮眠をすることにした。宿に帰って来て安心したのか、途端に疲れが襲って来た。身体が自分のものとは思えないくらい重かった。二階へ上がるのもかなりしんどかった。

ベッドですぐに気を失い、死んだように寝た。

起きれるか心配だったが、不思議とかけておいたアラームの時間に 僕は自然と目を覚ますことが出来た。

仮眠のお陰で身体も頭もスッキリしていた。

炎天下で 3日間の遺跡周りは、思ったより僕の身体を蝕んでいたらしい。。

せっかくの打ち上げが楽しめるように、しっかり仮眠を取ったのは大正解だったようだ。

 

表に出ると、昼過ぎから降ったり止んだりしていた雨は 完全に止んでいた。

玄関に止めてあるジェイクのトゥクトゥクを見ると、彼が猫を撫でていた。

この宿には、いつもフロント横の椅子で寝ている 可愛い飼い猫さんもいるのだが、宿の周りにも結構野良さんがいて、宿のトゥクトゥクドライバーさん達と仲良しだ。

一度など、トゥクトゥクにかけたハンモックで、おじさんと猫が一緒にお昼寝しているのを見て、とても癒され(う、羨ましいなぁ。。)と思うと同時に 猫好きな僕は

 俺もここで トゥクトゥクドライバーに

 なろうかしら?

と馬鹿な事を考えたりもした。

「俺にも撫でさせて」と言うと、ジェイクは片手で抱っこして僕に猫を渡してきた。

だが猫さんは僕には慣れていないので、嫌がってクネクネと液体のように手から滑り落ちていった。が、その後は その仔が撫でさせてくれたので、僕は大満足だった。

 

そんな僕にジェイクが

「さぁ、行こうか? 乗って乗って!」

と言うのだが、、

(今日はお酒を飲みにいくはずだが。。運転?)

と、そんなことを心配する僕を尻目に、トゥクトゥクは大通りを横切り、すぐ近くのパブストリートに向かう。

出発から5分もたたずにジェイクのトゥクトゥクは、夕方まで降っていた雨にぬかるむ、ある一軒の店の 土の駐車場に停車した。

「ここだよー」と案内されて入った所は、結構大箱の店で、奥では女性シンガーがステージで歌っている。どうやら怪しい店ではないらしい。ジェイクを信用してないわけでは無いが、僕は少しホッとしていた。

 

テーブルに案内されて座る。

とりあえず生ビールを頼み、乾杯をした。

 

店内では抽選をやっており、ビンゴの機械の様なものが回され、数字が発表される。

ビールが来た時に貰った番号を見ると、僕の番号だった。

なんと! いきなり当たりが出た!! 笑

来て5分も経ってない。

当たったのは、Tシャツだった!!

だが店にいる人たちの祝福の中、スタッフに渡されたそれは、、

シャツの白地に、

     "  CAMBODIA  (赤字)

            WATER   (うっすい水色)   "

とプリントされた、信じられないくらいダサいTシャツだった。。

 

日本だと「日本水」とか「東京水」

とか書いてある感じだろうか??

 

カンボジア ウォーター。。

どう言う事だ?!、、一体…? 笑

 

その時なぜか僕は、その昔に 横浜市の水道局に見学に行った時に お土産で貰った。

横浜のおいしい水道水 という

”水道水が入った” 飲料缶の事を思い出していた。。 意味が解らな過ぎて、

僕の脳みその ”意味の分からない水 記憶枠” から急に思い出されたようだ…。

 

ジェイクが「やったな!!」と僕にそれを渡してくる。

周りが祝うので、僕はとりあえずその場で それを着た。。

こうして、カンボジアシェムリアップの大地に、カンボジアウォーターマンが 誕生したのである。

そして、カンボジアウォーターマンに変身した僕は、カンボジアを守る使命を頂いた?

 

その後、カウンターにいるスタッフに ジェイクが話しかけ、スタッフが頷いているのが見えた。戻って来たジェイクに

「奥に、個室があるからそこでゆっくり飲もう。」と言われる。

 

ぱっと見、ビアガーデンのような吹き抜けたスペースなので(どこにあるのだろう?)

と思ったが、店のスタッフについていくと、奥の壁の裏側に、プノンペンで見た 選挙の投票所のような タープテントが張られ、布で仕切られた個室が 十数部屋? あった。下は土である。

それを見た僕は 新宿花園神社の、野外テントの芝居に出た時の、似たようなつくりの ”楽屋” を 懐かしく思い出していた。。

 

そんな僕に「ここはVIPルームさ」 とジェイクがニヤリとする。

どうやら、カンボジアウォーターマンに変身した僕は VIP認定されたらしい 笑

 

(VIPルームにしては 壁が薄すぎるでしょうが?)と思ったが、黙って 案内された4つ目の布ルームに入り着席した。

ビールと、ツマミをジェイクが頼んでくれる。

ビールは縦型の筒形のピッチャーで来た。

入れ物の筒の周りが凍っていて、筒の中にビールが入っている為、冷たいビールがいつでも注げるハイテクなピッチャーだった。こんな代物を初めて見たが、よく考えられた作りに感動する。

  さすが  VIPルームだ!!

 

そして 何となく予想していたが、後から女性が二人入ってきた。

やはりVIPルームは女性が隣に座ってくれるカンボジア版の「キャバクラ」らしい。

まぁジェイクがニヤリとした時から 何となくそうだろうな とは思っていたが、今日は彼にお礼もかねての会食である。あまりそういう気分ではなかったが 気にしない。

それに 何事も貴重な経験だ。僕は日本で「キャバクラ」に行った事は数回しかないが、カンボジアのキャバクラなんてものは もちろん初体験である。中々、僕の好奇心を刺激してくれる。

僕の隣は黒髪の大人しそうな背の低い20歳くらいの女の子で、ジェイクの隣はスラっと背の高い、スレンダーな西洋風な化粧をした、かなり明るい茶髪のロングヘアーの、20代中盤のモデル風の女性だった。地元の人が楽しむお店なので、二人とも英語は喋れない。

なのでジェイクが英語で "通訳" してくれて 皆が会話をする。

 そんな 世にも不思議なお店が開店した。

ジェイクが通訳してくれたところによると、本当にここは 観光客は滅多に来ないそうだ。その為、英語を喋れるキャストはいないとの事。ジェイクは本当に "地域密着のお店" に連れて来てくれたわけだった。

だが、通訳しながらなので、会話はどうにも いまいち盛り上がらない。。

たまにジェイクが飛ばしているであろう、クメール語ジョークで皆笑うので、僕も雰囲気で笑っていた 笑

しかしながら、会話のタイムラグを差し引いても慣れてくると、なかなか楽しい。

お店とはいえ、カンボジアの女性とがっつり話す機会もそうはない。何故なら僕は、クメール語は サッパリ喋れないからである。

カンボジアの人と喋る時は、ジェスチャーを交えた「脳内テレパシー」を使うしかない。

色々話を聞いたが

「マサミの隣の彼女が大変だったんだ」

とジェイクが言い出したので「どうして?」

と聞くと、先々週まで入院していたという。

たしかに少しやつれて見える。。

「ホワイ?」とジェイクに聞くと、

「デング フィーバー」と言われた。

 

(フィーバー??…は、、熱だよな。。)

と、トイウコトハ。。(^◇^;)

 

  デング熱である。

 

当時新宿の公園で確認されて、日本で大騒ぎされていたアレである。。

 

 えーと、、そんな子の隣にいて、

 俺大丈夫かいな??

 

とも正直思ったが「蚊が媒介する」とニュースで言っていたのを思い出し、時々咳はするが、治っているし、隣にいる位では感染らないだろうとは思った。…だけど正直ちょっと怖かった。。

( 万が一 何かあったらその時はその時だ…。)

と僕は腹をくくった。

何か この外国のVIPルームで出会ったこの娘さんとも "何か縁があるのだろう" と、勝手に思っていたからである。もしこれでうつるのなら、それはそれでしょうがない。

旅の間に自然と身についてしまった、ある意味諦観のようなものにより、ストンと何か腹が座ってしまったのである。

そんな事件はあったが、たわいもない話で楽しい時間は過ぎ、いよいよ10時半頃に帰ることになった。

会計は席で済ませる。

ツマミも2皿しか頼まなかったので、ジェイクの分も女性のドリンクも全部合わせて、20数ドルだった。。

 や、安すぎるでしょ?!この店。。

と思った僕は、少しは格好をつけようと、見栄を張って女性たちに、「サンキュー」と言いながら、5ドルずつチップを渡した。

女性2人は お店の出口まで見送ってくれるが、途中で隣だった彼女が、僕のシャツの裾を引っ張った。

 (んん?)と思って振り返ると僕を見つめている。

店長が寄ってきて、話しかけてくる。

ジェイクが

「彼女が "この後どうするの?" って聞いてるよ」と通訳してくれた。

僕は一瞬で色々理解した。

(そうか、そういうサービスもあるお店だったか…)

僕は(やれやれ…)

と思い、ジェイクを見ると

「無理しなくていい、帰るなら帰る。

 マサミの好きなようにすれば良いさ」

といたって普通にしている。

 

僕は、店長と彼女に

「今日はそういう気分じゃないんだ」と言い、通訳してもらうと、彼女は悲しそうな顔で

「どうして?私じゃだめなの?」

と聞いてくる。

彼女も食べる為に必死なのだろうが、僕は、この旅ではそういうお店には行かないと決めていた。だが、どうやらアジアではこういう事は、色々と地続きらしい。

そういえば、ベトナムでもマッサージ店や、なぜか床屋もそういう事があると聞いていた。

僕は「申し訳無いけど明日が早いので帰ります」と言い、彼女にも「ごめんね。」と言って、帰る旨を店長にもしっかり伝えた。

ジェイクは「よし、かえろう!」と言い、一緒にトゥクトゥクに向かった。

(しかし、色々起きるものだ。。笑)

と僕は少し笑ってしまう。

「今日はご馳走様。宿まで送るよ!」

という、ジェイクの運転するトゥクトゥクに乗り、宿へと向かう途中に

(あ! ジェイクの奴、飲酒運転じゃないか!?)

と僕は、トゥクトゥクに揺られながら気付いたが

 …まぁ、カンボジアだから大丈夫か。

と そっと夜空に呟いていた。

 

 

続く。

 

 

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↑ 3日目も遺跡周りは順調!

    何故か一緒のポーズの警備員さん 笑

 

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↑ とにかく、熱い 暑い遺跡周り

     常に汗だくである。。



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↑ 宿の猫さんたち


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↑ 朝起きて

 カンボジアウォーターマン

 変身しっぱなしだった事に気づく僕…

 

 

次話

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ハンモックに揺られ 心も揺れる。

 

第83話

ハンモックに揺られ 心も揺れる

 

ラピュタから " 無事に" 帰ってこられた僕らは、それを祝うために昼食を取りにレストランに向かっていた。

 

ジェイクが連れて行ってくれた お洒落なレストランに着き、美味しそうなグリーンカレーを注文する。

ここもおしゃれな割にはそんなに高くはない。

昼食を食べていると、中華系の3人組が入ってきた。

僕が挨拶をすると、向こうはびっくりしていた。

 

この三人組は、プノンペンへの 陸路国境越えの際、ホーチミンの「シンツーリスト」の待合から バスで一緒だった三人組である。

(少し太っちょの男性1人、女性2人の若者達)

観光バスへ移動の、ギュウギュウのワゴンの中で膝が当たっていたのも、彼らである。

 

プノンペンのバス停で、一緒に降りたはずだが、カンボジアに来た旅人はみな、同じようなルートを辿るのだろう。

 

なのでここ、シェムリアップで、再会する事になった。

 

実はこのレストランに来る前に、僕は彼らを見かけていた。

 

今日の 最初の遺跡を回った後、いよいよベンメリアに出発という時に、駐車場で彼らを見かけていた。

その時、彼らが、 なぜかうろたえてるのを見た。

まるで国境のイミグレーションで狼狽えていた時のように、キョロキョロして 何かを探していた。

出会った時から思っていたのだが、この3人組は全然旅慣れていないようだ。

運転席のジェイクがそれを見て

「見てみな。きっとトゥクトゥクに置いて行かれたんだぜ?」

と笑っていたが、僕は笑えなかった。

 

「乗せてあげようか?」とジェイクに相談したが

「ドライバーがそのうち戻ってくるか

 他のトゥクトゥクに乗ればいいだけさ」

とジェイクに言われながら、僕のトゥクトゥクは、そのまま走り去っていた。

 

どうやら、彼らもトゥクトゥクドライバーと無事、再会出来たようだ。

 

そんなことも含めて、「よかったね」と挨拶したのだが、何しろ向こうは旅慣れていない若者である。

今まで、周りを見る余裕も無かったのか、僕のことをあまり覚えていなかった 笑

僕が「バスで一緒だった」と説明すると、大きく頷いて「ああー!!」と言っていたが、それ以上はなんのリアクションも無かった。

あまり、自分達のメンバー3人以外とは、交流をしたく無いようだ。

僕はさっさと「またね」と言って席に戻った。

旅は人それぞれ自由である。

彼らのスタンスを邪魔してもしょうがない。

とにかく彼らを 勝手に気にかけていた僕は、彼らが無事に レストランにたどり着けた事に安心していた。

席に戻り、グリーンカレーを堪能した。

結構美味しかったが、プノンペンで、神カレーを食べてしまった僕には、少し物足りなかった。

外に出ると、ジェイクがハンモックから、体を起こし、僕を手招きした。

この店は、駐車場の横に休憩所がある。屋根の下にハンモックが 10数個吊ってある。

"ご自由に休んでください" という場所である。

日本の温泉地にある、「足湯」のハンモック版だとイメージして貰えばわかりやすいと思う。

 

僕は言われるままにハンモックに入ろうとしたが、、何しろ ハンモックなんて、子供の時分に使った事があるくらいである。

靴を脱ぎ右足を入れる。

左右に振れ、安定しないので、結構バランスを崩して危ない。。

ジェイクに

「足からじゃなくて、お尻から入って!」

とアドバイスを貰うと、すんなり入れた。

 

なるほど! 片足だけまず入れて浮いたら、そらバランスを崩すはずだ。確かに お尻から座るように入るのが安全である。

ここは、屋根のおかげで日陰で 吹き抜けているので、結構涼しい。

「30分は休んで大丈夫だ」と言われ

ジェイクと共に ハンモックに揺られながら、ホーチミンの3人組にも会ったこともあり、僕はベトナムの事を思っていた。

 

ここシェムリアップの旅が終わると、ホーチミンから、はるかに北のハノイに行くとはいえ、いよいよベトナムに戻るのだ。

初めて行った外国に、"再び訪れる" というのは、一体どんな気持ちになるのだろうか??

 

全ては 初めての経験だ。

 

一体この旅は 37年も生きてきた僕に

旅を始めてから「初めて」の経験ばかりをさせてくれる。

初めての感覚を いつも体験させてくれる。

 

まだまだ人生は、これからなんだなぁ。

と改めて思い知らされる。

 

僕がこれまでの人生で感じた事や、経験した事など、まだまだ何も知らない、小僧の歩みに過ぎないのだと。

 

そんなことを、ハンモックに揺られながら僕は、カンボジアの大地で考えていた。

そして、そんな事を考えられる時間を持てている事に、改めて感謝をしていた。

「贅沢をさせて貰ってるなぁ。」

と、心から思う。

 

「旅に出よう!何がなんでも!」と

ふいに決意をし、旅に出たことは間違いではなかった。

 

涼しさと気持ちよさで、思考の途中に いつのまにか寝てしまっていた僕は、「時間だよ」と、ジェイクに揺り起こされ、再び次の遺跡へ向かった。

 

正直「ベンメリア」以上の感動があるのかしら?と疑問だったが、それはそれである。

初日のように、意図せず何かに出会えるかもしれない。

 

次の遺跡に向い、また一通り周る。

今度は平地の遺跡であった。名も知らぬ遺跡をくるくる周る。

やはり、あまり感動は無かった 笑

 

最後は、夕陽が見える遺跡に行く事になっていた。サンセットが見える遺跡の急な階段を登る。大きな遺跡だった。

遺跡の頂上付近の夕日ポイントには、5、6人の観光客がおり、みな思い思いの場所に腰掛けている。

僕も良さそうな場所を探して、そこから太陽を眺める。

空はだいぶ曇っていて、太陽は滲んでいる。

まだまだ太陽が沈むまでは時間がありそうだ。ゆったりと、夕陽になるのを待っている人たちを尻目に、僕は遺跡をじっくり周る事にした。

ジェイクから地雷情報を聞いた事により、僕はより大胆に遺跡の周りを散策する事が出来た。

 

水場がある事もあり、またここにも野良牛がいる。マレーシアのランカウイでもみかけたが、野良牛も、家族で一緒にいる。

栄養たっぷりの餌をもらっているわけでは無いので、痩せこけて見えるが、本当は 牛はこんなものなのかもしれない。。

日本だと、牛舎にいる牛さんたちしか見れないので、何か微笑ましい。

以前に訪れた、石垣島で見た野生の馬も、家族で仔馬を連れて生活していた。少し近づくと、仔馬を守りながら 親馬が威嚇をしてきた。

動物も人間も、皆家族を大事にして生きている。そんな当たり前の事を、改めて感じる。

 

そんな事を考えていると、夕陽が沈み始めたので、さっきのスポットに戻る事にした。

急な階段を再び登る。

息を切らして、さっきのポイントに着くと、人は20人くらいに増えていた。

カップルも多い。

僕も適当な所を見つけ、腰掛ける。

絶壁から、足をぶらぶらさせながら、雲間から見える 沈みゆく夕陽を見ながら僕は

「あぁ、ビールが飲みたいなぁ。。」

と夕陽に呟いていた。

 

続く

 

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↑ 本日3つ目の遺跡 後で調べると恐らく

「プリア・コー」だと思われる。


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↑ サンセットポイントの遺跡

   たぶん「バコン遺跡」だと思う

 かなりの高さがある遺跡だった。

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↑ 野良牛さん


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↑ 沈みゆく夕陽と「バコン」


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↑ 犬と戯れる地元の少女。

 手前の警備員さんは、

 「もっといいサンセットポイントを教える」

 例のパスポートのカラーコピーの裏に

 その遺跡の場所を書いてくれている。

 後でジェイクに聞くと

 「こんな所は無い!」と一蹴された 笑

 

 

次話

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究極の焼き飯とトリスープ

 

第82話

究極の焼き飯とトリスープ

 

それはある日、遅めの朝食を摂ろうと宿を出て、大通りに着いた時のことだった。

 

宿から2回左折をすると1分かからず大通りに出る。その角に、いつも繁盛している店があった。

ぼくはこの旅に出て、数々のお店に行き、それにより "ある理論" を構築しようとしていた。そして、それを証明する為にこの店に入る事にした。

"入る事に" と言っても、この店はフルオープンテラスの様な、店の前の広い歩道に テーブルと椅子が大量にある作りで、雨除けのシェードが 調理場の建物に長めについているだけなので "入る" とはまた違うのだろうが。。まぁ、話を戻すとその理論とは

 「角にある繁盛店は美味しい!!」

というものである。

 

美味しい店、というか僕好みというか、そういう店は大概、道の角にあり、お客がよく入っている。

私はこれを「角っこ理論」と名づける事にし、早速ここでも実践する事にしたのだ。

 

ここは、テラス席のみで60席くらいの結構な大店だ。

だが、メニューはシンプルに焼き飯と、焼き麺ぐらいしかないらしい。

サイズを決め、焼き飯を頼む。

注文してすぐに皿が運ばれてくるのは、繁盛店ならではである。ひっきりなしに厨房が作っている証拠である。

美味しそうなチャーハンが来た。

鶏ガラでとってそうなスープも付いてくる。

これで100円しないのは安い!

早速 東南アジア特有のプラスチックスプーンを、これまた東南アジア特有の、卓上にある うっすい紙ナプキンで、気休めに拭いてから、チャーハンにスプーンを入れた。

 

一口、口に運ぶ。。

 

 …う、うまぁぁい。しみじみとうまい。

 

口の中にじわじわと旨味と塩気の宇宙が広がる。

スープを一口飲む。

 

 …ふわぁぁあ。ふわふわ ふわぁあ。

 

旨味の波がザッパーンと来た。

 

 やばいぜ!うまいぜ!角っこだぜ!!

 

と僕は夢中になってそれを掻き込み、その合間に、スープをすする。

 

久しぶりに夢中でご飯を食べた。

 

あっという間にそれを平らげた僕は、お代わりをしようかと悩み始めた。。

 

(こ、、これは今までのチャーハンで…

 いや、、 人生で一番かもしれない。)

 

だが、この感動を

(お腹が膨れた状態で食べることにより

 少しでも薄めたくはない)

と思った僕は お代わりはやめ、その代わり ここシェムリアップにいられる間は、毎日ここで この焼き飯を食べることにした。

 

そして「角っこ理論」も証明され、大満足した僕は、ひと心地ついて周りを見渡した。

地元の人が多いが 観光客もちらほらいる。

ふと気が付くと、客席の向こうで、上品そうなおばあさんが 各テーブルを回っている。

 (何をしてるのだろう?)

と思ってみていると、テーブルの前に行くと手を合わせている。

テーブルの人はゆっくりと首を振る。するとおばあさんは、また次のテーブルへ行く。

また首を振られる。物売りで無いのは 何も持っていないことから判るが。。

 

しばらく見ていて僕は理解した、彼女は物乞いをしているのだと。

 

おばあさんは、質素ながら清潔感のある服を着ていて、物腰も非常に穏やかというか、柔らかく、一番は こういう人たちにありがちな「卑屈さ」や「悲壮感」というものと無縁だった為、 理解するまで 時間がかかったのである。

 

僕は少し驚いていた。

それは彼女が、僕の持っている ”物乞い” のイメージとは全然違ったからである。

やがて彼女は僕の二つ隣りのテーブルあたりまで来た。 

 まいったなぁ。。

と僕は苦笑していた。顔を見ると、本当にやさしい 穏やかな顔をしている。

断られても、本当に綺麗な笑顔で頭を下げて 次へ行く。

そう、、彼女はきれいなのだ。。

それは顔がとか服装がというのではなく、彼女の人格からにじみ出ているような。。

柔らかい優しい美しさとでもいえばいいのだろうか?

彼女にそんな徳を感じてしまった僕は、思わずお坊様の ”托鉢” を連想していた。

僕は基本はこういう食事の場などでは 断ることにしている。なぜなら、またこの店にきた時に、きっと期待されてしまうからだ。

だが、心が大いに揺れ始めた。

(一体渡すにしても 幾らくらいがいいのだろうか。。?)

とまで考えていた。

そんなことを考えているうちに、彼女は隣のテーブルまで来ていた。

僕はもうお金を渡そうと思って準備をしていた。

隣は、くたびれた制服らしきものを着ている タクシー運転手のような、よく日焼けした 地元の怖そうな顔のおじさんだから、今までのように断られて、すぐに、僕のテーブルに来るはずである。

実は、隣の身体がガッチリとしたおじさんは、きた時から態度が悪く、ドカッと椅子に座って、無愛想に注文し、タバコを吸い。食事もクチャクチャクチャ音を立てて食べ、びっくりするほど、大きな声で咳きを発する、典型的な無神経なおっさんだったからだ。

僕は正直、このおじさんに気分を害していた。

 よりによって俺の隣に座んないでよー。。

と、そして、

 もう少し周りの人の事を考えたら良いのになぁ。

と思っていたのだ。

 

そして、怖そうなおじさんのテーブルに おばあさんが立ったとき

予想通り、おじさんは おばあさんを一瞥もしない。。

 

 

そしてポケットからお金を出して、ごく自然に1ドル札を渡した。

 

 ほらね。 やっぱ…り?

 

 え?! わ、渡した??

 

と僕は、2度見してしまっていた

正直このおじさんからしたら、その1ドルがあれば、ここでもう一食たべれるし、失礼だが、そんなに懐に余裕があるとは思えない。

勝手な決めつけだが、僕からしたら、最もお金を渡す人から 遠い人に見えていたのです。

おじさんは 手を合わせてお辞儀をするおばさんに「気にしないで」とでも言うように 片手をあげて残りのお金をポケットにしまった。

僕はというと、情けないことにビックリしたこともあり、彼女が来た時、少しフリーズしてしまった。観光客は まずお金を渡さないことが分かっているのか、おばあさんはそれを見てすぐに手を合わせて笑顔を見せて次のテーブルへ行ってしまった。

ハッとしたが、いまさら呼び戻してお金を渡すわけにもいかない…

 あれれ? んん?  …えーと、、何が起きた??

と僕はキョロキョロしていた。

 

視線をおじさんに戻すと、また何事もなかったかのように、ご飯を食べている。

 

僕はそれを見て、おじさんを見直してしまった。

自分勝手なおじさんだと決めつけていた人が、当たり前のように、お金を渡す。

それも僕のような余裕のある観光客ではなく、生活に必要なお金の中からである。

仏教文化も影響しているだろうが、そのギャップと行為に、素直に僕は感動してしまった。

何やらおじさんがカッコ良くさえ見えていた。

 

向こうからしたら なんのこっちゃ分からないだろうが、僕の評価は勝手に一変したのである。

僕たちは外見や印象から、その人を判断しがちだ。第一印象は確かに大事だが、その人の「パーソナルな部分」と言うか、「その人の事」なんか何も知らないのである。

それをしてないつもりでも、やはり僕らは自然と知らない内に、自分の経験や 世界で勝手に決めつけている事が、大いにあるのだと。

 

この出来事は、自戒を含め 今でも僕の心に深く刻まれている。

 

こんなにきれいな物乞いをする人を見たのは初めてだったのもあるが、何より自分の物差しや、外見で、まだまだ人に嫌悪感を持ったり、決めつけたりと、自分がとんでもない未熟者だと、自分の世界だけで 物事を見すぎている「若僧」なんだと、おじさんに気付かせてもらったからである。

僕はこの出来事に、素直に感動させて貰い、勉強もさせて貰った。

旅の中で、人から学ぶことは本当に多い

それだけ本当に色々な人たちと 今世で袖すり合うからだと思う。

 

続く

 

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↑ お店にいた猫さん

     勿論、猫さん達から学ぶ事も多い😌

 

 

次話

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天空の城ラピュタへ

 

第81話

天空の城ラピュタ

 

遺跡の旅は続く…。

そしてついに僕は 「ラピュタ」へと向かっている。 龍の巣に気をつけなければ!! 

 

相変わらず素晴らしく気持ちのいい景色を見ながら、トゥクトゥクは、赤茶けた大地と道を走っていく。

僕は空の向こうに見える入道雲を「龍の巣」と勝手に決めつけた。

 

途中に小学校があり、制服を着た可愛らしい子供達が遊んでいた。僕に気付いた子供達は手を振ってくれる。昼休みなのだろうか?

 

なぜだか、カンボジアの子供達は、とても生き生きとしていて、見ているだけで嬉しくなる。

 

僕は カンボジアがどんどん好きになっていた。

 

そして、いよいよトゥクトゥクは ベンメリアの駐車場に到着した。

トゥクトゥクを降りると、珍しくジェイクが付いて来た。

途中、橋のような、石の建築物を指差して

「この長いのは、蛇の神様なんだよ。

 ほら、ずーっといくと、蛇の顔だろ」

と教えてくれる。確か「ナーガ神」と言っていた。

遺跡の入り口には結構あるらしい。

(珍しくガイドしてくれてるな。。)

と思いながら、入り口から ベンメリア遺跡の外壁に着くと、そこはもう素晴らしい…!

外壁にも、瓦礫のように崩れて積み上がった石達にも、綺麗なエメラルドの苔が生え、本当に美しかった。

「あ、ラピュタだ。ここ、絶対ラピュタ

 ラピュタラピュタ。 はい。決まり!!」

と 僕はもう、ここを「天空の城 ラピュタ」だと確信した。

それくらいラピュタだったのだ!! 笑

好きすぎて、作品を何回も見過ぎているせいで、頭の中には勝手に

「ウルとは王!

 君はラピュタの正統な後継者なのだよ!!」

と言うムスカの声が響く。。

 もはや病気だ!! 笑

そんな様子のおかしい僕にジェイクが話しかけてくる。

「よし!!遺跡をバックに、

 写真を撮ってあげるよ!」

と。

 (???…今日はジェイクはどうしたんだろ?

  いつもならこんなサービスは無いのに…)

と不思議に思いながら、苔に覆われた、巨大な豆腐のような四角い石の瓦礫の間から生える、信じられないほどの巨大な木と一緒に写真を撮ってもらった。

日本でもみた事がない巨木だった。。

まだ遺跡の外なのに 恐るべき神秘性である。

そして、写真を何枚か撮ってくれたジェイクが

「さぁ、行こうか?」

と言ってきた。

 んん?? どこへ??

と聞くと、なんと!ここはジェイクも中に一緒に入れると言う。

初めて一緒に周ってくれると言うのだ。

 これはかなり嬉しい!!

遺跡では、見ず知らず同士で「フォトプリーズ」と声をかけて写真を撮り合うか、自撮りするしかない。

周りに人がいないと、写真を撮ってもらえない為、自撮りばかりになる。

そうすると、カメラロールが自撮り写真ばかりになり、後で眺めると 自分がとんでもないナルシストに思えてくるのだ! 笑

なので連れがいると、本当にありがたいのである。

(現在は 遺跡パスが無いと入れないらしいが

 2017年当時、入場料は一律5$だったので

 ジェイクも自腹で一緒に来てくれたようだ。

 何より ジェイク自身が一緒に楽しんでいた 笑)

そして、外壁から遺跡の内部入ると

さらにとてつもなくラピュタだ!!

またしても 脳内に

 

ラピュタは本当にあったんだ!!

 父さんは嘘つきなんかじゃ無かった!!」

 

と言うパズーの声が響いた。。

(うんうん。。あったよ。。

 良かったね。パズー。。)

と僕は勝手に涙ぐんでいた。

はたから見たらヤバいやつだが、ジェイクは何も頓着せずに自撮り棒を装備し、写真を撮ろうと言ってくる。

ラピュタ ラピュタと 少し煩いと思われるだろうが、仕方がない。もう… 語彙が無くなるくらい ラピュタだったのだ。

木の根と 蔓と、美しい苔で覆われた遺跡。

崩れた四角い石の瓦礫たち。。それらは美しい緑で統一され、何よりここは他の遺跡と違い、静かだ。。

周りには観光客は1人もおらず、ジェイクと僕だけなので、ゆったりそれらを堪能できる。

静寂の中に、鳥の声がし、本当に現実とは思えない遺跡だ。

そこをゆったりと歩いて周る、どこを見ても素晴らしい景観だ。

 

この 案外広い遺跡は、他の遺跡と違い、廃墟感が凄く 直に地上は歩けない。

木で組まれた手すり付きの通路で、遺跡の上を周るのだ。そんな所も ”天空” である。

木の廊下の下は石の瓦礫の山ばかりなので、もし、地上を無理やり歩くとなると、海にあるテトラポットを飛び移るような 危険な移動方法になってしまうだろう。まぁ、地上は立ち入り禁止なので、そんな事は出来ないのだが。。

 

壁沿いに続く木の廊下を行くと、角のところに、いかにも上に登って行けそうな木が、壁に張り付いている。

僕はジェイクにiPhoneを渡して「撮ってくれ」とお願いする。

 

そう!  僕はここを上り、シータを助けに行くことにしたのだ!!

 「シータぁぁあ!!」

と叫びながら僕は この遺跡の壁を、木にしがみつき、凄い勢いで登っていく!!

蔓も掴み、ぐんぐん登っていく!!!

 

 

 

 

 

…フリをした。

 本当に登ったら、迷惑だし、

 遺跡も痛むし、怒られちゃうからね。 と。

僕は パズーごっこに大満足し、ジェイクに携帯を返して貰った。

ジェイクは「何やってんの?」と笑っていた。

からしたら、ただ木を登るフリをする 変わった日本人にしか見えなかっただろう。

 

そんなこんなで、僕はこの遺跡を大いに楽しんでいた。

 

少し開けたところで、蔓が木から垂れ下がっている所にベンチがあったので、はしゃぎ過ぎた僕は休憩がてら、少し座って休みながら 壁面をボォーッと眺めていた。

 

すると 遺跡の壁の向こうから、四角い窓のような所を潜り、急に子供が現れた!

本当にびっくりした! 立ち入り禁止区域のさらに先の、絶対に人が出て来ないような所から、子供がヒョイと出て来たからだ。

しかも5人が 続々とだ。

子供たちは猿のようにすいすいと、壁から木をつたい、木の廊下に乗り移り、ベンチまで来た。

 ぱ、パズーだ…、パズーがいっぱい出てきた!

と、僕は頭が少し混乱していた。

ラピュタ遺跡と、そこをひょいひょいとアニメのような軽業で移動してくる少年を見て、僕は本当にそう思っていた。

そしてそんな彼らは、僕を見ている。

よくよく見ると、なかなかやんちゃそうな子達だ。

 パズーというより…

 未来少年のコナンに近いのかな?

と思いながら、彼らのボスらしい子に

「写真を撮らせてもらって良いか?」

ジェスチャーで聞くと 頷いてくれた。

撮った後で手を出されて「お金ちょうだい」と言われたので、彼らはやはり コナンの方だった 笑

僕はそれを 例の如くやんわり断った。

声のトーンから、とりあえず観光客にダメ元でねだってみてるだけだと判ったからだ。

なので、これは挨拶みたいなものだ。

断っても、まったく向こうも気にしない。

5人とも僕に興味を持ち、話しかけてくる。 

 

 どこからきたの?

 

 日本、わかる? ジャパン?

 

 ふぅん、そうなんだぁ。

 

 いつも遺跡にいるの?

 

 いつもここで遊んでるよー。

 

 家は近いの?

 

 うん。みんな近いよー。

 

と、ほとんどジェスチャーで会話する。

 

しばらくすると彼らは僕に飽きたのか、また遺跡の壁の奥へ消えていった。

 

僕はしばらくその壁を ボォーッと眺めていた。

ちょっと今の出来事が現実にあった事なのか、あまりに不思議な事だったので、少し浮き足立っていた。

 夢でも見たのだろうか…? と。

しかし、写真を見ると明らかに元気な男の子達が映っていたので、紛れもない現実だ。

少し考えてみた。

きっと彼らにとっては、この遺跡は秘密基地のような、格好の遊び場なのだろう。

確かに 子供時代に、近所にこんな所があったら、僕も忍び込んで遊んでいるに違いない 笑

きっと、彼らしか知らない、秘密の抜け道があるのだろうし、ここは珍しく中に、警備員は一人もいないし、たぶん彼らに見つかっても、地元の少年なので「コイツら、しょうがないなぁ」位で済んでしまうのだろう。

僕は、少しだけ、シェムリアップという遺跡の街を捉えた気がした。

戻ってきたジェイクと写真を撮り合い。

僕らは壁の外に出た。

壁の外にも色々瓦礫や、石の祭壇があって飽きない。

ここで、僕はジェイクに聞きたい事があったので聞いてみた。

「遺跡をちょっと外れて、あまり人が立ち入らなさそうな所は、まだ地雷があったりするの?」と。

するとジェイクは

 観光客の、君の行くようなところには

 地雷はもう無いよ。

 よっぽどの田舎の奥に入らなければ大丈夫だ。

 マサミは心配しすぎ。

と 笑いながら教えてくれた。

 

その後、ひと通り回った僕らは、遺跡の入り口に戻ってきた。

二人ともゆったりとした気持ちで話していると、野良牛が歩いてきた。

するとジェイクは、落ちていた蔓を拾い、足元をパシパシと叩き、牛を誘導し始めた。本当に慣れた手つきだった。

 うちは、実家が牛飼いなんだ。

とジェイクは教えてくれた。

子供の頃から牛の世話をしていたが、兄が先にトゥクトゥクのドライバーになって、

しばらく稼いだのち、フリースクール(ここでは無料の学校)で英語を学んでいた弟のジェイクも誘ってくれたので、彼はトゥクトゥクドライバーになれたのだと言う。

 僕は牛飼いが嫌で 英語を勉強したんだ。

と、少し遠い目をしながら話すジェイクからは、この発展途上の国で、自分の力で成り上がろうとする意志と野心を感じた。

外国の若者と親しくなり、話を聞くと、本当に色々考えさせられるし、感じることが多い。

僕は、彼とこういう話ができる機会があって、本当に嬉しかった。

彼とはどんどん仲が良くなっている。

彼も僕が気に入ってくれているようで

 お客と一緒にベンメリア周るのは

 滅多にしないんだ。

とも言ってくれていた。

僕は、俳優のくせで

 今日、終わったら飲みに行こうか?

 近くの地元パブストリート辺りに。

と誘うと、ジェイクは嬉しそうに、

 OK 行こう!

 仕事が終わったらすぐ連絡するよ!

 俺のオススメのお店に行こう!

と言い、僕の

 高いお店はやだよ?

と言う心配を

 大丈夫、安くて良い店だから!

と笑いとばしていた。

 

そして僕らは再びトゥクトゥクに戻り、昼食へと向かった。

 

続く

 

ラピュタ 動画

https://m.youtube.com/watch?v=gt9-Hx9SznI

 

 

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↑ 「龍の巣」である

 

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ラピュタへの入り口付近

 

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↑ 静謐な空間の ラピュタ内部

 

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↑ シータを助けに!!


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↑ 壁から現れた パズーたち

 

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↑ ジェイクと僕

 

 

次話

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カンボジアの大地と地雷

 

第80話

カンボジアの大地と地雷

 

今日はついに ベンメリアに行く。

朝が早いので 仕方無く宿のモーニングを食べていた。

 

 普通だなぁ。。うん。普通だ。 

 

と思いながら、山盛りのフルーツを隣で 嬉しそうに頬張っている宿泊者を見ながら、フルーツがあまり得意ではない僕は、すでに2杯目のコーヒーを飲んでいた。

(やはり、ここのモーニングは

  今日で最後にしよう。。)

と僕は密かに決意していた。

 

約束の時間にフロントに降りていくと、ジェイクが椅子に座って待っていてくれた。

 

今日は、いよいよベンメリアへ行く。

間違いなく今日は、ここシェムリアップでのハイライトになるはずである。

気合を入れ、マレーシアで買った、折りたためるトラベルバッグを背負い、僕はトゥクトゥクに乗り込んだ。

昨日の取り決めで、三日間の行程のドライバーは、すべてジェイクにして貰っていた。

彼とはなんとなく馬が合ったし、空港に迎えに来てくれた縁もある。

 

今日は郊外まで行くので、結構トゥクトゥクに乗っている時間が長い。

昨日気付いた事は、やはり席が吹き抜けているので、正面から直接風が当たり 結構疲れるという事だ。

そこで今日僕は 一計を案じていた。

それは、”マスクをしてみる” と言う事である。

これは、眼鏡をしているので目は疲れないのだが、顔に当たる風は いかんともしがたい。それをマスクで解消してみようと 考えついたのである。

僕が偶然、使い捨てタイプのマスクを持っていたのには理由がある。

 

それは、出発の直前、羽田空港内にある小さな薬局で見かけた、中華系の航空会社のCAさん2人が「せっかく日本に来たんだから!」と、可愛くはしゃぎながら、日本製品の化粧品や マスクを嬉しそうに買っているのを見て

 あっ、マスクもいるかも?!

とふと思って買っておいたのだ。

そして そのマスクは日の目を見ずに、この1ヶ月間 バックパックの底で眠っていた…

だが、トゥクトゥクの風を何とかしたいと考えた僕は、今朝 荷造りをしている時に、急に閃いたのだ。

 そうだ。。マスクをしてみよう!! と。

そんな僕は、ジェイクが玄関に横付けしてくれているトゥクトゥクに乗り込み、いざ出発となった。

大通りに出たところで、マスクをしてみる。

 ん? んんん??  ぜ、、全然ちがう!!

風が顔に直接当たらなくなり、物凄い楽だ!!

 

読者の皆さんも、シェムリアップにお越しの際や、トゥクトゥクにお乗りの際には、是非! 試していただきたい!

メガネでない方は、サングラスや伊達メガネも併用がオススメです!!

 

マスクを装備し守備力が格段に上がった僕は、やっとこさこの乗り物の良さを味わえる余裕が出来た。

 

道は郊外に出ると、案外ちゃんとした、片側1車線の赤茶けたアスファルトの道路が続く。

道の左右は、野原である。

赤土の上に、草が生い茂る。

高い建物も山もなく、天は低く 左右に雲と青空が広がる。

車とも滅多にすれ違わない。

 

民家はまばらで、しばらく走ると民家、その後また 野原が続き、しばらく走るとまた民家、という具合だ。

 

面白かったのは、あまりの暑さに、犬が死体のように完全に横になり

「もう…どうにでもして。。」

と言わんばかりに横たわっていた事だ。

最初は (死んでいるのか?!)

と ギョッとしたが、民家を通るたびに、そこの飼い犬らしき犬達が 横たわっているので、彼らが

" ただ寝ているだけ"  という事がわかった。

ゾンビのように横たわっているそれを見て、何故か僕は、ゲームの「バイオハザード」を思い出していた。刺激を与えると動き出すところも、ゾンビそのものである。。

僕はこのカンボジア犬の寝方を 勝手に

「くたばり寝」 と名付けることにした。

そんな犬達を見ながら走っていると、スクーターで隣を、子供を自分の前に乗せたお父さんが 併走し、通り過ぎていく。子供は安心し切った顔で乗っている。2人乗りに慣れ切っているのは、きっと 赤ん坊の頃から乗っているからではないだろうか? 笑

お父さんはニコッとしてくれるし、子供は本当に屈託のない笑顔で手を振ってくれる。

僕も笑顔で手を振りかえす。

そんなやり取りが僕は大好きになった。

 

やがてトゥクトゥクは、遺跡に到着した。

 

が、明らかに写真で見ていた「ベンメリア」ではない。。

 ここ…。  ベンメリア?

と間の抜けた顔で聞くと、ジェイクが説明してくれた。

「ここは、ツアーの最初に回る遺跡だ。

 ベンメリアは、次に行くから大丈夫。

 時間はたっぷりあるから、じゃ、

 1時間後にここで落ち合おう。」

と。。

 

てっきり「ベンメリア遺跡」に一番最初に着くと勘違いしていた僕は、いきなり出鼻を挫かれた。

昨日あんなに店主と打ち合わせをしたのに、、

"英語力の欠如 " のせいで、色々勘違いして、自分の良いように解釈して聞いていたようだ 笑

 

とにかく、折角なのでこの遺跡を楽しむ事にした。

ここは、お土産屋さんが "夏の湘南の海の家" のように平家でいっぱいあり、お土産を見るのも楽しい。

商売熱心な人が多く、笑顔で声をかけてくれる。

前にいた国が、共産国家の為か、どこかやる気がなく、商売してもしなくてもゆったり生活できるベトナムだった為か、逆にここで 商売人の魂のようなものを感じ、僕も熱くなる。

やはり「売りたい売りたい」と来られると、こちらもファイトが湧いてくる 笑

途中 用を足したくなり、トイレに入るととんでもないものを見つけた。

結構綺麗なトイレだったが、手を洗う段で

石鹸のポンプがあり、そこには日本語のカタカナで、

  " リンス " 

と書かれてあった。。

 ここで頭洗うんかい?!

とツッコミそうになったが、冷静に考えると、きっと日本から来た、お古のプラスティックのポンプであろう。。

日本の銭湯で、リンスが入っていたであろうそれは、ここ、カンボジアシェムリアップでは、石鹸液が入れられ、トイレの洗面に置いてある。。感慨深い光景だった。

僕は笑いながら、とりあえず写メを撮る。

そんなこんなで、遺跡に入るのがだいぶ遅れたが、とりあえず遺跡に突入する。

例の如く、一切笑いの通じない係員に、パスにパチンとまた、1日分の穴を空けてもらう。

 

この遺跡は昨日と違い、平地の遺跡で周りやすかった。ツラツラと周る。

僕は俳優なので人間観察も趣味である。いや、人間が好きだから俳優をやっていると言った方が良いか。遺跡の警備員も気になってしまう。

遺跡の警備係員の人達も人間模様が様々である。今日は、娘さんを同伴して、出勤しているのか、お昼も近いこともあり、遺跡の段差に腰掛け、子供とお弁当を使っている女性係員を見かけた。

この国の労働の法律やら、休憩時間がどうなっているのかは解らないが、腰掛け、職場に連れて来た娘さんとお弁当を食べている係員を見ると、何故か  "ほっこりする"  

 (あぁ、、なんか、良いなぁ。。)

と思ってしまうのである。

 

遺跡自体にはすぐに飽きてしまった僕は、遺跡の周りの森に近い、庭のようなところを散歩していた。

 ひょっとしたら地雷が、

 まだあるんじゃ無いだろうか?

と正規の場所から離れると、少し不安になる。

だが、そこからは、芝生と林が見えて、遺跡も外から眺めると また味わいがある。

 

ここには、遺跡の壁の外側に、楽団がいた。

よくみると、地雷の被害者の楽団だった。

 

足がなかったり、盲目だったり、片腕がない人たちが座って、楽器を演奏している。。

僕は人生で初めて地雷の被害者の方を 実際に見た。

そして改めて、地雷という非人道的な兵器を考えついた人間に吐き気を覚えた。

読者の方の中には 知っている方も、知らない方もいると思うが、僕は昔、地雷って一体なんなんだろう? と、気になって調べた事がある。それによると もともと地雷とは

人を殺傷する目的で仕掛けられた爆弾ではないというのだ。

殺傷能力をわざと抑え、足や 身体を不自由にする事で生かしておいて、障害者になった人達を増やして、その国に その人達の面倒を見させて、その国の 国力や経済を衰退させよう! という

およそ悪魔が考えついたような 吐き気のする目的で作られた爆弾なのである。

(この事を本で知った中学生の僕は、

 戦争というものの、

 気狂いじみた真実に戦慄した。。)

 

そんな被害者の方達を、僕は今までのカンボジアでは見なかったが、ここが観光地である為か、皆集まって、演奏する事でお金を稼いでいる。

僕は初めて実際に地雷の被害を受けた方達を見て、少し胸が苦しくなった。。

だが、目を逸らさずに、彼らを見据える。

彼らも、今できる事でお金を稼いでいるのだ。

生きてこそである。

僕は色眼鏡ではなく、単純に演奏を聴くことにした。

だが、この楽団は凄かった!!

なんと「ソリスト」というか、

メインの楽器が「草笛」だったからだ!!

そこらで拾ったであろう草で、きっと幼少期に会得したであろう技術で 草笛を演奏する男性に合わせて、皆演奏をする。。

草笛の音量は、他の楽器に負けていない。

もちろん演奏自体は、そんなにレベルの高いものでは無い。。 が、しかし…

僕はあまりの事に、暫く動けなくなっていた。

その演奏は、僕の心に響いた。

この演奏に 心の動いた僕は、黙ってチップを入れる箱にお金を入れた。

この演奏に出逢えただけで、この遺跡に来て良かったと思い、僕は遺跡の入り口に戻っていった。

 

駐車場で、ハンモックをトゥクトゥクの客席に張って、呑気に寝ているジェイクに話しかけ、僕は次の遺跡に向かってくれと、彼に伝えた。

 

続く

 

動画 ジェイクとカンボジアの大地を疾走

https://m.youtube.com/watch?v=UvUtpo9ZxsI

動画 草笛の楽団

https://m.youtube.com/watch?v=Z92v2a0axPc

 

 

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↑ 赤土の道。。空と雲。


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↑ トイレにあるリンス。。

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↑ 一休みする係員と、娘さん。
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↑バンテアイ・スレイという遺跡だったらしい



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↑ 草笛と演奏する楽団

 

 

次話

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究極の生ビール

 

第79話

究極の生ビール

 

宿に無事帰り、お腹もすいていた僕が

「近くに良い店は無いか?」と店主に聞くと

観光客向けの有名な "パブストリート" があると教えてくれた。

 

Googleマップで調べたところ、宿からは 徒歩で12、3分くらいだ。

僕が「歩いていく」と言うと

「道も暗くて危ないので、乗っていきなさい」と、宿の自転車を無料で貸してくれた。

Googleマップ先生によれば、パブストリートまでは、大体一本道で行けそうだ。

自転車はだいぶガタが来ていてボロかったが、鍵だけが、最新式の頑丈な チェーン式のものだった。

自転車より、鍵の方が立派なところを見ると、やはり 自転車はすぐに盗まれるようだ。。

 

夜道を自転車で走る。

案外街灯もあり、そんなに危険な感じはしない。

パブストリートには 7分程ですぐに着いた。

 

盗まれないように、周りで一番頑丈そうな標識を探し、そこに 自転車を鍵で括り付ける。

パブストリートは

ゲートに「PUB STREET 」と電飾で書かれており、わかりやすかった。

結構多かったのは、建物の二階が、テラス席ありのパブになっており、生演奏と生歌のライブをしている店だ。その為、至る所から音楽が聴こえる。日本で言うと、ビアガーデンに近い。

一本向こうの通りや、脇道にも小さなパブがぎっしりだ。ここのパブストリートは、だいぶ規模が大きい。

更に一本道違う通りを歩いてみると、バザールもあり、寄ってみると衣料品から、靴、装飾品まで色々置いてある。

お店の人との会話も楽しい。

色々とバーやパブも覗いてみたが、僕は一階にあるこじんまりとしたお店に入った。

メニューを見て、ハンバーガーとポテトのセットが美味しそうだったからだ。

生ビールは50セントで相変わらず安い。

 

例の如く、狭いが 路上のテラス席で通りを眺めながらゆったり過ごす。

しかし、凄い賑わいと喧騒である。

カンボジアのエネルギーを感じる。

 

ハンバーガーは 竹クシを、バラけないようにさしてあるお洒落なやつがきた。

お腹が空いていた僕は、ハンバーガーに早速かぶりつく。しっかりとした肉を感じる。

なかなか美味しい。食べ終わり ひと心地ついた僕は、また周りを見渡す。

一人で呑んでいるのは僕くらいで、皆仲間と飲んでいる。そういえば、随分と一人で飲み行くのにも慣れたものだ。

日本では 1人ではあまり居酒屋やバーには行かない僕だったが、今は一人で店で飲む時間が 楽しくなっている。 困ったものだ 笑

食事が終わった僕は 他も回ってみようと、忙しい中、明るく立ち回っている女性ウェイターに会計をお願いし、店を出た。

通りを歩いていると、前歯の欠けた汚いオッサンが話しかけてくる。トゥクトゥクのドライバーのようだが、明らかに風俗の客引きのようで、どこで覚えたのか カタコトの日本語で

「オンナノコ!オンナノコ!スキ!!」

「ハーイ!アナタ!オンナノコト イロイロ!!」

としつこく話しかけてくる。

無視していると、ついには女性器の名前を連呼し始めた。

 コイツ。。頭がおかしいのか?!

僕はものすごい嫌悪感をその男から感じ、睨みつけた。酔いは一気に覚めた。

それを見たそいつは、舌打ちをひとつすると、客引き仲間の所に戻り、下卑た顔で笑い合っている。

よく見ると、そんな奴らがそこいらにいて、しつこく観光客に絡んでいる。

 最悪だな。。ここは。

なかなか 今の日本ではまずお目にかかれないタイプの、人間のいやらしさを持つ男である。

僕の人生の中でも数人しか見たことが無いような輩がゴロゴロいる。。

もし、ドラマで、彼の役を演じろと言われても、中々あそこまでのものを出すのは難しいだろう。それくらいの "卑しさ" を感じた。

僕は気分が悪いのと、もう十分だと感じたのも相まって、一旦 宿に戻ることにした。

帰り道は、一本道だったのも相まって、地図も開かずにすんなり宿に戻れた。

宿に自転車を返し、僕は初日に見つけていた、宿の近くの大通りを渡ったところにある、パブストリートに行くことにした。

何故、ここにまず行かなかったのかというと、道を入ってすぐの所に野良犬が結構おり、さらに暗がりに立っている男達も何か怖く。。

危険を感じて通らなかったのだが、行ってみることにする。何事も開拓者魂が大事である。

野良犬達を刺激しないように、そろそろと歩きやり過ごす。

道の向こうに店の電飾は見えるが、そこまでは結構な暗い道だ。

暗がりに立っている、何をしているのか分からない男達も、かなり怖い。。

少し進むと、一本道の両側に店がズラーっと並んでいる所に出た。

かなりの規模のパブ通りだ。

建物があるというよりは、壁のない屋根がしっかりしている吹き抜けのスペースもある店が多いが、しっかりした建物の店もある。一軒、一軒が庭も広くて、結構大箱だ。

中を覗くと、どうやらキャバクラのような、ホステスさんが付いてくる店が多い。普通のバーはチラホラしかない。

僕は、普通のバーに行きたかったのと、生ビールが飲みたかったので、ホステスさんのいない、ライブをやっているバーに顔を出して

「ドラフトビアー?」と聴いて周った。

3軒とも「瓶ビールしかない」と言われ

「生ビールが飲みたいなら、向かいならやってるぞ」と妖しいピンクの電飾のお姉さんの店を教えてくれるが、あいにく僕はそんな気分ではない。

丁度、ストリートの真ん中を過ぎたあたりの右手に、これまた生演奏をやっている店があった。中を覗くと、カウンターが大きく、テーブル席もあるバーだった。

「ドラフトビアー?」と聞くと「イエス」と言う。

「ハウマッチ?」と聞くと「ヒィフティセント」と答えてくれる。(完璧だ!)

僕はここに入り、珍しくカウンターで飲むことにした。

そして、ここは大当たりだった。

 

周りを見渡すと、地元の人しかいないようで、観光客は1人も見当たらない。

通りを歩いている時からそうだったところを見ると、どうやら、この通り自体が、地元の人向けのパブストリートのようだ。

僕以外に観光客が1人もいないバーで 僕は、何故かカンボジアのバーのテレビに映る "竹中直人" さんを見ながら

(ジャッキー作品に竹中さん出てたんだ。。)

と呟きながら、ビールの泡に口をつけた。

一口飲むと、キンキンのキンに冷えていた。

何故なら、ここは、底に少し水を張ったジョッキをそのまま凍らせた。

氷のようなジョッキで、生ビールを出してくれるので、キンキンキンで飲める。

日が落ちて涼しくなったとはいえ、まだまだ暑いカンボジアだ。

最高に喉が気持ちいい!!

 

「凄い キンキンに。。

 菅井キンキンに冷えてやがるよぉぉお!!」

 

どうせ日本語は分からない人たちの中で、僕は思わずそんなくだらないことを言いながら、一緒に頼んだポテトフライをぱくついていた。。

 

ここのビールとポテト、そして値段は最高だった。

4、5杯飲んで、美味しかったので、ポテトをお代わりしたのに、会計は500円に満たなかった。

そして、これに気を良くした僕は この日以降、夜は必ずこの店に毎日来ることになる。

 

ついに3カ国目で僕は、

究極の生ビールを見つけたのであった!!

 

続く

 

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↑ 観光客向けのパブストリートと

    BARのハンバーガ

 

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カンボジアの地元のバーのテレビの中の

 竹中さん。 何か安心する。

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

遺跡の人々

 

第78話

遺跡の人々

 

名も知らぬ遺跡へのアプローチは続く。

だが、すぐに 次の遺跡に着く。

さすが ”スモールツアー” だ。

 

(ギュッと近場で周るんだなぁ。)

と思いながら、座っていると、トゥクトゥクはこじんまりとした遺跡の前で止まった。

ジェイクに説明され、遺跡へと促される。

だが 門をくぐろうとすると、相変わらず 厳しいチェックがある。

係員が厳しい顔つきで、顔写真までじっくり見て、通してくれる。

ひょいと 通ろうとした観光客が、厳しく呼び止められる。

(ここは本当に。。

 あのユルいカンボジアなのだろうか?)

と改めて感じる。

遺跡でのパスチェックでは、一切笑いが通用しないようだ。

 

ここでは、アンコール・トムの南門を小さくしたような、バイヨン寺院にある様な 人の顔がついた門があり、バイヨンに行けなかった僕は、テンションが上がった。

どこの遺跡も、入り口の 駐車場の一部のスペースでは、観光客向けなのか、パラソルの下で 服やお土産、飲み物を売る人たちがいる。

もう一つ驚いたのは、遺跡の中の ちょっと開けたところにも、服などをハンガーラックに掛けた、簡易の出店があった事だ。

その横では、少女たちが遊んでいる。

遺跡の少女たちは、僕ら観光客を見つけると 声をかけてくる。

首から下げた箱の中から、ポストカードを取り出して、

「ワン、トゥ、スリー フォー、

 ファイブ シックス、セブン エイト

 ナイン、テン。 ワンダラー!」

と、10枚で一組のポストカードを、わざわざ一枚ずつ数えて見せ、

最後に ”これで1ドルだよ!”  と言ってくる。

僕は、ポストカードはマレーシアで買ったものが まだ数枚あったので、

「ノー サンキュー」と首を振ると、気にした様子もなく、遊びに戻っていく。昼に降った雨でできた水溜まりで色々遊んでいるようだ。

どうやら、服を売っている出店の女性たちが、少女達の母親のようだ。

少女たちにとっては、遺跡が遊び場であり、公園であり、仕事場のようだ。

彼女たちは、来る観光客に、

必ず一回、この 「ワンダラー」 の呪文を唱え、その後はすぐに遊びに戻っていく。そんな彼女たちが遺跡と不思議に調和し、

初めて来た 縁もゆかりもない遺跡に、何か親しみを感じさせてくれるから不思議だ。

そして、遺跡の中にも、警備員風の係の人はいる。

その中の1人のおじさんは中々面白かった。

写真のスポットを教えてくれているつもりなのか、僕を見るなり いきなり手招きをし、

「ついて来い!!よし!ここを撮れ!

 次はここだ!!こっちだ!こっちへ来い!

 そうだ、とりまくれ!!そこだ!!

 今度はこっちだ!走れ!!

 ここだ!!ここを撮れ!撮るんだ!!」

と言って、遺跡素人の僕をアテンドしてくれて、よくわからない写真ポイント をいっぱい教えてくれた。そして最後に満を辞して!

「よし!!チップをくれ!!!」

と凄いテンポのコンボで言ってきた 笑

僕もそのテンポに併せて神速の切り返しで

「なんでだよ !?

   どうも ありがとうございました!!」

と断った。  もはや "遺跡漫才" である。

本当に遺跡には 色々な人がいるものだ。

そしてその人たちとのやりとりはとても楽しい。

彼らのおかげで、数百年前の王朝の遺物に、現代も 血が通っている気がした。

遺跡には猫も住んでいる。子猫が「あそんで~」と話しかけてくる。

首にかけているタオルを外して ジャラシて遊んでやる。猫はここカンボジアでも可愛い。

僕にとっての遺跡周りは、人や、動物との触れ合いでもあるようだ。

僕は僕なりの遺跡の周り方を堪能し、次の遺跡へジェイクにアテンドしてもらう。

つぎは赤茶色の平場の遺跡であまり面白くはなかったが、一通り周った。

その次は、階段が本当に急な、ある程度筋力とバランス感覚がないと上がれない程、急な階段を上らないといけない遺跡。

中国系の 少し年配の女性観光客の一人は、途中で上がれなくなり、周りの人達に引き上げて貰っていた。 降りる時も大変だろう。。

しかし、僕にとっても こんな急な階段は 人生初だった。遺跡保存の為か 手すりすらない。

子供の頃よく落ちる夢を見た。そんな夢の中でしか昇ったことの無いような 落下の恐怖を感じる階段である。

本当に急な所は 階段に手を着きながら四つん這いになって登る。

僕のイメージでは、遺跡はすべて

平地で見るものという感じがあったが、この高台に上り、イメージは一変した。

シェムリアップの観光は若い内に行った方がいい」と言われる理由が 何となく解った。

炎天下の下、ひたすら自分の足腰で遺跡を周り、そして中には日本では経験したことも無いような 急な階段や段差を 昇り、下る。

登山にも似ているかもしれない… とにかく体力勝負になるからだ。

だが、頑張って登った遺跡の高台から眺める景色は、また素晴らしい。

アンコールワット」も

森の中の ”木々に埋もれていた” と聴いたことがあるが、ここの遺跡の向こうも、森になっている。森の中に遺跡があるのだ。

後で調べるとここは、夕陽スポットでもあったようだ。

 

午後から周るという強硬スケジュールの割には、結構遺跡も周れ、充分楽しめた。

暗くなり、僕は 大満足で宿へと帰った。

遺跡はライトアップなどされていないので、陽のあるうちに周らなければいけない という初歩的な事も、この初日に学んだ。

宿に帰ると、さっそく店主と打ち合わせをする。

日程を決め、どこに行くかを話し合った。

僕の遺跡パスはあと二日分しかないので、しっかりと話し合う。

僕は明日 明後日で周って、最悪まだ行きたいところがあったら、一日だけパスを買い足す事を考えていたが、彼の組んでくれたスケジュールで、行きたいところは ほぼ周れそうだった。

…少し強行軍ではあるが。

 

明日は「ベンメリア」に行くことに決まった。

この遺跡は、僕に「深夜特急」を勧め、アジアへの旅まで勧めてくれた、旅好きの 俳優であり友人が、出発直前に相談すると、

これまた「絶対に行った方がいい」と勧めてくれていた場所だ。

僕は宮崎駿さんの作品で一番好きなのは

「天空の城 ラピュタ」である。

年中さんの時に 幼稚園で見たこの冒険活劇は、僕の役者人生にも少なからず影響している。

この「ベンメリア」遺跡は、

 ラピュタの舞台なのでは。。?

まことしやかに言われている遺跡なのだ。

ぼくはここでパズーごっこをすると決めていた。なので、二日目に回ることにしたのだ。

店主が言うには、この遺跡は郊外のかなり離れたところにあるらしい、ほぼ一日潰れるし 割高との事だったが、僕は迷いなくこのツアーを組んだ。

三日目はアンコールワットや、バイヨンを周る

「ビッグツアー」 なるものに行くことにする。

 良し! これで安心だ!!

と僕は例のごとく、くたびれた身体と、乾いた喉を潤す為に、夜遊びに出かけることにした。

 

続く

 

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↑ 遺跡の仔猫さん 人懐っこい☺️


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↑ 遺跡にいる ワンダラー な、元気一杯の子供たち


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↑ あとから調べたところこの3つ目の遺跡は

 「タ•ソム」と言う遺跡のようだった。


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↑ おそらく「東メボン」遺跡かと 笑


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↑ 凄い角度の遺跡である
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↑ たぶん 「プレループ寺院」だと思う。。

 本当にどこを周っているのかが

 判らなかった 笑

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天地のキャンバス

 

第77話

天地のキャンバス

 

名も知らぬ遺跡の、門や壁のレリーフを見て周り、真ん中にあった祭壇に、祈りを捧げた。

 

初めての遺跡を一通り回った僕は正直

 うーん。。こんな感じなんだなぁ。

と特に感動はしていなかった。

理由は、まったく知らない遺跡だった事と、壁に張り付いた大木以外は、あまり面白くなかったからである。

遺跡の壁には、クメール王朝時代のものなのか、ほぼ全ての壁は レリーフが彫られており、それを楽しんだりするのが、遺跡の作法なのだろうが、どうもピンと来ない。。

 僕は遺跡の観光に

 向いていないのでは無いだろうか?

と悲しい疑問が頭をもたげる。。

それを押し殺して、次の場所に行くために 出口から出る。

出口ではジェイクがゆったりとトゥクトゥクの客席の方に座って、携帯をいじっている。

声を掛けると「もう良いの?」と聞いてくる。そういえば…と思い 時間を見ると、まだ30分ほどしか経っていなかった。

僕は「もう大丈夫」と言って頷いた。

トゥクトゥクに乗り込みしばらく走ると、ジェイクはバイクを止めた。

周りを見渡すと、遺跡ではなくて、湿原のような湖がすぐ横にあり、それを見渡せる広めのデッキがすぐ先にあった。

ジェイクはバイクを降りて、後ろの客席に来て話しかけてきた。

「マサミ、お腹は空いていないかい?

 これからランチタイムだよ」と。

腕時計を見ると、確かに昼をだいぶ過ぎていたが、まだ遺跡をひとつしか回っていない。。

あとはオフィスに行っただけである 笑

 

どうしようかと思って、ふと右手の湖を見ると、空の一部だけ雨が降っているのが見えた

(ん? なんだあれ?? ) と思い

 ちょっ、ちょっと湖を見ても良い?

と聞くと、ジェイクはうなずき、ここで待っているからと、ジェスチャーをした。

先ほど見つけたデッキにのぼる。

そこから見た景色は、世にも不思議な光景であった。

 

湖の上には雲がかかり  ざぁぁあ。。と雨が降っている。しかし、その向こうの空は晴れ渡っている。

 

正面は 雨の向こうに 青空。晴れ間と雨雲が同居する、不思議な空が向こうに見える。

また、右手の空は晴れ、左手の空は雨雲だ。

  それはとても不思議な光景であった…

僕は暫く惚けていたが「そうだ!」と思い、iPhoneの動画を回した。

やがて雨が僕のところにまで降り注いできた。

ジェイクが呼びにくる!

「もう少しだけ良いか?!?」と大声で聞くと、待ってくれた。

マレーシアで買ったトラベルバッグから、折り畳み傘を取り出し 差すが、スコールと言って良いほど、雨が激しくなり、再び「戻れ」と催促される。

僕は今度は、ジェイクに言われるままに 客席に戻って 飛び乗る。ジェイクは雨の中、トゥクトゥクを走らせ、100メートルくらい先の、小さなローカルレストランの軒先に、トゥクトゥクを止めてくれた。

お陰で 僕はほとんど濡れなかったが、ジェイクはびしょ濡れである。

(本当に申し訳ない事をした。。)

と、景色を見る為に粘ったせいで、彼をびしょ濡れにしてしまった事を後悔した。

ジェイクに謝ると、笑って「気にするな」と手を振っている。僕が席に着くと、

彼はシャツを脱いで、軒先で絞り始めた。

不思議なもので、空は既に晴れている。

僕は席に着き、まず、お詫びに彼に、温かいコーヒーを注文した。ジェイクのトゥクトゥクを指差し

「これを彼に届けてくれる?」と聞くと、英語が通じたので、頷いてくれた。

ほっとしながら、自分の昼ごはんを頼む。

観光客向けの店なので、写真入りのメニューが置いてある。

僕は、鳥肉入りの野菜炒めらしき物とライスのセットを頼み、先ほど見れた素晴らしい景色に乾杯する事にした。ビール頼む。

しばらく待つと、ビールが僕に、コーヒーがジェイクに運ばれていった。

アンコールの缶ビールを飲んでいると、僕の前にも食事が届く。

結構美味しそうだ。

たが、食べ始めると…(うん。。?うまい?)という味だった。。

まぁこんな物だろうと、ビール片手に食べ切る。

会計を済ませ、トゥクトゥクに戻ると、ジェイクはシャツを着替えた様で、ニコニコしながら、コーヒーのお礼を言ってくれた。

「では次に行くから」とジェイクは、トゥクトゥクを走らせる。

気合を入れて「OK!」と返事をし、出発したはいいが、次の遺跡はすぐそこだった 笑

遺跡は、先程の湿原の様な 湖の中にある様だ。

例の如く 周る時間を言われ、僕は遺跡へと向かう。

ここでも奇跡が起こった。

湖の真ん中に遺跡はあるようで、そこまで、真ん中を一本道の 小道で向かうらしい。

小道の左右には、湿原の湖が広がる。

雨が降って、すぐに晴れたせいか、空気中の不純物が無くなり、水面が鏡の様になり、美しい青空と雲を反射して「逆さ富士」の様に、美しい 晴れ渡った景色が、水面から線対象のパノラマとなる。

 奇跡だ。。なんて美しい景色なんだろう…

僕は感動してしばらくそこから動けなかった。

この景色を見れただけで、シェムリアップに来た甲斐があった。。 と強く思った。

僕はしばらくこの小道に佇み、景色を堪能していた。そして、十分景色を見て満足した僕は遺跡に進んだ。

 

遺跡はこじんまりとした遺跡だったが、美しかった。

先程感じた(遺跡巡りに向いていないのでは?)などという考えは、すっかり頭から消し飛んでいた。

 

いきなり素晴らしい景色を見れた事で、僕はこの遺跡の街に、温かく迎え入れて貰った様な気がしていたのだ。

そのせいか、遺跡を周る気持ちもだいぶ変わっていた。

「見よう」と思うのではなく "ただ感じよう" と思い直したのかもしれない。

きっと自分にとって 合わない遺跡もあるはずだ。そうしたら、さっと周って帰れば良いし、逆に感じるものがあれば、じっくり周れば良いのだと。

肩の力が抜けたぼくが遺跡から出ようと、湿原の中の土の小道に戻ると、またビックリした。そこにはさっきまで無かった、小さな出店が出現しいていた。4、5軒が魔法の様に、急に現れていた。

(きっと雨が止むまで

 どこかに避難していたのだろう。。)

服や涼しげな女性用のカンボジアズボンや、Tシャツなどを売っている。それらはハンガーラック掛けられ、他にも箱の中にも色々ある様だ。

僕はせっかくなので少し覗いてみる事にした。お洒落な半袖シャツを発見した。

水色のアンコールワットのプリントがされた、ちょっと綺麗なシャツだった。

おばさんが、当ててみろと言うので、自分に当ててみる。ご丁寧な事に、姿見の鏡まである 笑

 あれ?!これ似合うんじゃない?!

と思った僕は、彼女に「これ似合うかな?」聞いてみると、彼女は笑顔で大きく頷いてくれた。

その人の良さそうな笑顔と、シャツが気に入った僕は、このシャツを買う事にした。

雨が上がり、蒸し暑くなった事で、僕はまた大汗をかいていたので、このシャツを買い、着替える事にした。値引き交渉をしてみると

「良く似合うからいいよ」と少し安くしてくれた。200円くらいでシャツは買えた。

その後僕はトゥクトゥクに戻り、出発前にそのシャツに着替えた。

ジェイクも

「良く似合うね。カンボジア人だ 笑」

と冗談を言ってくれたが、景色に祝福されて、さらにカンボジアのシャツに包まれ、僕は この遺跡巡礼が「ようやくしっくり来始めてきたな」と感じていた。

 次の遺跡はどんなだろう?  楽しみだ!!

ジェイクのトゥクトゥクは、土埃を上げながら、颯爽と次の遺跡へと走り始めた。

 

続く

 

雨の向こうの青空 動画

https://m.youtube.com/watch?v=gB2WAv4cqiE&feature=share

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↑ ローカルレストランでの昼食

 

 

天地のキャンバス(ニャック•ポアンの小道)動画

https://m.youtube.com/watch?v=r1-6-DknmIc&feature=share



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↑ ニャック•ポアン

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

究極のガソリンスタンド

 

第76話

究極のガソリンスタンド

 

早速ジェイクに乗せてもらって、遺跡に向かう。「スモール ツアー」とやらに出発である!

 

市街を抜けると、ジェイクのトゥクトゥクは、またしても一本道をひた走る。

 

いきなり遺跡には行かない。その理由は、ある場所に着いて ジェイクに説明されて分かった。

最初に着いたのは郊外にある、オフィスだった。実はカンボジアの遺跡は、遊園地の様に

入場券がないと入れない」というのだ!!

びっくりしたのだが、まず、管理オフィスに行き、一日パスか、3日間パスか、7日間パスかを選び 買う。

パスがあれば、その一日は、だいたいどこの遺跡へも入れるらしい。

日本も、奈良や京都の有名なお寺などは、入場料を取るので、似た様なものだろうと思うが…しかし「1日パスポート」とは、なかなか ワクワクさせてくれる 笑

 

受付の若い女性に聞いてみた。

「大体みんな 何日のパスを買うのか?」と

すると「3日間パス」が一番売れているらしい。

僕はシェムリアップにいるのは5泊6日の予定だ。迷わず「3日間パス」を買う事にした。

値段は、三日間で ”62$” とかなり高い。。しかし、この街に来て遺跡を周らなければ、シェムリアップに来た意味自体が無くなる 笑

(きっとこのお金もビザと一緒で、

 この国の大事な収入源なのだろうな)

と思いながら お金を払うと、受付の窓口の 横に置いてあるカメラで、パス用の顔写真を撮ってくれる。

顔写真を撮って、パスポート並みの本人確認をする所を見ると、どうやら遺跡を周る パスの管理は、かなり厳重なようだ。

パスを見ると、有効期限は10日間で、その期間内で 任意の3日を周れるらしい。

僕は出来上がるまで 暫く横にずれて待ち、やがて出来上がった、僕の顔写真入りの紙のパスを、パスポートのコピーを入れていた、パスポートケースに入れた。

ジェイクと共に、再びトゥクトゥクに乗り込み走り出す。

 ついに僕は いま遺跡に向かっているのだ!

とテンションが上がる!

ところが、そんな僕に水を差すように、ジェイクが「ガソリンを入れたい」と言ってきた。

こちらは「OK」と言うしかない…が、前のドライバーさんもそうだが

 ”仕事の前にガソリンをちゃんと入れておく”

という日本では当たり前のことはしないらしい。カンボジアらしいといえばそれまでだが 笑

 

そしていざ "ガソリンスタンド" に着いて、僕は…目が点になった。。

それは道端にあった。

道のすぐ横に、鉄の陳列棚があり、そこには薄茶色に煤けた ペットボトルや瓶が並べられ、中身は何かの透明な液体が入っている。。?!

そうなのだ!!

ここは 個人経営の、ペットボトルや瓶の中のガソリンを給油する 小さなガソリンスタンドなのだ!!

「ガソリンは気化しやすいので、密閉性の高い、専用の容器で保管してください!」

と ガソリン不足の東日本大震災の時に、さんざんテレビで注意喚起されていたことを思い出しながら。。

 マジか。。ヤバすぎでしょうこの保管方法。。

と衝撃を受ける。

しかもここは40℃越えのカンボジアである。さすがに パラソルで直射日光は当たらないようにしているが、、気休めにしか感じない。。

しかも売っているのは若い母親だ。

そう、母親だと分かったのだ…。理由はお分かりだと思うが、ガソリンのすぐ側には、小学校の低学年であろう可愛らしい娘さんも居たからである!!

 あっぶなくない??!! えええ??!!

 えーと。。 これは現実なの??

と僕は固まっていた。

そんな僕をしり目に、ジェイクは にこやかに談笑しながら給油を頼んでいる。

ペットボトルから バイクの給油口に

ドッポ トッポポ  とガソリンが注がれていく。。

 

そして、なんとすぐ向かいを、咥え煙草のおっさんのスクーターが走っていく!?

 あ、危なすぎるだろう!! あ、あっぶねぇ!

ガソリンは揮発性が高いので

「結構離れていても密閉されてなければ引火する」とテレビで言っていたのを思い出す…。

日本の消防局員や、児童相談所の人が見かけたら卒倒しそうな光景である。

この出来事は、僕にとっては この旅に出てからの中でも、一番の衝撃だった。

給油が終わり、トゥクトゥクは再び走り出した。

しばらく走っている間に、僕はさっきの出来事から受けた衝撃を 頭の中で整理していた。

 一体なぜあのような「G.S.」

 誕生したのだろうか…? うーむ。。

確かにプノンペンで見た、

「ちゃんとしたガソリンスタンド」を作ろうとすると、相当なお金がかかるし、実際は数軒あるのだろうが、ここシェムリアップでは そこまで行くのに相当距離があるのだと思う。

なので、このような ”ガソリン売店” が出来るのも生活の知恵なのだろう。

きっと、営業するうちに受け継がれてきた、実体験や経験で

「ここまではやっても引火しないみたいだよ?」

という実地の営業で、ガソリンを管理をしているのだろう。

 

何にせよ、僕はアンコールワットに行く前に、人生が変わるような衝撃を体験してしまった。。

 さすが神秘の街 シェムリアップである 笑

トゥクトゥクはそのまま順調に走り、元来た道を戻って行く。

やがて、石で出来た 遺跡の門の前についた。門には人(仏様?)の顔が付いている。

ジェイクに、「アンコール・トムの南門だ」

と説明されて、携帯で記念撮影をしてもらう。

何枚か撮ってもらい、そしてトゥクトゥクに乗り込む。

そのまま中の「バイヨン寺院」に行くのかと思いきや、トゥクトゥクは、Uターンして走り出した。

一応バイヨンは知っていて、楽しみにしていたのだが…

「今日はここには行かない」とジェイクに言われる。

残念だが、今日の「スモールツアー」には、バイヨンは含まれていないらしい。

だが、全て 朝寝坊な自分が悪いので、また明日以降に来ることに決めた。

 

恥ずかしい話だが

今日どこに行くのかもわからないツアー」に、僕もよく申し込んだものである。

最初はこじんまりとした寺院というか 廃墟?に着く。

「一時間後に待ち合わせなので好きに周ってきて」

とジェイクに言われる。

 ええと、一緒に行ってガイドしてくれないの?

と聞くと「僕は パスが無いから 中に入れない」と肩をすくめて言われる。

どうやら、日本人の添乗員のいるような、

 「ちゃんとしたツアー」 以外は、

基本、遺跡に送り届けて貰い、指定された時間内で、自分自身で  勝手に中を周る。 というのがスタンダードな現地のやり方らしい。

少し不安だったが、まぁしょうがない。。 僕は名前も知らぬ廃墟へと歩き出した。

後で自分で気付くのだが、「廃墟=遺跡」なのだから、廃墟なのは当たり前なのだが、

日本の文化財の寺院と違い、あまりに ”廃墟感” が丸出しだったので、僕は その時そう感じていた。「廃墟じゃん??」と 笑

正に、遺跡素人感 丸出しである。

遺跡に入る前に、しっかりとパスを確認される。3つある○の中の一つに 穴をパチンと開けられる。一日分のパスの利用が始まったのだ。

チェックをする係の人は、ホーチミンで見た、「警備員の制服」に良く似た格好で、黒のパンツに、水色の長そでのYシャツを着ている。

きっと国が雇った方達なのだろう。

かなりチェックは厳しい。。  本当に、

「あの ぬるぬるいカンボジアなのだろうか?」

と改めて感じざるを得ない程の、厳しいチェックだった。

カンボジア王国の本気を…

「観光業で なんとか!!

 国の収入を確保するぞ!!」

という、恐ろしい程の意気込みを感じた。

カンボジアに来て、初めて感じるガチの空気である。。

 

選挙の時のアルコール禁止の法律など、屁の様なもので、

 観光客からきっちり国の財政を確保するぞ!!

というカンボジアの本気を感じながら。

僕は人生初のカンボジアの遺跡に足を踏み入れていた。

 

続く

 


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↑ 衝撃のガソリンスタンド。。


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↑ 近くの池


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↑ アンコールトム 南門


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↑ 遺跡内で「ここに座りな」と、中にいる

     警備員に言われて写真を撮ってもらう

     そのあとチップを要求されるが断った…


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↑ 廃墟感抜群の木の浸食

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↑ 後で調べた所この最初の遺跡は

「プリアカン」という遺跡だった

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴムゴムのトウモコロシ。

 

第75話

ゴムゴムのトウモコロシ。

 

パブの2階に上がり、外がよく見える席に座っていいかを聞き、そのスタッフに、いつものようにすぐにビールを頼んだ。

 

彼はすぐに、よく冷えた瓶ビールを持ってきてくれた。メニューを見ると、とうもろこしの揚げ物があるらしく、美味しそうだと思い、それを頼んだ。

こういうところのミュージシャンは、どれくらいお金が貰えるのか、どうなのか分からないが、とにかく上手だ。プロだなぁと思うレベルの人たちが多い。耳が洗われる。

2階は 結構混んでいたが、家族連れなどで、あまり、音楽は聴いていない。

僕は曲の終わりのたびに拍手していた。

やがてコーンの揚げ物が来た。

コーンまるごとではなく、缶詰のつぶつぶコーンを そのまま上げた感じで、意外だった。

山盛りのそれをスプーンですくい、口に放り込むと、結構硬い。。というか、歯応え??

ギュムギュムとゴムのような強さがあり、なかなか飲み込めない。。

ぼくはその後、3口ほど頑張ったが、食べるのを諦めた。

顎が疲れ切ってしまったからだ。

僕は顎の力を鍛える為に、わざわざこの店に来たわけでは無い 笑

他のメニューを頼む気が失せた僕は、曲を聴きながら、テラス席から見える大通りを眺めながら、もう少し雰囲気を楽しんだら、向いにあるこじんまりとしたお店に行こうと決めた。

ひょっとしたら、山盛りコーンの「下の方はイケるのでは?」と

最後にもう一度だけ、下の方をすくって頬張ってみたが、コーンは変わらず、僕の顎を鍛え続けただけだった。。

 

(店の雰囲気も、歌もいいし、

 ビールは美味いんだけどね〜。)

なんか…、もったいないなぁ。。

と思いながら、会計を頼んで店を出た。

 

咬合力(噛む力)が格段にアップした僕は、通りの向かいの店に、その成果を見せに行こうと大通りを渡った。

夜になってはいるが、結構車は走っている。

こじんまりとした、扉もない店に顔を出すと、16歳くらいの少年が、カタコトの英語で話しかけてきてくれた。

他のお客さんの食べている炒め物も、美味しそうだ。

僕はここで夕飯を食べる事にして、席に着いた。

まずはやはりビールだ。

ここは、カンボジアのビールの「アンコール」だけではなく、瓶のタイガービアーも置いていた。マレーシアぶりのタイガービアである。

懐かしくてそれを頼んだ。

瓶ビールは、触るとぬるかったが、その後すぐに、氷を入れたジョッキを置いてくれた。

どうやら、冷蔵庫で冷やさず、氷でカチワリにして、冷やして飲むらしい 笑

このシステムは初めてだった。

しかもカンボジアの氷だ。。

 ええと… 大丈夫かしら??

とは思ったが、氷は 昔の飲食店や昔のマックで使っていた様な、小さな 四角いダイスの様な氷ではなく、結構ちゃんとした筒形で、中に空洞が空いている、円柱のしっかりとした氷である。

周りの人も普通に その氷で呑んでいる。

僕は、大丈夫だろうと 郷に入り従う事にした。

旅の最初の "食べてはいけない5箇条" は、旅の間に だいぶ様変わりしていた。

ホーチミンで、猫を美味しいと言っていた友人の女性に、僕は 他にも聞いていた事があった。

ベトナムの人はお腹を壊さないの?

 お腹が強いの?」と質問をして

「ちゃんとお腹を壊します。

 よく壊します。 同じ人間ですから。

 貴方がお腹壊すものは 私達も壊します。」

と丁寧に怒られていた。

 

そんな僕は、現地の人が大丈夫なら、大概のものは大丈夫だと、ついに腹を括っていたのだ。

だって 同じ人間だもの。

 

僕は氷にビールを注ぎ、飲む事にした。

凄く泡立つ 常温ビールを慎重に入れ

飲んでみると、スッキリして美味い!!

 やるな!! カンボジア!!

と僕はそのまま、回鍋肉風の豚肉の野菜炒めを頼み、チャーハンも頼んだ。

2杯目のカチワリビールを頼んだあたりで、料理が来た。

ゴムゴムも、ワシワシもしていない、美味しい野菜炒めだった。

僕は断然、ビールが進み、大量に摂取していく。どうやらお腹の具合は大丈夫そうだ。

瓶ビールを4本飲んで、僕はその日は大満足して宿に帰った。

宿の玄関扉を開け、さらに宿の扉を開ける。

フロントの店主の奥さんが、挨拶してくれる。

 

僕は「グッドナイト!!」と言ってから、2階に上がり、そのままベッドに倒れ込んで寝てしまった。 シェムリアップも最高である!

 

…翌日、僕は10時半過ぎに起きた。

やはり移動日の翌日は、早起きが出来ない。。

ベットで少し ぼぉ〜っとしてから、シャワーを浴びた後、昨日頼んでおいたモーニングを食べに向かう。

どうやら幸いな事に、お腹も無事なようだ。

部屋を出てすぐ右手のテラスに向かう。

僕の他には、男性が1人モーニングを食べていた。「ぐっどもーにんぐ」と挨拶をし、隣のテーブルの席座った。

若い宿の女性スタッフに挨拶をすると、しばらくすると、モーニングを持ってきてくれた。

内容は、一般的なスクランブルエッグとパン、スープとサラダ、置いてる皿から取るフルーツ付きのモーニングだった。

フルーツは何種類かあり 食べ放題で、パンはお代わりして良いとの事であった。

味は。。かなり普通だった。

フルーツ好きなら最高のモーニングだと思うのだが、残念ながら僕はあまりフルーツが好きではないのだ 笑

 これだとちょっと割高だなぁ。。

と感じた僕は、次の日から、モーニングは頼まない事にした。

 

その後、フロントに降りて、ツアーの相談をする。

昨日説明して貰っていたのだが、この宿の良いところは、宿がツアーを主催している事である。移動手段がトゥクトゥクのこの街では、遺跡を周るには、トゥクトゥクを貸し切って周るのが一番効率的で、一番経済的だ。

僕もここに来るまでは、遺跡が、ギュッと固まっている街だと 勝手に思っていたが、Googleマップで場所を見てみると、アンコールワットですら、宿から歩いて行ける距離にないし、遺跡群は、各地に点在している為、かなり移動しなければならない。

もちろん、アンコールワットやアンコール・トムのバイヨンの様に、隣り合って遺跡が固まっている所もあるが、それでも、徒歩移動だけだと無理だろう。

 

この宿には3人のお抱えのトゥクトゥクドライバーがおり、1人は英語と少しの日本語、もう2人は英語が喋れる。彼らは宿の送迎だけでなく、ガイドも兼ねているのだ。

そして、最初に宿で 値段を確認し、交渉できる事が大きい。トラブルがあっても、宿にクレームを入れたり、責任を問える。

 

実は、シェムリアップトゥクトゥクは、個人で頼もうとすると、かなりの交渉力を要するらしいと聞いていた。

ぼったくりも普通にあるし、英語が怪しい人も多く、最初に値段を取り決めるのも一苦労だ。とり決めたはずの値段も後から

「そんな事は言ってない!」と、ひっくり返され、吹っかけられる事も多いと。

トラブルにあっても、相手が流しのトゥクトゥクだと、泣き寝入りするしかない。

それを分かっている悪質ドライバーが 結構いるらしい。勿論、逆に優良なドライバーさんもいるに違いないが、それを自分で判断し、交渉し、コミニュケーションを取り、自分で行きたい所を決め、そこに行ってもらえる様に話し合う。。

こういう事が好きな旅人もいるだろうが、初海外の僕にはハードルが高すぎる。

僕は、多少値段が高くても、こういうストレスや、手間は回避する事に決めていた。

僕の「安全をお金で買う」という考えは、予防注射を打ちまくっていた、新横浜から変わっていない。

そんな僕が、フロントにいた宿の主人に、ツアーに行きたい旨を話すと「えっ?」という顔をされ、彼は時計を見て、考え始めた。

どうやら、昼から行けるツアーは限られているらしい。

 もう少し早く起きるべきだった。。

とちょっと焦っていると、メニューを見せてくれ「small tour」というものを勧めてくれた。

僕は、何日かに分けて遺跡を巡るつもりだったので、初日は彼に言われるままに、そのツアーに決めた。値段も安かったし、実は正直、どこに行ったら良いのかも分からなかったからだ 笑

 

彼は、すぐに表に出て、トゥクトゥクドライバーを呼んでくれた。

黒いキャップの若い男性。

それは、昨日迎えにきてくれたジェイクだった。

僕の遺跡周りは、彼と共に始まる事となった。

 

続く

 

https://youtu.be/hN3cHUFFcoU

シェムリアップの最初の夜 パブにて

 

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↑ パブの2階のテラス席と

    そこから見える大通り

 

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↑ モーニングのテラス

 

 

次話

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遂に遺跡の街 シェムリアップに到着

 

第74話

遂に遺跡の街 シェムリアップに到着

 

飛行機は順調に飛び、まだ明るい内に、シェムリアップの上空に達していた。

 

飛行機の中で、通路側の席から地上が見れないか?と思って試行錯誤してみたが、無理だった 笑

もう、睨めっこで笑ってしまった時点で、隣の彼女を許してしまっていた僕は、あんまりやると、彼女に 嫌味になるので、流石にそれは良くないと思い、ある程度で諦めた。

やがて飛行機は、無事 空港に着陸した。

プロペラ機だったが、思ったより揺れもせず 快適だった。

 

空港に着き、皆で降りていく。

ふと 隣の彼女を見ると

「本格的な登山にいくのか?」と言うほど、大きなザックを普通に背負って、飛行機を降りて行った。

ちゃんとした国の飛行機なら、きっと機内持ち込みは止められる大きさだと思うが、ここでも流石のカンボジアらしさだ。 素敵だ 笑

空港の小さなロビーに出て、我慢していたトイレに行って戻って来ると

彼女は携帯を片手に、大きな荷物を背負ったままで、まだ空港ロビーに立っていた。

それをみた僕は、、理由は分からないが、

女性一人で、過酷な旅を黙々と続けているであろう彼女の、厳しさというか、寂しさのようなものを勝手に感じてしまった。

もし機内で 感情に任せて、「ガーッと」彼女に何かを言っていたら、この光景を見て、きっと僕は後悔していだろうと思い、踏みとどまって良かったと改めて思った。

やはり、敵意や、悪意は自分に返ってくるものだと深く感じた。 いい勉強だ。

 

その後僕は、空港に着いた旨を、宿にメールで知らせる。

実は 今回取った宿は、安い割には、迎えのトゥクトゥクが無料サービスで付いていた。

(逆に 空港へ送りは有料だった)

僕はビールを飲みに行く前に、遅れる旨を宿とメールでやりとりし、飛行機が飛ぶ直前に、大体着く時間をメールしておいた。

早速メールが返って来る。

「Jake」と言う若者がすでに待機しているので、駐車場に出て欲しい とメールが返って来た。

空港の建物から外に出てみると、すぐに駐車場になっている、見回してみると、トゥクトゥクのそばに立っていた若い男性が寄って来た。

「hello. Mr.Masami Azuma?」

と聞かれる。

どうやら、彼が宿からの使者のようだ。彼は英語が話せると、宿からのメールで知っていた。

挨拶を済ませ

 よく、すぐに僕が 宿泊者だと分りましたね?

と聞くと彼は、

「君が日本人だからすぐに分かったよ。

 ここから出て来た日本人は君だけだ」

と笑いながら答えてくれた。

彼こと「ジェイク」は、チノパン、半袖のポロシャツに、黒のキャップを被る、オシャレな感じのイケメン青年だった。

早速トゥクトゥクに乗り込み、そしてトゥクトゥクは走り出す。

彼は日本語の企業名「COSMIC コスミック」

と書かれたヘルメットを被っている。

聞いてみると「日本製だよ」と自慢してくれた。どうやらここでも安定の

「メイド・イン・ジャパン」らしい。

走り出すと、正面にはフロントガラスも何もなく、吹き抜けているので、風が直接顔に当たる。。結構風で疲れる。

僕はずっとハタハタ はためいていた。。

プノンペンで 空港に行くために乗った、おじさんのトゥクトゥクは、渋滞でスピードをあまり出さなかったので気付かなかったが、スピードを出したトゥクトゥクの風はかなりきつい。。

僕は今日、人生で初めてトゥクトゥクに乗った事に 今更気付いていた。

バタバタしていて、プノンペンでは気にしていなかったが、今日は 人生初のトゥクトゥクに、1日に2回も乗っているのだった。

トゥクトゥクは、夕暮れになろうとしている道をひたすら走る。

道は、一本道の田舎道だ。アスファルトの道だが、この一本の横はすぐ家か、土の小道か、木や池、林となっている。

道の左右にちらほら家が立っている程度で、他には 行けども何もない。

空が低く、空の果てまでよく見える。

ベトナム国境から プノンペンまでの田舎道など、まだ都会の道だったのだと気付いた。

そしてこの景色は、今までの国で、もちろん日本でも見た事のない景色だった。

そして日は暮れていく。。

 

市街に入ると、結構お店も多く 栄えており、大通りは、左右にもあり、アスファルトの道も多い。だが、土の道も脇道にはまだある。

やはり、プノンペンは大都会で、シェムリアップは有名とはいえ、遺跡が見つかるまでは、ただの田舎町だったのだろうと思う。

だが、観光地や都市ばかりを移動してきた僕には新鮮で、すぐにここが好きになった。

やがて、大通りから右折し、一本脇道に入って少し行った、角にある宿に 僕は到着した。

宿は綺麗な三階建てのゲストハウスで、大きな一軒家といったような作りだった。

一階の受付に行くと、50代の白人男性が 英語で対応してくれた。

彼は宿のオーナーで、イギリス人だという。カンボジア人の奥さんとこの宿を経営しているのだそうだ。

英語が喋れるスタッフさんがいるのは、非常にありがたい。

彼に色々説明してもらい、二階のシングルルームに案内してもらう。

二階に上がると右手に屋根付きのテラスがあり、ここは、モーニングなども食べれるし、カフェスペースとしても使ってください とのことで、2人掛けテーブルが 8つくらいある、気持ちのいいスペースだった。昼にはレストランとしても営業しているようだ。

モーニングは前日に予約制で、別料金だったが、テラスが気に入った僕は、さっそく 明日の朝食を予約した。

また、案内された部屋は かなり広く、非常に清潔の上 ベッドもダブルサイズで、シャワーとトイレ付きだ。椅子と机、テレビまである。テレビは懐かしいブラウン管テレビだ。

これでシングル 一泊 1,000円弱とは、間違いなく破格だ!

 またしても当たりの宿を探し当てたぞ!!

と僕は興奮していた。

 

ところがである。。

荷物を整理し、少し部屋で休んでいると、隣から 物凄い下手なカラオケが聞こえてきた。

中国語らしいが、それでも下手だとわかる。

 ボォおあぁー♪ ぼボヘェエーぇえ! ♪♫

と、本当にそう聞こえる。

どうやら隣の住人がカラオケを始めたようだ。しかも酔っているようだ。

中国語による

 ぼぉおへぇーみぁあーん♫

なラプソディは終わることなく20分以上続いた。。

移動で疲れていた僕は、流石に我慢ができなくなり、下に苦情を言いに降りて行った。

フロントにいた店主は 僕に笑いかけてきたが、僕の表情を見て、笑うのを止めた。

 あのカラオケはどうなってるんですか?

 あんなのがあるとは聞いてないですよ!

 もし、あれがずっと続くようなら、

 宿を変えるから、そのつもりでいて下さい!

と強めに言うと、少し困った顔をしていたが、

「あれは、長くは続かない。

 滅多に無いことだから安心して欲しい」

と言われた。 僕が、

  ホントの本当にほんとうですね?

と念を押すと

 「本当のホントにほんとうだ。」

と真顔で言ってくれた。

 

僕は彼を信じる事にし、部屋に戻った。

 

すると 不思議な事に、謎のカラオケは綺麗さっぱりおさまっていた。

 

カラオケにしては随分短い。。

オーナーが何か言ってくれたのだろうか?

だが、お隣さんは、たぶん 普通に住んでいる人だろうから、隣の宿から「静かにしてくれ!」と言うのは、流石に難しいというのは、僕でも解るが。。

謎は深まるが、とにかく もう二度とこのような事態にならない事を祈るばかりだ。

 

静かになった部屋で 一休みした僕は、夕飯と散歩を兼ねて、街に出る事にした。

すっかり暗くなった道を、土地勘が無いので とにかく明るい方へと向かう。明るい大通りなら、安全なはずだからだ。

大通りに出て、左に曲がり 少し行くと、オシャレそうな二階建てのパブがあった。

入り口を入ると、清潔感のある ちゃんとした黒の制服とサロンをした 上品そうなおじさんが挨拶をしてくれる。

メニューを見ると、普通の値段である。

2階は屋根付きのテラス席になっており、生演奏もやっている。

歌手が歌う曲はよくわからないが、とても上手だ。先程の「ぼぉへぇみ〜 ぁあんな ラブそでぃ♪」とはえらい違いである。

2階の席でもいい? と聞くと「もちろん!」と 彼は気持ちよく答えてくれた。

僕は耳を浄化する為にも、ここの涼しげなテラス席で、大通りを眺めながら 一杯やる事にした。

 

続く

 

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↑ ついにシェムリアップ国際空港到着

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↑ 道を走るジェイクとはためく僕

 

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↑ 広くて綺麗な部屋

 

 

次話

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窓とTシャツと私

 

第73話

窓とTシャツと私

 

アンコールワットに行くと人生観が変わるよ。

なんでって?  ふふふ 行ってみればわかるよ?

 

と、旅行好きの大学生に 言われた訳ではないが、僕はワクワクしていた。

 

そんな僕が、搭乗手続きをしに行くと

なんと! 飛行機が遅れていた。

カンボジア・アンコール航空のスタッフに聞くと、あと2時間以上は遅れるらしい。。

これまでの旅が 今まで順調過ぎたのか、初めて僕は 飛行機の遅れに遭遇した。

 おじさんに あんなに急いで貰ったのに…。

とは思ったが。

 

(いや、早めに着く事に越したことはない)

と僕はすぐに前向きな気持ちに切り替えた。

" 確実に2時間は遅れるんですね?" と、念を押してスタッフに確かめた僕は、散歩がてら、いったん空港から出て時間を潰す事にした。

 

空港の周りには何も無いのかと思いきや、道を渡ると中華レストランがあった。そこに入る。

もう、急いでもしょうがないので、ビールでも飲んで、ゆったり待とうと思ったのである。

空港からお店を探して少し歩いただけで、すごい日差しに照らされて、汗だくになっていた僕は、クーラーのよく効いた涼しい店内で、ゆったりと時間を過ごす事にした。

 

ここは、シーフードも売りらしくて、店内にお洒落な生け簀がいくつも有り、その水槽に、大量のエビやら、他にもお魚が泳いでいる。

シーフードはやはり、ここカンボジアでも高い。

僕は興味がないので、まぁまぁ安い値段の 野菜炒めと、ビールを頼む事にした。

さすがにお腹は空いていないからだ 笑

 

ビールを頼む際に、一瞬、選挙の為の禁酒法が 頭をよぎったが

(まぁ、カンボジアだし大丈夫だろう。)

とぼくはもう普通に頼んでいた。

その通りで、オーダーは普通に通って行った 笑

 

ここは水槽も大きくて、泳ぐエビや魚を眺めながら、ビールを飲める。

涼しげな、アクアリウムレストランに来たような感覚を味わえた。

ビールを飲みながら、それらを眺めていると、僕の他に1組だけ居た母子の、3歳くらいの男の子が、車のおもちゃを見せに来てくれる。

 すごいね、かっこいいね。

と少し酔った僕は彼と交流する。

その後、男の子は、僕の横の水槽に興味津々だが、背が足りないので、頑張って見ようとしていた。

僕は、彼を後ろからそっと抱え上げてやり、よく見えるようにしてあげた。

男の子は、少しだけ驚き、そのまま気にせずに、水槽を眺めている。

彼の目の前を、何匹もの魚が泳いでいく。

向こうで母親もニコニコしている。

しばらくそうしていたが、腕が痺れて来たので、彼に「もういいかなぁ?」と聞くと、素直に頷いてくれた。

そのまま彼は、僕のテーブルの向かいの椅子に座った。その奥にいるお母さんが、笑顔で会釈してくれる。

せっかくなので、僕は彼と時間を過ごすにした。彼は喋らないし、喋っても言葉は通じない。

だが、心の中で会話をする。

彼が聞いてくる。

 

 それ、おいしいの?

 

 うん、美味しいよ。

 

 ぼくも欲しいな。

 

 これは君は飲めないんだよ。

 

 どうして??

 

 大人にならないとダメなんだ。

 

 どうしてなの?

 

 そういうものなんだ。

 

 のみたいボクも

 

 お母さんにもダメって言われるから、

 だめだよー。

 

 えー、つまんないの〜。

 

飛行機が、遅れてくれたおかげで思わぬ交流が生まれた。

僕はその後、野菜炒めを食べながら、ゆったり2本目の瓶ビールを飲んでいた。

その間も彼と 表情と身振りで会話していたが、彼は暫くしてボクに飽きたのか、自分のテーブルに、帰って行った。

母子は、それから暫くしてお店から出て行った。帰り際には 挨拶をしてくれた。

男の子は手を振ってバイバイしてくれる。

その後僕は、チェイサーのお茶を飲みながら、心地よい酔いに任せて、背もたれにゆったりもたれかかって、エビたちを眺めていた。

 

 あぁ。。なんというか、

 ゆったりとしていい時間だなぁ。

 

カンボジアに来て、凝縮された時を過ごして来たボクは、ここに来て、かなり気持ちが緩やかになった。

飛行機が遅れるのもたまには良いものだ。

僕は、1時間半程 ここで時間を潰していたが、早めに空港に戻る事にした。

外に出るとまた、すごい日差しだ。。

大きな国道を越えて、空港入り口まで50メートルも歩かないのに、すぐにまた汗だくだ。

 

(空港に着いたら、Tシャツを

 また変えなければならないなぁ。)

と、また洗濯物が増える事に 少し憂鬱になる。が、さすがに自分でもこのままなのは 気持ちが悪い。

 

飛行機は 予定通り?きっかり2時間遅れで出発した。

空港の建物から、直接 飛行機まで歩いて行き、そのまま乗るスタイルだ。

驚いたのは、飛行機にプロペラが付いていた事だ。ちょっと人生初のプロペラ機である。。

 カンボジア航空だし、ちょっと怖いなぁ…

    大丈夫…? だよね?

と思うが今更引き返す事は出来ない。

タラップを上り、中に入る。

僕は窓側の席だ。

ひょっとしたら、空から遺跡が見れるかも?

とちょっとワクワクしていたのだ。

 

僕が席を見つけると。。そこには、30歳位の白人女性が座っていた。窓側の席に。

僕はチケットの座席を確かめて、声をかけた。

 エクスキューズミー そこは私の席ですが。

すると彼女は

 私も同じよ。こちらに座ってね。

と、通路側の席を手で差した。

一瞬(この人は何を言ってるんだろう?)

と思ったが、気を取り直して、

 そこは、私の席なんです。

 代わってください。

と丁寧に言うと、一度こっちを見る。

そしてすぐ窓を見る。

動かない。。

 まじかコイツ。。

かなりカチンと来ていたが、同時に 何故か少し面白くなって来た僕は、もう一度、言ってみる事にした。

 窓際のチケットはこれですよー。

 聞いてますかー? 見てくださーい。

 窓際は僕の席ですよー。

すると、今度は完全に無視している。

「私は窓の外の景色に集中してます」という体だ。

 す、凄いやつに出会ってしまった。。

 

昔から思っているのだが、大体窓側に勝手に座る輩は、景色を見るのは最初だけで、

「ほら見ろ!!必要なかっただろ?!」と言いたくなるくらい、すぐに景色を見なくなる。

ひどいやつになると、窓を閉める。

 

それなのに 窓際の席を強奪しておいて

「席ならここにもあるわよ?」

と平然と言ってくるコイツは何者なのだ??

 

まぁ、東南アジアでは、バスも電車も、座席などあってないような事がよくあり「勝手に空いてる所に座る」という事が良くあるのは承知していたが、まさか、飛行機でもこうなるとは思わなかった。

小さい事を言っているのはわかっているが、僕はどうしても納得ができなかった。

 

この席は、チケットを申し込む時に、窓際の席か、通路側かは指定できず、チケットが取れた後に、窓側の席だと分かったので、僕はヤッタァ!と正直楽しみにしていたのだ。。

…しかも無視されている。ガン無視である。

流石に僕は ハラワタが煮えくりかえり

「窓の外に何があるんや?! ああ"?!

 そないに、何見とんのや?!姉ちゃん?!」

と よっぽど関西弁で怒鳴ってやろうかと思ったが、これから2時間、隣り合わせな事を考えると、それは得策ではない事は、ほろ酔いの僕でも分かる。

とりあえず僕は、通路側に座った。

気が収まらない僕は、窓の外を見続ける彼女の、横顔を 恨めしそうに 暫く凝視していた。

彼女の心の声が聞こえてくる

(こいつ…しつこいな。。はやく前向きなさいよ)と。

そう口には出さないが、じっと窓を見続け無視を決め込んでいる。

こうなったら我慢比べだ!!

と僕は彼女越しに窓を見続けた。

ジィーッと、二人とも 一方通行の睨めっこだ。。

 

…が、しばらくすると僕は

「俺は、なんでこんな事を

 一生懸命にしてるんだろう?」

と思い、急に可笑しくなってきてしまった。

そしてその内、僕は笑い出してしまった。

静かに笑っていると、流石に無視していた彼女も僕に顔を向けた。

僕は笑いながら、窓を手で差し「どうぞどうぞ」ジェスチャーする。

彼女は少し怖くなったらしい。。

少し引き攣った笑顔で、会釈してきた。

僕も満面の笑顔で会釈し返す。

 

やがて飛行機は、そんな僕らを乗せて、遺跡の街へと出発した。

 

(イエエェーイ!!

 レッツゴー!しぇむりあああっプう!!)

 

…僕は少し酔っていたのかもしれない。

 

 

続く

 

 

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↑ 人生初のプロペラ機で

     いざアンコールワットへ!!

 

 

次話

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さらば首都! こんにちは吉野家。

第72話

さらば首都! こんにちは吉野家

 

昨日は、結局結構遅くまで呑んでしまった。。

が、朝は8時頃、スッキリと起きれた。

 

旅立ちの朝は不思議だ。

どんなに夜更かしをしていても、スッと目が覚める。早速ベッドのカーテンを開け、昨日出来なかった荷造りを始める。

 

ドミトリーのデメリットは、遅い時間に、ガサガサ出来ない事だ。皆が寝静まった後には、泥棒のようにひっそりと動くのがエチケットだ。

その代わり、朝は その日に旅立つ人も多いので、早朝の5時や、6時に準備をしてても、誰も文句は言わない。

ガサガサという音を、夢見心地に聴きながら、

「ああ… 今日 誰かが旅立つのだなぁ。。」

と目を閉じながら うつらうつら としているうちに、やがて音がしなくなる。

そして、その静寂が、同部屋にいた 旅人の一人が、旅立っていったのだと 知らせてくれる。

そして、また少しだけ眠り、次に起きた時に カーテンを開け、ベッドから這い出す。

すると、昨日、人がいたはずのベッドが

 "もぬけの殻になっている "

何度経験しても、不思議な光景である。

この広大な地球の、膨大な人間たちの中で、たまたまその国に、たまたま同じ時期に来て、たまたま同じ部屋に泊まり、そしてすれ違うように 旅立って行く。

残された自分は、何か取り残されてしまったような寂しさを感じる事がある。。

 

だが逆に、自分が旅立つ時は、とにかく前向きなエネルギーで溢れている。

 

そんな、今日は "旅立つ側" の僕は、手早く荷物をまとめ、要らないものは、ゴミ箱に突っ込んで、下のフロント兼レストランに降りていった。

先に精算と、鍵を返し、少し散歩をしてくる旨を伝え、フロントに大きい方の荷物を預けた。

軽く宿の周りを散歩し、満足した僕は、最後にどうしてもしたい事があった。

それはあのうまいグリーンカレーをもう一度食す事だった。

マスターにグリーンカレーを頼む。

例の美少女店員さんが、持ってきてくれる。

 あぁ。。この美しい人と会えるのも

 今日が最後だと思うと悲しくなる。。

と思いながらカレーをパクつく。

 

 うまぁーい、うま馬、馬まいうー。

 

と馬になる。

ヒヒーンと、幸せなひと時だ。

もう思い残す事は何も無い。

 

僕は空港に行くために

「タクシーを呼んでもらえないか?」

と聞くと、トゥクトゥクを呼ぶが、タチの悪いのもいるから気を付けないといけないので、交渉してくれるという。

僕のフライト時間を伝えると、急に皆がバタバタしだした。。

僕は国内線なので、空港には、最悪30分前に着けば良いだろうと油断していたのだが、マスターが言うには、空港までは渋滞するらしい。。2時間見ていたのだが、甘かった。。

そして、うっかり忘れていたが、今日は選挙当日だった!!何が起きるかわからない!

「いつもより渋滞するかも!」とのことで、例の美少女店員さんが、表に飛び出していってくれ、トゥクトゥクを探し、交渉してくれた。

うーん。。なんていい娘なんだろう。。

そして、僕はゆっくりする暇もなく、バタバタとカレーの会計を済ませ、交渉してくれたトゥクトゥクに乗ることになったのである。

もう少し 余韻のある別れを予定していたのだが、しょうがない。

僕は何か、こういう変に呑気な所があって、ギリギリになる事が良くある。

周りのおかげや、最悪、信じられないスピードで走って、いつもなんとか間に合ってしまうので、なかなか治らない癖なのだが…。

僕は 基本はマイペースなのだ。

だが、東南アジアで暮らしている、もっと呑気な人達を焦らせるのだから、だいぶ悪い癖である 笑

トゥクトゥクの運転手さんは、気の良さそうなおじさんで、早速出発してくれる。

空港に行く道は、国道のようで、整備されたアスファルトだ。

みんなに言われて、、自分が悪いのだが、僕もいまさら 気が気じゃ無くなって来ていた…

そんな中、「ガソリンスタンドに寄りたい」とおじさんが言い出した。

 えーと。。そんな事してて間に合うの??

と僕はドキドキしていたが、ガソリンが無いのでは仕方がない。

もう、間に合わなかったら

「新しいチケット取れば良いや!」と僕は腹を決めた。

僕も、飲み物とお菓子を買いに、ガソリンスタンドのコンビニに寄る事にした。

運転手さんも、暑そうなので、彼に渡すお水も買う。

ちょっと心配だったが、時間がないので、コンビニに行くのに、トゥクトゥクの客席に、僕は大きい荷物を預けっぱなしにしていた。

コンビニで買い物をしながら、気にして見ていたら、ガソリンを入れ終わったトゥクトゥクが!

 

ギューン!! と出発した!!

 

 うわぁーー!! や!やられたーー!!

 

僕はレジで固まってしまった。。

 

トゥクトゥクはそのまま、道路に出た。

 

 お…終わった。。

 

と 僕は呆然としていた。

 

 

…だが、ここで奇跡が起こった!!

ここは角にあるガソリンスタンドである。トゥクトゥクは 一旦道路には出たが、角を右折し、再びスタンド内に入ってきて、なんと!コンビニの前までつけてくれた!

どうやら、時間がないのを彼も気にしてくれていて、わざわざ道から回り、コンビニ前まで トゥクトゥクを着けてくれたらしい。。

 

 びっ、びっくりしたぁ〜。。 汗

 

と僕は再び、おじさんのトゥクトゥクに乗り込んだ。水を渡すと、思った以上に喜んでくれる。そして トゥクトゥクは再び走り出す。

(この経験から僕はその後、どんな時も

 荷物を手元から離すことは無くなった。)

 

道は空港に近づけば近づくほど混んでいた。。

 

水をあげた事も功を奏したのか、おじさんは少しでも早く着くように、本意気で 急いでくれる。

車と車の少しの隙間に、トゥクトゥクをねじ込んで進んでくれる。

だが、それでも渋滞で思うように進まない。

そこでおじさんは本気の本気を出してくれた。

 

なんと、歩道をうまく利用しながら進み始めたのだ。

歩道には、なぜか石やコンクリートの塊が多いのだが、それを乗り越え、時には、道路脇に建つ 家の玄関の段差もガダガタと、乗り越えていく!

トゥクトゥクが壊れるのでは?)

と心配するほど、時に跳ねたり、片輪走行をしながら、ガタンガタンと進んでいく。

もはや、、刑事に「あの車を追ってくれ!」と言われて燃えているタクシー運転手のようだ。

 

お陰で後ろの席の僕も 大変な事になっている。荷物を抑え、トゥクトゥクにしがみ付いていないと振り落とされる。。

 

だが、こういう親切な、”神業” を持つ人に良く当たる僕は、彼のお陰で、予定より 信じられないくらい早く空港に着けた。

お礼を言い、宿の可愛い店員さんがしっかり交渉してくれていたおかげで、トラブルもなく 交渉通りの値段を支払う。さらにお礼を兼ねて、僕は1ドル札を渡した。

おじさんは凄い喜んでくれたが、こちらも本当に助かったので、お互いウィンウィンである。

 

逆に早く着いた僕は、先に食事を取ることにした。

グリーンカレーを食べたばかりの僕だが、どうしても食べたいものが売っていたからだ!

 

なんと! この旅に出て初めて吉野家を発見したのだ!!

例の、オレンジ色の暖かい日本文字である。

 よしのやぁー!!味のよしのやぁ〜!!

と僕は、お腹は減っていなかったが、どうしても、日本を出て一ヶ月ぶりに、牛丼を食べたかった。

レジのあるカウンターに並び、注文をするシステムだ。何かスタイリッシュだ。マクドナルドのシステムに近い。

久しぶりに、お味噌汁も飲みたい僕は、牛丼のセットを、頼むことにした。

だが、ここで驚いたのは、セットの飲み物を 何にするか聞かれた事だ。

結構皆 コーラを、頼んでいる。。

牛丼に、コーラ。。食い合わせでは無いのだろうか…?

日本の吉野家では、選べるのは、卵が 半熟か 生卵か?くらいのはずだが、さすが外国の吉野家である。マクドナルドのセットのノリだ。

「ご一緒にミソスープ(ポテト)も如何ですか?」という感じだろう。

とりあえず緑茶を頼む。日本だったらあがりは無料であるが、仕方がない。

 

ここは、卵は日本のように、サルモネラ菌対策をされてないはずなのもあり、生卵はなく、半熟卵しかない。まぁ、あっても怖くて頼まないが。。

 

ここは吉野家だが、牛丼がすぐに出て来ない。

番号札を貰い、敷地内のテラス席に座り、じっと待つ。やがてトレーに乗った牛丼のセットを店員が持って来てくれた。

 おお!!日本と一緒だ!!牛丼だ!

と感動した僕は、

最後の予防注射を打つ為に、出発の前日に行った 新横浜で食べた以来の牛丼に、むしゃぶりつこうとした。

が、その時、、どこからか、動物の鳴き声が聞こえ始めた。 (んん??)っと、

声がする テーブルの下を覗くと、痩せ細った子猫が、ナー! なぁあっ と必死に話しかけて来ていた。

僕は、とある伯爵のように、牛丼をポロポロこぼしながら食べる事にした。

お行儀は悪いが、せっかくの食事に 急に連れ合いが出来たからだ。

ゥナゥナ と食べる子猫とともに 牛丼を食べ終わった僕は、神業おじさんのお陰で、それでもまだ、一時間ほど余裕があるフライトの、搭乗手続きをする為に、空港内へと入って行った。

 

続く

 

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プノンペンの空港にある

     猫も大好き 吉野家


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吉野家の緑茶セット。

     紅生姜もあり。

 

 

次話

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僕が見たプノンペン

 

第71話

僕が見たプノンペン

 

言わずと知れたカンボジアの首都。

それがプノンペンである。

 

ここは、カンボジアが誇る大都会だ。

川沿いは綺麗にプロムナードに整備されているし、川沿いの道路も広くて綺麗で気持ちいい。

 

大きなカジノ、AEON、セントラルマーケットや、大きなパブストリート街。

ちらっとしか見れなかったが、鉄道も通り、電車も通っている。

路地に入っても、ちゃんとアスファルトの道路になっている。

 

マレーシアも、ベトナムも、基本はちゃんと道路が整備されているが、カンボジアプノンペンに着くまで、まだまだ、一つ入ると土の道路である。

また、田舎道は、建物がまばらで、地平線が見えそうな場所もある。

そんな道を通ってくると、カンボジアが、まだまだベトナムや、マレーシアには程遠い途上国なのがよく分かる。

だからこそ、プノンペンだけは、他の国に遜色の無い都会で、街が完全に整備されているのに驚く。

暮らしている人々は素朴だ。顔も明るい。

あの悲惨なクメールルージュがあったとは思えないくらい人々が生き生きとしている。

 

前にも話したが、国民の平均年齢が低く、やはり、ほとんど老人を見かけなかった。

大変な時期を乗り越えてきた国なのだ。

 

カンボジアの人たちは、日本人だと分かると、よくしてくれる方が多かった。

驚いたのは、カンボジア紙幣の500リエル札には「日本の国旗」が描かれていた事だ。

カンボジアの紙幣には、日本国旗が、日本が架けた橋の絵と共に、カンボジア国旗の左隣に描かれている。

これはその昔、日本が協力して初めてメコン川に架かった橋に「日本橋」という橋があるのだが、ポル・ポトに破壊されてそのままになっていた、それを国王の要請もあり、ODAで日本が直し、さらに他にも「ツバサ橋」「キズナ橋」と無償で架け、それからも継続的に無償でインフラの援助し続けた、そんな日本に感謝し、お礼の気持ちで 日本国旗が描かれていると言う事だった。

中々 他国の紙幣に、他の国の国旗が描かれているという事は、世界的に見ても例が無いのではないかと思う。僕はそれを見た時に本当に驚いた。

お札には、日本の国旗とカンボジア国旗が描かれ、その紙幣の真ん中には「キズナ橋」が

両国の懸け橋のように描かれている。

 

長い内戦で荒廃した土地を整備して、道路を通し、インフラを整備したのは、日本が初めて自衛隊を海外に派遣した、PKOの時の自衛隊も一役買っている。

当時、日本でも大議論になっていた、初めての自衛隊の海外派遣である。これは、国連平和維持活動で派遣されたのだが、日本は昔から、ひとつOKとなると、なし崩し的にじゃあ、次は、兵士として戦闘地帯に後方支援。じゃあ、次は兵士として、戦闘に。。

などと、なし崩しになる恐れがあると思っていたので、当時、子供心に僕は反対だった。

(今、本当に少しずつそうなろうとしているが…)

だが、自衛隊の方達がやってくれた事は、カンボジアの人々の中に生きている。

自衛隊は、内戦で落ちていた橋をかけ、壊れた道を整備して道路を通した。

 

よく紙幣については

PKOの時の自衛隊に感謝して、国旗が描かれている」と、政治家が ”美談” として政治利用するが、間違いなく感謝の一役は買っているだろうが、

本当のところは、歴史的にカンボジアに資金やインフラ整備の手助けを無償でしてきた、ODA等の援助に対する感謝の方が大きいようだ。

(なぜなら、描かれているキズナ橋も、他の大きな橋もODA等で架けられているからで、自衛隊が架けたわけではないからだ。)

酷暑の中、実際に作業された自衛隊員の方の事を想像すると、本当に頭が下がるが、、

それを政治的思惑で ”美談として” 我が事のように語る事は、自衛隊の方にも逆に失礼だと、現地で500リエルに 実際に出会った僕は思う。

これも、その土地に実際に行ってみたからこそ、自分なりの実感を持って語れることだ。

そういう意味でも、現地に行き、自分の肌で感じると言う事の大切さを改めて感じた。

 

PKOでは、自衛隊の方達だけではなく、他の国も 同じようにも多くの援助をしていたし。多くのボランティアも、地雷を命がけで撤去していたはずだ。

だからこそ、何かカンボジアの人たちは

あのとんでもない破壊の後に、自分たちの為に、

世界中の人達が、助けに来てくれたことを決して忘れていないと  僕は感じた。

 そういう感謝を忘れていないと。

世界中の人が助けに来てくれて、ある人は道を通し、ある人は橋を架け、ある人は学校を立て、ある人は病院を作る。そしてある人は命がけで地雷を撤去し、そこに人が住み、農業が再開をしていく。。

それを思う時 僕は、なぜか少し涙してしまう。。

結局、人を助けられるのは、現地に足を運び、地道に活動をしてくれる 人でしかないのだ。

もちろん資金も大事だが、結局最後は人なのだ。

地雷の事など、もう何も心配いらないプノンペンを見て、僕は そんなことを思っていた。

そして、また、そういう先人達のおかげで、自分が良くしてもらえる事に、改めて先人たちに感謝する。

助け合う事、助ける事が最強の外交であり、後に長く続く財産なのだと、ここでも改めて強く思った。

 

また、カンボジアの人々は、家族を、特に子供達を非常に大事にしていると感じた。

そして、それに答えて 子供たちも、すくすくと本当に まっすぐ無邪気に育っていて、見た事もないくらい綺麗な目をしている。

親御さんと一緒にスクーターに乗る子供たちは、並走していると 屈託のない笑顔で、手を振ってくる。

僕は、この国に来て、なんて子供達が可愛らしくて、美しいんだろう。。と人生で初めて強く思った。

日本にいる時も、子供を可愛いと思う事はあるし、僕は子供が好きな方だが、、まるで別の感覚だった。

 

実際に、御家族を殺された方も多くいらっしゃるので、平和になった今、皆 本当に家族を大事にしているのだろうと、深く感じる。

大変な時期を 皆 乗り越え、平和と家族を大事にする国。 それが今のカンボジアだ。

だからこそ、より魅力的な国に僕の目には映った。

プノンペンは、今まで回った二つの国とまるで違う顔を僕に見せてくれた。

僕はこの国に来て

「やはりカンボジアに来てよかった。

 いや、来るべくしてきたのだな。。」

というような、運命めいたものを感じて始めていた。

 

そして旅は続く。

 

 

 

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↑ トンレサップ川にて

 

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↑ 500リエル札の裏の右下にある

     日本とカンボジアの国旗

 

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カンボジア紙幣

 (100リエル札の人物は 僕の大好きな

      古今亭 志ん朝さんに見える 笑)

 

 

次話

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プノンペンのギフト

 

第70話

プノンペンのギフト

 

AEONの入り口から見るスコールは、さらに激しくなり、数メール先も見えなくなってきていた。。

 

どこからともなく、雨に強い、一体型のオート三輪トゥクトゥクがやってきて、客待ちを始めた。必要な時にさっと出てきて、商機を逃さないのも、東南アジアならでは逞しさである。

他のお客も 僕らも皆、ぼぉーっと、雨に煙る駐車場を見ながらジィーッと待っている。

東南アジアの人は急がない。雨が降ったら ひたすら止むまで待つ。

そういうところが 僕は大好きだった。

僕らも 向こうに雲間が見えていることもあり

「止むまで 中で 何かして時間を潰そうか?」

などとは言わず、皆と一緒に ジィーッと待つ。

逆に贅沢な時間である。雨の匂いが心地いい。

 

やがて見えていた雲間の方向から、青空がやってくる。。20分ほどで雨は止み、皆思い思いに帰っていく。

意外な事に、カンボジアなのに、AEONの駐車場は有料だった。駐輪場の精算方法がよくわからなかったので、テン君に付いて行き、一緒にやってもらう。短時間の駐車だったので、無料で出れた。

そして再び「漢のサンドイッチ」と僕の自転車は、雨上がりのプノンペンの道を 気持ち良く走り出した。昼下がりのプノンペンだ。

雨が降ったお陰で 涼しくなり、過ごしやすい。

日本語オールスターズは、これから高田さんをいったん宿に送り、休んでから、後で合流して夕飯を食べに行くとの事だった。

誘われたが、僕は 自転車を返さなければならず、民族舞踊のショウの予約もしてしまっていたので、連絡先を交換して別れた。

「後で合流出来たら しましょう」と。

王宮の広場の前で 二手に分かれた僕は、いったん宿に帰り、交換した連絡先にメールを送る。

次に僕は、とった飛行機のチケットを印刷したかった。マスターに聞いてみると、街の印刷屋が同じ通りにあるらしい。

僕は日本では、自宅にプリンターが無く、セブンイレブンの印刷アプリで、コンビニまで行って、コピー機で印刷していた。

だが、外国には、セブンイレブンはあれど、コピー機などいうものは置いていない。。

僕が通りを歩いてくと、右手にいかにも、おじさんが1人でやってますという小さな印刷屋さんがあった。。(大丈夫かしら?)と思ったが、聞いてみる。

iPhoneのPDF画面を見せると「オーケー」と言って、Wi-Fiで送れるプリンターと繋いでくれ、あっさりと印刷してくれた。

日本のセブンイレブンで色々やるより早かった。さすが街の印刷屋さんである。

僕は「本当に助かりました」と言ってリエルで支払いを済ませた。

まさか印刷出来ると思わなかったので、ほっとした。まだ、飛行機移動に完全に慣れていない僕は、やはり、紙を持っていないと不安だったのだ。

何故なら、万が一、プノンペンの空港に公共Wi-Fiがなかった場合、チケット予約画面を開くのに、Wi-Fiを探しに行かなければならない。一応、リーディングリストにチケット画面を入れてあるが、データ通信ができない状況で開くと、見た後に消えてしまう。。

Wi-Fiのみに頼る 旅の不便さである。

その後、念のため、先に自転車を返しに行くことにした。貸し自転車屋から博物館へは、歩いて十分もかからないからだ。

さっき来た道を、スイーっと戻っていく。

貸し自転車屋には、すぐに着いた。

自転車を返すと、無事に40ドルが還ってきた。元は自分のお金だが、何か得したような気分になる 笑

急にお金持ちになり、気が大きくなった僕は川へ向かった。夕日に照らされるトンレサップ川を見たかったのだ。そして、川の土手に出ると奇跡が起こった!!

 

薄い夕焼けに染まろうとしている川の向こうに、見たこともない程 "大きな虹" がかかっていたのだ。

こんな、はっきりとした大きな虹は、人生で初めて見た…。

うっすらと 夕陽に染められた川の向こうにかかる虹を見た僕は、プノンペンの最後の夕方に、この街に大きなギフトを貰った気がした。

それを見た僕は、この街をようやく離れる決心がついた。実は、もう二日ほど予定を伸ばそうかな?と迷っていたからだ。

気儘な 一人旅だ。国内移動の飛行機のチケット代は安い。最悪それを捨てて、また取り直せばいい。

だが、この風景を見て僕は、ようやく旅立つ決意が固まった。心から思ったのだ、

 もう充分だ。色々経験させて貰ったな。 と。

ちゃんと、その国や、土地に敬意を持って行動していると、こう言う思わぬギフトを貰えることがある。僕はしばらく、夕日と川の向こうに架かる虹を眺めていた。

次第に夕陽が全てを染めて行き、虹はゆっくりと消えていく。。そして、やがて夕闇となる。

その美しい景色に感謝しながら、僕は博物館へと向かった。

ゆっくりと、先程の景色を噛み締めながら歩いていくと、すぐに国立博物館についた。

入り口では、ショウを見に来たであろう、お客さんがちらほら来ていた。

入り口のスタッフにチケットを見せると、通してくれる。一番安いチケットなので、前から7列目くらいの後ろの席だったが、前の席とも段差がしっかりあり、見やすい!

真ん中の席で見る。周りは人がいないのでゆったりだ。

皆、値段の高い 前の席を買っているようだ 笑

カンボジアの民族舞踊なのだろうが、初めて見る。前に見たことがある、タイ舞踊に似ている。衣装も音楽もアジア的で非常に良い。

神話から題材をとったであろう神と神の戦いを描いた、男性二人の軽業の殺陣のような舞踏も見ごたえがあったし、昆虫の着ぐるみで皆が踊るコミカルな出し物も、大いに楽しめた。

しかし最大の見どころは、主役の女性が真ん中で、舞踏の民族衣装を着て踊るスタンダードなプログラムだった。女性らしい柔らかな美しさが指先まで 表現されていて、その踊り子さんに、何か ”神秘的なもの” が宿っていて素晴らしかった。

僕は大満足して、大きな拍手を送っていた。

 やはり見に来て良かった!素晴らしかった!!

僕は大満足し、劇場から出た。いったん宿に帰り、高田さんのメールを確認したが、皆もう食事は済ませたとの事だった。これから皆で、露天風呂に入るという。

僕は食事をとりたかったので それは断り、少し北上し パブストリートまで行くことにした。

 " 呑んべぇの勘が働いていたからだ "

プノンペンを2日周って 思った事は、とにかく 色々と緩い という事である。

たぶん、外国人向けのパブストリートなら、お酒を出している店もあるだろうと思ったのである。

パブストリートに着くと、案の定、すでに先人たちがビールを片手に盛り上がっている。

 やはりな!!さすがカンボジアだ!

と思いながらも少し笑ってしまう。

 

僕はこの前と違う角のパブに入り、テラス席でゆっくりビールを飲むことにした。

ツマミは、少し値は張るが、4ドルのハンバーガーセットにする。うまそうなチーズバーガーをメニューで見つけたからだ。

なにせ、40ドルを持つ僕は今 金持ちだ 笑

キンキンに冷えたドラフトビールを飲みながら

(きっと今、家で呑んじゃってるんだろうなぁ

 カンボジアの人達。。)

と思いながら、禁酒の日にお酒を飲める幸せに 浸りながら、僕は 今日の出来事を思い出し、

明日旅立つ プノンペンの最後の夜を満喫していた。

 

続く


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プノンペン最後の日

     この土地からの贈り物。

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↑ 素晴らしいカンボジアのショウ!

 

 

次話

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