猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

プノンペンのギフト

 

第70話

プノンペンのギフト

 

AEONの入り口から見るスコールは、さらに激しくなり、数メール先も見えなくなってきていた。。

 

どこからともなく、雨に強い、一体型のオート三輪トゥクトゥクがやってきて、客待ちを始めた。必要な時にさっと出てきて、商機を逃さないのも、東南アジアならでは逞しさである。

他のお客も 僕らも皆、ぼぉーっと、雨に煙る駐車場を見ながらジィーッと待っている。

東南アジアの人は急がない。雨が降ったら ひたすら止むまで待つ。

そういうところが 僕は大好きだった。

僕らも 向こうに雲間が見えていることもあり

「止むまで 中で 何かして時間を潰そうか?」

などとは言わず、皆と一緒に ジィーッと待つ。

逆に贅沢な時間である。雨の匂いが心地いい。

 

やがて見えていた雲間の方向から、青空がやってくる。。20分ほどで雨は止み、皆思い思いに帰っていく。

意外な事に、カンボジアなのに、AEONの駐車場は有料だった。駐輪場の精算方法がよくわからなかったので、テン君に付いて行き、一緒にやってもらう。短時間の駐車だったので、無料で出れた。

そして再び「漢のサンドイッチ」と僕の自転車は、雨上がりのプノンペンの道を 気持ち良く走り出した。昼下がりのプノンペンだ。

雨が降ったお陰で 涼しくなり、過ごしやすい。

日本語オールスターズは、これから高田さんをいったん宿に送り、休んでから、後で合流して夕飯を食べに行くとの事だった。

誘われたが、僕は 自転車を返さなければならず、民族舞踊のショウの予約もしてしまっていたので、連絡先を交換して別れた。

「後で合流出来たら しましょう」と。

王宮の広場の前で 二手に分かれた僕は、いったん宿に帰り、交換した連絡先にメールを送る。

次に僕は、とった飛行機のチケットを印刷したかった。マスターに聞いてみると、街の印刷屋が同じ通りにあるらしい。

僕は日本では、自宅にプリンターが無く、セブンイレブンの印刷アプリで、コンビニまで行って、コピー機で印刷していた。

だが、外国には、セブンイレブンはあれど、コピー機などいうものは置いていない。。

僕が通りを歩いてくと、右手にいかにも、おじさんが1人でやってますという小さな印刷屋さんがあった。。(大丈夫かしら?)と思ったが、聞いてみる。

iPhoneのPDF画面を見せると「オーケー」と言って、Wi-Fiで送れるプリンターと繋いでくれ、あっさりと印刷してくれた。

日本のセブンイレブンで色々やるより早かった。さすが街の印刷屋さんである。

僕は「本当に助かりました」と言ってリエルで支払いを済ませた。

まさか印刷出来ると思わなかったので、ほっとした。まだ、飛行機移動に完全に慣れていない僕は、やはり、紙を持っていないと不安だったのだ。

何故なら、万が一、プノンペンの空港に公共Wi-Fiがなかった場合、チケット予約画面を開くのに、Wi-Fiを探しに行かなければならない。一応、リーディングリストにチケット画面を入れてあるが、データ通信ができない状況で開くと、見た後に消えてしまう。。

Wi-Fiのみに頼る 旅の不便さである。

その後、念のため、先に自転車を返しに行くことにした。貸し自転車屋から博物館へは、歩いて十分もかからないからだ。

さっき来た道を、スイーっと戻っていく。

貸し自転車屋には、すぐに着いた。

自転車を返すと、無事に40ドルが還ってきた。元は自分のお金だが、何か得したような気分になる 笑

急にお金持ちになり、気が大きくなった僕は川へ向かった。夕日に照らされるトンレサップ川を見たかったのだ。そして、川の土手に出ると奇跡が起こった!!

 

薄い夕焼けに染まろうとしている川の向こうに、見たこともない程 "大きな虹" がかかっていたのだ。

こんな、はっきりとした大きな虹は、人生で初めて見た…。

うっすらと 夕陽に染められた川の向こうにかかる虹を見た僕は、プノンペンの最後の夕方に、この街に大きなギフトを貰った気がした。

それを見た僕は、この街をようやく離れる決心がついた。実は、もう二日ほど予定を伸ばそうかな?と迷っていたからだ。

気儘な 一人旅だ。国内移動の飛行機のチケット代は安い。最悪それを捨てて、また取り直せばいい。

だが、この風景を見て僕は、ようやく旅立つ決意が固まった。心から思ったのだ、

 もう充分だ。色々経験させて貰ったな。 と。

ちゃんと、その国や、土地に敬意を持って行動していると、こう言う思わぬギフトを貰えることがある。僕はしばらく、夕日と川の向こうに架かる虹を眺めていた。

次第に夕陽が全てを染めて行き、虹はゆっくりと消えていく。。そして、やがて夕闇となる。

その美しい景色に感謝しながら、僕は博物館へと向かった。

ゆっくりと、先程の景色を噛み締めながら歩いていくと、すぐに国立博物館についた。

入り口では、ショウを見に来たであろう、お客さんがちらほら来ていた。

入り口のスタッフにチケットを見せると、通してくれる。一番安いチケットなので、前から7列目くらいの後ろの席だったが、前の席とも段差がしっかりあり、見やすい!

真ん中の席で見る。周りは人がいないのでゆったりだ。

皆、値段の高い 前の席を買っているようだ 笑

カンボジアの民族舞踊なのだろうが、初めて見る。前に見たことがある、タイ舞踊に似ている。衣装も音楽もアジア的で非常に良い。

神話から題材をとったであろう神と神の戦いを描いた、男性二人の軽業の殺陣のような舞踏も見ごたえがあったし、昆虫の着ぐるみで皆が踊るコミカルな出し物も、大いに楽しめた。

しかし最大の見どころは、主役の女性が真ん中で、舞踏の民族衣装を着て踊るスタンダードなプログラムだった。女性らしい柔らかな美しさが指先まで 表現されていて、その踊り子さんに、何か ”神秘的なもの” が宿っていて素晴らしかった。

僕は大満足して、大きな拍手を送っていた。

 やはり見に来て良かった!素晴らしかった!!

僕は大満足し、劇場から出た。いったん宿に帰り、高田さんのメールを確認したが、皆もう食事は済ませたとの事だった。これから皆で、露天風呂に入るという。

僕は食事をとりたかったので それは断り、少し北上し パブストリートまで行くことにした。

 " 呑んべぇの勘が働いていたからだ "

プノンペンを2日周って 思った事は、とにかく 色々と緩い という事である。

たぶん、外国人向けのパブストリートなら、お酒を出している店もあるだろうと思ったのである。

パブストリートに着くと、案の定、すでに先人たちがビールを片手に盛り上がっている。

 やはりな!!さすがカンボジアだ!

と思いながらも少し笑ってしまう。

 

僕はこの前と違う角のパブに入り、テラス席でゆっくりビールを飲むことにした。

ツマミは、少し値は張るが、4ドルのハンバーガーセットにする。うまそうなチーズバーガーをメニューで見つけたからだ。

なにせ、40ドルを持つ僕は今 金持ちだ 笑

キンキンに冷えたドラフトビールを飲みながら

(きっと今、家で呑んじゃってるんだろうなぁ

 カンボジアの人達。。)

と思いながら、禁酒の日にお酒を飲める幸せに 浸りながら、僕は 今日の出来事を思い出し、

明日旅立つ プノンペンの最後の夜を満喫していた。

 

続く


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プノンペン最後の日

     この土地からの贈り物。

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↑ 素晴らしいカンボジアのショウ!

 

 

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