猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

遺跡の人々

 

第78話

遺跡の人々

 

名も知らぬ遺跡へのアプローチは続く。

だが、すぐに 次の遺跡に着く。

さすが ”スモールツアー” だ。

 

(ギュッと近場で周るんだなぁ。)

と思いながら、座っていると、トゥクトゥクはこじんまりとした遺跡の前で止まった。

ジェイクに説明され、遺跡へと促される。

だが 門をくぐろうとすると、相変わらず 厳しいチェックがある。

係員が厳しい顔つきで、顔写真までじっくり見て、通してくれる。

ひょいと 通ろうとした観光客が、厳しく呼び止められる。

(ここは本当に。。

 あのユルいカンボジアなのだろうか?)

と改めて感じる。

遺跡でのパスチェックでは、一切笑いが通用しないようだ。

 

ここでは、アンコール・トムの南門を小さくしたような、バイヨン寺院にある様な 人の顔がついた門があり、バイヨンに行けなかった僕は、テンションが上がった。

どこの遺跡も、入り口の 駐車場の一部のスペースでは、観光客向けなのか、パラソルの下で 服やお土産、飲み物を売る人たちがいる。

もう一つ驚いたのは、遺跡の中の ちょっと開けたところにも、服などをハンガーラックに掛けた、簡易の出店があった事だ。

その横では、少女たちが遊んでいる。

遺跡の少女たちは、僕ら観光客を見つけると 声をかけてくる。

首から下げた箱の中から、ポストカードを取り出して、

「ワン、トゥ、スリー フォー、

 ファイブ シックス、セブン エイト

 ナイン、テン。 ワンダラー!」

と、10枚で一組のポストカードを、わざわざ一枚ずつ数えて見せ、

最後に ”これで1ドルだよ!”  と言ってくる。

僕は、ポストカードはマレーシアで買ったものが まだ数枚あったので、

「ノー サンキュー」と首を振ると、気にした様子もなく、遊びに戻っていく。昼に降った雨でできた水溜まりで色々遊んでいるようだ。

どうやら、服を売っている出店の女性たちが、少女達の母親のようだ。

少女たちにとっては、遺跡が遊び場であり、公園であり、仕事場のようだ。

彼女たちは、来る観光客に、

必ず一回、この 「ワンダラー」 の呪文を唱え、その後はすぐに遊びに戻っていく。そんな彼女たちが遺跡と不思議に調和し、

初めて来た 縁もゆかりもない遺跡に、何か親しみを感じさせてくれるから不思議だ。

そして、遺跡の中にも、警備員風の係の人はいる。

その中の1人のおじさんは中々面白かった。

写真のスポットを教えてくれているつもりなのか、僕を見るなり いきなり手招きをし、

「ついて来い!!よし!ここを撮れ!

 次はここだ!!こっちだ!こっちへ来い!

 そうだ、とりまくれ!!そこだ!!

 今度はこっちだ!走れ!!

 ここだ!!ここを撮れ!撮るんだ!!」

と言って、遺跡素人の僕をアテンドしてくれて、よくわからない写真ポイント をいっぱい教えてくれた。そして最後に満を辞して!

「よし!!チップをくれ!!!」

と凄いテンポのコンボで言ってきた 笑

僕もそのテンポに併せて神速の切り返しで

「なんでだよ !?

   どうも ありがとうございました!!」

と断った。  もはや "遺跡漫才" である。

本当に遺跡には 色々な人がいるものだ。

そしてその人たちとのやりとりはとても楽しい。

彼らのおかげで、数百年前の王朝の遺物に、現代も 血が通っている気がした。

遺跡には猫も住んでいる。子猫が「あそんで~」と話しかけてくる。

首にかけているタオルを外して ジャラシて遊んでやる。猫はここカンボジアでも可愛い。

僕にとっての遺跡周りは、人や、動物との触れ合いでもあるようだ。

僕は僕なりの遺跡の周り方を堪能し、次の遺跡へジェイクにアテンドしてもらう。

つぎは赤茶色の平場の遺跡であまり面白くはなかったが、一通り周った。

その次は、階段が本当に急な、ある程度筋力とバランス感覚がないと上がれない程、急な階段を上らないといけない遺跡。

中国系の 少し年配の女性観光客の一人は、途中で上がれなくなり、周りの人達に引き上げて貰っていた。 降りる時も大変だろう。。

しかし、僕にとっても こんな急な階段は 人生初だった。遺跡保存の為か 手すりすらない。

子供の頃よく落ちる夢を見た。そんな夢の中でしか昇ったことの無いような 落下の恐怖を感じる階段である。

本当に急な所は 階段に手を着きながら四つん這いになって登る。

僕のイメージでは、遺跡はすべて

平地で見るものという感じがあったが、この高台に上り、イメージは一変した。

シェムリアップの観光は若い内に行った方がいい」と言われる理由が 何となく解った。

炎天下の下、ひたすら自分の足腰で遺跡を周り、そして中には日本では経験したことも無いような 急な階段や段差を 昇り、下る。

登山にも似ているかもしれない… とにかく体力勝負になるからだ。

だが、頑張って登った遺跡の高台から眺める景色は、また素晴らしい。

アンコールワット」も

森の中の ”木々に埋もれていた” と聴いたことがあるが、ここの遺跡の向こうも、森になっている。森の中に遺跡があるのだ。

後で調べるとここは、夕陽スポットでもあったようだ。

 

午後から周るという強硬スケジュールの割には、結構遺跡も周れ、充分楽しめた。

暗くなり、僕は 大満足で宿へと帰った。

遺跡はライトアップなどされていないので、陽のあるうちに周らなければいけない という初歩的な事も、この初日に学んだ。

宿に帰ると、さっそく店主と打ち合わせをする。

日程を決め、どこに行くかを話し合った。

僕の遺跡パスはあと二日分しかないので、しっかりと話し合う。

僕は明日 明後日で周って、最悪まだ行きたいところがあったら、一日だけパスを買い足す事を考えていたが、彼の組んでくれたスケジュールで、行きたいところは ほぼ周れそうだった。

…少し強行軍ではあるが。

 

明日は「ベンメリア」に行くことに決まった。

この遺跡は、僕に「深夜特急」を勧め、アジアへの旅まで勧めてくれた、旅好きの 俳優であり友人が、出発直前に相談すると、

これまた「絶対に行った方がいい」と勧めてくれていた場所だ。

僕は宮崎駿さんの作品で一番好きなのは

「天空の城 ラピュタ」である。

年中さんの時に 幼稚園で見たこの冒険活劇は、僕の役者人生にも少なからず影響している。

この「ベンメリア」遺跡は、

 ラピュタの舞台なのでは。。?

まことしやかに言われている遺跡なのだ。

ぼくはここでパズーごっこをすると決めていた。なので、二日目に回ることにしたのだ。

店主が言うには、この遺跡は郊外のかなり離れたところにあるらしい、ほぼ一日潰れるし 割高との事だったが、僕は迷いなくこのツアーを組んだ。

三日目はアンコールワットや、バイヨンを周る

「ビッグツアー」 なるものに行くことにする。

 良し! これで安心だ!!

と僕は例のごとく、くたびれた身体と、乾いた喉を潤す為に、夜遊びに出かけることにした。

 

続く

 

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↑ 遺跡の仔猫さん 人懐っこい☺️


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↑ 遺跡にいる ワンダラー な、元気一杯の子供たち


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↑ あとから調べたところこの3つ目の遺跡は

 「タ•ソム」と言う遺跡のようだった。


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↑ おそらく「東メボン」遺跡かと 笑


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↑ 凄い角度の遺跡である
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↑ たぶん 「プレループ寺院」だと思う。。

 本当にどこを周っているのかが

 判らなかった 笑

 

 

次話

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