猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

天空の城ラピュタへ

 

第81話

天空の城ラピュタ

 

遺跡の旅は続く…。

そしてついに僕は 「ラピュタ」へと向かっている。 龍の巣に気をつけなければ!! 

 

相変わらず素晴らしく気持ちのいい景色を見ながら、トゥクトゥクは、赤茶けた大地と道を走っていく。

僕は空の向こうに見える入道雲を「龍の巣」と勝手に決めつけた。

 

途中に小学校があり、制服を着た可愛らしい子供達が遊んでいた。僕に気付いた子供達は手を振ってくれる。昼休みなのだろうか?

 

なぜだか、カンボジアの子供達は、とても生き生きとしていて、見ているだけで嬉しくなる。

 

僕は カンボジアがどんどん好きになっていた。

 

そして、いよいよトゥクトゥクは ベンメリアの駐車場に到着した。

トゥクトゥクを降りると、珍しくジェイクが付いて来た。

途中、橋のような、石の建築物を指差して

「この長いのは、蛇の神様なんだよ。

 ほら、ずーっといくと、蛇の顔だろ」

と教えてくれる。確か「ナーガ神」と言っていた。

遺跡の入り口には結構あるらしい。

(珍しくガイドしてくれてるな。。)

と思いながら、入り口から ベンメリア遺跡の外壁に着くと、そこはもう素晴らしい…!

外壁にも、瓦礫のように崩れて積み上がった石達にも、綺麗なエメラルドの苔が生え、本当に美しかった。

「あ、ラピュタだ。ここ、絶対ラピュタ

 ラピュタラピュタ。 はい。決まり!!」

と 僕はもう、ここを「天空の城 ラピュタ」だと確信した。

それくらいラピュタだったのだ!! 笑

好きすぎて、作品を何回も見過ぎているせいで、頭の中には勝手に

「ウルとは王!

 君はラピュタの正統な後継者なのだよ!!」

と言うムスカの声が響く。。

 もはや病気だ!! 笑

そんな様子のおかしい僕にジェイクが話しかけてくる。

「よし!!遺跡をバックに、

 写真を撮ってあげるよ!」

と。

 (???…今日はジェイクはどうしたんだろ?

  いつもならこんなサービスは無いのに…)

と不思議に思いながら、苔に覆われた、巨大な豆腐のような四角い石の瓦礫の間から生える、信じられないほどの巨大な木と一緒に写真を撮ってもらった。

日本でもみた事がない巨木だった。。

まだ遺跡の外なのに 恐るべき神秘性である。

そして、写真を何枚か撮ってくれたジェイクが

「さぁ、行こうか?」

と言ってきた。

 んん?? どこへ??

と聞くと、なんと!ここはジェイクも中に一緒に入れると言う。

初めて一緒に周ってくれると言うのだ。

 これはかなり嬉しい!!

遺跡では、見ず知らず同士で「フォトプリーズ」と声をかけて写真を撮り合うか、自撮りするしかない。

周りに人がいないと、写真を撮ってもらえない為、自撮りばかりになる。

そうすると、カメラロールが自撮り写真ばかりになり、後で眺めると 自分がとんでもないナルシストに思えてくるのだ! 笑

なので連れがいると、本当にありがたいのである。

(現在は 遺跡パスが無いと入れないらしいが

 2017年当時、入場料は一律5$だったので

 ジェイクも自腹で一緒に来てくれたようだ。

 何より ジェイク自身が一緒に楽しんでいた 笑)

そして、外壁から遺跡の内部入ると

さらにとてつもなくラピュタだ!!

またしても 脳内に

 

ラピュタは本当にあったんだ!!

 父さんは嘘つきなんかじゃ無かった!!」

 

と言うパズーの声が響いた。。

(うんうん。。あったよ。。

 良かったね。パズー。。)

と僕は勝手に涙ぐんでいた。

はたから見たらヤバいやつだが、ジェイクは何も頓着せずに自撮り棒を装備し、写真を撮ろうと言ってくる。

ラピュタ ラピュタと 少し煩いと思われるだろうが、仕方がない。もう… 語彙が無くなるくらい ラピュタだったのだ。

木の根と 蔓と、美しい苔で覆われた遺跡。

崩れた四角い石の瓦礫たち。。それらは美しい緑で統一され、何よりここは他の遺跡と違い、静かだ。。

周りには観光客は1人もおらず、ジェイクと僕だけなので、ゆったりそれらを堪能できる。

静寂の中に、鳥の声がし、本当に現実とは思えない遺跡だ。

そこをゆったりと歩いて周る、どこを見ても素晴らしい景観だ。

 

この 案外広い遺跡は、他の遺跡と違い、廃墟感が凄く 直に地上は歩けない。

木で組まれた手すり付きの通路で、遺跡の上を周るのだ。そんな所も ”天空” である。

木の廊下の下は石の瓦礫の山ばかりなので、もし、地上を無理やり歩くとなると、海にあるテトラポットを飛び移るような 危険な移動方法になってしまうだろう。まぁ、地上は立ち入り禁止なので、そんな事は出来ないのだが。。

 

壁沿いに続く木の廊下を行くと、角のところに、いかにも上に登って行けそうな木が、壁に張り付いている。

僕はジェイクにiPhoneを渡して「撮ってくれ」とお願いする。

 

そう!  僕はここを上り、シータを助けに行くことにしたのだ!!

 「シータぁぁあ!!」

と叫びながら僕は この遺跡の壁を、木にしがみつき、凄い勢いで登っていく!!

蔓も掴み、ぐんぐん登っていく!!!

 

 

 

 

 

…フリをした。

 本当に登ったら、迷惑だし、

 遺跡も痛むし、怒られちゃうからね。 と。

僕は パズーごっこに大満足し、ジェイクに携帯を返して貰った。

ジェイクは「何やってんの?」と笑っていた。

からしたら、ただ木を登るフリをする 変わった日本人にしか見えなかっただろう。

 

そんなこんなで、僕はこの遺跡を大いに楽しんでいた。

 

少し開けたところで、蔓が木から垂れ下がっている所にベンチがあったので、はしゃぎ過ぎた僕は休憩がてら、少し座って休みながら 壁面をボォーッと眺めていた。

 

すると 遺跡の壁の向こうから、四角い窓のような所を潜り、急に子供が現れた!

本当にびっくりした! 立ち入り禁止区域のさらに先の、絶対に人が出て来ないような所から、子供がヒョイと出て来たからだ。

しかも5人が 続々とだ。

子供たちは猿のようにすいすいと、壁から木をつたい、木の廊下に乗り移り、ベンチまで来た。

 ぱ、パズーだ…、パズーがいっぱい出てきた!

と、僕は頭が少し混乱していた。

ラピュタ遺跡と、そこをひょいひょいとアニメのような軽業で移動してくる少年を見て、僕は本当にそう思っていた。

そしてそんな彼らは、僕を見ている。

よくよく見ると、なかなかやんちゃそうな子達だ。

 パズーというより…

 未来少年のコナンに近いのかな?

と思いながら、彼らのボスらしい子に

「写真を撮らせてもらって良いか?」

ジェスチャーで聞くと 頷いてくれた。

撮った後で手を出されて「お金ちょうだい」と言われたので、彼らはやはり コナンの方だった 笑

僕はそれを 例の如くやんわり断った。

声のトーンから、とりあえず観光客にダメ元でねだってみてるだけだと判ったからだ。

なので、これは挨拶みたいなものだ。

断っても、まったく向こうも気にしない。

5人とも僕に興味を持ち、話しかけてくる。 

 

 どこからきたの?

 

 日本、わかる? ジャパン?

 

 ふぅん、そうなんだぁ。

 

 いつも遺跡にいるの?

 

 いつもここで遊んでるよー。

 

 家は近いの?

 

 うん。みんな近いよー。

 

と、ほとんどジェスチャーで会話する。

 

しばらくすると彼らは僕に飽きたのか、また遺跡の壁の奥へ消えていった。

 

僕はしばらくその壁を ボォーッと眺めていた。

ちょっと今の出来事が現実にあった事なのか、あまりに不思議な事だったので、少し浮き足立っていた。

 夢でも見たのだろうか…? と。

しかし、写真を見ると明らかに元気な男の子達が映っていたので、紛れもない現実だ。

少し考えてみた。

きっと彼らにとっては、この遺跡は秘密基地のような、格好の遊び場なのだろう。

確かに 子供時代に、近所にこんな所があったら、僕も忍び込んで遊んでいるに違いない 笑

きっと、彼らしか知らない、秘密の抜け道があるのだろうし、ここは珍しく中に、警備員は一人もいないし、たぶん彼らに見つかっても、地元の少年なので「コイツら、しょうがないなぁ」位で済んでしまうのだろう。

僕は、少しだけ、シェムリアップという遺跡の街を捉えた気がした。

戻ってきたジェイクと写真を撮り合い。

僕らは壁の外に出た。

壁の外にも色々瓦礫や、石の祭壇があって飽きない。

ここで、僕はジェイクに聞きたい事があったので聞いてみた。

「遺跡をちょっと外れて、あまり人が立ち入らなさそうな所は、まだ地雷があったりするの?」と。

するとジェイクは

 観光客の、君の行くようなところには

 地雷はもう無いよ。

 よっぽどの田舎の奥に入らなければ大丈夫だ。

 マサミは心配しすぎ。

と 笑いながら教えてくれた。

 

その後、ひと通り回った僕らは、遺跡の入り口に戻ってきた。

二人ともゆったりとした気持ちで話していると、野良牛が歩いてきた。

するとジェイクは、落ちていた蔓を拾い、足元をパシパシと叩き、牛を誘導し始めた。本当に慣れた手つきだった。

 うちは、実家が牛飼いなんだ。

とジェイクは教えてくれた。

子供の頃から牛の世話をしていたが、兄が先にトゥクトゥクのドライバーになって、

しばらく稼いだのち、フリースクール(ここでは無料の学校)で英語を学んでいた弟のジェイクも誘ってくれたので、彼はトゥクトゥクドライバーになれたのだと言う。

 僕は牛飼いが嫌で 英語を勉強したんだ。

と、少し遠い目をしながら話すジェイクからは、この発展途上の国で、自分の力で成り上がろうとする意志と野心を感じた。

外国の若者と親しくなり、話を聞くと、本当に色々考えさせられるし、感じることが多い。

僕は、彼とこういう話ができる機会があって、本当に嬉しかった。

彼とはどんどん仲が良くなっている。

彼も僕が気に入ってくれているようで

 お客と一緒にベンメリア周るのは

 滅多にしないんだ。

とも言ってくれていた。

僕は、俳優のくせで

 今日、終わったら飲みに行こうか?

 近くの地元パブストリート辺りに。

と誘うと、ジェイクは嬉しそうに、

 OK 行こう!

 仕事が終わったらすぐ連絡するよ!

 俺のオススメのお店に行こう!

と言い、僕の

 高いお店はやだよ?

と言う心配を

 大丈夫、安くて良い店だから!

と笑いとばしていた。

 

そして僕らは再びトゥクトゥクに戻り、昼食へと向かった。

 

続く

 

ラピュタ 動画

https://m.youtube.com/watch?v=gt9-Hx9SznI

 

 

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↑ 「龍の巣」である

 

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ラピュタへの入り口付近

 

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↑ 静謐な空間の ラピュタ内部

 

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↑ シータを助けに!!


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↑ 壁から現れた パズーたち

 

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↑ ジェイクと僕

 

 

次話

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