猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

知らない遺跡の事は 右から左へ受け流す

 

ジェイクに急かされて乗ったトゥクトゥクは、アンコール・トムの南大門を抜けてすぐ、

予想通り、次の駐車場に "すぐに" 着いた

 

ここはアンコール・トム内部の大きな駐車場で、ここにバイヨン寺院があるはずだ。

そして空は、雲はあるが、いつの間にか晴れ渡っている。  天高く ピーカンである。

 

駐車場には、沢山のトゥクトゥクが止まっている。今朝のアンコール・ワットで起きた、

 "My トゥクトゥク探し" が面倒だった僕は、ジェイクにどこに駐車するのかを聞いてから、説明を受ける事にした。

ジェイクは木陰を指さし

「あそこに停めて待っている」

と教えてくれた。

 

「あそこがバイヨンで、あそこが象のテラスで…」

と簡易の地図を見せながら、方向を指差して説明してくれた。

知らない遺跡の名前や説明は、よく分からないので、いつも通り 右から左に聞き流した。 

この三日間の遺跡周りで得た技術だ。

「行けばわかるさ!」と 平然と聴き流す。

完全には理解できなかったが、バイヨン寺院の他にも、2つか3つ、遺跡を回るらしい。

更に、王のテラスと、最後の遺跡の「パッキン」だけ聞き取れた。

「では、2時間半後にここで会おう」

と言われた僕は

  ええーっ!? に、二時間はん…!?

  そんなに! この炎天下をまわるの???

と その数字に仰天した。

そして木陰に移動していくトゥクトゥクを見ながら

(人が炎天下でヒイヒイ言っている横で、

 ジェイクの奴…木陰でゆったり昼寝か。。)

と逆恨みに近いが…  

”炎天下を 二時間半周ってこい” と言われて、僕はかなり恨めしい気持ちになっていた。

というか、正直に言うと、若干殺意を覚えた…

まぁ、冷静に考えると彼は何にも悪くないのにである。

きっと僕は 相当疲れていたのだろう。。

 

そんな僕は、最初は「バイヨン寺院」に向かった。

この 「キン肉マン」の阿修羅マンのような、四方に顔がついている仏頭だらけの遺跡は、何故か僕を惹きつけてやまない。

いや、アシュラマンより顔が一つ多いので、バイヨンマンの方が強いだろう!

 

着いてみると、バイヨン遺跡も 登る遺跡だったが、さっき登った「タ・ケウ」よりは 急では無い。

登っていくと

 顔 顔 顔 顔 顔 顔! かおーーー!!!!

そう。正に顔だらけである!!

仏頭の四方、東西南北の方向すべてに顔がついている。

しかも 仏様なので、皆 いいお顔をされている。

僕は旅の疲れが吹っ飛ぶくらい癒されていた。

観光客も多く、今まであった遺跡の中で、一番人がいた。

僕はそこら辺の人を捕まえては、写真を撮ってもらっていた。珍しく日本人も結構見かけた。

 

日は高く登り、曇ったり晴れたりを繰り返しているが、僕は頭がぼーっとしてきた。。

(あれ? …これ..ちょっと危ないなぁ。。)と思い、あまり日陰もないので、もう下へ降りる事にした。

少しふらつきながら下に降りると、何故か どデカいガチョウが何匹もいる。。さらに、さっきまでなかった、トレーラー式のカフェまである。。

 

 あれ? ここはどこ?

 暑さでおかしくなったのかしら?

 

と思いながら、カフェに近づくと、紛れもなく現実であった。

時計を見ると、まだ2時間ある。

僕はここで こんな事を思っていた。

(ヘッヘッヘっ。 ジェイクの奴…

 俺が、2時間半の全てを

 真面目に 遺跡だけ周ると思うなよ。

 遺跡なんぞ ガツガツ廻らずに、

 カフェで 1時間くらいゆったりしてやる!

 ヒャッハー!  ザマアミロっ!!)   と。

どうやら 暑さと疲れで僕は、完全におかしくなっていたようだ。。

僕は日陰で、業務用の扇風機の冷風が当たる場所の席に着き、冷たいコーヒーを頼んだ。

 

 あぁ、、やっと座れた。。

 

とお爺さんのようになった僕は、心の底からホッとしていた。

コーヒーを待つ間に、おばあさんが近づいてきた。少し腰の曲がった、細身のおばあさんだ。

(今日は おばあ様をよく見る日だな…)

プノンペンでは ほぼ見かけなかったご老人によく会う事が、新鮮ではあった。

おばあさんは、結構大きめの網(日本で言うとミカンが入っているような網の巨大な奴)にマンゴーらしき果物を15個程入れていて、

僕に「マンゴー要らないかい?」と話しかけてきた。もちろん言葉は通じないのだが、脳内テレパシーで、言っていることはわかる。

前に書いた通り、僕はフルーツが苦手だ。。

「ごめんね、おばあさん。

 俺、フルーツはね、要らないや。。」

と言うと

「そう、美味しいんだけどね?

 まぁ、じゃあ、わかったよ。」

と、言って少し離れたところで、また他の観光客に、控えめに声をかけ始めた。

押し付けがましくない(どう?美味しいのよ?)という、のんびりとしたお商売で、見ていて好感が持てた。

彼女が炎天下で頑張っているのを見て

「偉いなぁ。。」とは思うが、食べない物を買ってもしょうがない。

やがて店員が持ってきてくれたアイスコーヒーを飲みながら、おばあさんを眺めていると、少しすると、こっちにまた向かってきた。

このカフェは、今 僕しかいない。

(また、売りに来るのかなぁ。。)

と少し困っていると、おばあさんと目があった。おばあさんはそれが解ったのか

(違う、違う 笑)と手を振ったかと思うと、

僕の席の目の前の、店の扇風機の前に座り、ニカッと笑って、

「ここ涼しいからさ。」

と最高の笑顔で、後ろの扇風機を親指で指さしながら、教えてくれた。

僕は笑ってしまい

(そっかぁ!!そうだよね。暑いもんね 笑)

と笑い返す。

おばあさんと 不思議な交流が生まれ、休憩するおばあさんと2人で、素敵な時間を過ごした。

それにしても、今日の僕は  "おばあさんづいている"  面白くて、素敵なおばあ様達に すでに3人もお会いしている。

僕は彼女達との交流で、ますますカンボジアが大好きになっていた。

また、お店はと言うと、別にお客ではないおばあさんが涼んでようが、一切頓着しない。

こう言うところもアジアの良いところだ。

日本ではあまり見られない光景で、ほっこりする。こういう東南アジアのおおらかさは、いつも僕を優しい気持ちにさせてくれる。

僕は冷たいコーヒーと、おばあさんのおかげで、謎の恨めしい気持ちから解放されて、ゆったりとこのカフェで、小一時間を過ごした。

 

大分体力が回復した僕は、他の遺跡も見ておこうと、お店を出た。

次はバイヨンから見て左手前の、西北の方向に向かう。

歩いてすぐに遺跡への門が見えた。

門を入ると細長い橋のような参道がある。この参道も良くある造りで、左右の地面から高く造って有る。(元々左右は池か何かだったのだろうか?)とここに来てそう ふッと思った。

遺跡は緩いピラミッド型の 結構な高台で、正面から見ると、一番上には、長方形の石で出来た大きな窓のような、吹き抜けたドアのような枠があり、その向こうには空が見える。

何かワクワクしてくる遺跡だ。

僕は長い参道をやっと抜け、遺跡に登り始めた。ここは、階段が頂上まで と言う作りではなく、直登はできない。

遺跡をぐるりと周りながら上がっていく。

日本の城の、攻められた時に、すぐに本丸まで来れない造りと似ている。

ぐるぐる周りながら行くと、最後に回廊を抜けて、やっと頂上まで着いた。。

 

遺跡の一番上は圧巻だった。

正面から見えた窓枠は、

(あのゲートをくぐると ひょっとしたら

 異世界に行けるんじゃ無い?)

とさえ思う、神秘的な造りだった。

開きっぱなしの「どこでもドア」に見える。

 

僕はこの素晴らしい場所で、記念写真を撮りたくなった。

が、周りに人は誰もいない。。

 

とりあえず頂上を周りながら、誰かが上がってこないか、少し待つ事にした。

 

しばらく周っていると、ちょうど人が上がってきた。その人は、炎天下の遺跡周りが堪えたのか、元は白かったであろう顔を真っ赤にし、まるで、赤鬼のようである。 …それも瀕死の。

「ハァ、ハァ、ハァ。。

 はぁ。。はぁあ、ハァ…」

と手を膝につき、下を向き、息も絶え絶えで、肩で息をしている。

 

そんな死にかけている彼を見ても、僕はあまり驚いてはいなかった。。

何故なら (やはりそうなったか。。)

と思っていたからである。

そう、彼は一つ前の遺跡の「タ・ケウ」に行く途中で見かけた、自転車を必死にこいでいた白人男性だったからだ。

自転車で、体力を削り倒したあとに、さらにこの大回りで登らなければいけない遺跡は、かなり辛かったはずである。。

 

とりあえず、その若者が落ち着くまで、僕は冷静にその光景を眺めていた。

少し落ち着いたかな? と思ったところで、

「写真を撮ってくれない?」

と声をかけた。

 ちょっ、ちょ。。ちょっと…

 かっ、かはっ… まっ、まって。。ね…。

と、まだ下を向いている。

 

僕は彼が落ち着くまでさらに待つ事にした。

彼は遺跡の石に手をかけて

「ハァハァ げほげほ」と言っている。

 

 ふぅーふぅー、ふうぅう。。

 

となった所で「良いかなあ?」と聞いた。

少し残酷だが、彼しか上がってこないので、もう彼に頼むしか無い。

とりあえず、買っていた、まだ口をつけていない水をあげた。

彼はそれを「サンキューぅ」と言いながら飲んで、やっと震える手で、僕のiPhone7を受け取ってくれた。

ちゃんとポーズをとり、笑顔の僕を、彼は最後の力を振り絞って、撮ってくれる。

とにかく良い人だ。

僕がお礼に「君の写真も撮るよ?」と言うと、

 ぁ、ぁあ。。、それは、。

 いいかな。。いぃよ。。

 だ、ダイジョウブ。。

と、力尽きたように、遠慮された。

 

僕はそんな彼の肩を「ご苦労様」と、優しく叩いてから、遺跡を降りた。

 

まるで、パラレルワールドに迷い込んだ自分を見ているようだった。

もし!? 自分が自転車で回っていたら、こうなっているんだよ!!

と、見せつけられたようで、少し背筋が冷たくなった。

 

だが僕は、賢明にもトゥクトゥクを選び、今まだ力尽きずに遺跡を周れている。

 

天啓を受けたかのように、

 僕にはまだ、周れる体力があるんだ。

 こんなに嬉しい事は無い。。

と僕は、アンコールトムを周りきろうと、次の遺跡へと歩き出した。

 

 

続く

 

 

 

 

 

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↑ いざ!アンコール・トムへ!!

 


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↑ デカすぎるガチョウたち。。


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↑ 「どこでもドア」 の "パブーオン"