第76話
究極のガソリンスタンド
早速ジェイクに乗せてもらって、遺跡に向かう。「スモール ツアー」とやらに出発である!
市街を抜けると、ジェイクのトゥクトゥクは、またしても一本道をひた走る。
いきなり遺跡には行かない。その理由は、ある場所に着いて ジェイクに説明されて分かった。
最初に着いたのは郊外にある、オフィスだった。実はカンボジアの遺跡は、遊園地の様に
「入場券がないと入れない」というのだ!!
びっくりしたのだが、まず、管理オフィスに行き、一日パスか、3日間パスか、7日間パスかを選び 買う。
パスがあれば、その一日は、だいたいどこの遺跡へも入れるらしい。
日本も、奈良や京都の有名なお寺などは、入場料を取るので、似た様なものだろうと思うが…しかし「1日パスポート」とは、なかなか ワクワクさせてくれる 笑
受付の若い女性に聞いてみた。
「大体みんな 何日のパスを買うのか?」と
すると「3日間パス」が一番売れているらしい。
僕はシェムリアップにいるのは5泊6日の予定だ。迷わず「3日間パス」を買う事にした。
値段は、三日間で ”62$” とかなり高い。。しかし、この街に来て遺跡を周らなければ、シェムリアップに来た意味自体が無くなる 笑
(きっとこのお金もビザと一緒で、
この国の大事な収入源なのだろうな)
と思いながら お金を払うと、受付の窓口の 横に置いてあるカメラで、パス用の顔写真を撮ってくれる。
顔写真を撮って、パスポート並みの本人確認をする所を見ると、どうやら遺跡を周る パスの管理は、かなり厳重なようだ。
パスを見ると、有効期限は10日間で、その期間内で 任意の3日を周れるらしい。
僕は出来上がるまで 暫く横にずれて待ち、やがて出来上がった、僕の顔写真入りの紙のパスを、パスポートのコピーを入れていた、パスポートケースに入れた。
ジェイクと共に、再びトゥクトゥクに乗り込み走り出す。
ついに僕は いま遺跡に向かっているのだ!
とテンションが上がる!
ところが、そんな僕に水を差すように、ジェイクが「ガソリンを入れたい」と言ってきた。
こちらは「OK」と言うしかない…が、前のドライバーさんもそうだが
”仕事の前にガソリンをちゃんと入れておく”
という日本では当たり前のことはしないらしい。カンボジアらしいといえばそれまでだが 笑
そしていざ "ガソリンスタンド" に着いて、僕は…目が点になった。。
それは道端にあった。
道のすぐ横に、鉄の陳列棚があり、そこには薄茶色に煤けた ペットボトルや瓶が並べられ、中身は何かの透明な液体が入っている。。?!
そうなのだ!!
ここは 個人経営の、ペットボトルや瓶の中のガソリンを給油する 小さなガソリンスタンドなのだ!!
「ガソリンは気化しやすいので、密閉性の高い、専用の容器で保管してください!」
と ガソリン不足の東日本大震災の時に、さんざんテレビで注意喚起されていたことを思い出しながら。。
マジか。。ヤバすぎでしょうこの保管方法。。
と衝撃を受ける。
しかもここは40℃越えのカンボジアである。さすがに パラソルで直射日光は当たらないようにしているが、、気休めにしか感じない。。
しかも売っているのは若い母親だ。
そう、母親だと分かったのだ…。理由はお分かりだと思うが、ガソリンのすぐ側には、小学校の低学年であろう可愛らしい娘さんも居たからである!!
あっぶなくない??!! えええ??!!
えーと。。 これは現実なの??
と僕は固まっていた。
そんな僕をしり目に、ジェイクは にこやかに談笑しながら給油を頼んでいる。
ペットボトルから バイクの給油口に
「ドッポ トッポポ 」とガソリンが注がれていく。。
そして、なんとすぐ向かいを、咥え煙草のおっさんのスクーターが走っていく!?
あ、危なすぎるだろう!! あ、あっぶねぇ!
ガソリンは揮発性が高いので
「結構離れていても密閉されてなければ引火する」とテレビで言っていたのを思い出す…。
日本の消防局員や、児童相談所の人が見かけたら卒倒しそうな光景である。
この出来事は、僕にとっては この旅に出てからの中でも、一番の衝撃だった。
給油が終わり、トゥクトゥクは再び走り出した。
しばらく走っている間に、僕はさっきの出来事から受けた衝撃を 頭の中で整理していた。
一体なぜあのような「G.S.」が
誕生したのだろうか…? うーむ。。
確かにプノンペンで見た、
「ちゃんとしたガソリンスタンド」を作ろうとすると、相当なお金がかかるし、実際は数軒あるのだろうが、ここシェムリアップでは そこまで行くのに相当距離があるのだと思う。
なので、このような ”ガソリン売店” が出来るのも生活の知恵なのだろう。
きっと、営業するうちに受け継がれてきた、実体験や経験で
「ここまではやっても引火しないみたいだよ?」
という実地の営業で、ガソリンを管理をしているのだろう。
何にせよ、僕はアンコールワットに行く前に、人生が変わるような衝撃を体験してしまった。。
さすが神秘の街 シェムリアップである 笑
トゥクトゥクはそのまま順調に走り、元来た道を戻って行く。
やがて、石で出来た 遺跡の門の前についた。門には人(仏様?)の顔が付いている。
ジェイクに、「アンコール・トムの南門だ」
と説明されて、携帯で記念撮影をしてもらう。
何枚か撮ってもらい、そしてトゥクトゥクに乗り込む。
そのまま中の「バイヨン寺院」に行くのかと思いきや、トゥクトゥクは、Uターンして走り出した。
一応バイヨンは知っていて、楽しみにしていたのだが…
「今日はここには行かない」とジェイクに言われる。
残念だが、今日の「スモールツアー」には、バイヨンは含まれていないらしい。
だが、全て 朝寝坊な自分が悪いので、また明日以降に来ることに決めた。
恥ずかしい話だが
「今日どこに行くのかもわからないツアー」に、僕もよく申し込んだものである。
最初はこじんまりとした寺院というか 廃墟?に着く。
「一時間後に待ち合わせなので好きに周ってきて」
とジェイクに言われる。
ええと、一緒に行ってガイドしてくれないの?
と聞くと「僕は パスが無いから 中に入れない」と肩をすくめて言われる。
どうやら、日本人の添乗員のいるような、
「ちゃんとしたツアー」 以外は、
基本、遺跡に送り届けて貰い、指定された時間内で、自分自身で 勝手に中を周る。 というのがスタンダードな現地のやり方らしい。
少し不安だったが、まぁしょうがない。。 僕は名前も知らぬ廃墟へと歩き出した。
後で自分で気付くのだが、「廃墟=遺跡」なのだから、廃墟なのは当たり前なのだが、
日本の文化財の寺院と違い、あまりに ”廃墟感” が丸出しだったので、僕は その時そう感じていた。「廃墟じゃん??」と 笑
正に、遺跡素人感 丸出しである。
遺跡に入る前に、しっかりとパスを確認される。3つある○の中の一つに 穴をパチンと開けられる。一日分のパスの利用が始まったのだ。
チェックをする係の人は、ホーチミンで見た、「警備員の制服」に良く似た格好で、黒のパンツに、水色の長そでのYシャツを着ている。
きっと国が雇った方達なのだろう。
かなりチェックは厳しい。。 本当に、
「あの ぬるぬるいカンボジアなのだろうか?」
と改めて感じざるを得ない程の、厳しいチェックだった。
カンボジア王国の本気を…
「観光業で なんとか!!
国の収入を確保するぞ!!」
という、恐ろしい程の意気込みを感じた。
カンボジアに来て、初めて感じるガチの空気である。。
選挙の時のアルコール禁止の法律など、屁の様なもので、
観光客からきっちり国の財政を確保するぞ!!
というカンボジアの本気を感じながら。
僕は人生初のカンボジアの遺跡に足を踏み入れていた。
続く
↑ 衝撃のガソリンスタンド。。
↑ 近くの池
↑ アンコールトム 南門
↑ 遺跡内で「ここに座りな」と、中にいる
警備員に言われて写真を撮ってもらう
そのあとチップを要求されるが断った…
↑ 廃墟感抜群の木の浸食
↑ 後で調べた所この最初の遺跡は
「プリアカン」という遺跡だった
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