第74話
遂に遺跡の街 シェムリアップに到着
飛行機は順調に飛び、まだ明るい内に、シェムリアップの上空に達していた。
飛行機の中で、通路側の席から地上が見れないか?と思って試行錯誤してみたが、無理だった 笑
もう、睨めっこで笑ってしまった時点で、隣の彼女を許してしまっていた僕は、あんまりやると、彼女に 嫌味になるので、流石にそれは良くないと思い、ある程度で諦めた。
やがて飛行機は、無事 空港に着陸した。
プロペラ機だったが、思ったより揺れもせず 快適だった。
空港に着き、皆で降りていく。
ふと 隣の彼女を見ると
「本格的な登山にいくのか?」と言うほど、大きなザックを普通に背負って、飛行機を降りて行った。
ちゃんとした国の飛行機なら、きっと機内持ち込みは止められる大きさだと思うが、ここでも流石のカンボジアらしさだ。 素敵だ 笑
空港の小さなロビーに出て、我慢していたトイレに行って戻って来ると
彼女は携帯を片手に、大きな荷物を背負ったままで、まだ空港ロビーに立っていた。
それをみた僕は、、理由は分からないが、
女性一人で、過酷な旅を黙々と続けているであろう彼女の、厳しさというか、寂しさのようなものを勝手に感じてしまった。
もし機内で 感情に任せて、「ガーッと」彼女に何かを言っていたら、この光景を見て、きっと僕は後悔していだろうと思い、踏みとどまって良かったと改めて思った。
やはり、敵意や、悪意は自分に返ってくるものだと深く感じた。 いい勉強だ。
その後僕は、空港に着いた旨を、宿にメールで知らせる。
実は 今回取った宿は、安い割には、迎えのトゥクトゥクが無料サービスで付いていた。
(逆に 空港へ送りは有料だった)
僕はビールを飲みに行く前に、遅れる旨を宿とメールでやりとりし、飛行機が飛ぶ直前に、大体着く時間をメールしておいた。
早速メールが返って来る。
「Jake」と言う若者がすでに待機しているので、駐車場に出て欲しい とメールが返って来た。
空港の建物から外に出てみると、すぐに駐車場になっている、見回してみると、トゥクトゥクのそばに立っていた若い男性が寄って来た。
「hello. Mr.Masami Azuma?」
と聞かれる。
どうやら、彼が宿からの使者のようだ。彼は英語が話せると、宿からのメールで知っていた。
挨拶を済ませ
よく、すぐに僕が 宿泊者だと分りましたね?
と聞くと彼は、
「君が日本人だからすぐに分かったよ。
ここから出て来た日本人は君だけだ」
と笑いながら答えてくれた。
彼こと「ジェイク」は、チノパン、半袖のポロシャツに、黒のキャップを被る、オシャレな感じのイケメン青年だった。
彼は日本語の企業名「COSMIC コスミック」
と書かれたヘルメットを被っている。
聞いてみると「日本製だよ」と自慢してくれた。どうやらここでも安定の
「メイド・イン・ジャパン」らしい。
走り出すと、正面にはフロントガラスも何もなく、吹き抜けているので、風が直接顔に当たる。。結構風で疲れる。
僕はずっとハタハタ はためいていた。。
プノンペンで 空港に行くために乗った、おじさんのトゥクトゥクは、渋滞でスピードをあまり出さなかったので気付かなかったが、スピードを出したトゥクトゥクの風はかなりきつい。。
僕は今日、人生で初めてトゥクトゥクに乗った事に 今更気付いていた。
バタバタしていて、プノンペンでは気にしていなかったが、今日は 人生初のトゥクトゥクに、1日に2回も乗っているのだった。
トゥクトゥクは、夕暮れになろうとしている道をひたすら走る。
道は、一本道の田舎道だ。アスファルトの道だが、この一本の横はすぐ家か、土の小道か、木や池、林となっている。
道の左右にちらほら家が立っている程度で、他には 行けども何もない。
空が低く、空の果てまでよく見える。
ベトナム国境から プノンペンまでの田舎道など、まだ都会の道だったのだと気付いた。
そしてこの景色は、今までの国で、もちろん日本でも見た事のない景色だった。
そして日は暮れていく。。
市街に入ると、結構お店も多く 栄えており、大通りは、左右にもあり、アスファルトの道も多い。だが、土の道も脇道にはまだある。
やはり、プノンペンは大都会で、シェムリアップは有名とはいえ、遺跡が見つかるまでは、ただの田舎町だったのだろうと思う。
だが、観光地や都市ばかりを移動してきた僕には新鮮で、すぐにここが好きになった。
やがて、大通りから右折し、一本脇道に入って少し行った、角にある宿に 僕は到着した。
宿は綺麗な三階建てのゲストハウスで、大きな一軒家といったような作りだった。
一階の受付に行くと、50代の白人男性が 英語で対応してくれた。
彼は宿のオーナーで、イギリス人だという。カンボジア人の奥さんとこの宿を経営しているのだそうだ。
英語が喋れるスタッフさんがいるのは、非常にありがたい。
彼に色々説明してもらい、二階のシングルルームに案内してもらう。
二階に上がると右手に屋根付きのテラスがあり、ここは、モーニングなども食べれるし、カフェスペースとしても使ってください とのことで、2人掛けテーブルが 8つくらいある、気持ちのいいスペースだった。昼にはレストランとしても営業しているようだ。
モーニングは前日に予約制で、別料金だったが、テラスが気に入った僕は、さっそく 明日の朝食を予約した。
また、案内された部屋は かなり広く、非常に清潔の上 ベッドもダブルサイズで、シャワーとトイレ付きだ。椅子と机、テレビまである。テレビは懐かしいブラウン管テレビだ。
これでシングル 一泊 1,000円弱とは、間違いなく破格だ!
またしても当たりの宿を探し当てたぞ!!
と僕は興奮していた。
ところがである。。
荷物を整理し、少し部屋で休んでいると、隣から 物凄い下手なカラオケが聞こえてきた。
中国語らしいが、それでも下手だとわかる。
ボォおあぁー♪ ぼボヘェエーぇえ! ♪♫
と、本当にそう聞こえる。
どうやら隣の住人がカラオケを始めたようだ。しかも酔っているようだ。
中国語による
ぼぉおへぇーみぁあーん♫
なラプソディは終わることなく20分以上続いた。。
移動で疲れていた僕は、流石に我慢ができなくなり、下に苦情を言いに降りて行った。
フロントにいた店主は 僕に笑いかけてきたが、僕の表情を見て、笑うのを止めた。
あのカラオケはどうなってるんですか?
あんなのがあるとは聞いてないですよ!
もし、あれがずっと続くようなら、
宿を変えるから、そのつもりでいて下さい!
と強めに言うと、少し困った顔をしていたが、
「あれは、長くは続かない。
滅多に無いことだから安心して欲しい」
と言われた。 僕が、
ホントの本当にほんとうですね?
と念を押すと
「本当のホントにほんとうだ。」
と真顔で言ってくれた。
僕は彼を信じる事にし、部屋に戻った。
すると 不思議な事に、謎のカラオケは綺麗さっぱりおさまっていた。
カラオケにしては随分短い。。
オーナーが何か言ってくれたのだろうか?
だが、お隣さんは、たぶん 普通に住んでいる人だろうから、隣の宿から「静かにしてくれ!」と言うのは、流石に難しいというのは、僕でも解るが。。
謎は深まるが、とにかく もう二度とこのような事態にならない事を祈るばかりだ。
静かになった部屋で 一休みした僕は、夕飯と散歩を兼ねて、街に出る事にした。
すっかり暗くなった道を、土地勘が無いので とにかく明るい方へと向かう。明るい大通りなら、安全なはずだからだ。
大通りに出て、左に曲がり 少し行くと、オシャレそうな二階建てのパブがあった。
入り口を入ると、清潔感のある ちゃんとした黒の制服とサロンをした 上品そうなおじさんが挨拶をしてくれる。
メニューを見ると、普通の値段である。
2階は屋根付きのテラス席になっており、生演奏もやっている。
歌手が歌う曲はよくわからないが、とても上手だ。先程の「ぼぉへぇみ〜 ぁあんな ラブそでぃ♪」とはえらい違いである。
2階の席でもいい? と聞くと「もちろん!」と 彼は気持ちよく答えてくれた。
僕は耳を浄化する為にも、ここの涼しげなテラス席で、大通りを眺めながら 一杯やる事にした。
続く
↑ ついにシェムリアップ国際空港到着
↑ 道を走るジェイクとはためく僕
↑ 広くて綺麗な部屋
次話