猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

深夜の途中下車

 

第124話

深夜の途中下車

 

深夜特急」の第二巻、

マレー半島シンガポール編を 途中まで読んだ僕は、宿から外に出る事にした。

 

まだ上級旅行者ではない僕は、よく考えるとこの街をまだよく知らない。

何度もバンコクに来ている彼女とは違い、タイ初心者の僕は、まだまだ部屋でゆったりしている場合では無いと 気付いたのである 笑

 

だが、久しぶりに 読書をした。良い時間だった。

深夜特急」は やはり名作だった。

旅に出る前は、ドキドキしながら、憧れながら、自分が沢木氏と旅をしている様な、いや、沢木氏になりきって旅をしている感覚を味わっていた。

こんな感覚を感じさせてくれる程の「引力」を持っている小説は、稀である。

他にこの感覚を味わった事があるのは、

司馬遼太郎の「龍馬がゆく」

吉川英治の「宮本武蔵

太宰治の「人間失格

くらいだろうか…?

 

だが、自分の旅の途上で読んだこの小説は、また別の感覚となっていた。

 この人の旅は、やつぱり面白いなぁ!

と、名著だと思いながら、どこか少し俯瞰的に捉えている自分がいた。

 

日本で、僕と一緒に旅をしてくれた、ガイドの沢木耕太郎さんの手を離れ、僕はひとりの日本人旅行者として、いつの間にか 独り立ちしていたのだ。

 

それはそうだろう。

彼が周ったマレーシアの場所を、僕は自分自身の足で周ったし、数十年前と今は全然違う。

 

僕は、自分の足で 実際にその地を周る事により、いつの間にか 「深夜特急」を卒業していたのだ。

それは、高校生に上がるあたりで、

太宰治」から卒業したかの様に。

 

だから、そんな僕は今、青春の真っ只中だ!

部屋で のんびりなど、している場合ではないのである!

 

まさに

 書を捨てよ 町へ出よう

である。

 

飛び出した街はやはり刺激的だ。

宿の真裏には 市場があり、朝の活気には及ばないが、まだ数件お店がやっている。

 

市場の一角にある食堂の 向かいにある、小さな自営のコーヒースタンドで、テイクアウトで、アイスカフェラテを頼む。

店主のおばさんが、

「朝と同じのでいいの?」

と笑顔で聞いてきたので、

(覚えてくれてたんだ!)と思い、嬉しくなって、

「うん、同じやつをお願いします。

 コップンカー(ありがとう)。」

と気持ちよく買い物ができた。

 

実はここには、朝も来ていた。

宿の部屋の、窓のすぐ下には 鳩が住みついており、朝から、バサバサ、バサバサ、

「クルッポー。クルッポー」と、言っている。

その音で、朝早く目覚めた僕は、窓を開けて、

「うるさいよー。くるくるっぽー!」

と鳩に注意したところ、眼下にある、全て屋根で覆われた、市場を発見したのである。

僕は早速、まだ誰もいない、階下の共有スペースからさらに階段を降り、その市場に行ってみた。

 

ここは地元の市場の様で、丁度、宿の真裏にあった。地面がコンクリートの、屋根だけのある 吹き抜けた作りだ。

 

衣料品売り場もある他国の市場と違って、ここは 食材ばかりを扱っている。

魚がメインで、鶏肉や、なんと!

 こ、これ? 小さめのウミガメ?

という、生きた亀も売っていた。

(こ、これ… シメて食べるのかしら?? )

ちょっとビックリした。

そして、魚の下には全て氷が敷かれ、全く生臭くない市場であった。

 

市場には小さな食堂があり、皆そこで食事を食べている。いるのは地元の人ばかりだ。

25バーツ(82円)で、一つの皿のライスの上に、三品なんでも選べる 嬉しいワンプレートだ。

僕は美味しそうな、角煮と、野菜炒め、対角線上に、グリーンカレーをかけてもらった。

 

それを6席程ある、アルミの4人掛けのテーブルで、地元の人と向かい合って相席で食べる。

僕はこういう地元の人しか来ない、およそ 観光客が来ない様な食堂に入り込んで食べるのが 楽しみでもあるので、旅の間、結構こういう所で 朝ごはんを食べたりしていた。

 

ここは安くて美味しかった!

さっとご飯が出てくるのがいい。

さすが市場だ! 話に聞く築地のようだ。

とにかく「早くて  安くて  美味い」のだ!

 

食べ終わった僕に、次に目に入ったのが、

現在、今また来ている 例のコーヒースタンドだった。

 

2畳ほどのスペースに、明るいおばさまがいて、地元の人に大人気の様だ。

常連さんと談笑しながら、コーヒーを売っている。

僕はここが気に入り、モーニングコーヒーを飲む事にした。

おばさまに、アイスカフェラテを頼む。

ここで面白いのは、ミルクが、缶に入った甘々の コンデンスミルクである事だ。

 

そのネチャリとした液体を、ドボンとコーヒーに入れてくれる。

渡されたカフェラテは、僕好みの甘々コーヒーだ!

 うまい! 甘いっ! 美味い!!

と、喉が渇いていた僕は、一気に飲み干してしまった。

おばさんは、日本人の客が珍しいのか、最初は少し戸惑っていたが、少し話すと、すぐに打ち解けた。

こういう行きつけのお店があると、旅がまた豊かになる。

 

みんな人が大好きで、お商売をしている。

(きっと、日本も昔はどこも、

 こうだったんじゃないかしら?)

と僕はありし日の日本を、ここ東南アジアに、いつも 不思議と重ねてしまう。

 

再び 宿から飛び出した僕は、わざわざここの店に寄って、冷たいカフェラテ片手に、街をウロつく事にしたのだ。

 

その後、駅前に向かう事にした僕は、途中で何故か、ラーメン屋に吸い込まれていた。

まだ夕飯に早いが、ラーメン屋の提灯をみて、どうしても食べたくなってしまったのである。

ここは 日本のラーメン屋だし、美味そうだった。

 

店に入ると、元気な日本人男性が迎えてくれる。

「あらっしゃっえ!? サッセー!!」

と久しぶりに聞く、ちょっと 何言ってるか解らないギリギリの、

気合の入った「いらっしゃいませ」だ。

 

日本語のメニューを見る。

な、なんと!! 100バーツ以下だ!

300円くらいで良心的だ。

安食堂の一食に比べると、少し割高に感じるが、日本のラーメンをこの値段で食べられるのなら かなり安い!!

ベトナムで見た時は、ラーメン一杯600円以上だったからだ。

そして ラーメンは、僕の好きな鶏白湯スープの様だ。

 

日本のラーメンを食べるのは久しぶりである。

タイ人男性に席に案内してもらう。

彼の接客も気持ちがいい。まるで日本に帰ってきたかの様だ。

初めて入ったら ラーメン屋ではいつも頼む、基本の一番シンプルなやつ(96バーツの)を頼む。

 

しばらくして、白濁したスープのラーメンが、僕の前に来る。

(やべぇ。。旨っそー!!)

と思い、早速食べてみる。まずはスープ。

 

 …嗚呼。 沢山の。。

 沢山の、タイの鶏さんを感じる…

 

「煮込まれてくれた鶏さん達 コップンカー🙏」と謎の境地に至る美味さだ。

 

次に麺を思い切りすする!!

麺も細麺で スープに良く絡む イケメンだ!

鳥の旨味と、塩の旨味が良くマッチしている。

 「正に 味のイケ麺ジャニーズや!」

 「良く マッチでぇぇえ〜す!」

と、頭の中に、彦摩呂さんと、片岡鶴太郎さんがいっぺんに出てくる 笑

 

大満足した僕は、もう一個の、駅前にある方のモールを周ってみた。

ここは、宿の前のモールよりさらにデカい!

一階には、ここでもプリペイドカード式のフードコートがある。

(ここは、ほぼ満席で大盛況だった!)

 

そして、宿の前のモールでは、タイ版のケンタッキー屋? だったのに対し、ここにはちゃんと、正規のKFCがあった 笑

ここは、衣料品や、日用雑貨もかなり豊富な品揃えだ。

生活に必要なものは、全てここだけで揃ってしまうだろう。

 

ここオンヌットは、バンコクの中心地から少し離れていて のんびりできるし、必要な店は、モールに全部揃っている。

バンコクで一番の繁華街「スクンビット」へも、高架鉄道BTSで 10分程だ。

 

「とにかく住みやすそうな街」というイメージを 僕は持っていた。

(後で調べると「日本人が多く住んでいる」

 との事だった。それも、納得である。)

とにかく、宿の旅の達人看護師さんの様に、

ゆるりと沈没するには、もってこいの街らしかった。

 

だいぶ歩いて、少し疲れた僕は、モールのフードコートの席に座り、何も注文せずに 無料の水をガブガブ飲んで休んでいた。

タイでは、別に注文しようがしまいが、誰も気にしない。

 

しばらくすると、モールの無料Wi-Fiで繋いでいた携帯に、LINEが入った。

「どう? づま?元気にしてる?

 上田から色々話聞いたよー」

と例の散髪を進めてくれた、俳優仲間からである。

タイに数ヶ月住んだこともある、タイの達人でもある中条からである。

 

僕は「次にカオサン通りに行く」という事以外、何も決めていなかったというか…

その後どうしたら良いのか全く解らなかったので、

これ幸いとばかりに、彼女に相談も兼ねて、

返信せずにすぐ、LINE電話をかけていた。

 

続く

 

 

f:id:matatabihaiyuu:20220505141517j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220505141513j:image

↑ 市場にて  良く売っている?亀さん。

 

f:id:matatabihaiyuu:20220505142352j:image

↑ 今度は 箱の上で寝ていた猫さん

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本人宿で出会った「旅人たち」

 

第123話

日本人宿で出会った「旅人たち」

 

ワクワクランチを食べ終わった僕は、

一旦、モールの向かいの宿に戻る事にした。

 

道路を挟んだ 向かいに宿があるのだが、相変わらず 信号や横断歩道などというものは無く、車は途切れない。。

僕は昨日、一体化して道を渡ったタイ人男性の、

「車の止め方」を思い出し、自分でやってみる事にした。

 

まずは車をよく観察する。

途切れなく走っているが、皆、そんなにスピードは出していない。

止まれそうなスピードである。

僕は そんな中、

(おぉ?? 止まってくれそうだ!)

と思った 一台の前に進み出る。

 

そして右手を突き出し、車を制する!

(言い忘れていたが、タイは、

 日本と同じ 左側通行である。)

 

そして、念じる。

(はぁああ〜!! 通りますよ〜!!

 ととと、、止まってーー。 いや、

 止まるんだっ! とぉまれぇぇえええ!!

 ペクトローナーァーム!!)

すると、念が出ているはずの 僕の右手のお陰か、

車は見事に止まった!!

 

そして、それを見た反対車線の車も…

諦めたかのように止まってくれた。

 

 念じれば通ず。  一念、岩をも通す。

 

とは よく言ったものだ。

まるで、マーブルの Dr.ストレンジのように僕は、車を右手から出る念で停車させ。

見事に。道を渡る事に成功したのであった!!

 

(後から考えると、ドライバーだって

 人を轢きたくは無いはずなので、

 普通に止まってくれているだけなのだ。

 と気付くのだが…。 )

 

とにかくその時の僕は、

 凄いぞ俺!!

 念で車を止めて、渡ったったぞ!

と興奮していた。

 

一回 勇気を出して、この「儀式」を経験すると、不思議なもので、タイでは渡りたい時に、無理やり道を渡る事が出来る様になる。

これは、止まれるスピードで車が走っている、おおらかな、タイ王国ならではの技なのである 。

(たぶん、マレーシアだと、

 サクッと轢かれてしまうだろう 笑)

 

とにかくタイはおおらかだ、微笑みの国といわれる所以がよく分かる。

居れば居るほどタイが好きになる。

(そんなタイが、居心地が良過ぎて僕は、

 その後しばらく、このタイ王国から

 動けなくなってしまうのだが…)

 

宿に戻ると、昨日会った女性2人が、各々共有スペースで寛いでいる。

二十代後半らしき女性は、文庫本を読んでいて、

もう一人の、ずいぶん若い(幼くさえ見える)娘さんは、携帯をいじっていた。

とても緩やかな空気が、この共有スペースには流れている。

挨拶をすると、それがきっかけになった様に、色々と話しをする事となった。

 

前述の 二十代後半の女性は、これからアフリカに行くらしいが、入国に必要なワクチンを打ちに、タイに来たらしい。

もうはるか昔の ブログ回の為、お忘れの方もいるだろうが、僕はびびって、第二話で、出発までに、8つの感染症のワクチンを打つ為に、1日に 一度に "6本 " 注射を打つ羽目になっていた。

 

実はこれが馬鹿にならない出費だったのだ…。

僕は関東で一番安い病院を探し出していたのだが、それでも総額で " 7万円 以上 " 掛かっていた。

(今考えるとアホ過ぎるのだが。。)

 

ワクチンは保健が効かないのか、実費のせいか、とにかく高くつくのだ!!

 

そんな中、旅慣れている達人たちは、まずタイのバンコクに入り、ワクチンを打つ。

「スネークファーム」という有名な場所だ。

(これは、蛇の血清等の研究施設の名前で、

 実際は、その裏にある 赤十字の病院が

 ワクチンを打ってくれるのだが…)

 

ここで打つと、日本の半額か、下手すると三分の一の料金で、ワクチンを打つ事が出来るらしい。

これは長期旅行者や、数種のワクチンの接種証明が無いと、入国できない国に行く時には、かなり重宝する お得なやり方なのだ。

(これは、前述の彼女が教えてくれた。)

 

そのワクチンの彼女は、看護師の資格を持っており、日本に帰ってもすぐに仕事に就けるので、お金が貯まると、定期的に海外放浪をしているらしい。

僕には想像もつかない、上級旅人であった。

 

旅慣れているので、僕の様に あくせくと街を歩き回らずに、宿で

「沈没してます〜 笑」と、

のんびりしながら、そう明るく言っていた。

(そのゆったりとした過ごし方に

 僕は、もの凄い 旅慣れ感を感じた。)

 

対照的に、旅初心者の印象がする、もう一人の小さな若い、まだ、「娘さん」と言いたくなる様な 綺麗な目をした彼女は、初海外だそうだ。

大学を出たばかりで、これから世界一周の旅に出るらしい。。

 

僕は、インドでさえ びびって、

 行くかどうしようか?

と思っていたのだが、彼女はその足で、世界一周へ向かう為、まずは外国に慣れる為、この日本人宿にいるらしい。

 

旅人とは、旅と経験を重ね、より大きく、旅人として成長していくものである(きっと…)。

これは、びびって 初日のマレーシアの空港から、5時間以上出れなかった僕が、実感している事であるが…

 

だが…  きっと余計な心配なのだろうが、

日本ですら、人生経験をそこまで積んでいない、特に女性がこういうドミトリー宿に泊まりながら長い旅をすると言う事に、僕は単純に心配になってしまった。。

我々男と違い、また違う危険と戦わなければいけないし、より危険である 女性の一人旅だ。

 

僕には、彼女はまだ、日本の荒波すら 全く経験していない様に見えた。

日本では 全く気にしなくて良かった危険と、リアルに、本当に戦いながら、彼女は旅を続けられるのだろうか。。?

 

取り返しのつかない、傷を負わなければいいが。。  それとも、命さえあれば大丈夫なのだろうか…?

 

などと、余計な心配しか出来なかった。。

怖いなぁ。。と、、自分が旅するよりも。

 

だが…

単純に僕が、心配し過ぎなのかもしれない。

逆に、彼女が トラブルに揉まれながら、もの凄い旅人になって、大人気の旅ブロガーにでもなる可能性だってあるのだ。

 うーん。。そうかぁ、そうだよなぁ。。

と僕は、あまり人の心配などする事をやめた。

 

結局、全ては自分で経験して、自分の運によって、導かれるしか無いのだ。

運がない時は、それまでなのだ。

そう割り切る事でしか 旅はできないのかもしれない。

僕だって 明日トラブルに巻き込まれて、帰らぬ人になるかもしれない。

 

それをどこかで覚悟して旅に出たはずだ。

きっと彼女も、そうなのだろう。

僕の心配など、たぶん失礼なのだ。

 

それは、よく考えれば 人生も一緒なのかもしれない。

旅は危険だ と思って、じっとしてて、日本にいたからといって、明日交通事故で死ぬかも知れない。

 

そう。

海外は リスクが上がるだけで、日本にいても、明日何があるのかは分からないのだ。

そんな事を、改めて考えさせられる出会いでもあった。

 

そして、人のことを心配するより、

 これから僕こそ どこに行くのだろうか?

と 全く何も考えていない僕よりも、

「世界を一周する」という明確な目標のある彼女の方が、旅の終わりがはっきりしていて良いのかも知れない。

 

彼女と色々話しながら、僕は逆に自分の旅を見つめ直す良い機会になっていた。

これも初めて会う、日本人の長期旅行者のお陰である。

これだけでも、日本人宿に来て良かったと思う。

 

そんな僕も、ワクチンの彼女の 達人感に倣い、ここで、ダラダラしてみることにした。

たまたま「深夜特急」の文庫が全巻置いてあったので、読み返すことにする。

 

深夜特急」を、実際の旅行者として読み返しながら僕は、憧れではなく、自分自身の旅と対比しながら、面白いのだが、この本に 以前ほどの魅力を感じなくなっている自分に気付いた。。

 

そう、、きっと僕も 「自分の旅」をする

いっぱしの旅人になっていたのである。

 

つづく

 

f:id:matatabihaiyuu:20220430145819j:image

↑ 僕を旅へと導いてくれた「深夜特急

     バックパッカーのバイブルである!

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

タイ・バンコクの外食事情

 

第122話

タイ・バンコクの外食事情

 

マッサージ屋さんで、国と言葉の壁を乗り越えた僕は、ご飯を食べに行くことにした。

 

一緒の感情を経験したり、ふっと 気が通じると、

通じないはずの言葉が、綺麗に通じる事が相変わらず不思議だが、それが人間の底力なのかも知れない。

 

腹筋を使い切った僕は、急にお腹が空いてきていた。

宿に戻りながら、お店を物色していく。

途中にバーベキューの食べ放題のお店があった。

 

日本から出て、初めて見る食べ放題のお店だ。

興味はあったが、値段が よくわからなかった。

何より、一人で食べ放題に行っても、きっと楽しくは無さそうだ。

そして、一日二食の僕には、今 そんなに量は食べられないはずであった。

 

中を少し覗いて「う〜む… うんっ。」

と一つ頷いた僕は、昨日買い物に行ったモールの三階にある「フードコート」に行ってみることにした。

 

僕は昔から、日本のイトーヨカドーなどにある、フードコートなどが大好きだ。

お祭りみたいで、ワクワクするタチなのだ。

 

なので、マレーシアのアロー通り、ペナンの屋台村である「レッドガーデン」や、

プノンペンのAEONのフードコート、

昨日、三上さんに連れて行ってもらった 屋台村でも、ワクワクが止まらない。

 

そんな僕は、タイのフードコートで、

ワクワクランチを摂ることに決めたのだった。

(どれくらいの値段なのだろう?

 まぁ… そこそこするだろうな。。)

と覚悟をしながら、しばらく歩いていくと、そのモールへの大通りに出た。

 

せっかくなので、裏道から行こうと思い、一本奥の路地から向かうことにした。

日本でも活動中の「路地部員」としての、路地探索をすることにしたのだ。

路地のすぐには、日本語のラーメン屋があり、ちょっといくと、日本語のメニューもある。

 

すぐ隣には、1時間 150バーツ(490円)の格安マッサージ屋もある。

ガラス張りなので、中を覗くと、店内はかなり綺麗だ。。

 安いし…  次はここでも良いなぁ。。

と、貧乏旅行者の僕が、しばらく様子を見ていると、中からスタイルの良いタイのおばさまが、出てきて、

「ヤスイヨー。スグニデキルヨー。」

と日本語で話しかけてきてくれた。

「上手いの?  安いけど。。」

と聞くと、

「スグ、ハイレルヨー!!

 ヤスクテ、ウマイヨ!サイコー!」

と、誘ってくれた。

どうやら、「早い、安い、上手い」の

日本の牛丼屋の様な 優良店らしい 笑

「今日は、もうマッサージ行ったので、

 明日来てみます!」

と言うと、「マッテルヨー!」と最高の笑顔で言ってくれる。

 

(明日は、ここに来るとしよう!)

と思いながら、お礼を言って、立ち去る。

彼女はニコニコしながら手をひらひらと振る。僕はすっかり、この人懐っこい笑顔の、愛想の良いおばさまのファンになってしまった 笑

 

路地をさらにいくと、フルーツ屋や、揚げ物の屋台が軒を連ね、その先にはモールの駐車場。

その道中は、もの凄い賑わいであった!

 

モールに入ると、一階フロアには、携帯屋など、ちゃんとお店を構えているところもあるのだが、

個人経営の怪しい、20バーツ(66円)の均一ショップや、洋服屋、履き物屋など、バザールの様になっているエリアもある。

それを少し冷やかしてから 3階へと上がると、何故か、ユニセフ? の募金の旗があり、人がいた。

団体の制服を着た、とても可愛らしい顔立ちの女性に声をかけられる。

日本なら会釈くらいはして、通り過ぎるところだが、今僕は、天下の暇人である。

立ち止まって話を聞いてみる事にした。

綺麗なタイの女性とお話しできる、せっかくのチャンスだ!

 

彼女は一生懸命、色々教えてくれるが、英語とたまにタイ語なので、大体の事しかわからなかった。。

だが彼女が熱心なので、僕は 初日の空港で、タイから頂いた、1000バーツの残りであろう金額を、全て募金箱に入れた。

数百円だが、タイから頂いた善意を、世界にまわしていこうと、ふと思ったからだ。

 

お金を入れると、彼女は手を合わせて、

「クップンカー」と言いながら頭下げてくれる。

その笑顔が本当に美しく、その笑顔を見れただけで、僕は嬉しくなり、

(僕の善意が 世界を周って、

 さっそく 自分に還ってきた!)

と 馬鹿なことを考えていた。

 

奥に行くと、小さな案内カウンターの様な所があり、さらに奥に10数店舗程のお店のあるフードコートがある。

広い店内の席に人は、かなりまばらだ。

 

入り口付近のカウンターを観察していると、何やら ここ専用で使えるであろう、Suicaの様なプリペイドカードを売っているらしい。

 

僕は毎日ここに来るわけでは無いので、現金で払おうと、そのままお店に向かった。

 

ここのフードコートは素晴らしかった!

カレーのお店はもちろん、パッタイの店、あんかけ焼きそばの店、フォーの店、色々おかずを選択できる店、カオマンガイのお店、

なんとカツ丼のお店まであり、かなり安い!

40〜90バーツ(130円〜300円)程だ。

 

僕は、楽しくなって、15分程じっくりと見て回っていたが、あんかけ焼きそばを食べる事にした。

他のお店の店員はやる気がなかったが、ここのおばさんは、笑顔でオススメしてくれたからだ。

「これを下さい」と言ってバーツ紙幣を出すと、手でバッテンマークを作られた。

 え?  何故ですか??

と聞くと、ここはプリペイドカードでしか、買えないと、ジェスチャーで教えてくれた。

 なんと! 現金は使えないのだ!

しょうがないので、先程のカウンターに戻り、プリペイドカードを買う事にした。

 

100バーツ単位でカードにチャージ出来るらしい。

僕はとりあえず、100バーツ入りのカードを買う事にした。

今日使いきれなくても、最悪、明日使い切れば良いと思い、100バーツ紙幣を渡す。

カウンターの女性はにこやかに、100バーツ分のポイントの入ったカードを渡してくれた。

 

早速、あんかけ焼きそばのお店に戻り、プリペイドカードを渡す。

おばさんは、受け取って、レジを通して会計をしてくれる。

そしてしばらく待っていると、お盆に載せた美味しそうなあんかけが出てきた。

僕は、何故か空いてる、大きなガラス窓になっている明るい窓際の席で食べる事にした。

 

フォークやスプーン、お箸は、手洗い用の洗面台の、すぐ横の台にある。 そしてここでも、

(おおっ? せ、先進国?!)

と驚く出来事が。。

 

食器の横には、ジュース缶程の穴があり、熱湯がグツグツいっている。

どうやら、ここで煮沸消毒してから使用するらしい。

素晴らしい衛生観念だ!!

マレーシアや、他の国では、卓上のペラペラの紙ティッシュで、気休め程度に拭くのがせいぜいだったのに、ここは、なんと!

 殺菌ができるのだ!!

(スゴイぞ! 凄いぞ!! タイ王国!!)

僕はそれだけで、かなり楽しくなっていた。

 

先の方がチンチンに熱くなった消毒済みの、フォークとスプーンをトレイに乗せ、僕は取っておいた席戻った。

早速、一口食べてみる。

 

 う、うまぁ。。ウマママ、マママイウ。

 アンアンっ ♫    ぁあんかけぇ〜 ♪

 

安心安定の旨味が、じわぁと広がる。

野菜も多く、色も素晴らしい薄クリーム色だ。

タイのこういう料理は日本人に合うと思う。

タイでは「味の素」が人気らしく、普通に使われているらしい。

懐かしの日本の味がすると、たしか本で読んだ事があるが、その通りだと思った 笑

うま味を感じる味なのだ!

旨味大島と化したその一皿を、あっという間に僕は平らげた。

 

これでたったの40バーツ(130円)である。

おかわりしようかとも考えたが、僕はまたの楽しみにとっておく事にした。

 

帰り際に、カードのカウンターをふと見ると、僕の向こうの席で食べていたおじさんが、カードを渡して、返金してもらっているのが目に入った。

(あれ? すぐに返金してもらえるっぽいぞ。

 まぁ。。手数料とられそうだけど。。)

と思いながら、僕も一旦返金してもらう事にした。

カードを渡して「リターンマネー」と、言うと、ちゃんと、残りの60バーツがあっさり返ってきた。

どうやら手数料も、何も取らず、使ったお金以外は、全てちゃんと還ってくるようだ。

 

最初は、不思議だったが、

どうやらこのシステムは(お金が汚い。。)という日本と同じ感覚で、食券の代わりにプリペイドカードで、衛生観念上このシステムにしているらしい。。

 

 凄いぞ!タイラント!!

 凄いぞ先進国タイ!!

 

僕は、タイの、

「痒いところに手を届かせよう…」

とする国の努力に、驚愕しながらも、感動していたのだった。。

 

恐るべし! タイ王国!!

 

続く


f:id:matatabihaiyuu:20220424230500j:image

↑ 旨味爆発の旨味大島


f:id:matatabihaiyuu:20220424230445j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220424230451j:image

バンコクにも猫さんは多い^_^

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オナラには、国の壁と腹筋を崩壊させる力があるらしい。

 

第121話

オナラには、国の壁と腹筋を崩壊させる力があるらしい。

 

今日は、宿のオーナーさんオススメの、

タイマッサージ屋さんに行く事にした。

 

今朝、挨拶をしたが、お互い大人なので、改めて昨日の事を話題に出す事もなく、 少し気を遣いながらも、オーナーさんは快くオススメのお店を教えてくれた。

 

タイはマッサージが盛んで、安いと聞いていた。

 

今日僕が行くのは 300バーツ(990円)のお店である。

道中、金魚屋?さんのようなお店もあり、なかなか涼しげだ。

すぐ隣に、猫が欠伸をしながら座り込んでいるが、別段 魚に悪戯はしない。

タイは、猫さんもおおらかなのだろうか? 笑

 

さらにいくと、右手に目当てのマッサージ屋が見えてきた。

外観は、いかにも「ゆったりしてください」という感じのオリエンタルな作りだった。

 

中に入ると受付の女性がいる。

昨日、道中に覚えた、タイ語で挨拶をしてみる。

僕が「サワディーカー」というと、

わざわざ手を合わせて、可愛らしい笑顔で

「サワディーカー」と返してくれた。

 

英語が話せる方で、コースと 施術者の性別を

選んで下さいと言われる。

日本であまりマッサージに行ったことがない僕だが、

 施術者は、男性がいいか、女性がいいか?

と聞かれるのは不思議だった。

やましい事は なにも無いのに、性別をわざわざ選ぶという行為が、少し恥ずかしい…

 

女性を選ぶと、何か すけべな奴だ と思われないかしら??  と 小心者な僕は色々考えてしまう。

だが、意を決して「女性で。」と答えた。

 

これは、今まで何回かマッサージ屋に行って、やはり女性の方が、男性より力が弱い分、力加減が絶妙で、上手にほぐしてくれるなぁ。

という実感から選んだのである。

決して僕が、女好きだから という理由では無いという事を、自分自身の名誉の為に、ハッキリと言っておきたい!  笑

 

まぁ、そんな事を色々と、考えてしまってる時点でダメな男であるが、受付の女性は そんな僕の葛藤など、全く興味無い感じで、普通に奥に案内してくれた。

 

奥には僕の担当の、20代前半に見えるタイ人の女性がいて、まずは足湯で足を洗ってくれるという。

椅子に座った僕の足を、丁寧に洗ってくれる。

うら若き女性に、温かいお湯で、足の疲れと汚れを洗い流してもらっていると、仕事でやってもらってる事を 忘れそうになるから不思議だ。

何か、もの凄い親切にしてもらってる気がして、親近感が湧くのだ。

 

何か昔の時代劇で見た、旅人の足を宿の女中さんが、

「今日はどちらさんから? あら江戸ですの?

 あらあら、長旅お疲れ様でございます。」

と桶で足を洗ってくれる映像を思い出し、若い侍と女中さんが、恋に落ちる理由がなんとなく分かった。

 

そういえばドラマ「仁 〜JIN〜」でも、

綾瀬はるかさんに足を濯いでもらう

大沢たかおさんが 照れながら、

「いつまで経っても慣れません。」

とはにかんでいた。

 

同じ状況だ。。

(そう言えば「深夜特急」の実写版も

 大沢たかおさんが 主演で、

 沢木耕太郎さんの役をやっていたはずだ。

 あれ? 知らぬ間に俺、オマージュ?! 笑)

と目まぐるしくおかしな事を考えながら僕は、

やはり、はにかんでいた。

 

足をこれまた丁寧に拭いて貰い、2階に上がる。

2階に上がるとお香のいい匂いがし、

りぃらぁ〜っくす、出来そうな音楽が流れ、

布で、一部屋づつ区切られている。

 

今までの所は、床にベッドが置いてあるところばかりだったが、ここは漫画喫茶のフラットシートのように、床にマットを敷いた感じだ。

 

かなりリラックスできそうだ。

僕の担当の方は、英語が苦手らしく、時計をセットして「オーケー?」とだけ聞いてきた。

言葉が通じないのが、気まずいらしく、彼女は少しぶっきらぼうに見えた。

 

恒例の、

「ソフト、ソフトプリーズ。

 ノー アクロバティック?OK?」

と、多分通じてない カタコト英語と、ジェチャーでお願いしつつ、マッサージは始まった。

 

こんな事を言うと、また誤解を招くかもしれないが、やはり人に体に優しく触れてもらうだけで、かなり癒される。

人の体温が、何か安心感をくれるのだ。

 

前に出会った、かれこれ50カ国以上を回った事のある、27歳のバックパッカーの男性に

「好きな国は?」と聞いた時、彼は

「どこ、と言うか 南米ですね?」

と言っていた。

 

理由を聞くと

「ハグをする国だから。」

と言う事だった。

 

やはり挨拶で、ハグをして相手の体温を感じると、より仲良くなれるし、安心するし、元気を貰えるとの事。

なんとなく、彼の言っていた意味がよく分かる。

ドミトリーで仲良くなった旅人達とも、やはり時間が合えば、握手をし、より仲が良いと、ハグをして別れる。

 

異国での一人旅は、なんだかんだいってやはり孤独だ。

日本人宿に泊まっていても、それは本質的に癒やされる事は無い。

だからこそ、人の体温が本質的に、多少であっても 癒してくれるのだろう。

人間の持つ 不思議な力の一つだと思う。

 

さぁ、話を戻そう。

マッサージは進んでいく。上手な方だったが、今までの店では、多少英語で

「どう?」とか、「ココ こってるよ」

とか、やりとりがあったのだが、何か、一言も会話がなく、、き、気まずい。。

そんな彼女も、やはり気まずそうだ。

 

さらに緊張してきた僕は、お腹が痛くなってきた。

そして、どうしても我慢ができなくなり、せめて音を出してはいけない。。と思い。

僕は かなり高度なお尻の筋肉の使い方をし、

全く音の出ない「サイレントぷぅ」をしてしまった。

 そう。。 " すかしっ屁 "  である。

いや、「サイテー」だと思われるだろうが、我慢ができなかったのだ。。

 

いい訳をさせて欲しい。

実は、ベトナムハノイにいる時から、お腹の調子が悪かったのだ。

 ここ、ちょっと衛生状態大丈夫かしら?

というお店で 食事をした翌日から、

普段は大丈夫なのだが、食事をすると必ずと言っていいほどお腹が痛くなって、トイレに行かねばならなくなり、その後は 何事もなかったかの様に回復する。

そんな事を繰り返していた。

 

一日、ほぼ二食なので、一日二回ある 腹痛である。

(まぁ、大した事ないだろ。

 日が経てば、そのうち治るだろ。)

とタカを括って、医者にも行っていなかった。

 

そんな、腸がゆったりやられている僕から、

ガスが漏れてしまう事は、必然であったのだ!

(↑これ、言い訳になっているのだろうか?)

 

だが、とてつもなく " スカしたヤツ"  が出たらしく、彼女は匂いに気付き、たぶんタイ語

「くっさーい!!」と言った。。

びっくりした しかめ顔をしていた彼女は、

僕と目が合うと、周りに遠慮してなのか 小声で、半笑いで 怒りながら、僕をパシパシ叩いてきた。

「くっさいよ!何食ってんの??あんた!」

タイ語だが、何を言っているのかがよく分かった。、

「ちょっとぉ! 大真面目な顔して、

 何してんのよ、あんた! 笑」

 

あまりの臭さに、彼女はもう「ケホケホ」むせながら、笑い始めた。

彼女は、廊下とを区切る布をパタつかせて、少しでも匂いを外に逃そうとしながら、笑い声を必死に堪えている。

 

きっと僕が、大真面目なスカした顔で、

まさかそのまま、スカした屁をするとは思わず、

その表情とのギャップで笑い出してしまったのだろう。

 

それを見ていた僕は「ごめんなさい。。」と蚊の鳴くような声で言ったが、

彼女を見ている内に、その あまりの威力に、僕も笑い出してしまった。

大声で笑うわけにはいかず、2人して声を殺して、笑いが止まらなくなった。。

 クックック。。くぅう〜、クッふ!

 くぅっ、くっ、くぁっ。 クックックッ…

と二人で顔を合わせて、ヒソヒソと、手でジェスチャーしながら、笑いをこらえた。

「ご、ごめんなさい。 そ、そんなに?!」

「もう やぁだぁ。何してくれてんの?」

と、手を振りながら、手で会話しながら、笑いは、より止まらない。

もう腹筋が崩壊しそうになり、彼女も僕も突っ伏して、笑いを押し殺して、笑い転げていた。

 

そして、笑いが収まったかと思い、また目を合わすと、また笑いが止まらなくなる。

 

そんな事を何回か繰り返し、

たっぷり5分は笑っただろうか…?

 

一通り笑った僕らは、急に真面目な顔に戻った。

彼女はまた、真面目な顔でマッサージを再開してくれ、僕も真面目な顔でマッサージを受ける。

だが、不思議なもので、もう最初の緊張感はカケラも無く、たまに彼女は思い出し笑いをし、僕も笑顔でマッサージを受けていた。

お互い、何かが通じた様な、近しい親戚の様な安心感と、遠慮のなさが生まれ、

僕らには、今、何も 壁は無かった。

 

不思議な事だが、本当に不思議な事だが、

とてつもない威力のオナラが、

国境や、国家や、言葉や文化の壁。

そして、男女の壁さえも乗り越えたのだ。

 

マッサージが終わり、最後に彼女は、悪戯っぽい笑顔で 僕の肩を軽く押して、また思い出し笑いをして、送り出してくれた。

本当に、優しい 可愛らしい女性である。

 

 オナラ一つで 凄い仲良くなる。。

という事が人生ではあるらしい。

 

 

 …ぷう。。

 

やはり「笑い」とは、 " 緊張と緩和 " であるらしいという事を、僕は国を越えて学んだのであった。

 

そして彼女に改めて言いたい。

「あの時はごめんなさい」  と。

 

つづく

 

f:id:matatabihaiyuu:20220305234341j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220305234336j:image

↑ 近所の金魚屋さん。

 

f:id:matatabihaiyuu:20220306192232j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220306192220j:image

↑ 近所の猫さん

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイの犬 噛まれあるあると、酔っ払いあるある

 

第120話

タイの犬 噛まれあるあると、酔っ払いあるある

 

タクシーを宿の目の前の、例の巨大モールで止め、ATMで タイバーツを下ろした僕は、三上さんと、色々なビールと、ツマミを買うことにした。

 

ここは、2階が 巨大スーパーになっているので、何でも揃う。

こんな大きなスーパーに来たのは、プノンペンのイオン以来だった。

 

せっかくなので、色々と値札を見た。

やはり タイは、今までの国よりも物価は高いようだ。特にビールの値段は、ベトナムの2倍以上であった。

しかし、お酒の種類は豊富だ。

せっかくなので、久しぶりに、日本のビールも買い、宿に戻った。

日本より安い。発泡酒くらいの値段だ。

ここの会計を出した僕の方が、先程のお店とタクシー代より、明らかに安く済んでいるのだが、三上さんは、

「気にしないでいいっすよ!」と優しい。

 

モールの中で、とにかくここバンコクは、

 " だいぶ発展している " と勝手に感じていた。

 なんか、先進国に来たな。。

と思ってしまう。

別に他に周った国が、後進国と言っている訳では無く、やはり、一つ抜きん出ている感があるからである。

 

まず、ひとつは、クーラーの温度が、

 " 少し肌寒い" 位の温度で済んでいる事である。

他の国では 「人間も凍らせてしまおう!」

とばかりに張り切って、キンキン冷えているのだが、ここバンコクは そんな事がない。

 

話で聞くと、大した事が無いように思われるかも知れないが、実際に旅している身からすると、これは大変な進歩なのだ! 笑

(翌日に行った市場でも、

 魚の下に 氷が敷いてあった。

 マレーシアのKLの地元の市場では、

 魚を40℃ 越えの中、

 そのまま 台に並べて売っていた。

 その為、匂いも物凄かった…

 落語でよく聞く江戸の魚屋の話を思い出し

 昔は、どこもこういう感じだったのか…

 と、なかなか感慨深い、いい体験だった。)

その為 ここタイは、今までの国よりも、日本に近い感覚でいられるように感じる。

 道理でタイは 居心地がいいと言われる訳だ…

と僕は、勝手に納得していた。

 

近くの屋台のようなところで ツマミも買い足した僕らは、早速、宿の共用スペースに戻り 酒盛りを始めた。

ここには今、僕らとオーナーさんしかいない。

せっかくなので「一緒に飲みませんか?」と誘うと、喜んで参加してくれた。

 

男ばかりで、会話ははずみ、色々な話をする。

三上さんはとにかくタイが好きで、タイにはとても詳しいし、宿のオーナーさんの話も これまた面白い。

 

一部を紹介すると、豪傑の三上さんは、ここバンコクで一度、犬に足を噛まれた事があるらしい。

噛まれても、24時間以内に 狂犬病ワクチンを打てば良い事を知っていた彼は、次の日タイから自宅に帰るので、

(明日、飛行機で戻ってから

 ワクチン打っても間に合うでしょ?)

と、構わず例のレバー屋で、ビールを飲んでいたと言うのだ。

「アルコールで、血行が良くなってて、

 血が止まんなかったんすよねー 笑」

と言って笑っている。。

(なんかこの人、凄い達観だな。。

 長年海外にいるとそうなるのかしら?)

と思い、少しだけ、

(…大丈夫かしらこの人?)と、

タイの初心者の僕は、実は少し そう思っていた 笑

 

信じられない話だが、その時は、逆に周りのタイ人の方が心配して、彼らに無理矢理タクシーに乗せられて、そのまま病院に連れて行かれたらしい。

(タイ人の方がちゃんとしている 笑)

 

ともかく凄い話だ。

僕ならビビりまくって、パニックなり、

(うわー!! し、死んじゃうよ〜!)

と、涙ぐんでいたに違いない。

 

「やっぱり犬怖いっすね。。

 俺も気をつけなきゃ。」

と言うと、これからの タイの滞在時間を聞かれた。

「うーん。。一ヶ月くらいですかねぇ?」

と僕が答えると 三上さんは、

「だったらまず噛まれませんよ。

 大体、長くいると 一度は噛まれるんだけど、

 総滞在時間を併せて、一年以上にならなければ

 まず噛まれた人は居ないです。

 それくらい居ないと逆に、

 犬も噛んでくれませんよ!」

と笑われた。

 

オーナーさんを見ると、彼も大真面目に頷いている。

どうやら、タイの犬 噛まれあるある のようだ。

 

それにしても、野良犬はそこら中にいる。

そして、放し飼いにしている飼い犬 もだ。

それらが、店先とか路地に普通に、猫みたいに座り込んでいる。

何か、今までの国よりも、かなり近くに、そこら中に犬がいるのだ。

そして、動きを見ていると、猫みたいなのだ。

 

日本では野良犬は ほとんど見ないが、タイの

地域猫」ならぬ、「地域犬」的にいる犬は、猫のように人々の生活に溶け込んでいるのだろう。

きっと、猫も犬も放置しておくと、人間との関係性が、やはり 似たようなものなるのだろう。

 

まぁ、そんなこんなで、とにかく楽しい3人飲みは、結構飲んだところで、お酒が切れた。

オーナーさんも かなりの呑んべぇのようだ 笑

 

まだ飲み足りない僕らは、宿の近くの日本食レストランに行く事にした。

オーナーさんが言うには、かなりリーズナブルとの事。

早速入ってメニューを、見ると本当に安い。

 

今までの国では、日本食レストランでは、

一品700円とか、500円のメニューが主流だったのに対して、

ここは、150円〜400円位で食べ物が頼めて、ビールも 相場と殆ど変わらない値段だ。

レストランと言うか、もう日本食堂と言ったほうがいいだろう。

 

枝豆などのツマミを頼み、日本のスーパードライの 生ビールもあったので、早速頼む!

タイのビールより気持ち高いくらいだ。

「アっサッヒッ!!

 すぅぱぁ ドっラ〜イ!」

と、ダメなおじさん3人で乾杯していると、店長さんが挨拶に来てくれた。

店長さんは、40代の日本の方で、気さくな方だった。

宿のオーナーさんとも仲が良く、よく飲んでいるとの事だった。

 

店が落ち着いたあたりで、店長さんも僕らの席に合流してくれた。

この店長さんの話も、本当に面白い。

 

皆 芸人さんばりのエピソードを持っていて、

「タイ バンコク

 すぅべラなぁぁい 話ぁしィ。」

は、延々と続いた。

 

そして、酔っ払いあるあるが起こった、、

ちょっとした 喧嘩が起こったのだ。

 

みなさん知っていますか?

緊張状態でいる人間が、ホッと気が緩んだ時、気を許せる状態になった時、信じられないくらいに酔っ払う事を…

 

宿が日本人だけだと安心感が違うので、今まで気を張ってきた反動が出るらしい。

僕はだいぶ酔っていたが、宿のオーナーさんもホントに楽しんでくれていたのだろう。

かなり酔っていた。。

 

僕が

「37歳で、まだ 売れない俳優をやっている。」

と言うと、楽しそうに、

「東さん、頭おかしいですよね〜」

とニコニコして言われた。

 

即座に、カッチーンと来た僕だったが、しばらくは黙っていた。

僕は結構芝居の事では熱くなるし、生半可な気持ちでやってないからこそ、

別に普段はそう言われても「そうですかね〜 」

くらいで流せるはずだったが、酔いも手伝ったのか?

それとも海外だからよりそう思ったのか?

せっかく会えた日本人に、そんな事を言われて悲しかったのか?

 

僕の中の、役者をやる原動力というか、

全ての逆境に立ち向かってきた、生きる力というか、元々持っている、

とてつも無いエネルギーから湧き上がる、

とてつもないマグマが心から噴き上げてきた。

(お前に何がわかるんや?)

と思っていた僕は、しばらく黙って、その後のみんなの会話を、何とか聞き流していたが、

途中で、酔いも手伝い、うっかりマグマが、

ザッパーっ と火口から噴き出た。

というか、どうしても納得がいかず、

マグマが言葉として漏れ出た。 つい、

 

「オーナーさんって、アレですよね?

 人の気持ちが、結構解らない人ですよね?」

と言ってしまった。

そして、案の定 言い合いになった。

 

そしてその中で、僕の発言が 思った以上にショックだったのか、 彼に

「東さん。。あの。。

 今日初めて会いましたよね?

 なんで僕が人の気持ちが解らないなんて、

 わかった様なことを言えるんですか!」

とても悲しそうに怒られた。

 

その悲みと怒りが内在する オーナーさんを見て、僕はハッとした。

(流石に言いすぎた。。)と後悔し始めた。

反省した僕は、一気に酔いが覚め、

「ごめんなさい。

 さっき僕は、あなたの事を勝手に

 わかった様なことを言いました。

 確かに今のは俺が悪いです。。

 いや、、申し訳ありません。」

と素直に謝った。

 

僕はこう見えて、スイッチが入ったら、かなりイケイケで色々突っ込んでしまう事がある。

だが、、その反面相手の痛みというか、悲しみにも、敏感だ。

相手を傷つけて平気でいられない、不思議な自分もいる。

他の二人は、大人なのだろう。とりなすでもなく、僕たちのやりとりを、黙って聞いている。

逆にこういう居方というものは、なかなか出来ないものである。

ありがたかった。

 

その後僕は、彼と話して、お互いに謝って、この日はお開きとなったが、泊まっている宿のオーナーさんと口喧嘩とはいえ、いきなりやり合うとは、僕も 全くやらかしたものだ。

 

だが、こんな風に人とぶつかったのは久しぶりだった。

僕はよく ”まっすぐな人ですね” と言われる事がある。

きっと、良くも悪くもだ。

彼もまっすぐな人なんだろうなぁと、なんとなく思っていた。

だから僕も矛を収め易かったんだろうと思った。

(実は、彼の発言には、本当に悪気はなく、

 その理由を聞いて、誤解が解け、

 後日、僕も納得するのだが。。)

 

 

何にせよ、酔っ払い過ぎると本当に良くない。

人間の 噛みつきあるある まで披露した僕は、

 明日の朝、気まずくても 

 改めてきちんと謝ろう。。

と決めて、ベッドの中で僕は

 

 やれやれ。。

 酔っ払いに噛みつかれた後に効く

 そんなワクチンが無いものだろうか…?

 

とアホな事を考えながら、深い眠りについた。

 

こうして僕の タイの初日は

色々と "やらかしながら"  

無事? 終わったのである。

 

 

続く

 

f:id:matatabihaiyuu:20220303173422j:image

↑ タイのスーパーのビールの種類は豊富!

 


f:id:matatabihaiyuu:20220303173340j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220303173224j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220303173158j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220303172544j:image

↑ 個性的で、自由なタイの犬たち。

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイの関所と 生レバー

 

第119話

タイの関所と 生レバー

 

久しぶりに日本人だけの空間に入ったので、日本人だらけに感じたが、

実際は、宿泊者らしき人が3人、オーナーさんらしき人が 一人いるだけだった。

 

しかし、こんなに多くの日本人をいっぺんに見るのは、日本以来 一か月半ぶりである  笑

僕がまみれたい日本の方たちが、何人もいらっしゃる。

まぶされた僕は、早速挨拶をする。

女性二人と、男性一人、オーナーの男性一人。

皆 気持ちよく挨拶をしてくれた。

日本語だけで挨拶するのは、いつ以来だろう?

 

ここは共用スペースのようで、寝そべれるように、下には柔らかい下敷きが引かれ、ソファーや、座布団など、皆でまったり出来るようなスペースになっており、皆それぞれの場所で、思い思いに過ごしている。

 

宿のオーナーさんに、小さな受付カウンター越しに色々と、説明してもらう。

ここは、僕の泊まる 男性専用ドミトリーは上の階、女性専用がさらに上の階で、最上階のバルコニーに洗濯機があり、洗剤は自由に使って良いとのこと。

ただし、洗濯機使用 一回につき、10バーツをカウンターの貯金箱に入れて下さいとの事だった。

 

だが、洗濯機があるのは本当に有り難かった。

着替え難民であり、機内での異臭テロリストでもあった僕は、すぐに洗濯をすることに決めた。

 

先払いの為、2泊分の料金を、タイバーツで支払う。

宿代は結構安い。しかも 連泊の為、割り引いてくれるという。一晩 千数百円だ。

なんだかんだで、空港で祝福された千バーツで、ここまでの交通費と、宿泊代まで賄えてしまった。  …ありがたすぎる。

 

トイレと、シャワーの説明をしてもらい、部屋に案内された。

結構広い部屋に、壁際に2段ベッドが3つあり、計 6床あるが、かなり贅沢な広さの部屋である。

 

今日は、男性ドミトリーは、二人しか泊まらないとの事なので、好きなところを使って良いと言われ、僕は下のベッドを確保し、荷物をほどいた。

 

そして、早速洗濯に行く。

バルコニーは結構広く、洗濯機も二つあり、洗濯物も干せるスペースまである。

ハンガーなども大量にあり、いつも大活躍の、自前の洗濯ロープを張る必要もない。

新しいであろう方の洗濯機に、全ての洗濯物をぶち込み、適当な量の洗剤もぶち込み。

「おまかせ」というコースのボタンを押して、僕は鼻歌混じりに部屋に戻った。

 

部屋に戻ると先程お会いした、唯一の 同宿の男性がいた。

改めて挨拶をすると、三上さんと言う男性で、30歳だという。

 

下半身がガッシリした男性で、背は僕より少し低い。聞くとサッカーをやっていたという。

どうりで体格がいいはずだ。そして、昭和の匂いのする、中々の男前である。

 

ずいぶん旅慣れた感じだったので、話を聞くと、マレーシアの方面で仕事をしていて、この宿には、休暇の度に来ている との事だった。

とにかく、時間があればタイに来て ゆっくりしているとの事。

 

彼の話からも、日本で噂には聞いていた、タイの居心地の良さを感じる。

年齢の割には落ち着いた感じの彼と僕は、少し話すと すぐに意気投合し、

早速「飲みに行こう!」となった。

旅先ではインスピレーションが研ぎ増されているので、お互いに「合うか合わないか」がすぐ分かる 笑

 

そして、僕に勝手に ”タイの達人” 認定された彼に、行くお店を任せると、

ナント! 日本ではもう食べれない、

美味しい「新鮮 生レバーの店」に連れて行ってくれると言うのだ!! 

だが、、

 …た、タイで 生の内臓かぁ。。

 そんなモノを食べて本当に

 ダイジョブかしら??

とは思ったが、数年食べている彼は、一度もお腹を壊したことは無いらしいし、

昔、日本で修業した事のある タイ人店主のこだわりは凄いらしく、

「下手な日本の店より、

 間違いなく、美味しくて安全です!!」

という 彼の力強い日本語を聞き、僕も腹が据わった。

 

僕には洗濯物があるので、

「終わってからで良いですか?」

と聞くと、「おっけーっすよー!」

と普通に待ってくれる。

何か、この国の "おおらかさ" のようなものを、この国に来ている 日本人の彼からも感じる 笑

 

無事洗濯が終わり、干し終わった僕は、三上さんと街に繰り出した。

三上さんは、早速タクシーを停め、乗り込むと、タイ語で行き場所を告げた。

タイ語で普通にやり取りしている。

 や、やはり、もの凄い達人だ。。

と感心していると、

「いやぁ、最低限のタイ語覚えておくと、

 ナメられないんで、ぼったくられませんよ」

と笑いながら教えてくれた。

 

このタクシー運転手は しばらく走ると、

(ホテルなのか、高級住宅街なのか?)

という曲がりくねった 上り坂の入り口を前にして、三上さんと なにやらやりとりを始めた。

そして話はついたのか、車は坂を上り始めた。

 

すぐに、電話ボックスのような「詰め所」の様な建物が見えた。

そこにある、車止めのバーの前で止まる。

そして、そのボックスの詰所にいる男に、運転手がバーツ札を渡すと、バーが開いた。

タクシーは、奥へと進んでいく。

 うーん。。

 これから高速道路にでも乗るのだろうか??

と不思議に思っていると、三上さんが説明してくれた。

 東さん、ここはね。

 お金持ちの 私有地なんだけどね。

 ここの丘を通ると近道なんですよ。

 ここを通らないと 遠回りで 道も混むので、

 百数十円払うけど、結果的には

 値段は変わらないんですよ〜。

 昔はタダで通れたんですけどねー 笑

と教えてくれた。

 

何という事だろう!

ここは  "有料の近道" だったのだ!

所有する私道を、皆に勝手に "近道" 扱いされて、勝手に通られるので、土地の持ち主が頭に来たのか、それとも、

「商売になるな!」と思ったのか、

通行料を設定し、わざわざバーや 人まで設置して、お金を徴収しているらしい。。

なんともびっくりな話である。

タイ初日に、いきなり 個人経営の「関所」を通るとは、なかなかのレア体験であった。

 

やがて、無事丘を越えたタクシーは、道路に戻り、15分程走り、目的の場所に着いた。

そこは屋根付きの吹き抜けた「屋台村」の様なところで、七、八軒のお店が客席を囲む様な作りであった。

日本人らしき人も席にはいた。

 

店の中を見て、三上さんが「あれ?」と言い、

「あれ? 休みかも知れませんね。。」

と言い出したのだ。

二人で、奥のお店に行ってみると、ビニールシートが貼ってあり、明らかにやっていない。。

 

周りの店はやっていたので、三上さんがタイ語で聞いてくれたところ、生レバー屋の店主は、ご家族で、タイの自分の田舎に帰省しているとのことだった。

2週間ほどお店は開かないらしい。。

なんというか、随分 間の悪い時期に来てしまったものだが、こればっかりはしょうがない。

「マジかー。ごめんなさい。

 うーん、東さんどうします?」

と聞かれたので、

「周りの店はどうなの?」と聞くと小声で、

「そんなに美味く無いですよ。。」

と達人らしく情報をくれた 笑

 

「せっかく来たので、ここで食べましょう!」

と僕がいうと、彼もうなずき、席に座った。

レバ刺しを、食べられなかったのは残念だったが、少しホッとしている自分もいた。

やはり、ちょっと怖かったのだ。。

 

料理のオーダーは、達人の三上さんに任せる。

色々な料理と、チャンビアー(タイの一番有名なビール)を頼んでくれ、雰囲気もいいここで、僕と三上さんは、盛大に酔っ払った 笑

 

お腹がいっぱいになった僕らは、会計を済ませ、近場をうろついた。

達人の三上さんも、ここでは「レバー屋」しか来た事はないらしく、一緒に店を物色する。

 

オシャレそうなバーがあったが、顔を見合わせると、上級者の呑兵衛の同志の勘で、

(ここは、、違うかな…?)

と 鋭くなった呑兵衛のセンサーが働き、三上さんも同じく、酔っ払いテレパシーで、

 " ええ… そうですよね。。"

と、アイコンタクトできたので僕は、安心して、

「宿に帰って飲みませんか?

 そのお金は僕が持ちますので。」

と三上さんに提案した。

すると、ほっとした様に彼が、

「そうしましょうか?

 ええ、是非 そうしましょう!」

と、乗ってきてくれた。

 

実は僕は、宿代を払ってしまって、

タイバーツは、殆ど持っていなかったのだった。

最初、すぐにお金をおろそうとしていたのだが、

「そんなの、後でいいですよ。

 とりあえず俺が払うので、後で割りましょ」

という、三上さんの優しい提案で、僕は文無しだったのだ 笑

 

理由を聞くと、

 東さんは、たぶん 大丈夫な人だから。

と、いつの間にか僕は、これまた東南アジアの、百戦錬磨の達人しか分からないであろう、

「マトモな人認定」をされていた。

 

そんな僕は、宿で まだまだ飲むために、三上さんの停めてくれたタクシーで、オンヌットの宿へと戻って行ったのであった。

 

もちろん、このタクシーの支払いも、優しい三上さんである!

 

戻ったら、すぐにお金を下ろさなければ。。

 

続く。

 

f:id:matatabihaiyuu:20220217174043j:image

↑ 本当は食べれるはずだった生レバー達

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本人だらけの不思議なバンコク

 

第118話

日本人だらけの不思議なバンコク

 

パヤタイ駅で大恥をかいた僕は、改札から一番端まで、逃げ延びていた。

ここまでくれば、僕の失態を見た人はあまりいないはずだからだ  笑

 

先頭車両から、電車に乗り込む事にする。

不思議な事に、改札を入ると すぐにまた警官が立っていた。

 

空港の改札では "国際空港" だから 警戒しているのかと思っていたが、どうやらバンコクは全体的にモノモノしいみたいだ。

僕の行った3カ国では、鉄道の改札内に警察が立っているなどと言う事は、これまで 全く無かったからである。

 

僕はここでハッとした。

 

そういえば、僕が最初、

マレーシアから、マレー鉄道で国境を超えて、

そのままタイに入るという、

深夜特急のオマージュルート」を断念したのは、2年程前にバンコクで起きた

「爆破テロ事件」の余波の影響であった。

 

そのマレーシアからの入国ルートは

外務省から、「レベル3」渡航中止勧告が出ていたのだ。

つまり、テロへの警戒で、タイはまだ ピリピリしている真っ最中なのだろう。

 

 

先頭車両から車両に乗り込むと、来た電車はまた混んでいた。

席は埋まっていたので、立っていると、やはりまた日本人がいた。

僕の向かいの席に座っている 50過ぎの観光客のおじさんは、何やら食い入るようにガイドブックを読んでいる。

(ん?? やけに一生懸命読んでいるな。。)

と思って見てみると、それは バンコクの夜遊びガイドブックだった。

 

彼もタイに来てまもない様に見えたが、

(どうせ日本語はわからないだろう!)

とばかりに、その風俗のガイドブックを広げて読んでいる。。

そこには、

バンコクの夜を楽しむならココ!」

とか、

「女の子 お持ち帰りOKな店」など、

どうしようもない日本語が並んでいる…

 

わざわざ そう言う目的で タイに来るおじさんがいるとは、日本でも話に聞いていたが、

実際にそれを目の前にして 僕はかなり驚いていた。

(おっ、おぉう…  本当にいるんだ。。こんな人)

と 逆に一瞬感心してしまった。

 

しかし、一体何を考えているんだろう… このおっさんは?

まぁ、旅の目的はそれぞれだとしても、人様の国に来て、

公共の電車の中でそんな物を広げているのは、流石にありえないだろう。。

同じ日本人として、僕の方が恥ずかしくなってきた。

 

そういえば、一昔前の事だが、何かのインタビューで、

ヨーロッパから来た外国の方が、

日本の通勤電車に初めて乗った時に、

 

日本のサラリーマンのおじさんが、

週刊誌や 漫画の「裸の描写」などを、車内で普通に読んでいて、

 "この状況 ありえない!" と本当に驚いた。

と言う話をしているのを 聞いた事があった。

(今は さすがにそんな人は、

 日本でも滅多に見ないが…)

 

だが、今度はタイで僕が驚く番だった。

(おいおい、頼むよ… おっさん。。

 何広げてんの… 俺が恥ずかしいよ。)

と、いきなり日本人にビックリさせられたのだった。

 

この、「旅の恥はかき捨て」という言葉を

はき違えたおじさんは、

スクンビット」という駅で降りて行った。

この体験は、結構な衝撃だった。

 

知り合った旅人たちから色々と話は聞くし、僕もそこそこ生きているのでそんな潔癖でもないし、大概の事は笑えるのだが、、

何か この、日本ではあまりお目にかかれない、

おじさんの生々しい 丸出しの欲望は、ちょっと笑えなかった。。

 

読んでいる時の表情も やばい顔になっていたので、

 おじさん… あなたね、、

 その顔だけで 軽犯罪法に引っかかりますよ…

と言いたくなったのは、僕だけではないはずだ。

 

そんな電車は、さらに数駅過ぎて、やっとオンヌット駅に着いた。結構な田舎を覚悟していたが、車窓から見えてきた街は、そんな感じではなかった。

 

ここオンヌット駅にも、改札に向かう途中、やはり後ろ手に組んだ警官が立っていた。

切符のカードを改札機に入れて、無事駅の改札を出た僕は、そのまま階段を降りた。

 

高架鉄道の下は、鉄道に沿うように国道になっており、向かい側にかなり大きいショッピングモールがある。

ほとんどの買い物はここで済んでしまいそうな大きさである。

 

ひとつ驚いた事がある。

階段を降りてすぐのところに、盲目の女性がいて、

今は懐かしい、ハンディタイプのカラオケマイクで、歌を歌っていた事だ。

(ん? …やけに歌が上手いな。)

と感心して しばらく見ていると、

どうやら 歌自体も音源から流しており、

「口パク」であるようだ。

 

マレーシアのクアラルンプールにも、盲目の方が駅からの階段を降りた すぐ横におり、ティッシュを売っていたが。。

 

カラオケを歌ってアピールするというのは、かなり斬新に思えた。歌には、より訴える力があるからだろうか??

そんな僕は、不思議と心が動き、先程の切符を買った残りの小銭を、彼女に気づかれないように、そっとカゴに入れた。

そして、Googleマップ先生を見て、場所を把握した僕はその歩道を歩き出した。

 

初めて歩くタイの街は新鮮だった。

高層マンションは、ちょっと入ったところにちらほらあるが、道の横は、三、四階建ての建物ばかりである。

賑わっている小さな屋台村のような所もあったし、ストアや、マッサージ屋さん、貴金属店、初めてみる看板のコンビニ、セブンイレブン、商売のついでに宝くじを売っている店もある。

脇道には、屋台も出ており、果物や野菜なども パラソルの下で売っている。

歩道に沿って、ずらっとお店が並んでいて、巨大な商店街のようで本当に楽しい!

美味しそうな、日本のラーメン屋も発見した。

 

そんな街を堪能しながら、スクリーンショットしておいた、宿までの行き方も見ながら、

ここだというところで右折する。

 

直進して行くと、駅前のモールより一回り小さいが、また綺麗なショッピングモールがある。

(二つも大きなモールがあって、

 この街で競合しないのだろうか?)

と思ったが、きっと大きなお世話だろう。

 

ここから道路を渡ると、路地に僕の泊まる宿があるはずである。

だが、道路を渡ろうと思ったが、ここには信号が無く、交通量も多い。

危なくて渡れそうにない。。

しかし 信号まで戻るとすると、右折したところまで、かなり戻らなければならない。

 

みんな どうしているのか? と見ていると、しばらくすると 誰かが強引に車を止めて道を渡っていく。そのついでに数人が渡っていく。

どういうタイミングで渡れるのかが さっぱり分からない僕は、しばらく呆然としていたが、何とかこの道路を渡ってみることにした。

 

一人では怖いので、歩道にいた 道路を渡りそうなタイの男性を見つけ、気付かれないように、彼の後ろにピッタリと付いた。

まるで「JOJOの奇妙な冒険」のスタンドの様に。

彼が轢かれたら、僕も轢かれてしまう…

まさに一心同体である。

 

やがて僕は 彼の動きに併せ、一緒に道を渡った。

一瞬、

 え?! このタイミングで?!

と思ったが、車たちは止まってくれ、僕たちは無事に道を渡ることが出来た。

 

渡ったすぐの路地に入ると、目印の日本料理屋があり、その向かいに宿があった。

 

インターホンを鳴らすと、上がってきて下さいとの事で、ドアが空いた。

 

階段の端には、サンダルなどがキチンと並んでおり、どうやらここも土足厳禁のようだ。

 

上がり切ったところで靴を脱ぎ、僕はフロントがありそうな、共用スペースに足を踏み入れた。

そこは、僕が追い求めていた

日本人旅行者が溢れかえっていた。

 

つづく。

 

f:id:matatabihaiyuu:20220203190122j:image
↑ タイでも猫さんは健在☺️

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バンコクの改札 引っ掛け問題

 

第117話

バンコクの改札 引っ掛け問題

 

電車のマークを追って行き、到着した改札から、バンコクの鉄道に乗る前に、

最初に連絡した日本人宿のオーナーさんからメールが来ていた。

 

ドミトリーではなく、シングルルームで、

扇風機はあるが、なんと、クーラーが無い部屋なら空くとの事。 値段も思ったより安い。

 

(クーラーが無くて平気かな…?)

とは思ったが、この宿にどうしても泊まってみたかった僕は、

(ま、、何とかなるだろう。)

と思い直し、お世話になる事にした。

明後日から 三泊予約する。

予約のメールを返したところで、電車の切符を買う事にした。

 

チケットオフィスで

「オンヌット駅まで下さい」と言うと、

「そこまでは買えません。」と言われた。

乗換駅の「パヤタイ駅」までしか買えないとの事。

 

仕方がないので、パヤタイ駅までの切符を買う事にした。

先ほどの千バーツを出し 支払う。

大きいお札は 早めに崩しておいた方がいい事は、各国での初日で学んだことだ。

 

お釣りと一緒に、プラスチックのコインを渡される。

普通はであれば、そのコインを見て

(これ… 何だろう?)と戸惑うだろう。

だが、僕は慣れたもので、お釣りと共にそれを受け取り、

「サンキュウ!」と言って改札へと向かった。

そして僕は、そのコインを 日本の Suica のように改札にタッチして、

迷いなく改札内に入って行った。

 

何故、僕がこのシステムを知っているかと言うと、実はマレーシアのクアラルンプールのモノレールが、

この ”プラスチックコイン タッチシステム” だったのだ。

 

コインの中に、運賃のデータが入っており、

改札を入る際は改札機にタッチし、

降りる駅の 改札から出る時には、このコインを 改札機の穴に入れるとゲートが開く。

そして、穴から回収されたコインは、たぶん再利用される。

 

この、コインが 切符の代わりのシステムは、日本の紙を使うシステムと違い、

(エコだなぁ…)と 僕は感心していたので、よく覚えていたのだ。

 

もちろんマレーシアでは、最初 戸惑ったが、そこは俳優である。

前の人の行動を注意深く観察し、入り方、降り方をマネして、問題なく利用できた。

(その際 相手に「何?」と言う感じで

 振り帰られるほど、相当集中して

 手元を 注視していたようだが 笑)

 

そんな僕が、鼻歌交じりに改札に入ると、何やらモノモノしい。。

警官らしき人が、何人か立っている。

マレーシアのペナン島で見た 軍人さん以来の、威圧感である。

空港駅だからだろうか??

 

ホームに行くと 結構人がいて、そこそこ混んでいる。

始発駅なので席に座れたが、途中駅から結構人が乗ってくる。

昼だというのに、電車に乗る人が多いようだ。

 

改めて路線図と睨めっこをする。

よく見てみると、空港からの電車は、

ARL(エアポート レイル リンク)と書いてあり、

乗換駅のパヤタイ駅からのBTS高架鉄道)とは、鉄道の種類が違うようだ。

(だから、パヤタイまでしか買えなかったのか…)

と 僕は理解した。

 

駅に着くたびに、駅名をチェックし、路線図と見比べる。

「えーと、あと四駅か…」

思わず独り言をつぶやくと、隣から日本語で

「そうそう、あってる…」

と日本語が聞こえた。

 

隣を見ると、スラックスにポロシャツの、紳士然としたおじさんと目が合った。

 

 えーと、日本の方ですか?

 

 はい、そうですよ。

 タイは初めてですか?

 

 はい、今日来ました。

 電車 結構混んでますね…。

 

と話が始まり、僕とその落ち着いた感じのおじさんと、パヤタイまで少し話をした。

やはりバンコクは都会で、通勤時間は満員電車になると言っていた。

 

だが、日本とは違い、ホームがかなり混むらしい。タイの人達は、電車に無理して乗り込まないので、車内はそこまでギュウギュウにならないのだそうだ。

その分ホームが混むのだとか。。

(うーん… やっぱりタイも面白いな。)

と 僕は早速ワクワクしだした。

 

ホームからエスカレーターで降り、コインを入れて、改札を出た。

先程の紳士は、一緒に下まで降りてくれ、乗り換えの方向を教えてくれた後、お礼を言う間も無く、すぐにいなくなってしまった。

 

なんとなく今までの雰囲気とは違う気がした。

イミグレーションでも、実は日本人が多かった。

やはりタイでは 日本人は珍しくもないのだろう。

今までは、他国で会った日本人とは 結構交流が生まれたが、ここバンコクで初めて話した人とは、非常にあっさりしたものである。

 

確かに、普段から日本人が周りに多ければ、わざわざ深く交流しようとは思わないのだろう。

彼らからすると、日本にいる時と同じ感覚なのかも知れない。

 

人の流れに付いて行ったこともあり、すぐに乗り換えの、BTSのパヤタイ駅の改札に着いた。僕は、早速コインの切符を買うことにした。

 

窓口に並び、自分の番になったので

「オンヌットまでのチケットを下さい」

と言うと、窓口の女性に 券売機を指差され

「あそこで買って下さい」

と言われた。

「ん?  いや、あの… え?

 ここで買えないんですか?」

とびっくりして聞き返すと、

「はい、ここは両替だけです。あとは、

 ワンデイパスなどしか売ってません。」

と、はっきり言われた。

 

(そんなバカな。。

 窓口で切符を買えないなんて

 そんな話、どの国でも聞いた事がないぞ…)

 

そう思い

「空港では 窓口で売ってくれましたが…」

と言って粘ろうとしたが、慣れた調子で、

BTSの普通切符は、機械でしか買えません。

 ごめんなさいね。

 両替でないなら どいて下さい。」

と言われた。

後ろを見ると、何人かが後ろに並んでいる。

僕は憮然としながら、窓口から離れた。

 

納得いかずに、そのまま窓口を見ていると、確かに、皆、両替しかしていない。

切符を買っている人は一人もいない。

 

(そういうものなのか… うーん。。

 いきなり、カルチャーショック…)

と思い、僕は仕方なく券売機に向かう。

 

券売機の前の路線図で、駅と値段表示を探す。

オンヌット駅までの値段を調べ、切符を買おうとすると、お札を入れる場所はなく、コインしか入れる場所がない。。

かなり古めかしいゴツイ券売機だ。

 

(なるほど、、硬貨しか使えないから、

 窓口で両替するシステムなのね。)

と思い、買おうとしたが、硬貨が足りない。。

お札を両替して貰うしかない。

僕はまた窓口に行くハメになった。

 

窓口に行くと、先程のスタッフの女性が

(また来たよコイツ…)

と言う顔をしている。

 

少し 恥ずかしかったが…   今度は、

(もうわかってますよ? ワタシは。)

と言う顔で 平静を装い、100バーツ紙幣を出し、両替して貰った。

 

券売機に44バーツ分の硬貨を入れ、やっとこさボタンを押す。

 

 例のコインが出てくる…  はずだった。

 

しかし、そこで出てきたのは 何故か、

 プラスチックのカードだった。

ニュッと、薄いスイカのようなカードが出てきたのだ。。

 

(ええ? あ、なに? ボタン間違えて、

 スイカ的なものを買ってしまったのか??)

と思い、少しパニクった僕は、再び窓口に向かった。

 

窓口のお姉さんは、僕を見て

(ええ? また来たんだけど…この人??)

と言う顔をしていた。。

 

「あ〜、え〜っと。。あの、

 普通の切符を買いたかったんですが、

 これが出てきちゃったんですけど…」

おずおずと言うと、 少し呆れた顔で、

「これ、これが普通の切符です。

 コインの代わりにカードなんですよ。」

と、苦笑いしながら教えてくれた。

 

僕はもう、無理矢理に笑いながら、

「ああ… そうなんですかぁ。。

 すいません、何度も。 し、親切にどうも!」

と無理に明るく振る舞い、恥ずかしさを誤魔化す為に、わざと、そのカードを 改札を通すようなジェスチャーをすると、

彼女は笑いながら 大きく頷いてくれた。

僕は「サンキュー!」と笑顔でお礼を言って、改札へと向かった。

 

それにしても、初めての国の初日は、やはり意図せず色々起きる。。

何度も、窓口に戻って来た僕を見たお姉さんはきっと

(この人、新手のナンパかしら? )

と思った事だろう… 恥ずかしい。。

 

 うん。これくらい よくある事さ。

 まぁ、何事も経験、経験! よし!

と切り替えた僕は、勢いよく改札にカードをタッチした。

 

…が、ゲートは開かない。

 

何度かタッチする。

 

…が、やはりゲートは開かない。

 

僕が懲りずにバシバシやっていると、後ろから肩を叩かれた、振り返ると、大きな白人の男性がいて、改札機の 切符入れの様な所を指差して、

「インサート」と教えてくれた。

 

そう。。このカードは、空港からのコインのように、タッチするのではなく、

切符と同じで、改札機に入れ、中を通すシステムだったのだ!

 

僕は顔を真っ赤にしながら、小声で

「…サンキュ。。」と呟くと、そのカードを改札機の穴に入れた。

すると改札のゲートは開き、入れた所のすぐ上に、今入れたカードが出て来ていた。

僕はそれを取り、逃げるようにして、ホームへと走り去った。

 

一体僕は、電車に乗るだけで、どれだけ恥をかくのだろう。。

空港から、鼻歌混じりにコインを操っていた 百戦錬磨の旅人の東正実さんは、どこに行ってしまったのだろうか??

 

 でも、コインはタッチ式で、

 カードは、改札機に挿入方式なんて

 引っ掛け問題じゃんか… ずるいよ。。

 

と呟きながら僕は、タイに来たばかりだというのに、

早速この国に、ケチョンケチョンにされていたのだった。

 

 やれやれ… 先が思いやられる。。

 

つづく

 

f:id:matatabihaiyuu:20220116174945j:image

バンコク鉄道路線

BTSの改札の方式も

 最近は、色々変わっているらしい。

 今は、切符のカードは タッチして入る

 コイン方式と一緒になったらしい。

 チケットも窓口でも

 買えるようになったらしい。)

 


f:id:matatabihaiyuu:20220116174654j:image

↑ 2017年当時のタイバーツ

 プミポン国王が描かれている。

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生初の タイとクアイテ

 

第116話

人生初の タイとクアイテ

 

晴れ渡る空を、気持ち良さそうに飛んでいた飛行機は、

時間通りにバンコクスワンナプーム国際空港に着陸した。

 

隣のご夫婦は、降りる際にも 満面の笑顔で会釈してくれた。

多少の罪悪感を感じながらも僕は、

「ハバァ グッタイム!」と最高の笑顔で挨拶した。

 

飛行機を降り、イミグレーションに向かい、入国審査の列に並ぶ。

実は僕は、カンボジア −  ベトナム 間の移動が、あまりにスムーズで 審査が甘かった為、すっかり油断していた。

 

パスポートを、審査官に見せる。

その厳しい顔つきをした、細身の年配の男性職員は僕を見て、手元を人差し指でトントンして

「クァイテ」と言った。

 

(クァイテ…?  何だろう??

 「通って良い」と言う タイ語かしら?)

 

そのまま通ろうとすると、止められ、

かなり強めに「クアイテ!」と言われた。

 

僕は、タイ語はさっぱりわからない。

それとも知らない英単語だろうか?

 

まだ、そこまで国越えの経験値が無い僕は、うっかり携帯を出して、言葉を調べようとした。

すると鋭く

「ダメだ! しまえ! 携帯を仕舞え!」

と英語で叱られた。この言葉はよく分かった。

 

僕はここで初めて、空港のイミグレーションで携帯を出してはいけない事を知り、直ぐにしまった。

 

(しまった! 携帯、やらかした!!

 だけど、先刻から彼は何を言いたのだろう?

 一体何が問題なのだろうか??)

 

やがて彼は、諦めたような顔で

「プリーズ ライティング」

「ライト、ディスペーパー」

と言ってきた。

彼の手元を覗き込むと、そこには入国カードがあった。

 

(ああ、そういう事か! 忘れてた!!)

僕は入国カードを書き忘れていたのだ。

カンボジアベトナム間で、入国カードを書く機会がほとんどなかった為、僕はすっかり忘れていたのだ。

僕が慌てて書こうとすると、一度脇に退いて、そこで書けという。

彼は次の入国者を呼び、審査し始めた。

 

そこで僕は、ある事を理解し、背中に電気が走ったように、謎が解けた!!

彼は、日本のパスポートを渡した僕に 気を遣って、わざわざ日本語で

「書いて!」と言っていたのだ。

てっきり、英語かタイ語でしか やりとりは出来ない と身構えていた為、彼がカタコトで日本語を喋っている事に、全く気がつかなかったのだ。

 

(でも、「クアイテ」って言ってたし、

 日本語だと思うわけないでしょ。。)

と 最初は少し腹も立ったが、理由が解ると 笑いが込み上げてきた。

 

(さすがに「クアイテ」はないだろ。。

 自信満々の怖い顔で「クアイテ!」って  笑)

 

だが、笑っている場合では無いし、笑いながらカードなぞ記入していたら、確実に 怪しい奴だと思われるはずだ。

僕は笑いを噛み殺しながら、必死に素早く入国カードに記入した。

書き終わって 待っていると、彼は 次の入国者の対応が終わったところで、また僕を呼び寄せてくれ、今度はすんなりと通してくれた。

 

しかし、久しぶりに焦った。。

「タイは初心者向け」と聞いて舐めていたが、自分にとっては 初めての入国である。

僕は気合を入れ直した。

 

入国が終わると、後はお金を下ろす作業だ。

まず、ネットでチェックしておいた、

空港内で "1番レートが良い" とされている地下の方の Exchangeへと向かった。

時間の問題なのか、穴場なのか分からないが、客は僕しかおらず、周りに人も全くいなかった。

とりあえず、残っていたベトナムドンを全てタイバーツに変えた。

だが、出国の前にほとんど使ってしまっていたので、数百円分にしかならなかった。

 

次に僕は、VISAのプリペイドカードで、タイバーツを下ろす事にした。

ATMを探そうと周りを見渡すと、誰もいない。

その広い廊下の向こうに、ATMが見えた。

早速向かって 財布を取り出そうとした僕は、ハタと止まった。。

 

何かが落ちていたのだ。

よく見ると、バーツ紙幣だ。

拾い上げてみると、1000と書いてある。

 

頭の中で計算してみる。

(えーと、さっきのExchangeだと、

 1バーツが日本円で3.3円位だったから…

  おお! 3300円か。 結構でかいな…)

 

僕は周りを見渡す。。誰もいない。

しばらく行ったり来たりしてみる。。

 うーむ、誰も来ない。

 というか、俺しかいない。

落とし主らしき… というか 人っ子ひとりいない。

 

「ん… よし!」と言って、僕はその千バーツを頭上に掲げ、一礼してから財布にしまい、

ATMでお金を下ろすのをやめた。

(きっと タイが僕を歓迎してくれたのだ。

 ありがたや。 ありがたや。)

僕はそう思う事にしたのだ。

 

それから僕は、日本人宿に電話する事にした。

ついに僕は、今回の旅で 初めて、日本人宿に泊まることにしたのだ。

「日本人宿」とは、原則日本人しか泊まれない宿で、日本人にまみれることができる宿である。

 

予約方法がよく分からない僕は、とにかく公衆電話で電話する事にした。

そう! ここタイには公衆電話があったのだ。

僕は 電話越しの英語の会話は厳しいが、今回は日本語が通じるはずなので、安心して電話をする。

 

空港のエスカレーターの脇に、公衆電話が3台並んでいる。

真ん中と右側の電話の ちょうど間に、ホームレスなのか、薄気味の悪い男がうずくまっており、怖いので、1番左の電話を使う。

 

コインを入れ、しばらく待っても、呼び出し音も何もしない。。

(こういうものなのかしら?

 タイの公衆電話は??)

と思い、ホームページの電話番号を打ってみるが、何も起きない。

 

一度切り、もう一度やり直すが、やはり何も起きない。。

 

(この電話、壊れてるっぽいな。。)

僕は隣の電話を使いたかったが、とても、

「どいてくれませんか?」

などと言える雰囲気ではない。。

何か、今まで見た事のない 得体の知れなさが、彼にはあった。。

 

しょうがないので、他の場所に公衆電話がないか探す事にした。

階を変えて一回りしてみたが、やはり公衆電話は、見つからなかった。

 

僕は意を決して、先程の公衆電話に戻る事にした。

(頼んで、せめて横にずれてもらおう…)

と覚悟を決めて先程の公衆電話に戻ると、不思議な事に、先程までいた男は、いなくなっていた。

 

ホッとしながら、右の電話にコインを入れると、日本でもおなじみの「ツー」という音が聞こえた。

(やっぱり、壊れてたのか左端。。)

と思いながらも、電話番号をプッシュする。

 

やがて、呼び出し音が鳴り、

「もしもし…」と男性の声がした。

日本語を聞くと、やはり安心する。

 

 今日から、二、三泊したいのですが。

 

 いや、実は今日と明日は、満杯なんですよ。

 僕もこの電話に出てますが、

 この宿のスタッフではないんですよ〜。

 

 ええ?! そうなんですか?

 

 はい。 オーナーさんが今

 旅行に行っちゃってるので、代理です。

 オーナーさんのGmail教えますので、

 今メモれますか?

 

 あ、は、はい。

 ちょっと待ってくださいね〜

 えーと…

 

という感じで僕は、誰だか分からない男性から、口頭でメールのアルファベットを聞き取ることとなった。。

電話越しにメールアドレスをメモるという、原始的なやり方に

(一体何時代だ。。 笑)

と メモしながら笑ってしまうが、

アナログと工夫が最強なのは、この旅で学んだ事だ。

僕はお礼を言い、電話を切った。

 

さて、メールである。

聞き取ったメアドが間違っていたら、

そこで「ジ・エンド」である。

僕は ドラクエ2の、"復活の呪文よろしく、慎重にメールを打った。

アドレスエラーで、メールが帰ってこなかったところを見ると、

どうやら僕の「復活の呪文」は無事、旅の続きから 始められるようだ。

 

そして、今日、明日は満床と聞いたので、返信が来るまで、今日泊まる宿を確保する事にした。

実は日本人宿は、もう一つ見つけていた。

だが、僕の憧れの「カオサン通り」の近くではない。

そこから結構離れた、高架鉄道であるBTSに乗り「オンヌット」という駅で降りた所にあるとの事だ。

 

口コミはとても良く、宿の主人もとても良い人だと書かれていた。

「今日は、どうしても! 中華が食べたい!!」

と思ってしまう様に、

もう "口が日本語になってしまっている" 僕は、とりあえずこっちの宿に泊まる事にした。

 

とりあえず、その宿に電話してみると、気のよさそうな男性の声がした。

今日泊まれるか聞いてみると、全く問題ないという。

 全然空いてますよ〜! 大歓迎です。

 宿には、何時頃着けそうですか?

と、チェックインの時間を聞かれて、僕は止まった。

 

(ええと… すぐに宿に向かうけど、

 どれくらい時間がかかるのだろうか??)

と思案していると、

 今どこですか?  空港ですか?

と聞いてくれたので「そうです」と答えると、

大体の所要時間と、乗る路線を丁寧に教えてくれた。

 今日、初めてタイに来たばかりなので、

 時間通りにつけるかわかりませんが…

と言うと、

 気にせずに ゆっくり来て下さい。

 お待ちしてますので。

と優しく言ってくれた。

 

その後、鉄道の改札を探し出した僕は、

駅の窓口に置いてある、英語の路線図を見つけ、

「On Nut」と書かれている場所を探す。

 

タイの路線図は色分けされており、とても見やすい、

空港からは 「パヤタイ」という駅で、一度乗り換えが必要らしいが、乗る路線は特定出来た。

 

「よし! 行こう!!」と気合を入れる。

 

そして僕は、ついに空港を出て、本当はこの旅で最初に訪れるはずだった地、タイへと踏み出したのである。

 

つづく

 

f:id:matatabihaiyuu:20220110185524j:image

↑ タイ入国用の入国カード

 何故か 2枚渡されていたので、

 一枚は記念に取っておいた。

 

f:id:matatabihaiyuu:20220110183254j:image

↑ タイの空港の公衆電話

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が見た ハノイとベトナム

 

第115話

僕が見た ハノイベトナム

 

ベトナムの "首都" であるはずなのに、何か おっとりとした、田舎の風情のある都市。

それが僕にとっての、ハノイの印象であった。

 

ハノイは、ベトナムのほぼ最北端である。

北に行くともう中国。もう中国なのである。

 

人生で初めて、国境のある大陸である 東南アジアを旅していて、今更 実感した事だが、大体 国の境目には、大きな川か、山脈がある。

 

それは、墨田区荒川区が、荒川で分かれているように…

神奈川県と、東京都が、多摩川で分かれているように。。

秋田と岩手、山形と宮城が、奥羽山脈で分かれているように。。

 

ベトナムと、中国も山によって国境が敷かれている。

カンボジアと、ベトナムも、川が国境になっている。

 

戦争によって、土地を決めてきた我々人類は、戦国時代から ”要所” が国境(くにざかい)になる事が、そのまま今も変わっていないのだ。

当たり前のことだが、その事を改めて 島国の日本を出てみて初めて、頭ではなく 肌感覚で実感した。

 

ベトナムは、ホーチミンハノイも、汗かきの僕からしたら、

とにかくどちらも暑い のだが、ベトナム人からすると、北側のハノイは とにかく寒いらしい。

 

特にホーチミンの友人達は

「とにかくハノイは寒い、風邪をひく。」

と皆口を揃えていうが、僕には

(どっちも あっつい! そんな 変わらんし…)

としか思えなかった。

 

時期的なものもあるのだろうが、日本からきた僕からしたら 結論は、

 

 どちらも倒れそうなくらい暑い! である  笑

 

首都のハノイには 英雄のホーチミン廟もある。

ホーチミンの遺体が、ロシアのスターリンのように防腐処置され、安置されているらしい。

だが 例の如く、人の死んだところに近づきたくない僕は、ホーチミン廟はスルーした。

 

不思議なのは、ホーチミンが大都会であるのに対し、

ハノイは 首都 なのに 田舎の風情である事だ。

 

これは、ある人が言っていたのだが、

  ホーチミンは、大都会 東京で、

  ハノイは 古都 京都だよ。

という評である。

 

確かに言われてみると、ホーチミンは、最先端の都会であり、人も多く、ビルも多く、大都会なのに対し、ハノイは昔の街並みが残されている。

 

正に「言い得て妙」という感じで、僕は納得した。

 

東南アジアには、野良の動物が、色々いるが、ここハノイには 何故か、野良チャボ が結構いる。

ひよこを連れた、親の鶏が、道路脇の街路樹の 土を掘り返している。

それも「ココホレワンワン」と言わんばかりに、犬の様に もの凄い勢いで掘っている。

 

(ミミズでも探しているのだろうか?)

と思いながら 見ていると、

また思いが 浮かぶ。

 

(これって…  野良 じゃ無くて、

 放し飼いにされているだけで、

 実は 飼い主がいるのだろうか?)

 

「餌は自分で取ってこい!」という

"放牧システムの飼育" であるならば、この勢いで、ミミズを探しているのにも、納得がいく。

 

だが、その後に見た、ツガイのチャボ二匹に至っては、

(お互いを埋めようとしてるのか?)

としか思えない程、相手に砂をかけ合いながら掘っている。。

 "  もはや意味がわからない…

  夫婦喧嘩でもしてるのだろうか? "

奇妙な光景であった。

(因みに チャボとは、色のついた鶏の事で

 要は、カラフルな オシャレな鶏の事である)

 

そして、ドンハー門近くでは、ベトナムで初めて

" 見てはいけないもの "  を見てしまった。

それは、屋台で売られている犬だった。

いや、犬だったというか、元が犬であった…

というべきか。。

一度 丸焼きにしたらしいそれは、色々な部位に切り分けられ 並べられており、想像の斜め上の部分で切り分けられていた。。

 

僕は思わず見てしまったが、流石に気持ち悪くなり、その場をすぐに離れた。

旅の間に、色々見てきたつもりだったが、さすが直視し続ける事は無理だった。

何故か ホーチミンでは、一回も見なかった光景であった。

 

また、スクーターに、子供や奥さんとの3人乗りは、よく見かけたが、

しまいには、愛犬も乗せた、一匹含めの 3人乗りを見た時は、思わず 笑ってしまった。

 

やはり、ベトナムでは、ベトナムでしか見れないものがあるし、刺激的であった。

そして、幸いな事に "シクロボッタクリ事件" 以外では、特にボッタくられたり、

発生件数が多いという、ひったくり被害にも 全くあわなかった。

 

ビールも50~60円だし、ローカルレストランであれば、食事も一食 100円 200円で食べられるし、かなりおいしい。

物価の安さと、ビールの安さ(ここ重要!)、治安を考えると、まだ三か国しか行ってない僕だが、この時点では、一番居心地の良い国だった。

 

「フランス領であった 元植民地は、

 どの国も、パンが美味しい!」

という冗談のような情報を、前に日本人の旅人から聞いていたが、確かに、フランス支配の長かった ここベトナムは、バインミーに代表されるように、パンが美味しかった。

(蟻パンも、蟻のいない部分は美味しかった 笑)

 

また、他の二か国と違い、あまり宗教色を感じなかった。

マレーシアはムスリム色が強いし、カンボジアは仏教のイメージが強い。

 

最初は、共産国家にありがちであろう

(”宗教の自由” が あまり無いのかな?)

と思っていたが、実はこれまたフランス領時代の影響で、意外なことにキリスト教徒が多いからだという。

(知り合ったユンさんもキリスト教徒であった)

確かに言われてみると、教会は至る所にあった気がする。

 

考えてみた所、

マレーシアは、ヒジャブをかぶっている女性が多く、禁酒の店も多い。

視覚的にも生活でも嫌でもイスラム教を意識することが多い。

 

カンボジアでも、目立つオレンジの色の袈裟を着ているお坊様が多くいるし、托鉢もある。

お寺の形も日本とは明らかに違うので、視覚的に仏教を意識する。

 

だが ベトナムでは、教会だと建物もあまり意識して見ていないし、生活の中でもあまり宗教行事に触れる機会もなかった。

もちろん仏教徒も同じ位多いらしいが、僕が行った土地では、お坊様は一度も見かけなかった。

 

たぶん ”国教” と言える宗教が無いので、より宗教色を感じないのではないか?

と勝手だが、そう結論付けるに至った。

 

とにかくベトナムの人達は、人懐っこく、笑顔が素敵であったし、肌の色や顔つきも日本人に近いので、不思議な安心感があった。

二度、この国を訪れた僕にとってベトナムは、治安が良く 人も良い、のんびりしとした 素敵な国というイメージのままである。

ただ、ちょっと道が汚いのが玉にキズであるが 笑

 

他の二か国とは、全く違う経験をさせてくれたベトナム

危うく沈没しかかった土地ではあるが 笑

 

僕は今でも、ベトナムも そこに住む人たちも大好きだ。

 

是非、僕がまた訪れたい国の一つである。

 

タイ編へと 続く

 

f:id:matatabihaiyuu:20220105184753j:image

動画 埋め合う野良チャボたち

https://m.youtube.com/watch?v=qIZM4UknF4U

 

f:id:matatabihaiyuu:20220105182623j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220105182453j:image

↑ 野良チャボの家族


f:id:matatabihaiyuu:20220105182513j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220105182301j:image

コーギーさんも3人乗り


f:id:matatabihaiyuu:20220105182337j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220105182312j:image

↑ 聖 ヨセフ大聖堂

 よく考えたら教会は多いし立派だ。


f:id:matatabihaiyuu:20220105182421j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220105182548j:image

ハノイにも、歩行者天国はある。

 こういうスペースはとても素敵だ^_^

 

f:id:matatabihaiyuu:20220105183100j:image

↑ ふらっと迷い込んだハノイの劇場

 若いスタッフの女性がとても親切な方で

 色々と教えてくれた。

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

いい日旅立ち ~桜とテロリスト~

 

第114話

いい日旅立ち~桜とテロリスト~

 

不思議なもので、携帯でかけておいたアラームの、1時間前に 僕はパッチリと目が覚めた。

少し心配していたのだが、全く問題なく、僕の心は昨日のままで、エネルギーに満ち溢れている。

 

そして、旅立ちの朝は不思議だ。

何故かスッキリとした気分で、早起きが出来る。

 

まとめた荷物を背負い、フロントへと向かう。

相変わらず朝から全開の 二階の民家のドアの前を通り過ぎ、日の差し込まない暗黒路地から出て、通りをいつものように左折した。

 

ホテルに入り、先にフロントでチェックアウトをし、宿のモーニングを食べる。

 うむ。。 良いパンだ。

 蟻さんもいないし。うまうま。

そのまま、コーヒーを飲みながら、ゆったりとタクシーを待つ。

 

時間の少し前にフロントに行って、タクシーのことを聞くと、電話をかけ、タクシーを呼び始めた。

どうやら、昨日予約していたのに、まだ呼んでくれていなかったようだ。。

だが、タクシーはすぐに宿に来てくれたので、問題はなく、メータータクシーである事を確認して乗り込み、僕は空港へと向かった。

 

最初混んでいた道は、市街地を抜けると全くスムーズに走りだし、予想より遥かに早く ノイバイ国際空港へと着いた。

 

今日は 国際線の為、早く着くに越したことはない。時間も有るので、空港内を少し散歩する事にした。

建て替えたのか、どうなのかは知らないが、この空港はかなり綺麗で新しい。

気持ちよく散歩ができる。

 

二階のフロアに、不思議なことに桜があった。

まさかハノイで桜が観れるとは思っていなかった。造花のようだが、何かホッとする。

桜は世界的にも人気なのか、ベトナムの親子も嬉しそうに記念撮影をしている。

また、子供達も大はしゃぎだ!

それを見ていると、とてもほっこりする。

 

その後、機械でチェックインしてみると、僕の席は、三列シートの通路側であった。

本当は窓側が良かったのだが、

(まぁ、真ん中じゃないから良いや。

 それに、トイレにも行き放題だからね!)

と前向きに考えた僕は、そのまま飛行機へと乗り込んだ。

 

びっくりしたのは、通路を挟んだ、僕の左前の席には背もたれが無く、完全に壊れていて、

「壊れています」という様な、張り紙一枚で 解決されていた事だ。

壊れたものを直さないのは、もう、東南アジアシステムなのかも知れなかった。。

 

飛行機の席に着くと、40代位の、姉さん女房風の ご夫婦がお隣だった。

黄色人種に近い白さの肌で、中東の方かな? という感じである。

奥さんが何か、ちょっと若い頃の

天空の城ラピュタ」のドーラを彷彿とさせる。ドーラさんの若い頃はこんな感じ? という雰囲気で、お化粧が特にドーラさんで、何か占い師のような雰囲気だ。

旦那さんは、スポーツ刈りで、ポロシャツジーパンで、健康的な男性だ。

 

お隣さんなので「宜しくね」という感じで会釈をすると、笑顔で会釈を返してくれて、僕たちは和やかに、テイクオフの時を迎えようとしていた。

 

だが、奥さんを挟んで窓側にいたスポーツマン風の男性は、飛行機が 滑走路にむけて動き出すと、目を瞑り、聖書を右手に持ち、左手は奥さんの手をしっかりと握り、神に祈り始めた。。

 

どうやら、飛行機が怖いようだ。

 

気持ちはわかる。

実は僕も飛行機はあまり得意ではない。

 

アメリカ同時多発テロ事件の映画の吹き替えや、

飛行機の墜落事故の再現ドラマに出た事のある僕は、飛行機が落ちたら ほぼ100で死ぬ事を知っているので、特に 飛行機が離着陸する時は、あまりいい気はしない。

だから、

(まぁ、落ちたら死ぬわな。。)

と、一応 覚悟を決めて乗る。

 

表向きは平静を装っている僕とは違い、彼は正直に神に祈り 妻に頼っている。

何か微笑ましい光景である。

 

やがて飛行機は、無事に飛び立ち、しばらくして、シートベルトを外していいよ。とランプが点灯した。

 

窓側の彼は、聖書を片手に、さらに神に祈り始めたが、急に止まった。。そして、祈りをやめた。

 

周りを見渡した彼は、急に具合が悪くなったのか、

「うっ、う、うーん。。」

と唸り始めた。そして、

「おえっ、うおぇ! うおおおええ!!」

と えずき始めた。

 

(おいおい… 怖がりすぎだろ。

 ついに、体調悪くなっちゃったかぁ。)

と少し笑っちゃいながら、心配していると、彼は僕の方を見て奥さんに小声で話し始めた。

 

彼「……な気がするんだ」

奥さん「ノー! ヒー イズクリーン。

    勘違いよ。。ねえ、大丈夫よ。」

彼女は逆に、大きなリアクションと声で話すので、よく聞き取れた。

特に「ヒー イズ クリーン!」がである。

 

僕はドキッとしていた。

 

(あれ? これ 原因は俺だな。。間違いなく)

 

 

実は僕は、彼女が言うような クリーンな人間などではないのだ。

何故ならば、小綺麗な見た目にみえるのだが、

実は、昨日 着ていたTシャツを、未だに着ているのだ。。

 

お恥ずかしい話だが、着替えがなくて仕方がなくこのTシャツを着ていたのだ。

 

つまり。。彼の体調急変の原因である匂いの素…

異臭騒ぎのテロリストは僕であったのだ。

 

言い訳をさせて欲しい。。

一昨日まで、旅の洗礼を受けていた僕は、旅では一番億劫なシャワールームでの洗濯を、ほとんどせずに過ごしていた。

昨日、屋上温泉を出て新しいシャツを着ようしたところで、はたと気づいた。

(この最後のTシャツを着てしまったら、

 明日の夜、着替えが無くなるな。。)

宿に帰って洗濯するのも 嫌だったし、まず 乾かないだろう、何より、今日中に荷物はまとめておきたかった。

 

僕は(うーん。。いけるだろ??)

と、一回汗をかき乾いていたTシャツを嗅いでみる。

 うん。。まだ、大丈夫。

全然臭わない。

僕はTシャツに 再び袖を通した。

そしてそのままそのまま眠り、朝また嗅いでみたが、大丈夫そうであった。

 

この行動をさせた一つの理由には、マレーシアで会った従姉妹の姉さんとの会話に一因がある。

 

旅を始めたばかりの、マレーシア2日目に、東南アジアが、こんなに暑いとは予想していなかった僕は、軽装で従姉妹のホテルへと、2時間程かけて到着した。

着いたはいいが、汗だくのダクダクであった。

まさか、こんなにビショビショになるほど 汗をかくと思ってなかった僕は、うっかり着替えを持ってきていなかった。

 

従姉妹に「新しいTシャツ買いたい」と言うと、

「気にしない、気にしない!

 みんな汗だくやし、みんな汗臭いよ。

 あっついアジアやし。みんなよう臭うで。

 まーくん、全然 気にせんとき〜。」

と言われた僕は、そのまま 真に受けてしまい、

 

今日の朝、自分のTシャツを 嗅ぎ。

(ちょっとやばいかな?

 いや、案外臭わへん。

 俺より、みんな臭うやろ?

 大丈夫やんなぁ〜)

と無理矢理自分を納得させて 現在に至っていたのだ。。とはいえ、普段は必ず着替えるのだが、今日に限り 着替えがもうない僕には

 

気にせんとき〜 きにせんとき〜 キニセントキ〜

 

という 従姉妹の言葉が、都合よく頭の中でリフレインされていた。

 

そして、少しでも汗をかかないようにと!

クーラーの中にしかいないように、いないようにと、涙ぐましい努力を朝から続けていて、ここまで汗は、殆どかいていなかった。

 

だが… どうやら、大丈夫では無いようだ。。

僕は反省した。臭いのは臭いよね。。と。

 "いける ! "  と思ったが、自分の匂いは 本人には、よく分からないのだと。

 

離陸の終わっている飛行機は、もう移動ができる。

僕は(寒かったら上に羽織ろう)と思っていた、"なけなし" の長袖シャツを羽織り、そのままトイレに向かった。

 

僕はトイレで Tシャツを脱ぎ、隠し持ってきていたビニール袋に入れ、長袖シャツを直接 肌に着て、何食わぬ顔で席に戻った。

ちょっとしたマジックである。

 

すると彼は、やはり僕に注目していたが、匂いの元であるTシャツを着替えたことにより、

「イエス、アイム クリーン」のはずの、匂わない僕を見て、

(うーん。。やはり勘違いだったのかな?)

とキョトンとしていた。

やがて彼は、奥さんと楽しそうに話を始めた。

 

彼より近い、僕のすぐ隣にいる奥さんは、何も気にしていなかった所を見ると

「彼は匂いに特に敏感な人」なのだろうと、勝手に自己弁護する。

 

彼には本当に悪いことをしたと思うが、僕のTシャツの匂いの一件のせいで、彼は飛行機への恐怖は、ほとんど忘れてしまったようだ。

 

不幸中の幸いである。。?

 

(まぁ、今後は 特に気を付けよう (^_^;))

と心に刻み、僕は飲み物を出すついでに、異臭騒ぎの元であるTシャツを、バッグの奥深くに封印した。

 

やがて飛行機は、何事もなかったかのように、ベトナムの空を飛び、やがてタイへと降りていった。

 

 ほんとに気をつけよう。。

 

続く

 

f:id:matatabihaiyuu:20220103230410j:image

ハノイノイバイ国際空港 綺麗。。

 

f:id:matatabihaiyuu:20220103231729j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220103230354j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220103231709j:image
f:id:matatabihaiyuu:20220103231720j:image

↑ 空港内のハノイの桜 みんな大好きチェリーブロッサム😌

 久しぶりの桜に癒された。。

 


f:id:matatabihaiyuu:20220103231715j:image

↑ 直すより、乗らなければいい。。

 安定の東南アジアシステム。

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅立ちの決意

 

第113話

旅立ちの決意

 

昨日も しこたま酒を飲んで寝た僕は、

部屋に降り注ぐ、明るい日差しで目を覚ました。

 

部屋は明るく輝き、不思議な事に僕は、久し振りに全身に力が漲っていた。

 

奇妙なもので、ここ数日の鬱のようだった自分と、今の自分が、同一人物とは思えないくらいスッキリしていた。

 一体なんだったのだろう??

 昨日までの あの無気力だった自分は。。

と 本当に不思議に感じる。

 

だが、とにかくここから脱出するチャンスである!

僕はとにかく、この部屋を出ることにし、ホテルのモーニングへと向かった。

そして、そのままチェックアウトの意思を、フロントに伝える事に決めていた。

今感じているこのエネルギーがある内に、とにかく明日 旅立つ事にしたのだ。

明日まで宿をとってしまっていたのと、少し自分の様子も見極めようとも思い、とにかく明日出ることに決めた。

 

ハノイに来た時には、まさか 逃げるようにして この街を去る事になろうとは、全く予想していなかった。

だが、今のこの 不思議なくらい漲る前向きな気持ちを逃すと、もう 二度とここから旅立てないような気がした。

とにかく、明日はここに泊まれないように 手続きをする事にした。

 

部屋から街に出てみると、街の様子が全くちがう。

というか、僕の感じ方が変わっているのだろう。。

少し周りを散歩してみると、全てを面白く 新鮮に感じる。

 

一瞬 (俺、躁鬱病なのかな??)

と自分を疑ってしまう。。

 

慎重に自分の心と向かい合うと、別に、

(す、す、す!  素晴らしいぞ!! 世界!!)

と大げさに感じているわけでは無い。

よく聞く 鬱の反動の様な症状は無く、落ち着いてこの街を暖かく眺めている自分がいる。

 

そう。。 ぼくはちゃんと、

街の温度を感じられているだけなのだ。

 

 うん、生きているなぁ。。

 俺は今、ここに、ただ存在して、

 ただ息をしている。ただ生きている。

 それにしても太陽ぉ! 笑    

 ほんと、暑っちいなぁ。。

 

と文句を言うくらい 僕は落ち着いていた。

 

(きっと心にも風邪を

 ひいていただけなのだろう…)

 

僕はそう結論付け、

深く考えると良くないな。。 と思い至り、

明日旅立つ前に、このハノイに、自分なりにお別れをして去ろう と決めた。

 

僕は最後のハノイを、このゆったりとした気持ちで周り、そして、カンボジアで行けなかった、屋上露天風呂で締め括る事にした。

 

プノンペンで、見つけていた日本風ホテルは、実はここハノイにもあり、宿泊してなくても、お風呂にだけは入れるのだ。

 

そう決めた僕は、とにかくホテルのフロントに向かい、そして 明日のチェックアウトの意思を伝えた。

スッキリした気持ちの僕は、その後朝食をとった。

よく味わって、ゆったりとした気持ちで、モーニングを食べ終わった僕は、部屋には戻らず、そのままここで、

タイの「バンコク」行きの 航空チケットを取る事にした。

 

あの部屋に戻る前に、もうここで チケットを取っておきたかったのだ。

日本語のホームページがある ジェットスター航空の格安チケットが見つかり、僕は躊躇せず、そのチケットを買った。

 

余裕のある、11時40分発の便にする。

時差はなく、13時半にはタイに着く。

初めて行く国には、明るい内に着きたかった。

 

チケットをとって ホッとした僕は、明日のタクシーを予約し、そのまま街を散歩する事にした。以前の僕に戻ったようで、街で見る色々なものがやはり面白い。

 

しばらく街を周っていた僕は、途中でバザールに入り、人々の活気に触れる。

エネルギーに満ち溢れた場所だ。昨日までの僕であったら、到底行けなかった場所である。

最後だと思って、時計を売ってくれたおっさんを探したが、今日は休みなのか 会えなかった。

あんな酷いやりとりしかしていないが、最後だと思うと、一目会いたくなるから不思議である 笑

 

僕はさらに歩き、お気に入りの池に出た。

最初の宿の近くの、ハノイっ子憩いの場所である。

僕はここで、遅めの昼ごはんを食べる事にした。池を一望できる、レストランビルの4階まで行き、そこに入る。

 

実はここは、日本でもよく行っていた大衆イタリアンカプリチョーザがあるのだ 笑

ベトナム最後の日だというのに僕は、何故か日本でも食べられる、チェーンのイタリアンの店に入る事にしたのだ。

ビールとサラダを頼み、ゆったりと池を眺める。やっぱり、日本でも行った事のある店は落ち着く。。

なかなか、最高の時間である。

(ふぅ。色々あったが、ついに次はタイだなぁ)

 

池を眺めながらゆったりビールを呑んでいると、

(本当に昨日までどうかしていたな。)

という思いが湧いてくる。

 

(たぶんもう…  この旅ではきっと、

 ああいう状態には ならないだろうな。)

という これまた不思議な確信があった。

 

きっと僕は、旅人への洗礼をひとつくぐり抜け、またひとつ成長したのだろう。

 

ゆったりしていると、やがて夕方になってきたので、僕はお風呂のある日本風ホテルを目指して歩き始めた。 結構歩く… うん、歩く…

 うーむ。。。無理せずにタクろう!

僕は途中でタクシーをひろった。

 

少し周りも見たかったので、大体近くまで来たところで下ろしてもらった。

タクシーに乗るようになってから、気付いた事がある。

 

それは1000ドン(5円)以下のお釣りは、くれないと言う事である。

細かいお釣りがないのか、チップとしての習慣なのかわからないが、請求しないらしい。

 

タクシーメーターは、ベトナムでは一般的な、

1000ドンの位で表示され、小数点もあり、

39.5(39500ドン)とか、

18.6(18600ドン)と

赤い電飾で表示がされる。

 

最初、38800ドン(194円)のタクシーメーターで、39000ドンを渡し、

お釣りの200ドン(1円)をもらおうと、しばらく座っていると、お互い無言のまま数分が過ぎた。。

運転手も「何か準備でもしているのか?」

と言うふうに、黙って待っていた。

 

僕は根負けしてタクシーを降りた。

 

次のタクシーでは、お釣りが900ドンであった。

 流石に900ドンは欲しいかな。。?

と思っていると、また謎の無言タイムが始まった。。 

僕は(今度は根負けしないぞ)と思い、

「900ドン… 900ドンは?」

と聞くと、運転手は不思議な顔をした後、

ため息をついて、まるで "めぐんでやるよ" と言わんばかりで、哀れな私に900ドンを 色々な紙幣で渡してくれた。。

 

僕はここで、少しだけ気付いた。

(数百ドンのお釣りは、

 請求せずに、切り上げて払うのが、

 ベトナムのタクシーの慣習ぽいぞ…) と。

 

確かに、街でも1000ドン以下の紙幣や、小銭はあまり見た事がないし、そのやりとりをしなくて良いような値段が、商品につけられている事がほとんどだ。

 

その次のタクシーでも、やはり無言タイムが発生し、僕は勝手に確信に至り…

僕は、実地で

(1000ドン以下のお釣りは 切り上げで、

 数百ドンの 細かいお釣りを請求しないのが、

 普通と考えて 間違いないようだ。)

と勝手に理解した。

 

流石に、数万、数千ドンやられたら、

(おい! お釣り詐欺だろう?!)

と思うが、1000ドンの単位までは、ちゃんとお釣りをくれる。

 

実は、1円、3円でしかない、

200ドン、600ドンでは、

本当は 何もいう気は起きないのだが、

必要以上に(騙されないぞ!)と気を張っている僕は、たかが数百ドンのお釣りでも、メーターに記載されている以上 貰えないと

(騙されているのでは?!)

と 疑ってしまっていたのだ  笑

 

だが…そういう習慣であれば、メーターに小数点で数百ドンの表示をしないで欲しい。。

 ややこしいよ…  メーター。。

勝手に恥をかいた僕は そう思っていた。

 

日本風ホテルのあるエリアは、そういうニーズがあるだけあって、日本人エリアのようだ。

そういうエリアによく見る、日本のラーメン屋さんや、赤提灯の居酒屋、お寿司屋さんなどもあり、日本語の看板で溢れている。

 

そんな街並みを楽しみながら歩いていると、例のホテルに着いた。

ここでもフロントの方は、ベトナム人だが、プノンペンと同じで、日本語が達者である。

笑顔も 接客も気持ちがいい。

 

前払いの料金を払い、鍵をもらい 屋上の露天風呂へ向かう。

タオルなどのレンタルもあったが、勿体無いので借りずに向かう。自分のタオルは持ってきているからだ。

 

エレベーターで、屋上のお風呂に着くと、そこには誰もおらず、貸切だった。

日本語で書いてある、ボディソープとシャンプーで、体を綺麗にしてさっぱりした僕は、

星空の下、露天風呂にゆっくりと浸かった。

 

竹で出来た仕切りの外には、ハノイの街並みも見下ろせる。。

 最高だ…  最高の時間だ!

最後まで 貸切状態の露天風呂は素晴らしかった。

 

最後にハノイから、まるで " ギフト" を貰ったかのように感じた僕は、

もう見る事は無いであろう、ベトナムの夜空を見上げながら、ただただ この国に感謝していた。

 

つづく

 

f:id:matatabihaiyuu:20211226171936j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211226171833j:image
ベトナムカプリチョーザ

 何故か無性に行きたくなった。

 

 

f:id:matatabihaiyuu:20211226181008j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211226172003j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211226171846j:image

↑ 日本風ホテルの屋上露天風呂

     夜空とハノイの街並みが最高であった。

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅人に 澱のような雨が降る

 

第112話

旅人に 澱のような雨が降る

 


 Dear  ...

 

突然のお手紙お許しください。

 

お元気にしておりますでしょうか?

今、私はハノイの安宿で雨を眺めています。

 

ここハノイに来てから、珍しく雨が降り、昨日から 降ったりやんだりしています。

それは まるで僕の心に降っている様で、僕は宿のベッドでダラダラと過ごし、外にもほとんど出ていません。。

 

何故か、あれほど熱く求めていた人との触れ合いも 億劫になり、あまり人にも会いたく無くなっています。

以前、ホーチミンで紹介されていた、ハノイのインプロ団体にも全く連絡を取っていないし、今後も連絡をする事も無さそうです。

 

何故なのかはわかりませんが、この外界からほとんど隔絶された部屋で僕は、寝れるだけ寝て、やがてもう寝ることが出来なくなると、外に出て、飯を食べ、酒をガブカブと飲み、気絶をするように、またベッドに寝転がります。

 

そして、やがて目が覚めた僕は、人目を避ける様に、深夜のハノイを 拒絶の塊の様に 身を硬くして歩くのです。

 

思えばこの一ヶ月、刺激と出会いをひたすらに求め「自由」というものの恐怖から、逃げ回っていたような気がします。

 

そう、今僕が逃げるように、そして、強ばりながら闘っているものは、正に「自由」というものなのです。

期限も、目的もない旅人に訪れる試練なのでしょうか?

 

朝起きて、

「今日は何をしよう?」と考えたり

 

1日の終わりに

「明日は何をしよう?」

 

と考える事に疲れてしまったのかもしれません…

 

思えば、37年生きてきた僕は、こんなに長く

「本当に自由である事」を経験したことがありませんでした。

 

俳優として、走り続けてきた僕は、本当に何もない事が耐えられない性分のせいか、そしてまた、もち前の明るさや、人懐っこさで、不思議な程の縁に恵まれ、

この1ヶ月間を、まるで ジェットコースターに乗ったように過ごしてきました。

 

イベントは勝手に向こうからやって来て、そして無ければ イベントを自分で用意する。。

そんな事をこの1ヶ月、ずっとやって来たような気がします。

 

それは僕の

 

 旅の一日一日に

 何か意味を持たせなければいけない。

 

という無意識の強迫観念から来ていたのかもしれません。

 

一度身体を壊し、部屋にずっといた事も一因でしょう。

せっかく行った 隣町のフーリーで、特に何もせずに帰って来た僕は、宿に帰った後から、急に何もかもが億劫になり、部屋に篭るようになりました。

 

この外界から隔絶された部屋も、原因の一因なのでしょうが、僕にはもはや、宿を変えるエネルギーさえ無くなっているのです。

 

よく、アジアなどの旅先の街で、旅人がその街から 動けなくなってしまう事 

「沈没」 と言うらしいのですが、

 

 このまま僕も沈没してしまうのではないか?

 

という恐怖と、

 

 もう、どうでもいいな。。

 

と 同時に思う自分がいるのです。

 

 

思えば、僕の旅の憧れの一因になっていたものは、「深夜特急」を読む、数年前にもあった事に 昨日考えつきました。

 

それは、鴻上尚史さんの戯曲

スナフキンの手紙」だったのです。

 

大学生の時に、この戯曲に不思議と魅せられた僕は、演劇部で、初めて「演出・主演」というものに挑戦しました。

 

この「岸田國士戯曲賞」を受賞した本では、シルクロードを、一冊の大学ノートが旅をする話が出てきます。

日本から来た旅人達が 様々な思いを書き綴った そのノートが、旅人から また旅人へと受け渡されていき、シルクロードを今も旅している。

 

それは いつの間にか人々に

スナフキンの手紙」と呼ばれるようになる。

 

そこには、前向きな言葉もあれば、

旅人の、悲痛な叫びや、旅への疲れ、沈没してしまった、もう生きているのかもわからない旅人たちの「声」が、書き綴られ、今もその「声」と共にノートは、シルクロードを旅している。

 

僕は昨日、急にそのノートの事を思い出し、

その手紙の事を考えていたのです。

 

今、知り合いもなく、このハノイの街で ただ存在しているだけの自分の「声」を遺しておこうと、この手紙を書いています。

 

この手紙を誰に出すのか?

それともそれすらも億劫になり、誰にも出さずに捨ててしまうのか?

 

それすらもわからず この手紙を書いています。

 

もし、この手紙があなたの元に届いているなら、その時僕はどうしているのでしょうか。

 

笑い話として、

「あの時は、少しおセンチだったみたいだね」

とでも言っているのでしょうか?

 

それともこの手紙と共に、僕の「声」も、僕自身も アジアの中に埋もれて…

旅の海の底に沈んでしまっていて、誰にも読まれる事などなく、何も無かった事になっているのでしょうか?

 

本当はもう、どうでも良くなって来ているのですが、希望は捨てません。

 

明日、万が一 僕に気力が戻っていたなら、

すぐにでも旅立つつもりです。

 

そう願いながら僕は、これからまたアルコールを身体に入れ、ベッドに潜り込むはずです。

 

追伸

 あめは…  

 雨だけは 不思議とやんだようです

 


 . JUNE  .2017

MASAMI  AZUMA

 

f:id:matatabihaiyuu:20211221103025j:image

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日帰りのフーリーと寝台車

 

第111話

日帰りのフーリーと寝台車

 

スーパーで思わぬ大笑いをした僕は、色々スッキリして再び橋へと向かった。

 

橋から眺める川は、ゆったりと流れている。

上流から ハスのような水草が数束、ゆっくりと流れていくので、水の流れはよくわかる。

 

僕は橋を渡り、町の向こう側へと歩いて行った。国道沿いが大きな建物が多かったのに対し、この道は まぁまぁ広い割には、田舎の風景である。

左右には建物が連なっているが、二階建てや、3階建ての民家や、ショップが結構あるが、地元の人御用達のカーショップや、クリーニング屋さんの様なお店ばかりだ。

観光地の様に、飲食店や、服を売っている店や、無論お土産屋など皆無だ。

人もほとんど歩いていない。。

 

しばらく歩いたが、あまりにも楽しくない 笑

それはそうである、私の様な観光客にかかずらわる様な、人も お店も無いからである。

ただ歩いているだけで、たまにお店を覗くと、外国人が珍しいのか、言葉の壁があるのか、積極的にコミニュケーションは取ってくれない。

そして暑い。。お酒が入った事もあり、大量の汗も出る。

僕の身体は、毛穴からさっき入れたアルコールを 大量放出し始めていたのだ。

 

 うーん。。ちょっと休みたいなぁ。

と思っている所にちょうど、結構広い 平家建てのカフェを見つけた。Wi-Fiも完備らしいので、僕はこのお店で一休みする事にした。

 

中に入ると、やはり涼しい。

僕はクーラーの涼しさにホッとしながら、周りを見渡すと、お店には僕の他は誰もいない。

 

…というか、店員さえいない。

 

 エクスキューズ ミ〜〜。

 

と一応言ってみるが、誰も出てこない。

(ええと…今日は休みの日??)と思い、表に一回出てみると、表の看板は「Open」となっている。

僕は再び店に入り、勝手に席に座って待つ事にした。窓から外がよく見える、あまり日の当たらない席に座った。

 とりあえず涼しいから、ゆっくり待とう。

と僕は勝手にゆったりする事にした。

 

窓の外は相変わらず、車がたまに通るだけで、ほとんど人も歩いていない。

しばらく待つと、何故か店の外から店員らしき男性が入ってきた。

僕が「ヘロー」と挨拶をすると、こっちをみてビックリしていたが、やがてすぐに、

謝りながら、メニューを持ってきてくれた。

どうやら所用で外に出ていたらしい。

不用心では無いのかしら? と思ったが、都会とは違いそんなに気をつけなくても良いのかもしれない。

 

ここは、入り口に「Open」と英語の看板があるだけあって、持ってきてくれたメニューには、英語も書いてあった。

僕が冷たいコーヒーを頼むと、笑顔で彼は店の奥に入って行った。

 

やがてすぐに、アイスコーヒーを持ってきてくれた。

彼もベトナム語しか喋れないらしく、ミルク、砂糖、ガムシロップ等を全て持ってきてくれ

「好きに使ってね」とジェスチャーをしてくれた。

僕も笑顔で「サンキュー」と言い、ミルクとガムシロップを入れた。

ガラスの容器から ミルクを入れる時に

「…大丈夫かな?」と思ったが、まぁ、気にしたら負けだ と思い、たっぷり入れた。

 

アイスコーヒーを飲みながら、Wi-Fiに繋ぎ、携帯をいじって ゆったりする。

(うーん。。思ったより疲れてるな。。それに

 帰りの電車まで 2時間を切っているなぁ)

僕の帰りの電車の時刻は 午後2時半頃である。

 

どうしてそんなに早く帰るのか??

と疑問の方もいるだろうが、実は帰りの電車は、これしか無いのである。

他の列車は、皆 フーリーを通過していく。フーリーから乗れる 次の電車にすると、深夜の1時まで待たなければならない。

 

流石にそれだともう宿泊した方がいい。

日帰りだと、午後2時半が限界なのである。

 

時間の事もあるし、病み上がりに 炎天下を歩き回った疲れも手伝い、僕はもう ここで残りの時間を潰す事にした。

 

色々見れたし、なんだかんだで刺激の多い 都会のハノイが、僕は早くも 恋しくなっていたのだ 笑

 

このカフェで、調べ物など 充実した時間を過ごした僕は、汽車の時間まで 1時間を切ったところでカフェを出た。

少し散歩をして、駅に戻る事にした。

 

橋に戻ると、何か違和感を感じた。

川が緑色になっていたのだ。

 

よく見ると、先ほど流れていた水草が、川を覆わんばかりに大量に流れてきていた。

ここは 2つの川が合流している場所で、なぜか上流の片方の川からだけ、草が流れてきている。

その左側の川は、川面が水草で 完全に覆われている。

(どういう事だろう??

 来た時とは比べ物にならない量の草が

 上流から流れてきている。。

 この時間に急に大量移動している…)

 

どうでもいい様な事かもしれないが、しかし、明らかに異様な量であった。

 

水草を まるで生き物の様に感じる。

(こんなに大量の水草は、何処から来てるの?

 この量が、毎日流れていくのだろうか?

 というかなぜこの時間に

 急に流れてきたんだろう?)

僕はしばらく その不思議な光景を眺めていた。

 

(やっぱり、ハノイの水上人形劇の

 水の色が緑色だったのは、

 水草を意識しているだろう。。)

と、僕は勝手に納得していた。

 

先程のスーパーを過ぎ、駅に戻る。

なんだかんだ、ご飯を食べて、スーパーに行っただけで、小旅行は終わった 笑

 

だが、まだ寝台車に乗るというイベントが残っている。

 

直前まで日陰で涼しい駅舎のベンチで待つ。

日本の区役所の待合の様に椅子が並んでいて、皆そこで待っている。

時間が迫ると皆ホームへと向かうので、それに合わせて僕もホームへと向かう。

日本と違い、普通に線路を越えて、真ん中のホームに行く。

 

やがて列車がきて、客車へと這い上がる。

 

日本のように、すっとは乗れない。

バリアフリーって何?」という感じの、人間の強さを信じ切った 高さのドアである。

 

車両に入ると、丁度車掌さんがいたので、チケットを見せると、案内してくれた。

恰幅のいい男性の親切な車掌さんである。

寝台車は、右側は窓のある廊下で、左側にだけドアがあり 部屋になっている。、

 

僕のベッドのある部屋の前で、彼は止まりドアを開ける。

部屋の中に、3段ベッドが左右にあり、計6床ある部屋である。

 

部屋を見ると、一番下のベッドには、左手に子供が、右手にはその母親らしき女性が寝ていた。

 

車掌が、その母親を起こし、退くように言ってくれ、僕に「ここだよ」と教えてくれた。

 

流石に 終点のハノイの一駅前で、新しく人が乗ってくるはずが無いと思って、ゆったりと僕のベッドで寝ていた母親に、少し罪悪感を感じた。

彼女は、上のベッドに行く気力は無いのか、子供と一緒のベッドで一緒に寝始めた。

 

(一駅だけ寝台車に乗ると、なるほど。。

 結局、こういう事になるんだな…

 一駅しか乗らない 俺がおかしいから

 全然 彼女を責められない (^_^;) )

 

「寝台車じゃ無くて、3等にしなさいな」

とアドバイスしてくれた、窓口の女性の言葉が、今更頭にリフレインする。。

 

だが、せっかく乗ったのだから楽しまないと損である。母親も慣れたもので、すぐに寝息を立て始めた。

 

僕はベッドでとりあえず横になってみた。

(うーむ。結構良いベッドだ。)

寝やすそうである。流石はホーチミンからの2泊3日に耐えうる寝台である。

 

この寝台車の衝撃なことは、三段ベッドであることである。

僕が泊まってきた数々のドミトリーでさえ、三段ベッドは存在しなかった。

2段目は結構スペースがあるが、3段目は もう天井とキス出来そうなくらいのスペースしか無い。 挟まりそうな狭さである。

そして、3段目へ登るのは、結構な筋力がいるはずである。

(面白い! やはり寝台にして正解だった!)

僕は大喜びしていた。

 

窓からは、風景がよく見える。

壁には謎の計器と、温度計もある。

温度を見ると23度である。

行きに乗った三等車と違い、クーラーも効いていて、涼しい。

珍しく、室温が丁度良い温度になっていて、寒くは無い。睡眠をとる 寝台車ならではの温度なのだろう。

 

ベッドで景色を見ながらゆったりとしていると、すぐに田園風景から、市街地の風景になった。

行きはお喋りが盛り上がっていて、景色はあまり見ていなかったが、結構 街に入るのが早かった。

ふと疑問に思った。

(この親子はもう3時前だというのに、

 よくすやすや寝れるなぁ…)

という事と、よく考えるとこの寝台車は、個室である為、知らない人と最大6人相部屋になるのだが、女性である母親は、男の僕が入ってきても、平然と無防備に寝ている。

どうやら寝台車は、結構安全みたいだ。

 

そして、ハノイまであと30分と言うところで、奇跡が起こった。

車内にスピーカーから 大音量で

ベトナムの歌謡曲」という様な歌が 流れ始めたのである。

女性シンガーの、悲しいような、ダイナミックに歌い上げるバラードである。

まるで、この長いホーチミンからの旅の終わりを、恋人の別れのように歌い上げているような曲である。

 

ついに、終点のハノイに着くというのに、曲の音量と、哀愁が物凄くて、僕は笑ってしまっていた。

 

だが、不思議と聴いている内に、この曲が妙にしっくりくる。

「いよいよ終点ですよ〜!

 皆さん、降りる準備をして下さいね〜」

という意図だろうが、この曲はハノイ駅に着くまで 大音量で30分以上、ずっとエンドレスで流れ続けた。

 

ホーチミンから来たわけでも無く、一時間しか乗らない僕でさえ、何か感慨深いものを感じてしまう。

(ああ、やっとハノイに着くのだなぁ。。)

と、まるでこの列車と長旅をしてきたような気分になり、名残惜しさが込み上げてくるから不思議な曲である。

 

僕は廊下に出てみた。

すると皆 部屋のドアを開け放している。

 

廊下にまで荷物を出し、降りる支度をする人。

まだ幼い息子を抱き抱え、自慢げに街並みを見せている若い父親。

肩を抱き寄せ、窓の外を見る 若い夫婦。

じっと街並みを眺めている年配の女性。

 

この列車で共に旅をしてきたであろう人たちが、廊下に溢れていた。

僕もそのまま廊下で、彼らと車窓の景色を見る事にした。

 

例の曲のせいか、不思議な事に僕も、彼らと長い旅をしてきた仲間の一員の様な気がして、

不意に何かが込み上げてきて、危うく涙が出そうになった。

 

何故だがわからないが、僕は 不意に心を揺さぶられたのだ。

 

不思議な寝台列車はやがて、そんな僕たちを乗せて 終点のハノイ駅へと入っていった。

 

つづく

 

ベトナム統一鉄道 動画

寝台車内部

https://m.youtube.com/watch?v=fWMB_TbdMxI

 

寝台車のハノイ到着直前のバラード

https://m.youtube.com/shorts/zmkDvSls0bU

 


f:id:matatabihaiyuu:20211220125415j:image

f:id:matatabihaiyuu:20211220125421j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211220125418j:image

 

 

動画 フーリーの川と水草

https://m.youtube.com/watch?v=TD6kZSx7XqQ

f:id:matatabihaiyuu:20211220130025j:image

 

 

次話

azumamasami.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣の町はゆるやかぁ。

 

第110話

隣の町はゆるやかぁ。

 

隣町のフーリーは、国道沿いこそ会社やビルなどあったが、水上レストランから見える川向こうは、高い建物もなく、のんびりとしてそうだ。

 

まだ 11時を過ぎたばかりである。

こんな時間に来る常連以外の客が珍しいのか、それとも観光客自体が珍しいのか?

迎え入れてくれた 若い男性の店員さんは、かなり戸惑っていた。

 

彼には、全く英語が通じなかったので、

ジェスチャーで、川がよく見える、入り口付近のテラス席に座っていいか聴くと、快く座らせてくれた。

(そういえば、駅前の食堂でも

 英語は全く通じなかった。。)

 

渡されたメニューは、ベトナム語のみで、写真も無く よくわからない。。

とりあえず僕は、後ろのおじさんたちが美味しそうに食べていた 焼きそば を頼もうと、おじさんたちが食べている皿を指さし、注文しようとした。

ジェスチャー

「アレ、あの皿のやつ、ワンね。」

とやっていたところ。

後ろの親切なおじさんの一人が、店員に ベトナム語で、僕の注文をしてくれた。

彼は、メニューの一部分を指差して、親指を立てて、最高の笑顔で、たぶん

「グッドだお勧めだ」と言ってくれている様だ 笑

僕はおじさんたちに頭を下げて

「サンキュー」と言うと、

「いいんだ、いいんだ。」と言うふうに 彼らは頷き、再び酒盛りを始めた。

 

ビールは、ドリンクメニューに写真がプリントされていたので、それを指差し、指を一本立てた。

スタッフの彼は、注文が理解できたのか、ホッとした表情で店の奥へと帰って行った。

言葉が通じない事に慣れていないと、お互いに気を使う。

 

たった一駅、ハノイから離れただけで、英語が全く通じない事が少し驚きだった。

この旅の中でも、ここまで誰にも英語が通じないのは 初めてだった。

とにかくジェスチャーで、なんとかなった僕は、少しホッとしていた。

 

川を見てボーッとしていると、ビールが来る。

何故か、皿に山盛りの、茹でたピーナッツも 一緒に来た。頼んでいないはずだが、言葉が通じないので、「頼んでないよ〜!」と言うのも面倒になり、そのまま受け入れた。

(まぁ、お通しだと思おう…)

 

ビールを片手に、川を見ながら呑んでいるのが心地いい。

(うーん。リゾートだね。)

と心が落ち着く。

 

しばらく川を見ながらボーッとしていると、店員が料理を運んできてくれた。

僕はそれを見て止まった。。

 

それはさっき指差した「焼きそば」では無く、スープがたっぷり入った、丸い白い麺の

「フォーラーメン?」のようなものが来た。

(ええと。。なぜラーメンが…?

 俺は焼きそばが食べたかったんだけど…)

戸惑って 周りを見渡すと、後ろのおじさんと目があった。

おじさんは親指を立てて、笑顔でバチッとウインクをしてきた。

 

どうやら、僕の要望は伝わっていなかった様だ。。

だが、これほどの もの凄いウインクをしてくれるのだから お勧めで美味しいに違いない。

 

ツマミも兼ねて、焼きそばを頼みたかったのだが、まぁ、ツマミには大量にピーナッツもあるし、良しとしよう。

 

ポジティブな僕はそう考え、早々に諦め…というか、前に進むためにも、麺をすする事にした。

食べ始めてみると、地元のおじさんがお勧めするだけあって、なかなか美味しい。

野外のテラスですするフォーラーメンもまた、乙なものである。

 

フォーラーメンを平らげた僕は、ビールのおかわりをして、ボーッと 川を見ながらピーナッツを食べていた。

他のツマミも頼みたかったが、何が来るかわからない。万が一ガッツリご飯が来たら食べきれないだろう。。

 

僕は茹でピーナッツが意外とツマミとして優秀だった事で、そのままゆっくりビールを呑んでいた。

途中で、おじさん達は帰って行った。

その際に、また笑顔で挨拶してくれた。

ほろ酔いの僕は、それに手をあげて応えて見送った。

 

しばらく一人でいると、いつもの都会の風景を離れて、昼前からここでビールを呑っている事に、不意に不思議な感覚を覚えた。

旅に慣れ、あまり意識していなかったが、今僕は 日本を遠く離れ、縁もゆかりもないこの町で、平然とビールを飲んで寛いでいるのだ。

 今外国にいるんだよなぁ。。

と、風邪をひいて寝込んでいた時とは、全く違う感慨を感じていた。

これも都会を離れ、不意に、初めての土地に来たから感じられる事だろう。

 

しばらく不思議な感覚を味わい 堪能した僕は、会計をお願いして、店を出た。

会計は普通の値段で、結構安かった。川のコテージとはいえ、地元のレストランだからだろう。

 

一旦 橋まで戻った僕は、突然尿意を覚えた。

(しまった。。

 さっきの店で行っておけば良かった)

と思ったが、後の祭りである。

 

僕は橋に出る前に見つけていた、新しそうなスーパーマーケットに行く事にした。行きは あまり気にしていなかったが、トイレを借りる為に入ってみる事にしたのだ。

行きに通り過ぎた時は、

(表で何かやっているなぁ。) くらいにしか思っていなかったが、近づいてみると、どうやら本日オープンらしい。

 

二階建てのしっかりとした、倉庫のようなコンクリートの建物のスーパーである。

(本日開店かぁ。。しかし俺は

 よく イベントにぶつかるなぁ…  笑)

と苦笑しながら、中に入る。

 

中では、鮮やかな 紅いアオザイに身を包んだ若い女性が迎えてくれ、荷物をロッカーに預ける様に誘導してくれる。(勿論ベトナム語である)

例の、ベトナムのスーパーでの 万引き防止システムである。

アオザイのスタッフさんは、メガネをかけた普通の娘さん、と言う感じの顔立ちだが、スタイルは抜群で、本当にアオザイがよく似合う、綺麗な娘さんである。

(このこに会えただけで、

 この町に来た甲斐があったな。)

とほろ酔いの現金な僕は、ニコニコしていた。

 

アオザイとは、実は歴史的に見ると 結構近年に出来たものだと聞いていた。

元々の民族衣装ではないらしい。

 

ホーチミンで出会った友人の女性からは、

アオザイが着れるように、

 ちゃんとダイエットしているのよ」

と言う話を聞いていたし、やはり、

「スタイルが良くないと 似合わないのだ」と教えてくれた。

 

最近のベトナム若い女性達は美意識が非常に高い。 日焼けを嫌がる女性も多い。

元々色白のベトナム人女性は、肌を大事にしている女性が多いらしい。

知り合ったその娘さんも、待ち合わせで会った時も、原チャリの「ベスパ」に乗りながら、白い布と服で 顔も全身も覆い、日光を完全防備をしていた。

まるで、白黒時代のテレビの 昔のヒーロー

月光仮面」にしか見えなかった。

待ち合わせの時に、彼女が 顔も白い布で覆っていたので、僕は話しかけられても、

(あ、月光仮面だ。。

 月光仮面が話しかけてきた…)

と、大昔のヒーローを思い出しているだけだった。

 

 月光仮面の おじさんは ♪

 せぇいぎの味方だ よい ひーとーだー ♫

 

という、テレビの「昔のヒーロー大集合」的な番組で覚えていた「主題歌」を思い出し、

 (ええと。。 どなた??)

と思うくらいの変装(コスプレ?)であった 笑

 

話は逸れたが、そんなお祭り騒ぎのスーパーマーケットへと 僕は入った。

トイレを探しながら、一階を見て周ると綺麗なスーパーでかなり広い。

一階は食料品がメインのフロアで、驚いたのは店内で揚げたての春巻きを売っているのはいいが "まさに揚げたて" だった事だ。

調理場では無く、店内の通路で「試食販売」のように、直径1メートルの鉄鍋に油をたっぷり入れ、今まさにプロパンガスの力で揚げているのだ。。

(ええ?!  あ、、危なく無いの??)

高温の大量の油が スーパーの通路に、2箇所も出現している事が、僕にはかなりのカルチャーショックだった。

 

そんな僕は ぐるっと回ったが、トイレは一階には無かった。

普段なら、トイレの場所をすぐに聞く所だったが、ここは英語が全く通じないフーリーである。 自分で探すしか無い。。

 

僕は2階へと上がった。

だが階段を上り、限界が近づいてきた僕は、ついに店員さんに聞く事にした。

背の低い、まだ若い男性店員さんを見つけて 話しかけた。

まず「アイ うぉんとぅ ゴー レストルーム

と言ってみる。

彼はキョトンとしている。。

(なるほど…) と思い、

「トイレ、トイレット、レスト、バスルーム!」

と単語を駆使するが、全く伝わらず、彼はやはりキョトンとしている。。

 

僕は諦め、ジェスチャーで伝える事にした。

「トイレ、トイレ。。手洗い!」と言いながら手を洗うジェスチャーをする。

すると伝わったのか、彼は(ああ!)という感じで頷き、僕を案内してくれた。

 

ホッとしてついていくと、ある棚に案内され、タオルを指差し、「どうぞ。」というジェスチャーをしてくれた。

(…まったく 伝わっていなかった。。)

僕は手を拭きたいわけでは無い。

 

僕は次に、少し恥ずかしかったが、ズボンを下ろすジェスチャーをして、パンツまで下ろすパントマイムをした。

 

すると彼は、ハッと気付いて手を叩き、

(ああ!! なぁんだ! そうでしたか。

 わかりました。 それならこちらですよ!)

とやっと理解してくれ、お互い笑顔になり、彼は僕を案内してくれた。

 

僕は 再びホッとしてついて行ったが、なぜかまた棚の前につき、彼は男性用のトランクスを指差し、満面の笑みで、

「どうぞ! いっぱいありますよ。」

ジェスチャーしてくれた。

僕はパンツを履きたい訳ではない。。

 

どうやらパンツを欲してると伝わったらしい。

(おいおい… この伝言ゲーム。

 むりゲーすぎるだろ?)

 

…ここまでジェスチャーが通じないのは人生初であった。

英語が通じないのはしょうがないとしても、カンボジアでも、マレーシアでも、ジェスチャーで何とかなってきていたが、

一駅 田舎に来ると、ジェスチャーまで通じないらしい。。

 

が、しかし僕はここで諦めなかった!

既に漏れそうだった僕は、潜在能力が発動したのか、頭の中で あるアイデアが閃いたのだ。

(そういえば、全然使ってなかったが

 iPhoneの、Google翻訳のアプリで、

 ベトナム語を、オフラインで使えるように

 宿でダウンロードしておいていたな。。)

用意周到な僕は、新しい国に行くたびに、その国の言語をダウンロードしていたのだ。

 

今までの旅で、1回しか使っていなかったアプリを開き、日本語で「トイレ」と打ち込むと、右側にベトナム語が表示された。

僕はそれをその店員さんに見せる。

 

その瞬間である!!

男性店員さんは大声で、「あああぁ〜!!」と気付き、爆笑し始めた。

勘違いで 色々案内していた自分に気付いて、笑いがこみ見上げてきたのだろう。

普段なら、僕も一緒に爆笑するところだが、それをやると、確実に漏らすだろう。。

 

僕が引きつった笑顔を浮かべていると、さすがに同じ男性である彼は、 笑っている場合では無い  と察してくれ、大真面目な顔で僕を先導し始めた。

ついていくと、彼は 階段を降り、1階のフロアを早足で歩き、出口から出ていった。

外に出て 戸惑う僕に「いそげ! 着いて来て!」とジェスチャーし、建物の裏口に案内してくれた。

 

そして、彼が指差した先には トイレがあった。

なんと、トイレは外にあったのだ!

僕は「サンキュー!」と言い、トイレに駆け込んだ。

(ま、間に合った!!)

やがて至福の顔で出てきた僕を待ってくれていた彼が、「間に合ったかい?」と話しかけてきた。僕は、

「サンキュー!! 貴方のおかげだよ

 ありがとう。 でも、パンツはないだろ?」

と言うと、彼は僕を指差し、笑い始め、僕も釣られて大笑いしていた。

 

あれほど通じなかったジェスチャーが、共に危機を乗り越えた今は、何故か通じ始め、僕と彼は急にコミニュケーションが取れるようになり、お互いの間抜けさを指摘し合いながら、大笑いしていた。

 

不思議なもので、人間とは、

 不意に心が通じると、

 何故か会話が出来るようになるらしい…

 

そんな、この 人間という生き物の深淵 に触れたぼくは、

 

更なる出会いを求め、フーリーの町を再び歩き出していた。

 

続く

 

f:id:matatabihaiyuu:20211215134259j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211215134455j:image

↑ 水上レストラン

 山盛りのゆでピーナッツとサイゴンビア

f:id:matatabihaiyuu:20211215134404j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211215134330j:image
f:id:matatabihaiyuu:20211215134315j:image

↑ のどかそうな川の向こうと橋

 

次話

azumamasami.hatenablog.com