猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

バンコクの改札 引っ掛け問題

 

第117話

バンコクの改札 引っ掛け問題

 

電車のマークを追って行き、到着した改札から、バンコクの鉄道に乗る前に、

最初に連絡した日本人宿のオーナーさんからメールが来ていた。

 

ドミトリーではなく、シングルルームで、

扇風機はあるが、なんと、クーラーが無い部屋なら空くとの事。 値段も思ったより安い。

 

(クーラーが無くて平気かな…?)

とは思ったが、この宿にどうしても泊まってみたかった僕は、

(ま、、何とかなるだろう。)

と思い直し、お世話になる事にした。

明後日から 三泊予約する。

予約のメールを返したところで、電車の切符を買う事にした。

 

チケットオフィスで

「オンヌット駅まで下さい」と言うと、

「そこまでは買えません。」と言われた。

乗換駅の「パヤタイ駅」までしか買えないとの事。

 

仕方がないので、パヤタイ駅までの切符を買う事にした。

先ほどの千バーツを出し 支払う。

大きいお札は 早めに崩しておいた方がいい事は、各国での初日で学んだことだ。

 

お釣りと一緒に、プラスチックのコインを渡される。

普通はであれば、そのコインを見て

(これ… 何だろう?)と戸惑うだろう。

だが、僕は慣れたもので、お釣りと共にそれを受け取り、

「サンキュウ!」と言って改札へと向かった。

そして僕は、そのコインを 日本の Suica のように改札にタッチして、

迷いなく改札内に入って行った。

 

何故、僕がこのシステムを知っているかと言うと、実はマレーシアのクアラルンプールのモノレールが、

この ”プラスチックコイン タッチシステム” だったのだ。

 

コインの中に、運賃のデータが入っており、

改札を入る際は改札機にタッチし、

降りる駅の 改札から出る時には、このコインを 改札機の穴に入れるとゲートが開く。

そして、穴から回収されたコインは、たぶん再利用される。

 

この、コインが 切符の代わりのシステムは、日本の紙を使うシステムと違い、

(エコだなぁ…)と 僕は感心していたので、よく覚えていたのだ。

 

もちろんマレーシアでは、最初 戸惑ったが、そこは俳優である。

前の人の行動を注意深く観察し、入り方、降り方をマネして、問題なく利用できた。

(その際 相手に「何?」と言う感じで

 振り帰られるほど、相当集中して

 手元を 注視していたようだが 笑)

 

そんな僕が、鼻歌交じりに改札に入ると、何やらモノモノしい。。

警官らしき人が、何人か立っている。

マレーシアのペナン島で見た 軍人さん以来の、威圧感である。

空港駅だからだろうか??

 

ホームに行くと 結構人がいて、そこそこ混んでいる。

始発駅なので席に座れたが、途中駅から結構人が乗ってくる。

昼だというのに、電車に乗る人が多いようだ。

 

改めて路線図と睨めっこをする。

よく見てみると、空港からの電車は、

ARL(エアポート レイル リンク)と書いてあり、

乗換駅のパヤタイ駅からのBTS高架鉄道)とは、鉄道の種類が違うようだ。

(だから、パヤタイまでしか買えなかったのか…)

と 僕は理解した。

 

駅に着くたびに、駅名をチェックし、路線図と見比べる。

「えーと、あと四駅か…」

思わず独り言をつぶやくと、隣から日本語で

「そうそう、あってる…」

と日本語が聞こえた。

 

隣を見ると、スラックスにポロシャツの、紳士然としたおじさんと目が合った。

 

 えーと、日本の方ですか?

 

 はい、そうですよ。

 タイは初めてですか?

 

 はい、今日来ました。

 電車 結構混んでますね…。

 

と話が始まり、僕とその落ち着いた感じのおじさんと、パヤタイまで少し話をした。

やはりバンコクは都会で、通勤時間は満員電車になると言っていた。

 

だが、日本とは違い、ホームがかなり混むらしい。タイの人達は、電車に無理して乗り込まないので、車内はそこまでギュウギュウにならないのだそうだ。

その分ホームが混むのだとか。。

(うーん… やっぱりタイも面白いな。)

と 僕は早速ワクワクしだした。

 

ホームからエスカレーターで降り、コインを入れて、改札を出た。

先程の紳士は、一緒に下まで降りてくれ、乗り換えの方向を教えてくれた後、お礼を言う間も無く、すぐにいなくなってしまった。

 

なんとなく今までの雰囲気とは違う気がした。

イミグレーションでも、実は日本人が多かった。

やはりタイでは 日本人は珍しくもないのだろう。

今までは、他国で会った日本人とは 結構交流が生まれたが、ここバンコクで初めて話した人とは、非常にあっさりしたものである。

 

確かに、普段から日本人が周りに多ければ、わざわざ深く交流しようとは思わないのだろう。

彼らからすると、日本にいる時と同じ感覚なのかも知れない。

 

人の流れに付いて行ったこともあり、すぐに乗り換えの、BTSのパヤタイ駅の改札に着いた。僕は、早速コインの切符を買うことにした。

 

窓口に並び、自分の番になったので

「オンヌットまでのチケットを下さい」

と言うと、窓口の女性に 券売機を指差され

「あそこで買って下さい」

と言われた。

「ん?  いや、あの… え?

 ここで買えないんですか?」

とびっくりして聞き返すと、

「はい、ここは両替だけです。あとは、

 ワンデイパスなどしか売ってません。」

と、はっきり言われた。

 

(そんなバカな。。

 窓口で切符を買えないなんて

 そんな話、どの国でも聞いた事がないぞ…)

 

そう思い

「空港では 窓口で売ってくれましたが…」

と言って粘ろうとしたが、慣れた調子で、

BTSの普通切符は、機械でしか買えません。

 ごめんなさいね。

 両替でないなら どいて下さい。」

と言われた。

後ろを見ると、何人かが後ろに並んでいる。

僕は憮然としながら、窓口から離れた。

 

納得いかずに、そのまま窓口を見ていると、確かに、皆、両替しかしていない。

切符を買っている人は一人もいない。

 

(そういうものなのか… うーん。。

 いきなり、カルチャーショック…)

と思い、僕は仕方なく券売機に向かう。

 

券売機の前の路線図で、駅と値段表示を探す。

オンヌット駅までの値段を調べ、切符を買おうとすると、お札を入れる場所はなく、コインしか入れる場所がない。。

かなり古めかしいゴツイ券売機だ。

 

(なるほど、、硬貨しか使えないから、

 窓口で両替するシステムなのね。)

と思い、買おうとしたが、硬貨が足りない。。

お札を両替して貰うしかない。

僕はまた窓口に行くハメになった。

 

窓口に行くと、先程のスタッフの女性が

(また来たよコイツ…)

と言う顔をしている。

 

少し 恥ずかしかったが…   今度は、

(もうわかってますよ? ワタシは。)

と言う顔で 平静を装い、100バーツ紙幣を出し、両替して貰った。

 

券売機に44バーツ分の硬貨を入れ、やっとこさボタンを押す。

 

 例のコインが出てくる…  はずだった。

 

しかし、そこで出てきたのは 何故か、

 プラスチックのカードだった。

ニュッと、薄いスイカのようなカードが出てきたのだ。。

 

(ええ? あ、なに? ボタン間違えて、

 スイカ的なものを買ってしまったのか??)

と思い、少しパニクった僕は、再び窓口に向かった。

 

窓口のお姉さんは、僕を見て

(ええ? また来たんだけど…この人??)

と言う顔をしていた。。

 

「あ〜、え〜っと。。あの、

 普通の切符を買いたかったんですが、

 これが出てきちゃったんですけど…」

おずおずと言うと、 少し呆れた顔で、

「これ、これが普通の切符です。

 コインの代わりにカードなんですよ。」

と、苦笑いしながら教えてくれた。

 

僕はもう、無理矢理に笑いながら、

「ああ… そうなんですかぁ。。

 すいません、何度も。 し、親切にどうも!」

と無理に明るく振る舞い、恥ずかしさを誤魔化す為に、わざと、そのカードを 改札を通すようなジェスチャーをすると、

彼女は笑いながら 大きく頷いてくれた。

僕は「サンキュー!」と笑顔でお礼を言って、改札へと向かった。

 

それにしても、初めての国の初日は、やはり意図せず色々起きる。。

何度も、窓口に戻って来た僕を見たお姉さんはきっと

(この人、新手のナンパかしら? )

と思った事だろう… 恥ずかしい。。

 

 うん。これくらい よくある事さ。

 まぁ、何事も経験、経験! よし!

と切り替えた僕は、勢いよく改札にカードをタッチした。

 

…が、ゲートは開かない。

 

何度かタッチする。

 

…が、やはりゲートは開かない。

 

僕が懲りずにバシバシやっていると、後ろから肩を叩かれた、振り返ると、大きな白人の男性がいて、改札機の 切符入れの様な所を指差して、

「インサート」と教えてくれた。

 

そう。。このカードは、空港からのコインのように、タッチするのではなく、

切符と同じで、改札機に入れ、中を通すシステムだったのだ!

 

僕は顔を真っ赤にしながら、小声で

「…サンキュ。。」と呟くと、そのカードを改札機の穴に入れた。

すると改札のゲートは開き、入れた所のすぐ上に、今入れたカードが出て来ていた。

僕はそれを取り、逃げるようにして、ホームへと走り去った。

 

一体僕は、電車に乗るだけで、どれだけ恥をかくのだろう。。

空港から、鼻歌混じりにコインを操っていた 百戦錬磨の旅人の東正実さんは、どこに行ってしまったのだろうか??

 

 でも、コインはタッチ式で、

 カードは、改札機に挿入方式なんて

 引っ掛け問題じゃんか… ずるいよ。。

 

と呟きながら僕は、タイに来たばかりだというのに、

早速この国に、ケチョンケチョンにされていたのだった。

 

 やれやれ… 先が思いやられる。。

 

つづく

 

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バンコク鉄道路線

BTSの改札の方式も

 最近は、色々変わっているらしい。

 今は、切符のカードは タッチして入る

 コイン方式と一緒になったらしい。

 チケットも窓口でも

 買えるようになったらしい。)

 


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↑ 2017年当時のタイバーツ

 プミポン国王が描かれている。

 

次話

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