猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

日本人宿で出会った「旅人たち」

 

第123話

日本人宿で出会った「旅人たち」

 

ワクワクランチを食べ終わった僕は、

一旦、モールの向かいの宿に戻る事にした。

 

道路を挟んだ 向かいに宿があるのだが、相変わらず 信号や横断歩道などというものは無く、車は途切れない。。

僕は昨日、一体化して道を渡ったタイ人男性の、

「車の止め方」を思い出し、自分でやってみる事にした。

 

まずは車をよく観察する。

途切れなく走っているが、皆、そんなにスピードは出していない。

止まれそうなスピードである。

僕は そんな中、

(おぉ?? 止まってくれそうだ!)

と思った 一台の前に進み出る。

 

そして右手を突き出し、車を制する!

(言い忘れていたが、タイは、

 日本と同じ 左側通行である。)

 

そして、念じる。

(はぁああ〜!! 通りますよ〜!!

 ととと、、止まってーー。 いや、

 止まるんだっ! とぉまれぇぇえええ!!

 ペクトローナーァーム!!)

すると、念が出ているはずの 僕の右手のお陰か、

車は見事に止まった!!

 

そして、それを見た反対車線の車も…

諦めたかのように止まってくれた。

 

 念じれば通ず。  一念、岩をも通す。

 

とは よく言ったものだ。

まるで、マーブルの Dr.ストレンジのように僕は、車を右手から出る念で停車させ。

見事に。道を渡る事に成功したのであった!!

 

(後から考えると、ドライバーだって

 人を轢きたくは無いはずなので、

 普通に止まってくれているだけなのだ。

 と気付くのだが…。 )

 

とにかくその時の僕は、

 凄いぞ俺!!

 念で車を止めて、渡ったったぞ!

と興奮していた。

 

一回 勇気を出して、この「儀式」を経験すると、不思議なもので、タイでは渡りたい時に、無理やり道を渡る事が出来る様になる。

これは、止まれるスピードで車が走っている、おおらかな、タイ王国ならではの技なのである 。

(たぶん、マレーシアだと、

 サクッと轢かれてしまうだろう 笑)

 

とにかくタイはおおらかだ、微笑みの国といわれる所以がよく分かる。

居れば居るほどタイが好きになる。

(そんなタイが、居心地が良過ぎて僕は、

 その後しばらく、このタイ王国から

 動けなくなってしまうのだが…)

 

宿に戻ると、昨日会った女性2人が、各々共有スペースで寛いでいる。

二十代後半らしき女性は、文庫本を読んでいて、

もう一人の、ずいぶん若い(幼くさえ見える)娘さんは、携帯をいじっていた。

とても緩やかな空気が、この共有スペースには流れている。

挨拶をすると、それがきっかけになった様に、色々と話しをする事となった。

 

前述の 二十代後半の女性は、これからアフリカに行くらしいが、入国に必要なワクチンを打ちに、タイに来たらしい。

もうはるか昔の ブログ回の為、お忘れの方もいるだろうが、僕はびびって、第二話で、出発までに、8つの感染症のワクチンを打つ為に、1日に 一度に "6本 " 注射を打つ羽目になっていた。

 

実はこれが馬鹿にならない出費だったのだ…。

僕は関東で一番安い病院を探し出していたのだが、それでも総額で " 7万円 以上 " 掛かっていた。

(今考えるとアホ過ぎるのだが。。)

 

ワクチンは保健が効かないのか、実費のせいか、とにかく高くつくのだ!!

 

そんな中、旅慣れている達人たちは、まずタイのバンコクに入り、ワクチンを打つ。

「スネークファーム」という有名な場所だ。

(これは、蛇の血清等の研究施設の名前で、

 実際は、その裏にある 赤十字の病院が

 ワクチンを打ってくれるのだが…)

 

ここで打つと、日本の半額か、下手すると三分の一の料金で、ワクチンを打つ事が出来るらしい。

これは長期旅行者や、数種のワクチンの接種証明が無いと、入国できない国に行く時には、かなり重宝する お得なやり方なのだ。

(これは、前述の彼女が教えてくれた。)

 

そのワクチンの彼女は、看護師の資格を持っており、日本に帰ってもすぐに仕事に就けるので、お金が貯まると、定期的に海外放浪をしているらしい。

僕には想像もつかない、上級旅人であった。

 

旅慣れているので、僕の様に あくせくと街を歩き回らずに、宿で

「沈没してます〜 笑」と、

のんびりしながら、そう明るく言っていた。

(そのゆったりとした過ごし方に

 僕は、もの凄い 旅慣れ感を感じた。)

 

対照的に、旅初心者の印象がする、もう一人の小さな若い、まだ、「娘さん」と言いたくなる様な 綺麗な目をした彼女は、初海外だそうだ。

大学を出たばかりで、これから世界一周の旅に出るらしい。。

 

僕は、インドでさえ びびって、

 行くかどうしようか?

と思っていたのだが、彼女はその足で、世界一周へ向かう為、まずは外国に慣れる為、この日本人宿にいるらしい。

 

旅人とは、旅と経験を重ね、より大きく、旅人として成長していくものである(きっと…)。

これは、びびって 初日のマレーシアの空港から、5時間以上出れなかった僕が、実感している事であるが…

 

だが…  きっと余計な心配なのだろうが、

日本ですら、人生経験をそこまで積んでいない、特に女性がこういうドミトリー宿に泊まりながら長い旅をすると言う事に、僕は単純に心配になってしまった。。

我々男と違い、また違う危険と戦わなければいけないし、より危険である 女性の一人旅だ。

 

僕には、彼女はまだ、日本の荒波すら 全く経験していない様に見えた。

日本では 全く気にしなくて良かった危険と、リアルに、本当に戦いながら、彼女は旅を続けられるのだろうか。。?

 

取り返しのつかない、傷を負わなければいいが。。  それとも、命さえあれば大丈夫なのだろうか…?

 

などと、余計な心配しか出来なかった。。

怖いなぁ。。と、、自分が旅するよりも。

 

だが…

単純に僕が、心配し過ぎなのかもしれない。

逆に、彼女が トラブルに揉まれながら、もの凄い旅人になって、大人気の旅ブロガーにでもなる可能性だってあるのだ。

 うーん。。そうかぁ、そうだよなぁ。。

と僕は、あまり人の心配などする事をやめた。

 

結局、全ては自分で経験して、自分の運によって、導かれるしか無いのだ。

運がない時は、それまでなのだ。

そう割り切る事でしか 旅はできないのかもしれない。

僕だって 明日トラブルに巻き込まれて、帰らぬ人になるかもしれない。

 

それをどこかで覚悟して旅に出たはずだ。

きっと彼女も、そうなのだろう。

僕の心配など、たぶん失礼なのだ。

 

それは、よく考えれば 人生も一緒なのかもしれない。

旅は危険だ と思って、じっとしてて、日本にいたからといって、明日交通事故で死ぬかも知れない。

 

そう。

海外は リスクが上がるだけで、日本にいても、明日何があるのかは分からないのだ。

そんな事を、改めて考えさせられる出会いでもあった。

 

そして、人のことを心配するより、

 これから僕こそ どこに行くのだろうか?

と 全く何も考えていない僕よりも、

「世界を一周する」という明確な目標のある彼女の方が、旅の終わりがはっきりしていて良いのかも知れない。

 

彼女と色々話しながら、僕は逆に自分の旅を見つめ直す良い機会になっていた。

これも初めて会う、日本人の長期旅行者のお陰である。

これだけでも、日本人宿に来て良かったと思う。

 

そんな僕も、ワクチンの彼女の 達人感に倣い、ここで、ダラダラしてみることにした。

たまたま「深夜特急」の文庫が全巻置いてあったので、読み返すことにする。

 

深夜特急」を、実際の旅行者として読み返しながら僕は、憧れではなく、自分自身の旅と対比しながら、面白いのだが、この本に 以前ほどの魅力を感じなくなっている自分に気付いた。。

 

そう、、きっと僕も 「自分の旅」をする

いっぱしの旅人になっていたのである。

 

つづく

 

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↑ 僕を旅へと導いてくれた「深夜特急

     バックパッカーのバイブルである!

 

 

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