猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

深夜の途中下車

 

第124話

深夜の途中下車

 

深夜特急」の第二巻、

マレー半島シンガポール編を 途中まで読んだ僕は、宿から外に出る事にした。

 

まだ上級旅行者ではない僕は、よく考えるとこの街をまだよく知らない。

何度もバンコクに来ている彼女とは違い、タイ初心者の僕は、まだまだ部屋でゆったりしている場合では無いと 気付いたのである 笑

 

だが、久しぶりに 読書をした。良い時間だった。

深夜特急」は やはり名作だった。

旅に出る前は、ドキドキしながら、憧れながら、自分が沢木氏と旅をしている様な、いや、沢木氏になりきって旅をしている感覚を味わっていた。

こんな感覚を感じさせてくれる程の「引力」を持っている小説は、稀である。

他にこの感覚を味わった事があるのは、

司馬遼太郎の「龍馬がゆく」

吉川英治の「宮本武蔵

太宰治の「人間失格

くらいだろうか…?

 

だが、自分の旅の途上で読んだこの小説は、また別の感覚となっていた。

 この人の旅は、やつぱり面白いなぁ!

と、名著だと思いながら、どこか少し俯瞰的に捉えている自分がいた。

 

日本で、僕と一緒に旅をしてくれた、ガイドの沢木耕太郎さんの手を離れ、僕はひとりの日本人旅行者として、いつの間にか 独り立ちしていたのだ。

 

それはそうだろう。

彼が周ったマレーシアの場所を、僕は自分自身の足で周ったし、数十年前と今は全然違う。

 

僕は、自分の足で 実際にその地を周る事により、いつの間にか 「深夜特急」を卒業していたのだ。

それは、高校生に上がるあたりで、

太宰治」から卒業したかの様に。

 

だから、そんな僕は今、青春の真っ只中だ!

部屋で のんびりなど、している場合ではないのである!

 

まさに

 書を捨てよ 町へ出よう

である。

 

飛び出した街はやはり刺激的だ。

宿の真裏には 市場があり、朝の活気には及ばないが、まだ数件お店がやっている。

 

市場の一角にある食堂の 向かいにある、小さな自営のコーヒースタンドで、テイクアウトで、アイスカフェラテを頼む。

店主のおばさんが、

「朝と同じのでいいの?」

と笑顔で聞いてきたので、

(覚えてくれてたんだ!)と思い、嬉しくなって、

「うん、同じやつをお願いします。

 コップンカー(ありがとう)。」

と気持ちよく買い物ができた。

 

実はここには、朝も来ていた。

宿の部屋の、窓のすぐ下には 鳩が住みついており、朝から、バサバサ、バサバサ、

「クルッポー。クルッポー」と、言っている。

その音で、朝早く目覚めた僕は、窓を開けて、

「うるさいよー。くるくるっぽー!」

と鳩に注意したところ、眼下にある、全て屋根で覆われた、市場を発見したのである。

僕は早速、まだ誰もいない、階下の共有スペースからさらに階段を降り、その市場に行ってみた。

 

ここは地元の市場の様で、丁度、宿の真裏にあった。地面がコンクリートの、屋根だけのある 吹き抜けた作りだ。

 

衣料品売り場もある他国の市場と違って、ここは 食材ばかりを扱っている。

魚がメインで、鶏肉や、なんと!

 こ、これ? 小さめのウミガメ?

という、生きた亀も売っていた。

(こ、これ… シメて食べるのかしら?? )

ちょっとビックリした。

そして、魚の下には全て氷が敷かれ、全く生臭くない市場であった。

 

市場には小さな食堂があり、皆そこで食事を食べている。いるのは地元の人ばかりだ。

25バーツ(82円)で、一つの皿のライスの上に、三品なんでも選べる 嬉しいワンプレートだ。

僕は美味しそうな、角煮と、野菜炒め、対角線上に、グリーンカレーをかけてもらった。

 

それを6席程ある、アルミの4人掛けのテーブルで、地元の人と向かい合って相席で食べる。

僕はこういう地元の人しか来ない、およそ 観光客が来ない様な食堂に入り込んで食べるのが 楽しみでもあるので、旅の間、結構こういう所で 朝ごはんを食べたりしていた。

 

ここは安くて美味しかった!

さっとご飯が出てくるのがいい。

さすが市場だ! 話に聞く築地のようだ。

とにかく「早くて  安くて  美味い」のだ!

 

食べ終わった僕に、次に目に入ったのが、

現在、今また来ている 例のコーヒースタンドだった。

 

2畳ほどのスペースに、明るいおばさまがいて、地元の人に大人気の様だ。

常連さんと談笑しながら、コーヒーを売っている。

僕はここが気に入り、モーニングコーヒーを飲む事にした。

おばさまに、アイスカフェラテを頼む。

ここで面白いのは、ミルクが、缶に入った甘々の コンデンスミルクである事だ。

 

そのネチャリとした液体を、ドボンとコーヒーに入れてくれる。

渡されたカフェラテは、僕好みの甘々コーヒーだ!

 うまい! 甘いっ! 美味い!!

と、喉が渇いていた僕は、一気に飲み干してしまった。

おばさんは、日本人の客が珍しいのか、最初は少し戸惑っていたが、少し話すと、すぐに打ち解けた。

こういう行きつけのお店があると、旅がまた豊かになる。

 

みんな人が大好きで、お商売をしている。

(きっと、日本も昔はどこも、

 こうだったんじゃないかしら?)

と僕はありし日の日本を、ここ東南アジアに、いつも 不思議と重ねてしまう。

 

再び 宿から飛び出した僕は、わざわざここの店に寄って、冷たいカフェラテ片手に、街をウロつく事にしたのだ。

 

その後、駅前に向かう事にした僕は、途中で何故か、ラーメン屋に吸い込まれていた。

まだ夕飯に早いが、ラーメン屋の提灯をみて、どうしても食べたくなってしまったのである。

ここは 日本のラーメン屋だし、美味そうだった。

 

店に入ると、元気な日本人男性が迎えてくれる。

「あらっしゃっえ!? サッセー!!」

と久しぶりに聞く、ちょっと 何言ってるか解らないギリギリの、

気合の入った「いらっしゃいませ」だ。

 

日本語のメニューを見る。

な、なんと!! 100バーツ以下だ!

300円くらいで良心的だ。

安食堂の一食に比べると、少し割高に感じるが、日本のラーメンをこの値段で食べられるのなら かなり安い!!

ベトナムで見た時は、ラーメン一杯600円以上だったからだ。

そして ラーメンは、僕の好きな鶏白湯スープの様だ。

 

日本のラーメンを食べるのは久しぶりである。

タイ人男性に席に案内してもらう。

彼の接客も気持ちがいい。まるで日本に帰ってきたかの様だ。

初めて入ったら ラーメン屋ではいつも頼む、基本の一番シンプルなやつ(96バーツの)を頼む。

 

しばらくして、白濁したスープのラーメンが、僕の前に来る。

(やべぇ。。旨っそー!!)

と思い、早速食べてみる。まずはスープ。

 

 …嗚呼。 沢山の。。

 沢山の、タイの鶏さんを感じる…

 

「煮込まれてくれた鶏さん達 コップンカー🙏」と謎の境地に至る美味さだ。

 

次に麺を思い切りすする!!

麺も細麺で スープに良く絡む イケメンだ!

鳥の旨味と、塩の旨味が良くマッチしている。

 「正に 味のイケ麺ジャニーズや!」

 「良く マッチでぇぇえ〜す!」

と、頭の中に、彦摩呂さんと、片岡鶴太郎さんがいっぺんに出てくる 笑

 

大満足した僕は、もう一個の、駅前にある方のモールを周ってみた。

ここは、宿の前のモールよりさらにデカい!

一階には、ここでもプリペイドカード式のフードコートがある。

(ここは、ほぼ満席で大盛況だった!)

 

そして、宿の前のモールでは、タイ版のケンタッキー屋? だったのに対し、ここにはちゃんと、正規のKFCがあった 笑

ここは、衣料品や、日用雑貨もかなり豊富な品揃えだ。

生活に必要なものは、全てここだけで揃ってしまうだろう。

 

ここオンヌットは、バンコクの中心地から少し離れていて のんびりできるし、必要な店は、モールに全部揃っている。

バンコクで一番の繁華街「スクンビット」へも、高架鉄道BTSで 10分程だ。

 

「とにかく住みやすそうな街」というイメージを 僕は持っていた。

(後で調べると「日本人が多く住んでいる」

 との事だった。それも、納得である。)

とにかく、宿の旅の達人看護師さんの様に、

ゆるりと沈没するには、もってこいの街らしかった。

 

だいぶ歩いて、少し疲れた僕は、モールのフードコートの席に座り、何も注文せずに 無料の水をガブガブ飲んで休んでいた。

タイでは、別に注文しようがしまいが、誰も気にしない。

 

しばらくすると、モールの無料Wi-Fiで繋いでいた携帯に、LINEが入った。

「どう? づま?元気にしてる?

 上田から色々話聞いたよー」

と例の散髪を進めてくれた、俳優仲間からである。

タイに数ヶ月住んだこともある、タイの達人でもある中条からである。

 

僕は「次にカオサン通りに行く」という事以外、何も決めていなかったというか…

その後どうしたら良いのか全く解らなかったので、

これ幸いとばかりに、彼女に相談も兼ねて、

返信せずにすぐ、LINE電話をかけていた。

 

続く

 

 

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↑ 市場にて  良く売っている?亀さん。

 

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↑ 今度は 箱の上で寝ていた猫さん

 

次話

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