猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

日本人だらけの不思議なバンコク

 

第118話

日本人だらけの不思議なバンコク

 

パヤタイ駅で大恥をかいた僕は、改札から一番端まで、逃げ延びていた。

ここまでくれば、僕の失態を見た人はあまりいないはずだからだ  笑

 

先頭車両から、電車に乗り込む事にする。

不思議な事に、改札を入ると すぐにまた警官が立っていた。

 

空港の改札では "国際空港" だから 警戒しているのかと思っていたが、どうやらバンコクは全体的にモノモノしいみたいだ。

僕の行った3カ国では、鉄道の改札内に警察が立っているなどと言う事は、これまで 全く無かったからである。

 

僕はここでハッとした。

 

そういえば、僕が最初、

マレーシアから、マレー鉄道で国境を超えて、

そのままタイに入るという、

深夜特急のオマージュルート」を断念したのは、2年程前にバンコクで起きた

「爆破テロ事件」の余波の影響であった。

 

そのマレーシアからの入国ルートは

外務省から、「レベル3」渡航中止勧告が出ていたのだ。

つまり、テロへの警戒で、タイはまだ ピリピリしている真っ最中なのだろう。

 

 

先頭車両から車両に乗り込むと、来た電車はまた混んでいた。

席は埋まっていたので、立っていると、やはりまた日本人がいた。

僕の向かいの席に座っている 50過ぎの観光客のおじさんは、何やら食い入るようにガイドブックを読んでいる。

(ん?? やけに一生懸命読んでいるな。。)

と思って見てみると、それは バンコクの夜遊びガイドブックだった。

 

彼もタイに来てまもない様に見えたが、

(どうせ日本語はわからないだろう!)

とばかりに、その風俗のガイドブックを広げて読んでいる。。

そこには、

バンコクの夜を楽しむならココ!」

とか、

「女の子 お持ち帰りOKな店」など、

どうしようもない日本語が並んでいる…

 

わざわざ そう言う目的で タイに来るおじさんがいるとは、日本でも話に聞いていたが、

実際にそれを目の前にして 僕はかなり驚いていた。

(おっ、おぉう…  本当にいるんだ。。こんな人)

と 逆に一瞬感心してしまった。

 

しかし、一体何を考えているんだろう… このおっさんは?

まぁ、旅の目的はそれぞれだとしても、人様の国に来て、

公共の電車の中でそんな物を広げているのは、流石にありえないだろう。。

同じ日本人として、僕の方が恥ずかしくなってきた。

 

そういえば、一昔前の事だが、何かのインタビューで、

ヨーロッパから来た外国の方が、

日本の通勤電車に初めて乗った時に、

 

日本のサラリーマンのおじさんが、

週刊誌や 漫画の「裸の描写」などを、車内で普通に読んでいて、

 "この状況 ありえない!" と本当に驚いた。

と言う話をしているのを 聞いた事があった。

(今は さすがにそんな人は、

 日本でも滅多に見ないが…)

 

だが、今度はタイで僕が驚く番だった。

(おいおい、頼むよ… おっさん。。

 何広げてんの… 俺が恥ずかしいよ。)

と、いきなり日本人にビックリさせられたのだった。

 

この、「旅の恥はかき捨て」という言葉を

はき違えたおじさんは、

スクンビット」という駅で降りて行った。

この体験は、結構な衝撃だった。

 

知り合った旅人たちから色々と話は聞くし、僕もそこそこ生きているのでそんな潔癖でもないし、大概の事は笑えるのだが、、

何か この、日本ではあまりお目にかかれない、

おじさんの生々しい 丸出しの欲望は、ちょっと笑えなかった。。

 

読んでいる時の表情も やばい顔になっていたので、

 おじさん… あなたね、、

 その顔だけで 軽犯罪法に引っかかりますよ…

と言いたくなったのは、僕だけではないはずだ。

 

そんな電車は、さらに数駅過ぎて、やっとオンヌット駅に着いた。結構な田舎を覚悟していたが、車窓から見えてきた街は、そんな感じではなかった。

 

ここオンヌット駅にも、改札に向かう途中、やはり後ろ手に組んだ警官が立っていた。

切符のカードを改札機に入れて、無事駅の改札を出た僕は、そのまま階段を降りた。

 

高架鉄道の下は、鉄道に沿うように国道になっており、向かい側にかなり大きいショッピングモールがある。

ほとんどの買い物はここで済んでしまいそうな大きさである。

 

ひとつ驚いた事がある。

階段を降りてすぐのところに、盲目の女性がいて、

今は懐かしい、ハンディタイプのカラオケマイクで、歌を歌っていた事だ。

(ん? …やけに歌が上手いな。)

と感心して しばらく見ていると、

どうやら 歌自体も音源から流しており、

「口パク」であるようだ。

 

マレーシアのクアラルンプールにも、盲目の方が駅からの階段を降りた すぐ横におり、ティッシュを売っていたが。。

 

カラオケを歌ってアピールするというのは、かなり斬新に思えた。歌には、より訴える力があるからだろうか??

そんな僕は、不思議と心が動き、先程の切符を買った残りの小銭を、彼女に気づかれないように、そっとカゴに入れた。

そして、Googleマップ先生を見て、場所を把握した僕はその歩道を歩き出した。

 

初めて歩くタイの街は新鮮だった。

高層マンションは、ちょっと入ったところにちらほらあるが、道の横は、三、四階建ての建物ばかりである。

賑わっている小さな屋台村のような所もあったし、ストアや、マッサージ屋さん、貴金属店、初めてみる看板のコンビニ、セブンイレブン、商売のついでに宝くじを売っている店もある。

脇道には、屋台も出ており、果物や野菜なども パラソルの下で売っている。

歩道に沿って、ずらっとお店が並んでいて、巨大な商店街のようで本当に楽しい!

美味しそうな、日本のラーメン屋も発見した。

 

そんな街を堪能しながら、スクリーンショットしておいた、宿までの行き方も見ながら、

ここだというところで右折する。

 

直進して行くと、駅前のモールより一回り小さいが、また綺麗なショッピングモールがある。

(二つも大きなモールがあって、

 この街で競合しないのだろうか?)

と思ったが、きっと大きなお世話だろう。

 

ここから道路を渡ると、路地に僕の泊まる宿があるはずである。

だが、道路を渡ろうと思ったが、ここには信号が無く、交通量も多い。

危なくて渡れそうにない。。

しかし 信号まで戻るとすると、右折したところまで、かなり戻らなければならない。

 

みんな どうしているのか? と見ていると、しばらくすると 誰かが強引に車を止めて道を渡っていく。そのついでに数人が渡っていく。

どういうタイミングで渡れるのかが さっぱり分からない僕は、しばらく呆然としていたが、何とかこの道路を渡ってみることにした。

 

一人では怖いので、歩道にいた 道路を渡りそうなタイの男性を見つけ、気付かれないように、彼の後ろにピッタリと付いた。

まるで「JOJOの奇妙な冒険」のスタンドの様に。

彼が轢かれたら、僕も轢かれてしまう…

まさに一心同体である。

 

やがて僕は 彼の動きに併せ、一緒に道を渡った。

一瞬、

 え?! このタイミングで?!

と思ったが、車たちは止まってくれ、僕たちは無事に道を渡ることが出来た。

 

渡ったすぐの路地に入ると、目印の日本料理屋があり、その向かいに宿があった。

 

インターホンを鳴らすと、上がってきて下さいとの事で、ドアが空いた。

 

階段の端には、サンダルなどがキチンと並んでおり、どうやらここも土足厳禁のようだ。

 

上がり切ったところで靴を脱ぎ、僕はフロントがありそうな、共用スペースに足を踏み入れた。

そこは、僕が追い求めていた

日本人旅行者が溢れかえっていた。

 

つづく。

 

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↑ タイでも猫さんは健在☺️

 

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