猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

旅立ちの決意

 

第113話

旅立ちの決意

 

昨日も しこたま酒を飲んで寝た僕は、

部屋に降り注ぐ、明るい日差しで目を覚ました。

 

部屋は明るく輝き、不思議な事に僕は、久し振りに全身に力が漲っていた。

 

奇妙なもので、ここ数日の鬱のようだった自分と、今の自分が、同一人物とは思えないくらいスッキリしていた。

 一体なんだったのだろう??

 昨日までの あの無気力だった自分は。。

と 本当に不思議に感じる。

 

だが、とにかくここから脱出するチャンスである!

僕はとにかく、この部屋を出ることにし、ホテルのモーニングへと向かった。

そして、そのままチェックアウトの意思を、フロントに伝える事に決めていた。

今感じているこのエネルギーがある内に、とにかく明日 旅立つ事にしたのだ。

明日まで宿をとってしまっていたのと、少し自分の様子も見極めようとも思い、とにかく明日出ることに決めた。

 

ハノイに来た時には、まさか 逃げるようにして この街を去る事になろうとは、全く予想していなかった。

だが、今のこの 不思議なくらい漲る前向きな気持ちを逃すと、もう 二度とここから旅立てないような気がした。

とにかく、明日はここに泊まれないように 手続きをする事にした。

 

部屋から街に出てみると、街の様子が全くちがう。

というか、僕の感じ方が変わっているのだろう。。

少し周りを散歩してみると、全てを面白く 新鮮に感じる。

 

一瞬 (俺、躁鬱病なのかな??)

と自分を疑ってしまう。。

 

慎重に自分の心と向かい合うと、別に、

(す、す、す!  素晴らしいぞ!! 世界!!)

と大げさに感じているわけでは無い。

よく聞く 鬱の反動の様な症状は無く、落ち着いてこの街を暖かく眺めている自分がいる。

 

そう。。 ぼくはちゃんと、

街の温度を感じられているだけなのだ。

 

 うん、生きているなぁ。。

 俺は今、ここに、ただ存在して、

 ただ息をしている。ただ生きている。

 それにしても太陽ぉ! 笑    

 ほんと、暑っちいなぁ。。

 

と文句を言うくらい 僕は落ち着いていた。

 

(きっと心にも風邪を

 ひいていただけなのだろう…)

 

僕はそう結論付け、

深く考えると良くないな。。 と思い至り、

明日旅立つ前に、このハノイに、自分なりにお別れをして去ろう と決めた。

 

僕は最後のハノイを、このゆったりとした気持ちで周り、そして、カンボジアで行けなかった、屋上露天風呂で締め括る事にした。

 

プノンペンで、見つけていた日本風ホテルは、実はここハノイにもあり、宿泊してなくても、お風呂にだけは入れるのだ。

 

そう決めた僕は、とにかくホテルのフロントに向かい、そして 明日のチェックアウトの意思を伝えた。

スッキリした気持ちの僕は、その後朝食をとった。

よく味わって、ゆったりとした気持ちで、モーニングを食べ終わった僕は、部屋には戻らず、そのままここで、

タイの「バンコク」行きの 航空チケットを取る事にした。

 

あの部屋に戻る前に、もうここで チケットを取っておきたかったのだ。

日本語のホームページがある ジェットスター航空の格安チケットが見つかり、僕は躊躇せず、そのチケットを買った。

 

余裕のある、11時40分発の便にする。

時差はなく、13時半にはタイに着く。

初めて行く国には、明るい内に着きたかった。

 

チケットをとって ホッとした僕は、明日のタクシーを予約し、そのまま街を散歩する事にした。以前の僕に戻ったようで、街で見る色々なものがやはり面白い。

 

しばらく街を周っていた僕は、途中でバザールに入り、人々の活気に触れる。

エネルギーに満ち溢れた場所だ。昨日までの僕であったら、到底行けなかった場所である。

最後だと思って、時計を売ってくれたおっさんを探したが、今日は休みなのか 会えなかった。

あんな酷いやりとりしかしていないが、最後だと思うと、一目会いたくなるから不思議である 笑

 

僕はさらに歩き、お気に入りの池に出た。

最初の宿の近くの、ハノイっ子憩いの場所である。

僕はここで、遅めの昼ごはんを食べる事にした。池を一望できる、レストランビルの4階まで行き、そこに入る。

 

実はここは、日本でもよく行っていた大衆イタリアンカプリチョーザがあるのだ 笑

ベトナム最後の日だというのに僕は、何故か日本でも食べられる、チェーンのイタリアンの店に入る事にしたのだ。

ビールとサラダを頼み、ゆったりと池を眺める。やっぱり、日本でも行った事のある店は落ち着く。。

なかなか、最高の時間である。

(ふぅ。色々あったが、ついに次はタイだなぁ)

 

池を眺めながらゆったりビールを呑んでいると、

(本当に昨日までどうかしていたな。)

という思いが湧いてくる。

 

(たぶんもう…  この旅ではきっと、

 ああいう状態には ならないだろうな。)

という これまた不思議な確信があった。

 

きっと僕は、旅人への洗礼をひとつくぐり抜け、またひとつ成長したのだろう。

 

ゆったりしていると、やがて夕方になってきたので、僕はお風呂のある日本風ホテルを目指して歩き始めた。 結構歩く… うん、歩く…

 うーむ。。。無理せずにタクろう!

僕は途中でタクシーをひろった。

 

少し周りも見たかったので、大体近くまで来たところで下ろしてもらった。

タクシーに乗るようになってから、気付いた事がある。

 

それは1000ドン(5円)以下のお釣りは、くれないと言う事である。

細かいお釣りがないのか、チップとしての習慣なのかわからないが、請求しないらしい。

 

タクシーメーターは、ベトナムでは一般的な、

1000ドンの位で表示され、小数点もあり、

39.5(39500ドン)とか、

18.6(18600ドン)と

赤い電飾で表示がされる。

 

最初、38800ドン(194円)のタクシーメーターで、39000ドンを渡し、

お釣りの200ドン(1円)をもらおうと、しばらく座っていると、お互い無言のまま数分が過ぎた。。

運転手も「何か準備でもしているのか?」

と言うふうに、黙って待っていた。

 

僕は根負けしてタクシーを降りた。

 

次のタクシーでは、お釣りが900ドンであった。

 流石に900ドンは欲しいかな。。?

と思っていると、また謎の無言タイムが始まった。。 

僕は(今度は根負けしないぞ)と思い、

「900ドン… 900ドンは?」

と聞くと、運転手は不思議な顔をした後、

ため息をついて、まるで "めぐんでやるよ" と言わんばかりで、哀れな私に900ドンを 色々な紙幣で渡してくれた。。

 

僕はここで、少しだけ気付いた。

(数百ドンのお釣りは、

 請求せずに、切り上げて払うのが、

 ベトナムのタクシーの慣習ぽいぞ…) と。

 

確かに、街でも1000ドン以下の紙幣や、小銭はあまり見た事がないし、そのやりとりをしなくて良いような値段が、商品につけられている事がほとんどだ。

 

その次のタクシーでも、やはり無言タイムが発生し、僕は勝手に確信に至り…

僕は、実地で

(1000ドン以下のお釣りは 切り上げで、

 数百ドンの 細かいお釣りを請求しないのが、

 普通と考えて 間違いないようだ。)

と勝手に理解した。

 

流石に、数万、数千ドンやられたら、

(おい! お釣り詐欺だろう?!)

と思うが、1000ドンの単位までは、ちゃんとお釣りをくれる。

 

実は、1円、3円でしかない、

200ドン、600ドンでは、

本当は 何もいう気は起きないのだが、

必要以上に(騙されないぞ!)と気を張っている僕は、たかが数百ドンのお釣りでも、メーターに記載されている以上 貰えないと

(騙されているのでは?!)

と 疑ってしまっていたのだ  笑

 

だが…そういう習慣であれば、メーターに小数点で数百ドンの表示をしないで欲しい。。

 ややこしいよ…  メーター。。

勝手に恥をかいた僕は そう思っていた。

 

日本風ホテルのあるエリアは、そういうニーズがあるだけあって、日本人エリアのようだ。

そういうエリアによく見る、日本のラーメン屋さんや、赤提灯の居酒屋、お寿司屋さんなどもあり、日本語の看板で溢れている。

 

そんな街並みを楽しみながら歩いていると、例のホテルに着いた。

ここでもフロントの方は、ベトナム人だが、プノンペンと同じで、日本語が達者である。

笑顔も 接客も気持ちがいい。

 

前払いの料金を払い、鍵をもらい 屋上の露天風呂へ向かう。

タオルなどのレンタルもあったが、勿体無いので借りずに向かう。自分のタオルは持ってきているからだ。

 

エレベーターで、屋上のお風呂に着くと、そこには誰もおらず、貸切だった。

日本語で書いてある、ボディソープとシャンプーで、体を綺麗にしてさっぱりした僕は、

星空の下、露天風呂にゆっくりと浸かった。

 

竹で出来た仕切りの外には、ハノイの街並みも見下ろせる。。

 最高だ…  最高の時間だ!

最後まで 貸切状態の露天風呂は素晴らしかった。

 

最後にハノイから、まるで " ギフト" を貰ったかのように感じた僕は、

もう見る事は無いであろう、ベトナムの夜空を見上げながら、ただただ この国に感謝していた。

 

つづく

 

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ベトナムカプリチョーザ

 何故か無性に行きたくなった。

 

 

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↑ 日本風ホテルの屋上露天風呂

     夜空とハノイの街並みが最高であった。

 

 

次話

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