猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

長旅に 無理は禁物である。

 

第106話

長旅に 無理は禁物である。

 

シクロ代をめぐる 激しい「ボッタクリ論争」が決着し、その後、タクシー万歳とばかりに、タクシーで無事水上人形劇に間に合った僕達は、まだ見ぬ人形劇に期待していた。

 

劇場のロビーには人形劇に使う人形なども展示されており、テンションがあがる。

席は、真ん中の方のかなりいい席だった。

そして、いよいよ開演である。

 

水上人形劇は、2回目でも全然飽きなかった。

楽器の生音があり、舞台の両端には、歌い手がおり、人形に台詞の歌を当てたり、地の文を歌ってくれる。

ホーチミンとも ほぼ同じだったが、ストーリーは、違うものも多かった。

 

何より面白いと感じたのは、水の色だった。

水上人形劇は、水が透明だと、下で動かしている棒などが見えてしまうので、水に色が付いている。

ホーチミンは、灰色だったのに対し、

ここハノイでは 緑色だった。

 

僕の見たメコン川は、光の加減で、川が灰色に見える事もあり、ホーチミンは、メコン川をイメージしているのでは?と思った。

そして、ハノイ水草みたいな物を意識しているのだろうか?

と、勝手に分析していた。

 

しかし、舞台の後ろから、長い木の棒で人形を操作しているのに、まるで生きているかの様に 人形達を動かせる技術は、本当に素晴らしい技巧である。

またベトナムに来たら、是非 もう一度見てみたいと思わせてくれる舞台だった。

 

僕達は大満足して、池の周りを歩きながら、感想を語っていたが、"リサーチ王" でもある上田が、

「美味しい火鍋の店がある」と教えてくれ、最後の食事は、そこで鍋をつつく事にした。

 

お店を地図で見てみると、僕らがいる池の丁度反対側であった。

池の周りをぐるっと周る。

途中に色々お店もあり、なかなか楽しい。

 

ふと、スーパーを見つけた上田が、

「ちょっとここで買い物をしたい」

と言い出した。

友人に頼まれた、コスメか何かを買いたいそうだ。

そういえば、不思議と僕は、ベトナムのスーパーには入った事がなかった。

せっかくなので、一緒に入ってみる事にする。

 

しかし、ここでカルチャーショックを受けた!

なんと! ベトナムのスーパーでは、手荷物をロッカーに預けないと、入れないらしい。

僕はそれを聞き、荷物を預けるのを面倒に感じてしまった。

なので、荷物を僕が預かって、上田一人で入ってもらう事にした。

 

後で調べると、万引き防止の為にベトナムではロッカーに荷物を預ける事は、どこのスーパーでも常識らしい。。

 

気の良い人が多そうな国だと思っていたが、万引き対策で ここまで徹底しなければならない事が、ちょっと意外でビックリした。

(…そんなに万引き多いの??)  と。

 

僕がしばらく待っていると、上田が出てきた。

「ごめ〜ん。。欲しいやつ売ってなかった。

 空港で探してみるね〜」

と言うのを聞いて、

(なるほど。

 彼女ほど、キチンとリサーチしてると

 欲しいものも決まっており。

 売ってる店を、探して周らないと なので、

 こんなに買い物に時間を割くんだなぁ。。)

と最終日に僕は、妙に納得した。

そしてそれを楽んでいるところを見ると、

宝探しにも似た感覚なのだろうと思った。

 

スーパーからすぐ近くにあるはずの、火鍋のお店は、ちょっと分かりにくい所にあり、周りを 結構散策し、やっと見つけた。

 

木造のだいぶ古めかしいお店で、2階に案内された。

階段付近は、色々なものが置いてあり、雑然としていて汚い。。 階段も暗く 埃だらけで、何故か階段の真ん中のあたりの 棚の上に、埃まみれの薄汚れた野良猫さんもいた。

(飲食店として 大丈夫か? この店…)

と思っていたが、2階のフロアーは白が基調で、ちゃんとしていた。

 ちょっとやばいかな? この店…。

 と思ったけど、大丈夫そうだね 笑

と僕が言うと、

 ほんと〜。階段やばかったよね…

 なんか 猫いなかった??

と上田も かなり気にしていた。

 

ガイドブックでは「とにかく美味しい」と紹介されており、僕はフォローのつもりで

 アレじゃない?  日本でも、

 「店は汚いけど美味しい店」とかあるじゃん。

 ベトナムだと 「汚い」のレベルが高い!?

 とかなんじゃない??  笑

 

と言うと、上田は爆笑しながら、

 じゃあ、「美味しい」レベルも、

 半端ないじゃん! 笑

と言って、僕らは笑いながら盛り上がっていた。

 

オススメの鍋を頼んで待つ事にする。

肉入りの鍋に、野菜や香草などを入れていくもので、昼に食べた つけ麺の様な米の麺もついてきた。

店員さんが鍋を作ってくれる「料亭すき焼き屋」システムの様だ。

 

食べ始めていくと、

(う〜む。。 まぁ、「美味しい」けど…

  「汚い」が圧勝している。。)

と思って顔を上げると、上田と目が合った。

どうやら彼女も同じ事を思っている様だ。

長年一緒に芝居をやっている仲なので、アイコンタクトで言いたい事がわかる。

店員さんが真横にいるので、言葉にできないので、よりそうなった。

 

途中上田がトイレに立つ。

店員に場所を聞くと、例の階段を降りた一階にあると言う。

 

上田が席を立った後、僕はちょっと具合の悪い自分に気付いた。。

昨日の疲れが抜けていない所に、今日うっかりそのまま散歩にも出て、炎天下を歩いていた。

 

そして、そのまま昼寝もしないで、上田と合流した後も、色々歩き、シクロのおじさんと怒鳴り合い、そのまま大急ぎで劇場に行き、この店に至っている。。

 

何より、今まで自分のペースで 1ヶ月も生活してきた僕は、友人が来た事で、知らず知らずのうちに はしゃいでいたようで、結構無理をしていたのだろう。。

どれくらい体調が悪かったかと言うと、

僕は久しぶりにビールを頼んでいなかった。

これはかなりの重症であるはずなのだ 笑

 

戻ってきた上田が、そんな僕を見て心配してくれたが、何故か上田も少し顔色が悪い。

 

 ちょっと… 疲れが出てるかな。。

 少し、熱中症気味かもしれない。

 でも、上田も顔色悪いけど、どうした?

と聞くと、

トイレがまず 汚かった事と、トイレを出てすぐの廊下で、ネズミの様な 何か踏みそうになったそうで、

「うわっ!? な、なに??」となり、

よく見てみると、まだ目も開いていない、生まれたての仔猫が、埃まみれの薄汚れた姿で「ミーミー」と鳴きながら、足元にいたと言うのだ。

 

それを聞いて、流石に僕も引いた。

かなりゾッとするお店だ。。

「もう、ここを出よう。。」となり、

店には申し訳無いが、鍋は半分くらい残っていたが、そのまま出る事にした。

よく考えてみると、ガイドブックでも有名な店のはずなのに、僕らしか客がいない事も 確かにおかしかった。

 

店から出て、僕はかなりクラクラしていた。

「づま、大丈夫??」

と言われて、

「いや、大丈夫じゃないかも… 汗」

せっかく来てくれた上田に、心配をかけたくは無かったが、情けない事に 強がる気力もなかった。

 

「あたし、まだ買い物もあるし、

 一人で帰れるから、もう宿に帰りなぁ。

 十分2人でまわれたよ〜。

 凄い楽しかったし、大丈夫だよ。」

と言ってくれる 上田の優しさが身に沁みる。

 

本当は、彼女を 空港まで見送りに行くつもりだったが、この状態では、もう一緒にいても迷惑になりそうだ…。

 

「ほんとにごめんね。

 たぶん、軽い熱中症だと思うから。

 宿で休めば治ると思う。。」

宿まで送ろうか? と言う上田に、流石に遠慮し、タクシーで宿まで帰る旨を伝えた。

また日本で ゆっくり旅の話をしようと、約束をして、上田が止めてくれたタクシーの前で、握手とお別れをして、僕は宿へと向かった。

 

タクシーは、ありがたい事に ぴったり宿の前に着けてくれた。

そして、無事に宿に帰った僕は、水をがぶ飲みした後、ベッドに倒れ込み、そのまますぐに気を失っていた。。

 

つづく…  ハズ。

 

 

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↑ 水上人形劇場に展示してある人形

 クセになる可愛らしさ?がある。


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↑ 開演前に間に合った!!

 

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↑ 何度見ても、素晴らしい舞台

 

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↑ エンディング。

 超絶技巧の人形使いの方々。

 

 

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↑ 例の火鍋屋である。

 美味しくはあるのだが…

 

 

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