第100話
「遂に 外国で友に再会す!」の巻
20xx年 宿のバスタブの栓をめぐる、
この宿は平和を取り戻していた。
僕は色々な疲れにより、ベットで少し横になる事にした。
心地よいクーラーの温度と、お風呂に入れた事による身体の柔らかさが加わり、僕はやがて平和な寝息を立てていた。。
だいぶ深く眠っていたはずだが、LINEの着信音が鳴り、僕は目を覚ました。
どうやらもう2時間ほどで、彼女は自分の宿に着くらしい。
そう、ハノイで再会する友人は俳優仲間で、女優でもある。彼女 上田とは、舞台共演は勿論、一緒に何回か旅公演も行っている、10年来の、親友であり、家族に近いというか、戦友に近い。
芝居や、プライベートな事も気兼ねなく相談できる 数少ない人物である。
僕が旅に出る前に、いつものメンバーで飲んでいた時、上田が、
「私もマイルが切れそうだから、
使い切りに、近々ベトナムに行くから、
旅の間に会えたら面白いよね〜」
と言って笑っていた。
僕が旅にでる直前に、上田は次の月に 丁度まとまった休みが取れる事になり、呑み屋で冗談で言っていた事は 実現の運びとなったのである。
ラインで、彼女の予約した宿の場所が、Googleマップ付きで送られてきた。
その場所は、僕の宿から歩いて5分ほどの、すぐ近くだった。
ハノイに慣れている僕が、彼女の宿まで迎えにいく旨を伝え、落ち着いたら待ち合わせ時間を決める事にした。
ついに外国で友人と再会する!
日本を出てから、1ヶ月以上が経ち、ついに最後のイベントである。
その後、僕は宿でゆったりと待ってから、待ち合わせ時間に彼女の宿に向かった。
かなりワクワクしている自分がいる。
会えるのも嬉しいが、日本語で遠慮なしに喋れるであろう事も、この嬉しさに拍車をかけていた。
僕は、一週間前にいた "プノンペン" を最後に、ここ一週間、今の宿の主人の 怪しい日本語にしか触れていないからである。
そんな事を考えていたら 宿にはすぐ着いた。
ホテルの階段を見上げると、ガラス越しにフロントにいる上田が見えた。
向こうもこちらに気づいて手を振って降りてきた。
「づま〜、久しぶり〜、焼けたね〜。
というか、痩せたね〜! 」
と彼女は元気いっぱいだ。
(因みに「づま」とは僕のあだ名である)
僕もニコニコしながら、
まぁね。色々あったからさぁ〜。
と半笑いで 返事をする。
彼女のその元気なノリを見て 僕は、
(観光客だ、、観光客が来た… 笑)
そう思い 実は少し笑ってしまっていた。
彼女は二日間ダナンに行っていて、満を辞してのハノイである。
僕の様な、時間だけはあり、ダラダラ過ごしていてる 暇な旅人 と違って、限られた時間で、行きたい所を周らなければならない。
そんな彼女はやはり気合が違うのだろう。
旅に出て以来、のんびりした旅人にしか会っていなかった僕は、彼女の その「観光客パワー」の様なエネルギーに、久しぶりに触れて、
彼女には悪いが、思わず何故かそう思って 笑ってしまったのだった。
だが しかし、嬉しい!!
1ヶ月以上も "友人の誰とも会わないでいる" という事自体が、まず 人生で初めての経験である。
友人に会える事がこんなに嬉しい事だとは思わなかった。
あまりの事に 僕は少し人見知りしていた…
恥ずかしい話だが、長旅で、友人との距離の取り方が 少し分からなくなっていたのだ 笑
はにかんでいる僕が、とりあえずどうするかと話すと、彼女は「行きたいピザ屋がある!」と話が早い。
今日ダナンから来た彼女は、ベトナムを、限られた日程での観光である。
僕みたいに、なんとなく街をうろついている輩とは違い、ちゃんとガイドブックで、色々リサーチを 完璧にしてきていたのだ!
凄い ちゃんとした旅行者だ!!
と感心しながら、僕は別にどこでもいいので、彼女のリサーチ力を頼りに、回る事にした。
彼女のガイドブックで探すと、なんだかよくわからない。。近くにはいるはずだが…
僕には旅で培った、勘のようなものがあり
「たぶん、こっちじゃ無い?」
と、ずんずん先導し、結局そのままそのお店に着いた。彼女は、
「すご〜い。やばい能力身につけてるね!」
と感心してくれたが、
言われてみると、そんな能力が身に付いているのは確からしかった。
ピザ屋に入ると、キチンとしたレストランで、何か場違いな感じがする。。
ローカルレストランばかり行っていた僕は、ちょっとオシャレすぎて苦笑いしていた。
だが、自分ではお店は 絶対に見つけられなかったはずで、たぶん見つけても入らないはずである。彼女のおかげで 違う街の姿を発見出来た。
(普段、どんなとこ行ってるん?自分… 笑)
と自分にツッコミ、相対化するいい機会である。
食べながら色々喋っている内に、リハビリが済んだのか、僕はようやく普通に喋れる様になっていた。
さすがは、10年来の友人だ、ありがたい 笑
ハーフアンドハーフの2種類のピザを一枚ずつを頼んで、シェアする事にした。
値段はまぁまぁ高く感じるが、よく考えると、日本に比べるとはるかに安い。
(自分の感覚が大分 ズレているのだなぁ。)
と気付かされる。
しかし、流石に有名なピザ屋である、接客も気持ちよく、ピザも美味しかった!
満足した僕らは、暗くなってきたハノイの街を散歩する事にした。
ここハノイは、街中は 歩行者天国になっていて、出し物や、舞踏、ミュージシャンなどがいて、ちょっとしたベトナム大道芸と言ったところである。
実は、彼女は結構おしゃべりで、僕もかなりのおしゃべりだ。
俳優同士であるので、お互い聞く力はそれなりに手に入れているが、気の許せる仲間同士なので、日本では いつもお互いマシンガントークで、激しく撃ち合っていた 笑
色々話をしていると、彼女が不思議そうにしている。
あれ? なんかすごい聞き上手になってない?
あんまり喋らないね。。
僕は「そうかなぁ。。」
と言っていたが、確かにそんな気がする。
少し考えてから彼女に、
だぶん、こっちだと英語だから、
とにかく 聞くことだけに、
マジで集中してないと、本当にさぁ…
コミニュケーションが成立しないから。
とにかく聞こうとするクセが付いてるのかも
だから、そうなっているのかもね…?
と話した。
どうやら僕には、昔 日本のインプロの師匠が、口を酸っぱくして言ってくれていた「傾聴力」なるものが、いつの間にか身に付いていたようである 笑
彼女は大爆笑して「すごい成長だ!」と大喜びしていたが、確かにそうなのかもしれない。
確かに芝居の勉強で、聞くことは学んでいたが、まだまだ自分発信で喋っていた僕は、旅の間に いつの間にか
「まず聞く」という事が出来るようになっていたのだ。
この旅での「成長」を、日本での僕しか知らない彼女が、色々気づいてくれた事で、僕も気付くことが出来たのは、収穫だった。
僕がハノイの宿 名物「蟻パン」の話をし、
「上田も パン食べる時は蟻に気をつけてね 笑」
とボケて彼女に
「いやいや、まず食べないから!」
とツッコミを入れて貰うやりとりもあり、このような日本語での、テンポのいいやりとりが非常に楽しい。
久しぶりに安心して日本語で話せる事が、本当にありがたかった!
日本語で話す事が新鮮に感じるのだから、なかなか人生で味わえない経験である。
そのあと 彼女に
「その宿さぁ…変えた方が良いんじゃない?」
と言われて初めて、
「そっかぁ…そうかもね。。」
と何も気にしていなかった自分に気付いた。
(確かに これは宿を変える理由になる案件だ…)
ちゃんとした感覚の彼女の意見は新鮮だった。
明日まで、あと一泊だけ予約していたので、僕は明日、他の宿を探す事も 視野に入れる事にした。
その後、歩行者天国の通りで、足マッサージの店の人に声を掛けられ、値引き交渉してみると、安くしてくれた。
あまりに自然に交渉する僕にも、彼女は驚いていた。「さすが、慣れてるね…」と、どうやら僕は、知らぬ間に このアジアに大分馴染んでいる様だ。
足マッサージをして貰いながら、隣同士でも下らない話を色々する。
僕の旅の話も、面白そうに彼女は聞いていた。
彼女は先に他の都市も2日周っていたので、その話も聞く。
ここは足湯で最初に足をしばらく漬けて、その後マッサージなので、かなりリラックス出来た。
「旅に連れがいると また楽しいものだ」
と改めて思う。
(次に、外国に行く時は、
誰かと来てみようかなぁ。。)
という考えも頭をもたげる。
まぁ、彼女が帰ってしまったら、また一人だ。
とにかく、今この時をとにかく楽しもう!!
人生初の "友人と周る外国 " を満喫しつつ、
合流してくれた彼女に、僕は本当に感謝していた。
やはり、長い旅はしてみるものである。
つづく
↑ 実は ベトナムにも出没していた
↑ 美味しいピザ!!
ピザにはビールです^_^
↑ めちゃくちゃ楽しそうな僕 笑
↑ 彼女と再訪した夜の教会(聖ヨセフ大聖堂)
↑ 足湯…からの足マッサージ
隣同士での会話はリラックス出来て
楽しくてオススメです。
次話