猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

ハノイの空港は夜

 

午後9時50分、順調に飛び 時間通りについた飛行機から、ベトナムの首都 ハノイノイバイ国際空港に僕は降り立った。

 

ついに人生で初再訪の国、ベトナムに戻ってきたのだ。

物価の相場も、どんな感じかも、共産主義かも、右車線かも分かっている国へと帰ってきたのだ。

又、カンボジアベトナムには時差もない。

なので 午後10時頃という、夜遅くの到着でも僕は、全く不安がなかった。

 ふむふむ、ドンドン使うよベトナムドン。

かますくらい 余裕があった。

だが、さすがに夜が遅いのと、初めての土地の為、僕は 空港から宿まではタクシーを使うと決めていた。

先払いの為安心なので、空港内の配車会社のカウンターで、タクシーを頼む事にした。

一番近い会社のカウンターにいる、あまり愛想の無い 女性スタッフに話しかけた。

「この宿まで行きたいのですが

 いくらくらいになりますか?」

Googleマップの宿の位置を見せながら聞いてみる。

「ここだと45万ドンね。」

と言われた僕は

(2250円? た、高いな。。)と思いながら

「少し安くなりませんか?」聞いてみると、

「安くは なりません。

 嫌なら、他を当たってください。」

とはっきり冷たく言われた。

ちょっとその言い方に カチンときた僕は、

「なら 良いです! 他を当たるので。」

と、疲れも手伝って、こちらも不機嫌に 他の会社にする事にした。 余裕をぶっこいていたが、いきなり出鼻を挫かれた。。

そして、宿のチェックインの最終時間も確認しておこうと 旅の記録も書いていたスケジュール帳を開こうとしたが、前掛けの貴重品バックには見当たらない。

 あれ??  な、無いぞ? どこ行った??

と、バックパックのほうも探してみたが、全く出て来ない。

僕は大事な手帳が無くなり、額から脂汗を流しながら、ベンチで 荷物をひっくり返して探してみたが…  影も形もない。

 

落ち着いて 記憶を辿ってみる。

 最後にスケジュール帳を開いたのは…

と考えてみると、それは飛行機に搭乗する直前の空港のベンチだった。

これからの 何となくの予定を考えながら、フライトまでに 色々シュミレーションをしていた。

 …あぁ、たぶん やっちゃったなぁ。

きっと、カンボジアのアンコール空港に忘れてきたのだ。。 そう僕は理解した。

外国なので、忘れ物をしたらまず帰って来ないとは思っていたが、違う国に忘れた物は もう絶望的だろう。。

僕は国を跨いだ "壮大な忘れ物" をしてしまったのだ。

一応 空港のスタッフに聞いてみたが、カンボジアのアンコール空港に直接電話してみてくれと言われた。

携帯のシム契約をしていない僕は、電話する方法も無いのと、ジェスチャーの使えない電話では、自分の英語力では 説明出来ないだろうと確信し、

(諦めるしか無い…泣 )という結論に至った。

 

どうも、少し旅がチグハグだ。。

そういえば飛行機に搭乗する前にも、細身の男性職員に止められていた。

機械を通す荷物検査で、

「刃物があるので見せて。」

と空港職員に止められ、確認された。

バッグには、日本で撮影前に、眉を整えたり、万が一のお鼻の毛のお手入れに使っていた 小さなハサミが、旅でも案外重宝するので 入れてあったのだ。

その 本当に小さなハサミが写ったらしい。

彼はハサミの実物を見るなり、その小ささに少し驚き「大丈夫、戻して良いよ」と笑って通してくれたが、今まで一度も止められた事はなかった。

 

実は、日本で買っていた腕時計も、街歩きの途中、カンボジアで無くしていた。

外してポケットに入れておいたはずだが、いつのまにかどこかで落としてしまったらしく、行った場所や道を、1時間ほど探してみたが、見つからなかった。

横浜のビックカメラで、1500円程で買った CASIOのシンプルな腕時計だ。

防水で、暗いところでもボタンを押せば時間がわかる。

僕は、外国で時間を見るのに、日本にいる時の様に、いちいち携帯で調べていたら、盗難の危険も増えるだろうと、普段はしない腕時計を付けていたのだ。

それも、盗む気が起きない様なデザインの、ようは…「安物」に見える腕時計を買っておいたのだ。

しかし、流石のメイドインジャパンで、時計は全く正確に時を刻んでくれ、日にちや曜日も分かり、僕の旅を大いに助けてくれていた。

 

 …なにか、流れが悪いな。。

 

僕は 時計を無くしたあたりから何となくそう感じていたのだ。

僕は、結構昔から 直感が鋭い。

少し理由を考えてみる事にした。

 …いつからだ?

  いつからおかしいのかな。。

目を瞑って考えてみる…

 

やがて結論が出て、僕は目を開いた。

やはり、3日目の遺跡周りの「タ・ケウ」の祠で、お婆さんに 黄色と赤の糸を、腕に結んでもらってからだろう…

僕はそう結論づけた。

この手首に付けてもらった糸から僕は、何か 強い気の様なものを、少し感じていて、同じ腕に付けているパワーストーンのブレスレットと、なんとなくだが、少しぶつかっている気がしていたのだ。

変な話だが、僕はこういう "感じる事" を大事にしている。

  おばぁさん… ごめんね。。

と呟きながら僕は、この糸の輪を切り、腕から外した。その後、大事に袋に入れて、バックパックの奥にしまった。

すると、腕から感じていた、違和感のようなものはやはり無くなった… ような気がした。

 

その後僕は、他のタクシー会社にも料金を聞いてみたが、

「50万ドンです」というところばかりだった。

交渉してみたが、値引きしてくれて 48万ドンくらいだった。。

(うーん。。 結局、

 最初の会社が一番安かった)

と僕は最初のカウンターに戻る事にした。

もうすぐ23時前になろうとしていたので、僕は少し焦りながらその場所に戻ると、カウンターでは、先刻はいなかった男性職員が 店じまいを始めていた。

 ありゃりゃ。。間に合わなかったか。

と思っていると、彼の後ろを先程の女性スタッフが通って、僕と目が合った。

 すみません、もう終わりですか?

と聞くと彼女は、

(もう…、しょうがないわね。。)

という様なため息を ひとつ付き、わざわざカウンターに座って、僕を呼んでくれた。

 前の料金の45万ドンでいいの?

と聞かれるので「OKです」と伝えると、手続きをしてくれた。

最初に来た時は

(うわぁ。。感じわるぅ〜)と思っていた彼女だったが、着替えを済ませて 帰り支度までしていた所を、僕の為に、わざわざ手続きをしてくれている事に、僕は罪悪感と、同時に感謝を感じていた。

 (全然悪い人じゃなかった。。)

僕は彼女に心で謝り、感謝していた。

 

支払いが終わると、彼女は「着いてきて」と言い、空港の外の駐車場で、送ってくれるドライバーを紹介してくれ、また無愛想に「では」とだけ言って、空港に戻っていった。

彼女は無愛想なだけで、いい人だった。

タクシーに間に合った事より、彼女の不器用な優しさに、なぜか ほっとしている自分がいて、

なんだかんだで、気を張っていたのだと気付かされた。

 

ドライバーさんはというと、細身のおじさんで、彼女とは正反対の満面の笑顔で、

「ハローハロー!!

 ヨロシクヨロシク!!」

と握手してきた。

僕はマレーシアのタクシーのトラウマから、満面の笑顔で、馴れ馴れしく握手をしてくるドライバーに あまり良い印象はない。。

が、ここはベトナムだ。まぁ、大丈夫だろう。と思い、彼の車に乗り込む。

車が走り出すと、彼はよく喋る。英語が微妙なのと、たぶんベトナム語も交えて喋ってくるので、ほとんど言ってる事は分からなかったが

"彼が非常に明るい人だ " という事だけは分かった 笑

疲れているところに、彼のマシンガントークは、正直 結構きつかったが、僕は適当に相槌を打ち、後ろに流れる車窓を眺めていた。

 

ノイバイ国際空港からは、高速の様な道路に乗り、しばらく行くと大きな橋を渡る。

かなり立派な橋であった。暗くてよく見えなかったが、川もだいぶ大きそうだ。

深夜の為か 道は空いていて、片道2車線の、かなり広い 高速道路の様な所をずっと走っているのだが、なかなか市街に入らない。

思ったより長くタクシーに乗っていた。

ホーチミンの時は渋滞していて時間がかかったが、これだけ空いていてここまで時間がかかるとは思わなかった。

たしかに、2000円以上かかるのも無理はない。

やがてタクシーは市内に入り、普通のスピードになるが、結構道は空いている。

 ハノイは、ホーチミン程は

 道は混まないのだろうか?

 それとも深夜だからなのだろうか?

と思っていると、ドライバーさんは ピッタリと僕の宿の目の前に、車をつけてくれた。

ちゃんと腕のあるドライバーさんだ。

かなり疲れていた僕は、全く歩かずに宿に入れる事に感動していた。

先払いの為 支払いはないので、お礼を言って、今度はこちらから握手して別れた。

彼は陽気に挨拶を返し、クラクションを一つ鳴らして、夜の街に消えていった。

 さぁ、いよいよハノイだ。

と思うが、まずは一息つきたかった僕は、早速ハノイで初めての宿に入り、フロントの男性に声をかけた。

 

つづく

 

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↑ 夜のノイバイ国際空港

 やはり、空港へ直接降りて歩く。

 

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↑ CASIOの旅用腕時計

 安いし、重宝するので

 次に海外に行く時に同じものを買い直した。

 

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↑ 東南アジア同士だと

 国際線のチケットも安い!