猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

レッツ・マングローブ

 

第30話

レッツ・マングローブ

 

出会いとは偶然であり、必然なのだろうか。

それは不思議な1日だった。

 

いよいよカヤックツアーに行こうという日の朝

 

僕は地元の人や観光客で賑わう食堂に

「モーニング」を食べに来ていた。

 

地元のその食堂は、基本はマレー料理の店なのだが、先人のバックパッカー達がレシピを教えたのか? それとも見よう見まねでメニューを始めたのか。

モーニングもどき」が置いてある。

 

マレーシアの食パンに、スクランブルエッグに付け合わせの野菜。

食べると、カフェのモーニングとは、、

何かが。。具体的には出てこないが。。

ナニカガ チガウ。。なんか惜しい!と言う味なのである。

それでも、たまには "洋の朝食" を格安で食べたい時は、重宝する。

 

ここは朝は 特に観光客で賑わう。

 

僕もたまにはモーニングを食べたくなり、その食堂にいた。まだ動いていない頭で コーヒーを飲みながら、ぼけぼけとパンを齧っていると、後ろから日本語が聞こえてきた。

振り返ると日本人らしいカップルが 日本語で会話している。

 

不思議なもので、日本人観光客が多いところでは距離を置きたくなるのだが。。

日本人が少ない場所にいると、日本語が恋しくなるものである。

 

僕は後ろの日本人カップルに話しかけてみた。

最初向こうは ビックリしたようだが、

話しているうちに打ち解けた。

2人は婚前旅行でここに来ていて、帰ったらすぐに結婚するとの事だった。

30代後半の旦那さんと、30歳位の奥さんの  お似合いのご夫婦 だった。

話は午後の事になり、カヤックツアーに行くとの事。

 奇遇ですが、僕も行くんですよ〜。

と言ったところ、彼らは

"日本人のスタッフが案内してくれるツアー" だと言う。

それを聞き  あれっ?! となる

 

僕もそのツアーである!!

 

ここランカウイには、カヤックツアーは色々あるが、日本人インストラクターがやっているカヤックツアーは 一つしか無い

もう確定である 

午後から一緒に回るはずの日本人達が

たまたま 朝話しかけたら、朝食も一緒になったのであった!

凄い偶然もあったものである!!

 ツアーは すでに始まっていたのだ 笑

僕たちは お互いに、

 す、凄い偶然ですね!! 笑

と笑ってしまい。

ご飯を済ませてから

 午後もよろしくお願いします!

と別れた。

 

そして、いよいよ出発の時間が来た。

ワゴン車がわざわざ迎えに来てくれる。

大通りの待ち合わせ場所に着くと、すでに車の中に例の小林さん夫婦が乗っていた。

 

今日のメンバーは僕と彼らだけである。

 

ここランカウイマングローブは、

ユネスコ世界ジオパークに認定されている。

世界遺産との違いは僕にはよく分からないが、

自然の保全をしっかりして、観光資源として活用して、ついでに環境教育をすると言うような内容だったと思う。

 

現地に着くと、40過ぎくらいの精悍な男性のインストラクターさんがいて、

早速ウェットスーツに着替えて、救命胴衣をつけるように指示された。

 

何回も…いや、、何百回も同じ説明をしてるのだろう。

全く無駄の無い、わかりやすい説明を早回しでしてくれた。

 

とにかく、注意する事は、

言う事は絶対聞いてください。

マングローブの生息地は、海水が混じっているので、携帯電話の防水は意味が無いので気をつけてください。

と言う事だった。

 

地元の少年がモーター付きの小舟に僕らを乗せて、カヤックのスタート地点に連れていってくれた。

 

船の後ろにカヤックを牽引している。

 

カヤックは、2人乗りで、小林さん夫婦(もう夫婦でいいだろう)が2人で1組

僕とインストラクターさんは、1人一艘に乗り。

計 三艘での航海

 

最初操縦に慣れるまで、少し広い所で前進、後退、Uターンなどを練習し、いよいよ出発となった。

 

インストラクターさんは説明しながら結構スパルタだった。

 

どんどん進んでいく。

 

僕は運動神経はいい方だと自負している。

小学校の時、クラスで、ドッジボールは一番だったし、高校のスポーツテストのハンドボール投げは、一年生の中で1番遠くまで投げた。

35歳の時に俳優仲間とやったフットサルも、その日の得点王になった。

こういうアトラクションも結構こなせる。

 

だが。。

 

これを仕事にしている人と、

2人で漕ぐカヤックに、初心者が1人で追いつくのは本当に大変だった。。

 

前は、2人分の推進力で進んでいく。

しかも、これから結婚するだけあって、

息もピッタリだ。 まじかよ。。

 

僕は追いついた所で、彼が色々してくれる説明が、自分の息切れで、全然聞き取れなかった。。

 

追いついて息を整えると、

「はい次〜。」

 

ゼーハーゼーハー。。。ふぅ。。

「はい次〜。」

 

ゼーハーゼーハー。。うぅ。。

「進みまーす」 

 

ゼーハーゼーハー。。はぁはぁ。。

「…ですので。。…んですね。進みまーす」

 

 おいおい。。。

 筋トレに来とるんちゃうんやで!? 笑

 

日本語で案内してくれるツアーだから、

安全だし安心だろうと、他のカヤックツアーより、倍くらいの値段の、日本人スタッフのツアーにしたのに

"日本語自体が" 聞きとれないやんけ?!

 

僕は怒りに震えた。。

 絶対追い抜いてやる!!!

と僕はスイッチが入った!

不思議なものである。怒りが力に変わったのか、それからはスイスイ着いて行けるようになった。

これを狙ってやっていたとしたら相当な 名インストラクター、名コーチである。

 

やっとこさ  ツアー に参加できた僕を連れ

僕達は洞窟の前に着いた。

 

「これからこの洞窟で 蝙蝠と記念撮影をします

 蝙蝠は臆病で 超音波で絶対避けてくれます。

 万が一飛んできたら逆に動かないで下さい

 向こうが避けてくれます!!」

 

と言われたが、、僕はそんな感染症のカタマリと写真なんて撮りたくは無かった。

 

断ろうかと思っていた時。。

 

僕はあの新横浜での 注射の日々を思い出した!!

 

狂犬病を、持っているのは、犬 猿 蝙蝠とあった。。

 おお! あの予防注射の日々は!!

 この日…この時の為にあったのだ!!

僕は喜び勇んで洞窟について行った。

 

狭いので、インストラクターさんと2人づつで入る。入るとすぐ段差があり、降りると、もう蝙蝠さん達とご対面だった。。

 撮リマァーシュ。。

とウィスパーでの記念撮影。

 

寝起きドッキリのようなテンションである。

 

パシャっ!!っと フラッシュを焚いても、彼らは盲目…全然問題なかった。

 

小林さんの奥さんはさすがに少し、顔がひきつっていた…が、そこはスパルタインストラクター。

気にせずどんどん行程を消化していく。。

 

再びカヤックに戻った僕らは

やがて降り始めた雨の中、どんどん進む。

マングローブの説明などもしてくれながら僕達はどんどん奥へ進む。

 

 

やがて、、 雨が止んだ。。

 

すると、あたりは音を無くしたように

静寂に包まれ。。

 

暗かった狭い河に、急に陽が差し込み。

幻想的な景色になった。。

 

ゆっくりと漕ぎ進む。

 

水面はキラキラと黄金色に輝き 周りは荘厳な崖である。 そして静寂があたりを支配する。

 

少し開けた場所に出ると

さらに美しく 幻想的だ。。

 

僕らは しばらく声も発さず、漕ぐのも忘れてその光景と静寂を堪能していた。

 

ここではさすがにインストラクターさんもゆったり時間を取ってくれた。

 

そこからしばらく漕いでいくと、さらに開けた とても広い場所に出た。

 

空も広い! ゆったり漕いでいくと

ランカウイ島を代表する鳥  イーグルが飛んでいく。。

僕はそれを見ながら

ようやくこの島に 自分が受け入れられたような錯覚を覚えた。

 

僕達は この手付かずの自然を満喫しながら、やがて本日の最後の場所、水上のコテージについた。

 

この木製のいかだの様なコテージでは、ご飯とビールが用意されているとの事。

ご飯の前に救命胴衣で浮きながらひと泳ぎした。海水が混じっているので何もしなくても身体が浮く。

 

日が落ちて、暗くなった時、水面をぱちゃぱちゃやると、キラキラと光る!!

微生物が、刺激で発光するらしい。

ここのように、海と淡水が交わっている所でしか見れない現象との事だった。

 

コテージに上がり

本日のメインイベントである

釣りたてのイカを食べるイベントは

インストラクターさんが、

 あれ?あれ?んん?

 

 ちょっと待って下さいね。。

 

 うーん。。ちょっと待って下さいね。。

 

 うーん。。出てこーい。。

 

 うーん。。うん!

 

 雨が降ったせいで水が混ぜられちゃって、、

 今日はイカは出てきませんね。。

 

 イカはー。。やっぱり出てきませんね。。

 

と悲しい困った顔をしていた。

常に厳しい表情を崩さなかった、カヤックの時とのギャップが凄い 笑

 

僕はイカはあまり好きではないので、

そうなんだぁ という顔をしていたが、

僕らよりも、インストラクターさんの方が、

本当に残念がっていた。

 

危険と隣り合わせのカヤックが終わってから、安心したのか、インストラクターさんは顔が穏やかになり、イカを必死に探す姿は、少し可愛かった 笑

大の男が、、イカぁ。。いかぁ。。

と探している姿は哀愁があって良い。

 

コテージにて、小林夫妻と乾杯し、

ご飯を食べて、最高の自然を堪能した僕らは、

帰りも 車で送って貰った。

 

先に降りた小林夫妻は、海に隣接した、高級ホテルの車寄せで降りて行った。

 

 うん。 だろうなぁ。。俺は一人旅とはいえ

 全然違う宿に泊まってるなぁ。。

と自然と笑いが込み上げて来たが

 

それでも僕にとっては アイリーン達のいる宿は、   最高の宿だ!! 

 

僕は少しだけ強がりながら

その 自分の最高の宿 に帰って行ったのだった。

 

続く

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ジオパーク


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カヤックツアー


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↑ 蝙蝠との触れ合い


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↑  雨上がり


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↑ コテージにて

 

 

次話

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