第141話
乗り乗りツアー 最後はお墓参り?
象へのライドを満喫した僕らツアーメンバーは皆、心なしか童心に戻った様な良い顔をしていた。
象から帰ってきた僕たちは、お互いに撮り合っていた写真を交換する事にしていた。
象に乗ってる最中に僕は、写真を撮って交換し合わないか? と大きなジェスチャーで、その事を伝え、お互い示し合わせていたのだ。
サイヨックさんは僕と同じiPhoneなので、Air ドロップでやり取りができたが、ご夫婦の持っていた携帯は(一体どこのメーカー??)というスマートフォンだった。
ご夫婦は、どうしたらいいの?? と結構テンパっていたが、どうしても写真が欲しい様で、
「どうしたらいい? どうしたらいいの??」
と激しく動揺している。。
彼らは、LINEもGmailもやっていないとのことで、僕からは後から送る事も厳しかった。
ここで大活躍したのがサイヨックさんだった。
彼はご夫婦とやりとりをし、交換方法を聞き出してくれた。そして、
「大丈夫だ。 一旦私に送ってくれれば
なんとかするから、安心しなさい。」
と2人ををなだめてくれた。
確かに象に乗っている写真は欲しいだろうが、あまりの夫婦の熱量に、僕はビックリしていた。
その昔の日本人観光客が、みんなNikonやら、 Canonのカメラを首からぶら下げて情熱的に写真を撮りまくっていた様に、海外の方の写真に対する情熱は、時にものすごい事がある。
そういえば、マレーシアのランカウイ島で出会ったトルコ人のブルハムも、僕との自撮り棒ツーショットを撮るのに、気に入ったものを撮る為に、一箇所で10枚ずつくらい撮っていた。。
その写真好きぶりには僕も苦笑していた。
写真問題が解決した僕たちは、次の場所へと向かっていた。
着いた場所は、線路沿いの小さなお店が並んでいる国道沿い通りで、広めの駐車場が道の左右にあり、観光バスも止まっていた。
そこから階段を登っていくと、黄緑色の不思議な岩場に出た。
それは巨大な岩の壁だった。そこをチョロチョロと水が流れている。
足場に気を付けて、岩場に上がってみる。
改めてみると、それは美しい自然の造形だった。
今度はお互いの携帯を渡しあい、ご夫婦と写真を取り合う。
(後から調べると、ここは
「ノイの滝」という滝だったが、
行ったときは、水が枯れていて、
岩場にしか見えなかった。。)
どうやらここは公園になっているようで、遊歩道も整備されていた。
そこをしばらく行くと、今度は、新橋のSL広場のように、機関車がドンと置いてある。
ここでもご夫婦と写真を撮り合う。
どうやら彼女たちは、僕をマイカメラマンとして、同行させている様子だ 笑
「ここで撮って欲しい。
ここからが良い、ここから撮ってね。」
と携帯を渡され、注文も多い。
だが、せっかくの旅行であるし、役に立てて、喜んでくれるなら、こちらもそれで良い。
SLの運転席にも乗れるので、僕も乗りながら写真を撮ってもらう。
ここでも、動かないとはいえ、又乗り物である。
さぁここで、今日の乗り物ツアーを整理してみよう。
原チャリ(2人乗り)→ 空飛ぶワゴン
→ 列車(泰緬鉄道)→ 空飛ぶワゴン
→ いかだ → 象さん → 空飛ぶワゴン
→ SL(蒸気機関車)→ 空飛ぶワゴン(帰り)
という、乗り物乗り放題のツアーであった 笑
しかもよく考えると、戦争博物館前には ヘリとセスナまであった… 😅
ものすごい乗り物ツアーだ。。運転手が機嫌よく車をぶっ飛ばす所も含めて僕はこのツアーを
「激しいノリのノリノリのツアー」
と名付ける事にした。
そんなツアーは最後の地、セメタリーに到着した。そう、現地ガイドに「最後の場所だ」と連れて行かれたのは、何故か綺麗な墓地だった。
アメリカ映画で見るような、白い十字架のお墓が、大量に、綺麗に区画分けされて並んでいる。
ツアーの最後が " まさかのお墓参り " という、このツアーに、僕はもうズッコケてしまっていた。
「墓地の中に入って、じっくり見て下さい。」
と言われるが、縁もゆかりもない人のお墓に行くのは、眠っている方々に失礼だろう。。
それに、説明によると、ここに眠る彼らが命を落とした原因は、戦争博物館で見た、僕たち日本人の上の世代がした、酷い仕打ちによってである😅
(絶対に眠っている方達に怒られる。。)
もし逆の立場なら、日本人が入ってきたなら、僕ならポルターガイストを発動し、そいつらを追い出すだろう。
そんな僕は「お墓はいいです。大丈夫です。」とガイドに言って、その周りを散歩する事にした。
しばらく散歩していると、急にお腹が痛くなってきた。。
早速 お怒りに触れてしまったのだろうか…? などと考えながら、車まで頑張って戻り、ガイドに、
「トイレは無いか?」と聞くと、これまた、民家なのか、商店なのか? という、本当に小さな駄菓子屋の様なお店を、彼に示された。
そして、かなり限界が迫ってきていた僕は、そのお店に滑り込んだ。
店に入ってみると、よく日焼けした、50前後の細身のおじさんが座っていた。
「トイレを貸してくれませんか?」と言うと、彼は、ニカっと歯のない笑顔で、
「30バーツ(100円)だよ。」と言ってきた。
えええ? 金取んの?!
と驚いたが、背に腹は変えられない。。
すでに、お腹の状態は風雲急を告げている。
だが、僕はここで驚異の粘りを見せた!!
缶コーヒーを手に取り、これを買うから、タダにしてよ。と交渉したのだ。
おじさんは一瞬ポカンとしていたが、意味が通じたのか「OK」と言った後、こう言った。
「なら値引きして、トイレ代は
10バーツ(33円)でいいよ」
相変わらずニカっと、歯無しであるが愛嬌は凄い!!
(マジか?! 商売上手過ぎるだろ?!)
彼の顔も相まって、僕は笑ってしまい、思わず漏らす所だった。
何とかお金を払おうと焦る僕に彼は、
「とりあえずトイレに行っておいで。」と 優しく言ってくれた。
後払いでいいシステムに乗っかり、とりあえずトイレに向かった。
トイレはお店の外の細い路地を入った所に、竹で作ったドアがある。
渡してもらったカギで、扉の南京錠を開けて入る。そしてその先にトイレのドアがある。
まるでRPGゲームのノリだ。村人から貰ったカギで、扉を開けて進んでいく。
開けた先には、なんと!
素晴らしく汚いトイレがあった。
色々と前の利用者の思い出が存在する。。
その思い出を踏まない様に、僕は上手いこと足場を決めて、ポディショニングを決めた。
まぁ、言うまでもないが、昔の和式便所である。
とにかく、背に腹は変えられない。
何とか上手いこと用を足す。
ティッシュは自分で用意してはいたが、ちゃんとトイレットペーパーがあった。
さすが有料なだけの事はある!
10バーツのトイレットペーパーだと思い、盛大に使ってみた 笑
まぁ、何はともあれ僕は、お腹の叛乱を鎮圧し、お店に戻った。
歯のないおじさんは「間に合ったか?」と、またニコついている。
お金は取るが、後払いにしてくれたりと、とても良い人だった。
僕はお礼も兼ねて、コーヒーだけでなくお菓子も持っておじさんに会計を頼むと、
「コップンカァップ」と笑顔で会計してくれた。
暑いので車に戻ると、運転手だけがおり、
「もう良いのかい?」と聞いてくるので、僕は
「イエス、イナフ。(もう十分)」と言いながら、涼しい車内で、缶コーヒーとお菓子を嗜んで、みんなを待つ。
しばらく待っていると、やはり縁もゆかりもないお墓は退屈なのか、みんなすぐに戻ってきた。 そしてツアーは終了した。
ガイドを、近場の彼の家の近くに下ろして、車はまた 飛び立とうとしていた。
僕はその時、もう急ぐ必要のないドライバーに、測ったかの様に、
「プリーズ、スローリードライビング。
メニメニィ セーフティ!!リターン!」
と言うと、他のメンバーも口々に、
「セーフティドライブ! ノット アーリー!」
「モア スローリィードライビング!!」
と同調してくれ、ドライバーも予定がある訳でもなかったのか??
帰り道は、普通に 最速100キロ以内の運転で帰ってくれた。 なんでも言ってみるものである。
この旅に出ていつも思う事は、
人生はいつも交渉であり、人と人がやり取りする以上は、落とし所なのだと言う事だ。
そして僕は、ようやく安心してカオサン通りに帰ってきた。
そんな僕が到着するやいなや、例の日本人ツアーの店長さんに 色々文句を言いに、真っ先にツアー会社に行った事は、言うまでもないだろう 笑
つづく。
↑ ノイの滝(水枯れバージョン)
↑ 当時走ってたであろう SL機関車
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