第139話
聴き流し者に訪れる ライドオンタイム
よくよく考えたら、僕はこのツアーの事あまり解っていなかった。
ツアーを勧めてくれた日本人店長さんの話を、僕はあまりちゃんと聞いていなかったみたいだ。。
最初にツアーを紹介された時、僕は舞い上がっていた。
なんと!「戦場にかける橋」の舞台に行けるツアーがある!!
子供の頃に見た映画の実際の舞台に、思いがけず、訪れる事ができるなんて!!
その事に僕は、海外旅行の醍醐味を感じて、舞い上がり散らかしていた様だ。。
その為、かつてのカンボジアでの遺跡のガイド、ジェイクの英語の説明を、解りにくい所は聞き飛ばしていた時のように、うっかり店長さんの日本語まで、
「右から左へ聞き流していた」 らしい。。
この旅の間に、いつの間にか身についてしまっていた、( まぁ、行けば解るさ!)という旅のスタイルが、日本語すら聴き流してしまう という悪癖になっていた様だ (^_^;)
その為僕は、実はこのツアーが、次に何をするのかも、さっぱり分かっていなかった 。
(一体僕は 何の為に、日本語で説明してくれる
ツアー会社にわざわざ行ったのだろう?😅)
と 自分自身に少し呆れてしまう。
そんな僕は、木造の泰緬鉄道を穴が空くほど眺めた後、再び車に戻った。
次に飛んで向かったのは、小さな無人駅だった。ここで現地ガイドに待つ様に言われる。
(ツアー時間が押したせいで乗れないのかな?
それとも、このツアーの内容自体が、
元々 乗るプランじゃ無いのかな?)
と、道中ドキドキしていた僕は、心の中でバンザイをしていた。
(せっかくここまで来たんだし…
う〜ん。。 列車に乗ってみたいなぁ。)
と思っていた泰緬鉄道に、どうやら実際に乗れるみたいなのだ!!
ドキドキしている僕の前に、向こうから列車がやってくる。
それは「ギギーィ!! 」と、昔の電車の様に、音を立てて、僕の目の前に止まった。
僕は不思議な感覚を覚えていた。
それは、子供の頃憧れていた「銀河鉄道999」に、これから乗る様な、そんな不思議な気持ちで、ワクワクが止まらなかったのだ!
僕達は車内に乗り込むと、思い思いの席に座る。車内は空いているので、選び放題だ。
すぐに電車は出発し、結構なスピードで、車窓から景色は後ろに流れていく。
右側の窓には、並走する道路が見え、やがて岩場だったり、崖のギリギリ、そそり立つ岩場を窓から、目の前に見る事ができる。
左側は、向こうに小さな山や谷、緑の自然が雄大に流れていく。。とにかくすごい景観だ。
「実用性」という軍事目的に特化されて作られたこの鉄道は、とにかく色々なモノを削ぎ落としている様に感じる。。
それが逆に、この鉄道の魅力となっていた。
20分ほど走った列車は、やがて駅に着いた。
到着の少し前にガイドが「次で降りるよ」とアナウンスしてくれていたので、列車から降りる。
驚いた事に、駅の目の前の駐車場に、僕達の乗ってきたワゴンが先回りして止まっていてくれていた。
まさにドア to ドアで僕らは、再び車で移動となった。
この段取りの良さは意外だった。
今日初めて僕は「タイ、やるじゃないか!」と感心していた。(だいぶ失礼な感想である 笑)
車はまたしばらく飛び、やがて川沿いの木造のレストランに着いた。どうやらここで昼食の様だ。
ここは、川を見下ろせるテラス席も多くあり、気持ちの良さそうなお店だ。
ライスとカレー、野菜炒め、がバットに用意してあり、好きなだけ取って食べていいとの事だった。
自分で頑張って " 当たり" の食事ばかりを引いてる僕だが、ツアーの食事は選べない。。
と言えばお分かりだろうが、あまり美味しくなかったのである 笑
ご夫婦(カップルではなくご夫婦だと本人たちから聞いた)とは 途中よく話したが、僕とおなじく一人で参加しているインド系の人は、クールにあまり誰とも話さない。
なんとなく気にしていたので、思い切って彼に話しかけた。席の向かいに座り、
「一緒に食べてもいいですか?」と聞くと
「どうぞ。」と無愛想に言われる。
(なんか、ちょっと怖いな。。この人)
僕はちょっと、余計なことをしたかなぁ。。?
と気にし始めていた。
めげずに話かけると、ポツリポツリとだが、色々答えてくれた。
クールなだけで、悪い人では無いみたいだ。
向こうの席にいる、ご夫婦は何人ですかね??とそれとなく聞いてみると、
「たぶん、中東の方の人間だろう。」
と、ご夫婦が話している言語から推理し、そう教えてくれた。
実は僕もご夫婦も英語が拙すぎて、コミュニケーションがいまいち取れていなかったのだ。
その為、一度「ウェア ユー カムフロム?」と聞いたのだが、
「〜~ス○~ん。、」としか聞こえず、何度聞き返しても解らなかったので、
もう僕は「おー、オーケー!」と仕方なく、さも解ったふりをしていた。
(ここでも「右から左へ」が発動していた。)
それから彼としばらく話すと、笑顔も見せてくれる様になり、少し仲良くなった。
僕達は「飯がまずいね。。」という意見だけは、しっかりと一致してから席を立った。
ガイドと車に戻ると、川沿いに少し飛んで、すぐに止まった。
水上のバンガローの様なところで、救命胴衣を渡された。(んん?)と思ったが、接岸しているイカダが見えるところをみると、どうやらここから川下りの様だ。
しかし、盛りだくさんのツアーである。
そして、いちいち驚いている僕は、本当に店長さんから何を聞いていたのだろう…? 笑
だが、逆に色々ビックリ箱の様に、新鮮に驚いて楽しめる事は「聴き流し者」の特権かも知れなかった。
イカダはそこそこ大きく、日除けに 藁の屋根も付いていた。ゆったりとした川の流れに任せて、イカダは下流へと進んでいく。
川沿いには、木造りの水上のコテージの様な家屋が多い。やがて向こうに、蔓で作った様な、簡単な作りの吊り橋が見えてきた。
やがて、その真下を通ってイカダは進んでいく。本当にジャングルの先住民が作った様な、簡易の吊り橋で、とても良い景観だった。
空を飛ぶほどのスピードから、このゆったりとしたイカダの川下りはまるで、160キロ越えの豪速球ストレートの後のスローカーブのようで、物凄い緩急だ。
お陰で、この世のものとは思えない程、僕はゆったり出来ていた。
静けさの中、小鳥のさえずりだけが聞こえる、本当にのどかなクルーズである。
ゆっくり下流へと流れていたイカダは、やがて小さな船着場に着いた。
奥には草が生い茂っているが、小さな小道がある。船着場から、ガイドに付いて上陸し、そのまま歩いていく。
そして、左右に背の高い草が生える小道を抜けると、いきなり世界が広がった。
牧場の様な広さの広場が目の前に現れ、そしてそこで見たものに、僕は声を失っていた。
そこにいたのは、なんと象だった!!
パオーン! などとは言わず、おとなしい象達が、象使いに操られ、ゆったりと歩いていた。
ガイドは僕らの方に振り返り、
「これから象にライドします」と言った。
ら、ライド??
…嘘だろ?! 信じられない…
どうやら僕は象に乗れるらしい!!
こんな事は、想ゾウもしていなかった。
そして、僕がいかに「人の話を聞いていなかったか」のエピソードも、ここに極まれりである 笑
そして、同時に僕は思っていた。
「このツアーは、朝のスクーターから始まり、
ずっと何かに乗っている気がする。。
今日だけでぼくは、一体何種類の
乗り物に乗るんだろう…??」
と。
つづく。
↑ 駅から夢の泰麺鉄道へ!
↓ 動画 泰麺鉄道
https://m.youtube.com/shorts/E9zpd4YbRRA
↓ 動画 泰麺鉄 2
https://m.youtube.com/watch?v=yeGYQpvTSPg
↓ 動画 筏で長閑な川下り
https://m.youtube.com/watch?v=0KVy9-7NK0s
↑ 筏での川下り。
↑ 急に現れた、象の広場。
次話