猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

ついに宿のスタッフになる。

 

第149話

ついに宿のスタッフになる。

 

この宿は大当たりである。

 

宿の主人マイクにはあまりやる気を感じないが、モーニングの時間でなくても、常備されてるパンや、お菓子、カップラーメン等の食べ物を食べようが、気にしないし、融通が効く。

ベッドもしっかりしていて、まったく軋まない。そしてカーテンでしっかりプライベートは守れる。

何より清潔であった。トイレも、シャワーも綺麗で気持ちが良かった。

 

宿の主人のマイクは、基本宿にはいないが、昼前に来る、気の良い掃除のおばさん達が宿を綺麗に保ってくれる。

そして何度も言うが、モーニング用の食糧も、夜に酒のつまみに食べて大丈夫だ 笑

僕のお気に入りは、昔の「ケンちゃんラーメン」の様な、タイ版の優しい味の、小さめのカップラーメンだった。

 

これで、タイの今までの宿と比べても最安値の、950円である!!

まさにこの宿は、アルカディア(理想郷)言って良かった。

 

ただ一つの難点は、やる気のないマイクは、ほかの商売もしているらしく(やる気が本当はあるのか?)、昼以外ほとんど宿にいないことである。

ならばほかのスタッフを雇えばいいのだが、誰も宿には常駐していない。。

とりわけ、一番旅人が来る時間帯の夕方以降にも、彼は平然と宿にいないのだ。

今までの宿ではありえなかったことである。

 

これは隣の宿も同じだが、隣はさらにそれが顕著である。

なんと玄関には、英語の張り紙で、

「宿に泊まりにきた 〜様へ」

という様な、不思議な手書きの張り紙があるだけである。

 

僕は役者特有の好奇心から、

(なんだろ? この宿のシステム…??)

と興味を持ち、理解するまでじっと見ていたので、いつの間にかこの隣の宿のシステムを理解していた。

 

宿の外玄関に4個ある、Box型のポストのダイヤル開錠ナンバーが、予約した人へメールで送られており、(右に7、左に6、右に8など)それ通りにダイヤルを回し、ポストを開ける。

するとその中には、玄関開錠用のキーカードと、自分が泊まれる部屋番号と、ベッド番号が手書きで書かれたメモが出てくるらしいのだが、、

初めて来ると、なんの事かわからないのだろう。(当たり前だ。。)

皆、玄関を見つめてフリーズしていた。

 

というか、こんなシステムは、2ヶ月旅をしている僕すら見たことが無い。

 とにかく宿にたどり着けば、

 フロントに人がおり、何とでもなる。 

というのが、旅人の常識であり、

こんな無人くんシステム」が珍し過ぎるのである。

なので、旅人たちはいつも混乱して、隣の僕が泊まっている宿のベルを必死に鳴らす。

 

隣のヘンテコな宿は、一階に共有スペースがない為、本当に人気が無く無人の為、自然と頼る場所は、隣の人のいる僕の宿となる。

(まったく信じられない事だし、僕は宿泊中、

 隣の宿のスタッフを一人も見たことが無い 笑)

 

共有スペースで、夜はいつもビール片手に寛いでいる僕は、隣の宿泊難民の彼らが来る度に、僕の宿の玄関の鍵を開け、話を聞き、システムをキチンと把握している宿泊者ではない僕が、システムを説明してあげて、隣の宿の玄関から彼らが入れる様に、旅人達を手伝ってあげていた。

 

だがそれは、隣だけに留まらない。

僕の宿にも夕方前からスタッフがいない。

ほんのたまに、マイクの嫁さん?という女性スタッフが困った顔で、たまに1時間ほどいるだけで、ほぼセルフ宿である。

他の宿泊者も一階にはいるが、ドアを開けてあげるだけで、色々と世話を焼いているのは、日本人の僕だけだった。

 

これは僕の性格もあるのだろうが、困っている人を放っておけない、日本人特有の性質の様な気もしていた。

海外で色々な国の人のスタンスを見ていると、

(自分が日本人だからなのかなぁ。。)

と改めて「日本人 東正実」を意識する事が多い。

 

ある日の夜、でっかい熊の様な大男と、イタリアサッカー界の至宝、デルピエロによく似た綺麗な顔の白人男性二人組が宿のベルを鳴らした。

僕はいつものように、ほろ酔いで玄関のドアを開け、彼らと話をする。

 

どうやら彼らは、僕の宿に泊まるドミトリー仲間のようだった。

20代後半であろう彼らを、フロントに案内して宿のWIFIのパスワードも教える。

彼らも、僕と同じでシム契約などせず、無料のWIFIで旅をする、旅行者だったからだ。

 

彼らはWIFIを繋ぎ、フロントにある、マイクの連絡先のメモにLINE電話をしたが、繋がらないらしい。二人は顔を見合わせ困っていた。

僕は、いいかげんなマイクに代わって仕事をすることにした。

 

この宿は、男性専用ドミトリーは、2階に一部屋しかない。

女性専用ドミトリーは3階で、シングルルームは4階だ。

つまり彼らは僕の部屋の、空いているベットのどこかに泊まるはずだ。

 

ふざけた経営者のマイクに、義憤すら感じていた僕は、彼らを部屋まで勝手に案内することにした。携帯の予約の画面をちゃんと確認した後、彼らに「付いてこい」と言って、階段へと歩き出した。

その際にヒゲモジャの、熊の様なアメリカ人のベンに、

「君はこの宿のスッタフなの?」と聞かれたが、僕は

「俺はただの宿泊者だ。

 ただ、君たちが困っているから。」

と伝えると。

「オー、、サンキュー」と言っていた。

 

「2階が男性ドミトリーだから、二人とも、

 とりあえず荷物を預けちゃいなよ。」

と僕は二段ベットに案内した。

 

部屋に入り、空いてるベッドを教えてあげると、友達であろう二人は、同じベッドの上下に陣取った。

「サンキュー。ワッチュアネーム?」

「マサミ。 アイム ジャパニーズ。

 ハヴァ リラックスタイム」

と会話を交わして、僕は一階へと戻って行った。

 

一階で、残っていたビールを腹に片付けていると、先程の2人が軽装で部屋から降りてきた。

 

やがて宿の正スッタフのマイクが、どこからかフロントに来て、彼らの手続きと支払いを終わらせた。

僕が中二階の共有スペースから降りていくと、彼ら2人はマイクにしきりと、

「彼が色々としてくれたんだ。」

と伝えていた。

 

僕も流石に酷いと思っていたので、

「ヘイ、マイク!

 君がいないから彼らは困っていたよ。

 しょうがないから、俺が彼らを

 部屋まで案内したけど、流石に酷くないか?」

と少しきつめに問い詰めたところ、彼は例の不思議な笑みを浮かべ、事もあろうに、

「サンキュー、マサミ。

 ユーアー グッドスタッフ。」

と嬉しそうに、僕にそう言い放った。

 

それを聞いて僕は、呆れるのを通り越して笑ってしまった。

(こいつ。。マジでスゲェーな。)

と逆に感心してしまったのである。

 

自分がいなければ、宿にいる誰かが世話をするだろう。。と何か究極に人を信じている様に感じたのだ。

 

「結局呼び出されたら行くので、

 それまでは誰かがなんとかするだろう。」

そんな覚悟と信頼が、宿泊客と、宿の経営哲学として彼には確立している気がしたのだ。

僕は彼の不思議な笑みの謎が解けた様な気がしていた。

 

(そんな馬鹿な経営方法があるんだなぁ。。)

僕はこの旅に出てから、一番感心していたかもしれない。

 

そんな僕に、お腹が空いていたベンと美男子のアメリカ人達は、

「近くに開いてるレストランは無いか?」

と聞いてきた。もう宿の主人をすっ飛ばして聞いてきた。

 

時間は11時を過ぎていたので、おすすめの店は閉まっている。僕はまだやっているが、美味しいかはわからない、宿のすぐ近くのレストランへと彼らを連れて行った。

 

デルピエロ似の美男子の彼の名前は、アランというらしい。

ヒゲモジャ大男のベンと、身長は僕より低い、170センチ位の美男子アランの凸凹コンビだった。

 

彼らを連れて行ったレストランは、深夜までやっている以外は、あまり印象のない店だったが、メニューは見たことがあり、そんなに高くはない。

ドミトリーに泊まる同じ貧乏旅行者であろう彼らに気を遣って、最悪不味くても安い店を紹介していた。

 

「一緒に入ろう」と誘われたので、暇な僕は頷いた。

席に着くと、「ビールは呑むのかい?」と聞いてきたアランに僕は「もちろん!」と答え、瓶ビールを頼み、3人で乾杯をした。

意外と食事も美味しくて、僕は夕飯は済ましていたので、軽いツマミだけシェアして、ビールを飲んでいた。

ベンは明るく豪快な男で、楽しそうにガハハハと笑っているし、アランもベンほど豪快でないが、楽しそうに笑う。一緒にいて楽しいし、居心地の良い2人であった。いいコンビである。

 

会計の時に、ベンが伝票を持っていき払いを済ませてしまった。

「僕も払うよ」と言うと(とんでもない!)と言わんばかりに彼は首を振った。

「マサミ、これは当たり前のことだから。

 君には本当に親切にしてもらったからね。」

そうアランが真っ直ぐ目を見て、僕にそう言ってくれた。

 

どうやら最初から、お礼も兼ねて食事に誘ってくれていたらしい。

 

全く本当に気持ちのいい連中である。

僕は心から嬉しかった。

そして僕の宿の同部屋には、2人の友人が出来た様である。

 

グッドスタッフになって良かった 笑

 

つづく。

 

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↑ いつも寛いでいた中二階

 

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↑ レオビアーで乾杯。

     天ぷらの様なものも美味しかった。

 

 

次話

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