第134話
カリプソる日本人
アジアティークは、かなりの人気スポットだった。とにかく人もお店も多い!
カオサンロードと全く違う賑わいではあるが、観光地としてはこちらが本道の様だ。
船着場横の広場を抜けると、お店が綺麗に整備され並んでいる。洋服屋さん、雑貨屋、バーやレストランなどが所狭しとある。
なんと、巨大な観覧車まである。
かなり綺麗で、日本でいうと、郊外にある土地を贅沢に使った、新しい最新のアウトレットモールのイメージだ。
僕の降りた川沿いの、ちょうど反対側である、道路側の入り口付近に劇場があるので、結構急いだ。
チケットBOXに並んで、チケットの引換券を出す。男性スタッフはそれを見て一瞬止まったが、すぐにチケットを用意してくれた。
さてと… である。 開演までは時間はある。
チケットは 指定席だったので、僕はまず、腹ごしらえをする事にした。
実は先程、日本が誇る 三大牛丼店の一つ
「すき家」を発見してしまっていたのだ!
そして、ここにくる途中にも、ラーメン屋や、日本料理居酒屋の様なお店も色々あった。
結構日本人向けにもお店がラインナップされている様だ。
(まぁ、メニューは見ていないが、
たぶん、お値段はお高いだろうが…)
僕は、庶民の味方であろう「すき家」の扉を開けて、店内に滑り込んだ。
メニューを見て、早速牛丼を頼む。
(メニューはタイ語だけでなく
下に日本語も書いてある!)
牛丼は、半月前にプノンペンの空港で食べた、お洒落な「吉野家」以来である。
卵を生で食べる習慣の無いアジアであろうから、相変わらずの " 半熟卵推し" であるが、僕はシンプルな牛丼と野菜不足解消の為 サラダを注文した。
すき家では普段はチーズだ、卵だとトッピング牛丼を食べてしまう僕だが、ここ東南アジアのタイでは、シンプルな牛丼の味に集中したかったのだ。
80バーツ(250円)程の牛丼と、30バーツ(100円)程のサラダはすぐに来た。
日本よりは安いが、格安でご飯を食べてきた僕には少し高く感じるから不思議なものだ。
まずはサラダにドレッシングをかけて頂く。
うん。。キャベツだね。うん。。
どうやら、千切りキャベツに対する感想は、世界共通の様だ。
次に牛丼である。日本が世界に誇る牛丼。
うーむ。。美味い! 気がする。
とても美味い気がする!!
すっ、すきや!! 大好きや!!
日本とほとんど変わらぬ味に恋をする。
食材も、従業員も、全てが現地調達だろうから、味の再現度に、とてつもない努力を感じる。
なぜそれが分かるかというと、
実は僕は、若い頃に居酒屋の店長を一年程した事や、調理師免許を持っているので、たまに、そんな事まで考えて味わってしまうのである。
日本って、努力を、怠らないよね…??
謎の感想と、満足感を得た僕は、日本ではおよそ何も感じなかった「すき家」に対して最敬礼をし、いよいよすぐそばの劇場内へと入っていった。
広くて綺麗なロビーに入ると、一段上がった奥では、セレブ達がテーブルで食事をしている。
彼らはディナー付きの、高額なディナーショー組である。
フカフカの赤い絨毯がひかれている、高級ホテルのラウンジの様なセレブ感のあるこの場所は、僕の様な貧乏旅行者を確実に拒絶してくる。。
彼らを迂回する様に、壁沿いの廊下を進んでいくと、劇場に入れた。
演劇人の僕はまず、劇場に入ると舞台の大きさや、見易さ、席の座りやすさなど、うっかりと
「自分がやるならどうだろう?」
と箱(劇場)をつい値踏みしてしまうが、ここは、どこに座っても ゆったりとして見やすいだろうと思える、 素晴らしい客席、劇場だった。
オールバックの、まるでホテルマンの様に洗練された動きをするボーイに、席まで案内してもらう。先にドリンクを聞かれ、ビールを頼む。
ワンドリンク付きのチケットである。
席はゆったりと座れるふかふかの席で、ゆったりとした、映画館のプレミアムシートに近く、しっかりと舞台を見渡せる。
中々、日本では目にかかれない素晴らしい作りであった。
席の前にはテーブルがあり、隣の人達とシェアして使う、ここだけ日本の立ち飲み屋システムであった 笑
そして、日本人も多いらしく、同じテーブルを使う縁で、隣の日本人団体ツアー客の方に話しかけられた。
70歳近い男性で、元気な方だった。
思えば、日本人の団体ツアー客に会うのはこの旅で初めてかも知れない。
地元の老人会でタイツアーを組んで貰ってきたという、ハイカラなおばぁさん、おじいさんの皆様はお元気の塊だった。
話しかけてくれた佐藤さんは、71歳で、クラフトアートなるものをやられているらしく、色々な模様をラミネートした、不思議な下敷きの様な物を僕に何点かくれ、名刺もくれた。
(彼には悪いが。、荷物になるので
正直いらなかったが… 断れる雰囲気ではない)
だが、とても気さくないい方だった。
大手の会社で勤め上げ、今は、趣味に 旅行にと忙しい「御隠居さん」だと、自分で言って笑っていた。
しばらくすると、幕が上がり、レディーボーイ達のショーは幕を開けた。
開幕は、往年のハリウッドの銀幕ミュージカルを彷彿とさせる豪華なオープニングショーである。
シルクハットに、タキシードでステッキを持った男性が進行と司会という感じで、かなり豪華だ。
お洒落な海兵の様な衣装に身を包み、これまたシルクハットをかぶった、綺麗なレディーボーイ達の群舞から始まり、ショーはどんどん進んでいく。
(途中で「アジアらしいなぁ」と思ったのは、
写真も動画も、撮影OKらしく、
お客さんはフラッシュだけ炊かない様に、
パシャパシャと写真を撮って良い事だった。
僕も何枚か撮らせてもらった。)
ショーは続いていく。
レオタードの美女達が煌びやかに踊るものもあるし、個人での持ちネタコーナーもある。
ビヨンセのモノマネの人や、ラップンツェル?のモノマネ、日本の着物に身を包んだ、コメディチックな女性のダンス、司会の男性も参加する、コントの様なダンスもある。
どうやら時代に合わせてどんどん進化している様だ。
最後の方は、デモ隊を摸しプラカードを持った民衆のダンスの様なものもあり、様々なアプローチの見せ物があり、全てド派手であった。
全て口パクで、音楽や歌に合わせているが、本当に楽しめた。
場面転換を、銀色の横滑りする幕を使い、流れる様にしていく演出が素晴らしかった。
この銀幕の素晴らしいところは、一枚布ではなく、細かい紐状の布を大量に吊り下げて幕にしているので、演者が間から出てこれる所である。
そのお陰で、ショーは怒涛の勢いで、流れる様に進んでいく。凄いテンポ感である。
そして、レディーボーイ達の美しさ!
正に「ザ・ショウ」を堪能した僕は感動していた。
およそ日本では見ることの出来ない、クオリティと、規模であった。
感動に身を包み、劇場を出て、ロビーまでの廊下を歩いてあると、先程のショーガール達(もうガールでいいだろう)がお見送りをしてくれる。
皆さんお綺麗だが、そこは元男性なので、身長は皆高めだ。
一緒に写真も撮ってくれるが、チップがいりそうだったので、僕は握手だけして退散した。
先程の佐藤さんが、鼻の下を伸ばして、彼女達と写真を撮っていたのに、少し癒された。
(やっぱり男って奴は、
いつまでも助平じゃなくちゃ!)
と僕は、71歳の佐藤さんに、意味不明の感動を覚えて、劇場を後にした。
この素晴らしいショーの余韻に浸りながら、この " タイ版のお台場 " を散歩をする事にする。
色々な雑貨屋、バー、居酒屋、レストラン、出店もある。
途中、出店の可愛らしい店員さんに呼び止められたので、お店を覗いてみると、美味しそうなクレープ屋さんだった。
せっかくなので、お話をしながらひとつ頼む。
先程の佐藤さんの影響か、僕も鼻の下を伸ばしていた。
そして、この旅に出てはじめてのクレープだ。
チョコと、生クリームのシンプルなやつを頼み、食べ歩きをしながら 周る事にする。
クリームの優しい甘さが僕を癒してくれる。
行きに通り過ぎていた日本居酒屋を覗いてみると、やはり値段は高めだったのでスルーする。
雑貨屋では、オリエンタルなデザインのスカーフや、シャツ、小物など 色々と、いかにもタイという綺麗なものが並んでいる。
人も多く、活気に溢れている。
そして、このアジアティークで、一番目立つ、ピカピカと白い蛍光灯付きで、明るく周る巨大観覧車に僕はびっくりしていた。
何故なら、観覧車のくせに とんでもないスピードで回っていたからである!!
ぎゅーーん!! と回ったかと思うと。
スピードは緩まり、、
(止まるのかな?)と思うと、
また ぎゅーーん!! と回り出す。
(一体… お客はいつ乗るのだろうか?
アジアだけに、飛び乗るのだろうか…??)
と本当に謎であった。
僕は、そんな大観覧車を見ながら、
そ、そんなバカな…?? 笑
と大笑いをして、このアジアティークを後にした。
一人でもかなり楽しめる、
アジアティーク ザ リバーフロント
皆様も是非、バンコクにお越しの際は、寄ってみて下さい。
続く。
↑ さぁ!ショーのはじまりだ!
↑ 使い勝手良すぎる銀幕
↑ ラップンツェル??
(サウンドオブミュージックを歌っていた)
↑ デモ隊の出し物
(性差別に対する思いもあるのだと思う)
↑ コメディタッチの和服の方(ほぼ大トリ)
後で、ロビーの客出しでお見かけしたが、
綺麗で可愛らしい方だった。
↑ グランド・フィナーレ!!
素晴らしいショウだった!
↑ 綺麗なお姉様に(おいで ボウヤ。)と
誘われたが、一緒に写るとチップがいる。。
貧乏な僕は、残念だが断った😢
↑ 安定のすき家^_^
早すぎる観覧車 動画
https://m.youtube.com/shorts/vxiitb6hnpg
↑ 早すぎる観覧車
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