第132話
香港とストリートライブ
宿に帰る前に、マッサージで熟睡した僕はお腹が空いていた。。
宿に戻る道すがら、中華屋の様なお店を見つけた。店先では肉まんを売っている。
(おお、、中華だ。。美味そう。)
可愛らしい女性店員さんに、肉まんを一切れ試食させてもらったところ、美味しかったので、店にも入ってみる事にした。
店の名前は「香港面 ~Hong Kong Noodle~」というお店だった。
席に座って値段を見ると、まあまあな値段だが、高すぎるわけでは無い。
安いヌードルもある。
僕はシンガポール料理でよく見る、チャーシュー入りのワンタンミーを頼む事にした。
これは焼きそばの様な麺に、味付け用の汁、ワンタンが乗り、チンゲン菜、赤い縁取りのチャーシューが乗っている。
見るからに美味そうな 一皿で、他の料理より安かった。
さっき美味しかった、肉まんも1つ頼む。
やがてきた ワンタンミーのワンタンを早速食べる。
ワンターレン うまうま。。
ジュワッと肉の旨みがダイレクトに舌を刺激する。麺もかき込む!
ブホォ!! ぶふぉあぁああーー!!
麺に絶妙に絡む、味付けの汁とのハーモニーに僕は、バキュームマンと化し、ひたすら麺を吸い取っていった。。
途中で来た、ふわふわの肉まんで休憩する。
(落ち着け、、落ち着け俺。。
美味いからと、勢いだけで食べると、
あっという間に無くなるぞ!!)
そんな僕に、肉まんさんは容赦が無い。
ふぉわあぁぁあ〜〜〜!!
肉まんパラダイスぅ〜!!
うまうま〜。肉マンチェスター〜。
ユナイテッド!!!
肉まんの旨味が僕を叱咤激励する。
旨さの ツアー会社に申し込んだで〜〜!!!
明日のツアーより先に僕は、この旨味のツアーに のたうち回っていた。。
それにしても、チェーン店?? と舐めてかかったこの店。。旨すぎるやろ??!!
僕はどこの国がやってるのかもわからない、香港面(麺では無く面と書いてある)に 驚愕し、涎を垂らして のめり込んでいた。
「究極のチャーハン」と戦える、唯一無二のお店であった!
恐るべし! タイラント!! である!
大満足した僕は、一休みしようと宿に向かった。
宿の共用スペースで、少しゆったりとしていると、なんちゃんが路上ライブに行こうと誘ってくれた。
どうやら 今から路上ライブに行くらしい。
昨日の約束を覚えていてくれ、誘ってくれたなんちゃんと一緒に、とりあえず再びカオサンロードに向かう。
まだ明るいカオサンロードは、これから夕方になろうとしていて、人が増え始めていた。
ギターケースを片手にカオサンの入り口から少し入ったあたりで、準備を始めようとした時、タトゥーを両手にびっしり入れた、
映画「ファイトクラブ」の時のブラット・ピッド位の、強そうな細マッチョの白人さんが、急に話しかけてきた。
彼はなおちゃんに、
「ここはダメだ、ここでは演奏するな!」
と英語で言っている。
(こわぁ。。な、なに〜😢 何かしました?)と僕がビビっていると、彼は続けて
「ここは、すぐにポリスが来るから、
違う所にした方がいい。
昨日もすぐにポリスが来たからね。」
と、わざわざ親切に、タイポリス情報を教えてくれた。
ざるざるのタイラントのクセに、意外と路上ライブにはうるさいらしいのだ?!
そして、どうやらカオサンロードには、人種差別などは存在せず、ただ、
「俺たちは同じ 旅人だろ?」
という仲間意識が働いているらしい。
なんちゃんは、慣れたもので、素敵な笑顔で、
「サンキュー! じゃあ、他の所探すよ!」
と言うと、そのブラピさんが、先頭に立って、カオサンの奥の方に案内してくれ、
「ここなら、たぶん大丈夫だよ?」
と言って、そのまま去って行った。
彼は、白のランニングに、短パンという、何も持たない主義の様な、暇を持て余している旅人の様に見えたが、当然のように、僕らに親切にしてくれた。
カオサンロードの真髄に触れたような経験だった。
(やはり、ここは、旅人たちの、、
バックパッカーの 交差点なのだ…)
僕は改めてこの「バックパッカーの聖地」という地名に、嘘偽りはなし!!と、感動していた。
実は最初は、
(ヤバめのジャンキーっぽい人が、
結構な勢いで、話しかけてきた。。😢)
と泣きそうだったのだが、カオサンの懐は僕が思う数十倍は広いのだろう。
教えて貰った道路でなんちゃんは、慣れた様子で、ギターケースをあけ、スケッチブックを立てかける。そこには、
「日本人です!今、歌を歌いながら、
世界を回ってます! 少しでも良いので
助けて貰えると嬉しいです!」
という様な文言が英語で書いてあった。
それを見て、僕は感心していた。
(なるほどー! 日本人で、この文言か!
確かに日本好きな人なら、
素直に応援したくなるなぁ…)
と、僕ですらお金を入れたくなったのだ。
「日本人です!」という所に、何かパワーワードというか、日本人の強みを感じる。
僕は呼び水の役割を果たすであろう、100バーツを早速ギターケースに入れた。
こんな面白い事に誘ってくれたお礼を兼ね、また、先日奢ってもらったお返しも兼ねてだ。
知り合いの路上ライブを見るのは、マラッカのジョン以来だ。
なんちゃんも、ジョンと同じでハーモニカも駆使して、ギターと音楽を奏でていく。
本当のプロのミュージシャンの知り合いも多い僕だから、彼らと比べてはしまうが、技術というより、味があって、とても良い歌声だった。
人柄が歌声に出ていて、いつまでも聴いてられる。
本来、芝居も こうあるべきなんだよなぁ。。
と思いながら僕は、魅力的な なんちゃんの歌声を聴いていた。
途中で色々な観光客や、バックパッカーが、足を止めて、日本の歌を聴き、お金も入れてくれる。僕に話しかけてくる旅人には僕が、
「今日たまたま僕も聴いています。
いいっすよねー!!」
という体でアシストする。
僕の即興の役者スキルも、大発動である 笑
みるみる間に、お金は溜まっていく。
聴いてる人も、お金を入れてくれる人も皆笑顔で本当にいい空間だ。
僕は改めてなんちゃんの人間力というか、魅力に感心していた。
上を向いて歩こうや、イエスタデイ、たまたま歩いていた日本人からのリクエストの尾崎豊など、彼は楽しそうに歌っていく。
僕にとっても楽しく、最高の時間だった。
ストリートライブが佳境に差し掛かったあたりで、ポリスが来た。
タイポリスが見回る時間の様だ。
彼らは映画などで見る、高圧的なアメリカのポリスとは違い、やんわりと
「ダメダメよー。やめてね。ダメなんだからね」
と 全く高圧的な素振りは見せずに、中止を勧告してきた。
なんちゃんは「おー、ソーリー」と言いながら、ギターなどをしまって、手早く店じまいした。
それは惚れ惚れするほどの手際であった。
「ズマさん、今日はここまでっスね。」
と 僕にウインクをし、あっさりと諦めたなんちゃんと僕は、一緒にカオサンロードを後にした。
隣の通りの、例の彼行きつけの居酒屋に入り、軽く呑んだ。
なんちゃんがいうには、数年前にカオサンにきた時は、警察もこんなにうるさくなかったという。
何事も諸行無常で、移り変わっていくらしい。
「ズマさんのお陰で結構稼げたんで、
ここはまた、奢りますよ!」
という彼に、僕の方が年上で、前も奢って貰っている手前、丁重にお断りして、割り勘にした。
何にせよ、彼のライブの打ち上げである。
この気のいい若者は、いつか外国でラーメン屋を出すのが夢だという。
日本の有名なラーメン屋さんで3年ほど働いていた事があるのだと聞いた。
確かに接客のいいラーメン屋の店員の様な、気の良さと、粋な感じが彼にはあったので、僕は妙に納得していた。
(しかし、彼は、、いや、宿にいる人も含め
彼らはいつまで旅を続けるんだろうか?
終わりはあるのだろうか??)
自分の旅の終わりもわからない僕だが、流石に、4、5年は旅を続けないだろう。。
自分の事をほったらかして僕は、
日本に帰った時 どうするんだろう??
と 勝手に彼らの今後を 少し心配していた。
彼らからしたら本当に大きなお世話なのだろうが…
続く。
↑ まだ明るいカオサンロード
↑ なんちゃんの路上ライブ!!
最高のライブだった!
↑ 香港面 何を食ってもうまい!
カレーラーメンの様なものも抜群だった!
ただ… 店員さんのやる気は MAXで無い 笑
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