猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

伝説のカオサンロードへ

 

第129話

伝説のカオサンロードへ

 

煌びやかなネオン街の門で再び集結した僕たちは その後、何故か宿に帰って来ていた。。

 

歩いている途中で雨が降り出し、傘も持っていない僕たちは、メータータクシーを止めて、すぐに乗り込んだ。

そしてその雨は降り続け、やがて土砂降りになり、とても 何処かへ行くとかいう話では無くなっていた。

 

タクシー運転手は、結構 大変な人であった。。

30歳半ばの 細身のタイ人男性で、まだ仕事を始めて日が浅いのか、まずドアを開けた時に、

隣の車線で止まっていた隣の車に、

 ドアがぶつかったのでは無いか?

と泣きそうな顔で心配して、

「ブロークン、ブロークン!!ドアー!

 カー ドアァァ!ブロークン、ユー!!」

と発狂せんばかりに、タイ語とカタコトの英語で、半泣きで まくしたててきた。。

 

いや、ぶつかってないよ。

大丈夫だよ!  そう!大丈夫。

お、落ち着いて。大丈夫だから。

 

そんなやり取りをして、宿に向かってもらう。

とりあえず有名なモニュメントに向かって貰い、途中からこちらが、

「ライト」だの「レフト」だの指示をする。

その際も、

「こっ、こ、ここからか??

 ここ曲がるのか?!先か?!

 レフトはこっち? あ、こっちか??」

とまたしても発狂寸前であった。

 

最後に、宿への細い道に入って貰おうとすると、

「いっ、一方通行だ!!

 ここはぁ!! きっとそうダァぁあ!

 イッポーツーコー! なんだぁっっ!!

 ここはダメだ!警察につかまるぅぅう!」

と再び発狂したので、面倒くさくなった僕らは、もうここからは 歩いて帰ることにした。

 

雨が小降りになっていたとはいえ、まったく やれやれなタクシーであった。

(後でバンコクに詳しい人に聞いた所、

 最近のバンコクタクシードライバーさんは

 タイの田舎から、出稼ぎて来ている人が多く

 まだ、都会にも 道にも 外国人にも 全然

 慣れていない人が多いとの事だった。)

そんなドライバーさんは、僕ら外国人が降りて、ホッとした様子だった。

 

小雨の中、僕らは小走りで宿に戻り、宿の共有スペースで雨宿りする。

この宿は、ビールやコーラなどが、キッチンの冷蔵庫に常備されており、後清算で飲んで良い。

システムを聞くと、冷蔵庫の横のノートに名前と、買った本数を「正の字」で記入するらしい。(結構雑な管理も、日本人を信用している証拠だろう 笑)

僕らは早速それらを飲みながら、色々と話し、雨が止むのを待った。

 

木下さんは、有名なお寺さんで、観光客に精進料理を出す店で働いているという。

今はオフシーズン?なのか、時間ができたのでタイに来たようだ。

そういえば坊主頭であるし、そのせいか、何か普通の人とはちょっと違う雰囲気がある。

 

ナンちゃんは、ここに来る前は台湾で、ギター片手にストリートライブをしながら旅をしていたが、まとまったお金になったので、タイに来たようだ。

台湾の人は日本人に優しいので、投げ銭でも結構お金になるらしい。

「通帳作れるくらいのお金になりましたよ 笑」

と、喜んでいた。

香港も、物価が高く日本人に優しい人が多いので、かなり稼ぎになるという話だった。

 ここでもストリートライブするの?

と聞くと、

「今日は着いたばかりだから、

 明日あたりカオサンでやりますよ。」

というので、僕は 俄然興味が湧き、明日一緒に行く事になった。

その為にも、ナンちゃんは、雨が止んだらカオサンロードに、ライブできそうな所を、下調べに行きたいと言っていた。

 

そして、しばらく話していると、丁度雨が止んだ。僕たちはカオサン通りで飲み直そうと、意気込んで宿を出た。

この宿からカオサンロードまでは、徒歩10分ほどで着く。

 

辿り着いた 夜のカオサンは、凄い熱気だった。

今は、一番の繁華街の称号は、スクンビットなどに移ってしまい、ありし日のカオサンはもう無い。と嘆く旅行記を読んだことがあったが、そんな事は無い。

祝日の原宿ほどでは無いが、大賑わいだ。

逆にこれ以上賑わっていると、僕などは来たく無くなるだろう。

 

まず、カオサン通りに行く 前の通りから賑やかで、屋台でカオマンガイや、パッタイなど、タイの代表料理をおばちゃん達が、鉄鍋を振り、一心不乱に笑顔で作っている。

そして、カオサンロードには クラブやバーが軒を連ね。

その前には、お土産屋や、衣料品屋、果物やジュース屋などの屋台が、軒を連ねている。

 

外国人が所狭しと歩き回り、夜はこれからとばかりに、大盛り上がりだ!!

 おおおお!!!マジか〜〜!!!

 スッゲェな!! カオサン マジでヤバいな!

と僕が盛り上がっていると、何度も来ているナンちゃんは、

「ははは、ずまさん良かったっすね。

 一緒にひと歩きして、明日のライブ、

 やれそうなところも見つかりましたよー。」

と一緒に楽しんでくれていた。

 

バックパッカーの聖地」とまで言われている、憧れ続けたカオサンロードに、

 僕は今、自分の足で立っているのだ。

 そう!自分の足で、旅をして 日本を出て

 今!ここに、ついに! 立っている。。

何か物凄い事をやり遂げたような達成感と感動が僕にはあった。

 

ついこの間まで「外国」にすら行った事がなかった僕が、思い立ち、計画し、覚悟を決め旅に出た。

そして、憧れ続けた地に、遂に辿り着いたのだ。

これは、自分の人生にとっても大きな事だった。

 

一人 感慨に浸る僕に、

「どこいきましょうかぁ?」

と木下さんが、のんびり聞いて来たので、ナンちゃんが、前によく行っていたという、一本カオサンから入った通りの、小さな食堂風の場所で飲む事にした。

店の前の、テラス風のプラスチックのテーブルで3人でチャンビアーで乾杯する。

隣のカオサン通りより、地元感がある場所で、風も心地よい。

(ああ、俺はこれを感じたかったんだ…)

と、楽しい仲間とゆったり飲める事が最高の時間となった。

 

ナンちゃんは、頭も良いし、人も良い。

僕は彼が大好きになっていた。

僕が役者だと言うと、俄然彼も僕に興味を持ったようだった。

ナンちゃんが、酒が進んだ時に少し寂しそうな顔で、

「ズマさんは、役者だから言うんですけど…」

と前置きしてから話した事が印象的だった。

「実は、こう言う稼ぎ方してる僕らって

 旅ブロガーの人とか、他の旅人に、

 日本人を売りにして、小銭を恵んで貰ってる

 乞○きと一緒って言われる事があるんすよね…」

とストリートライブで旅費を稼いでいると言う、なんちゃんがそう言って来た。

 

僕の友人の俳優で

 「大道芸人」になりたいし、

 そんな風に いつでも演じられて、

 芝居で稼ぎながら旅をしてみたい。。

と言っている奴がいて、僕は出来るなら

 そんな彼女と仲間と、

 一緒に 一年くらいそうやって

 一緒に世界を回れたら素敵だな。。

と思っているような男なので、

 いや、俺は凄いと思うよ。

 そんな事を言ってる奴は、目の前の人間から

 一円すら貰った事が無いやつだよ。

 俺はナンちゃんは凄いと思うよ。

 絶対に、それも人間力だよね!!

と話すと嬉しそうに、

「ズマさんそう思います!?

 嬉しいなぁ。。なんか良かったなぁ。。

 俺、ここおごりますよ!マジ嬉しい!」

と、僕は奢ってもらう事になってしまった 笑

「ええと。。僕もそう思います。僕はぁ?」

と可愛い顔で聞いて来たので、木下さんもナンちゃんに奢られる事になった。

この人も、実にちゃっかりした人である 笑

 

とても楽しい 良い奴らと飲みながら、伝説のカオサン通りの隣で、とても心地よいタイの風に身を任せながら、

(やはり旅に出てみるもんだ。

 日本を出て本当に正解だった。)

と僕は、この伝説の地の風を、

しみじみと心ゆくまで噛み締めていた。

 

続く。

 

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↑ 夕方のカオサンロード

 夕方はまだ本気を出していない 笑

 

 

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