猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

電車でGO!

 

第108話

電車でGO!

 

体調を少しでも戻したい。

明日は、元に戻ってますように。

と祈りながら、昨日 早めに寝付いた僕は、早朝に パッと目が覚めた。

 

恐る恐る起きてみると、嘘のように体調が戻っていた。身体を動かして、部屋を歩き回ってみても、全く違和感がない。

どうやら、ただの風邪だったようだ。

 

胸を撫で下ろしながらも、ヒビリの僕は、まだ油断はしない。

午前中は、少し慣らし運転のように、日陰を選び、近場を散歩しながら、身体の調子を確かめていた。

どうやら万全の状態に戻っているようであった。

 

ホッとした僕は、一度宿に戻り、今日 行く場所を決めた。

 その場所とは「駅」である。

体調も戻ったようなので、あまり無理はせずに、電車のチケットを買いに行く事にしたのだ。

病み上がりの僕は、今日の仕事は

「電車の切符を買うだけ」と決めていた。

 

実は、ベトナムでは電車に乗った事がなかった。

体調を崩す前まで僕は、近日中に、小一時間ほど離れた駅あたりまで、電車でのんびり、日帰りで 小旅行に行ってみようと思っていたのだ。

 

3日前、床屋に行く途中に見つけていた鉄道駅に、切符を買いに行く事にした。

南にだいぶ歩き、駅の入り口しき所から中に入る。小さな暗めの駅舎は、窓口が4つ程並んでいるが、誰もいない。。

 無人駅に見えるが、

 田舎の駅だからだろうか…?

と思ったが、すぐに、

 …いや。  落ち着け 自分!!

 ここは「この国の 首都の駅」のはずだ?!

と思い直し、線路の方に行くと、職員らしき男性がいた。 話しかけると

「ここは今は使ってない駅舎だ。」

と教えてくれた。

 

確かに人のいない改札?から入ると すぐ線路で、ホームの様なものもない。

貨物車だけが、鎮座していた。

 ここを抜けて行けばいいの??

と聞くと

「危ないから、あそこの踏切から

 北側に回りなさい。 駅舎があるから。」

と親切に教えてくれた。

僕は旧駅舎に戻らず 線路沿いに、来る時に渡ってきた踏切に行き、北側に戻った。

 

北側の大通りにぶつかり右に折れ、少し行くと駅舎が見えてきた。

かなり大きな駅舎で、旧駅舎とは全然違う。

僕はちゃんとした駅があってホッとしていた。

 

中に入ると古いながらも、綺麗な駅だった。

自動券売機らしきものがあるので、ちょっといじってみる。

English というパネルを押し、触ってみるが、まず なんの駅があるのか、名前も知らないし、触るだけ無駄だと気付いた。

 

奥を見ると、皆窓口で切符を買っている。

窓口の前には、銀行の待合の様なベンチが、四列ほど並び、皆受付の後、そこで待たされる様だ。

 

マレーシアもそうだったが、券売機が置いてあっても、窓口が開いていれば、窓口で買う人が多い。

 

不思議な事に日本だと、券売機で買う人の方が多いのに対し、僕の行った国では、結構窓口で買う人が多い。

日本だと速さを尊ぶせいか、まず券売機で買うのだろうが、外国だと並んでも窓口で買うのが、楽みたいだ。

国民の識字率や、機械の使い方を知っているか。なども関係しているのだろうか?

分かりやすくする為か、タッチパネル式の券売機の画面のボタンは、日本に比べてかなり大きい。

 

いかにも貫禄のある、時代を感じさせる窓口の前で、色々見てみると、時刻表を見つけた。

この鉄道は、有名なベトナム統一鉄道のはずである。調べたところによると、南のホーチミンまで通っている。

南北を繋ぐ「絆」の象徴のような鉄道らしい。

 

 ええと…どれどれ?

 ホーチミンまでどれくらいなのかな?

 

興味本位で 到着時刻を見ると、夜中に出て、明後日の早朝に着くらしい。。

 え? ええっ!? 車内に2泊三日??

 ま、マジで?  や、ヤバいな統一鉄道。。

さすがベトナムを、南北に縦断している鉄道である。

 

隣駅までを見てみると「フーリー」という駅で、1時間とちょっとかかるらしい。

(隣駅まででも 1時間以上か…)

日本育ちの僕の感覚だと、特急でも無いのに、隣の駅までが1時間以上の遠さというのは初めてだ。

さらに隣駅となると、2時間以上だった。

(滞在時間も考えると、日帰りだと

 これは隣駅が限界だな…)

そう思い、僕は隣駅に行く事にした。

 

ネットで、切符の種類を調べていた僕は、行きは一番安い、3等に乗り、帰りはせっかくなので、寝台車も見てみたいので、寝台に乗る事にした。

 窓口でいきなり説明しても、難しそうだな…

と思った僕は、メモ書きに、

 

行きの列車の時刻と、降車駅の「フーリー」と、その到着時間、三等の英単語。

帰りの列車の、フーリーの発車時刻、ハノイへの到着時刻、寝台の英単語をわかりやすく書き、窓口に持っていった。

 

30歳くらいのベテラン感のある窓口の女性に、そのメモを渡して、

「トゥモロウ! アイム ゴーイング tomorrow!

 アイ ウォン to トゥモロウチケット!!

 プリーズ! トゥモロウね!」

と、しつこいくらい 明日を望んだ。

 

スタッフの女性は

(コイツ… 明日明日、うるさいなぁ。。)

と言う顔をしてから、僕のメモ書きに目を落とした。

そして、少しして首をかしげた後

「just a moment」

と言い、奥にいた、上司らしき男性に相談し始めた。

(なんだろう? 英語が通じなかったのかな?)

と思ってみていると、やがて女性が戻ってきた。

「あなた、行きは "3等車" で行くのに、

 帰りを "寝台車 "って 間違えて書いてるわよ?」

と親切に教えてくれた。

 

だが、間違いではない。僕があえてそう書いているのだ。

 いや、間違いではありませんよ。

 僕は帰りは寝台車に乗りたいのです。

 

「いや、そうじゃなくて、

 たった一駅を 寝台車に乗る必要ないでしょ?

 しかも、あなたの乗りたい寝台の

 一番下のベッドは 一番高いのよ?

 帰りも、3等車になさいな。」

 

確かに、たった1時間弱の電車で、寝台に乗る意味が、彼らには解らないだろう。。

(隣町なので、どちらも数百円だが、

 席の値段は、やはり倍以上違う。)

 

おそらく彼女は、親切心で言ってくれているのは分かっていたが、説明するのに ただ正直に、

「ただ 乗ってみたいだけ」と説明するのが難しいな… と思った僕は 違う説明をする事にした。

 いや、、あの…ですね。

 アイ ゴーイング to フーリー & アラウンド

 ビフォアー ベリィ タイヤード。

 ビコーズ アイ need ベッド!

 アイム うぉんと トゥ スリーピング

 リターン トレイン。 OK?

と大真面目に丁寧に伝えた。

 

怪訝な顔をする窓口の女性に 僕は更に、

駆使し得る英単語を 全て駆使し、

いかに自分が "疲れやすいか" を伝え、昨日まで体調が悪く、病み上がりである事も熱心に伝え、いかにベッドで寝て帰る事が重要であるかを 情熱的に伝えた。

 

すると根負けした彼女は 呆れた顔で、

「わかりました。チケットを用意するので、

 ベンチでお待ちください。」

と言って、やっと了承してくれた。

 

スムーズに切符を買えるように、わざわざ紙に書いて渡したのに、購入が難航した事は 想定外だったが、何とか無事に買えそうだ。

 

そもそも、そんなに病み上がりで疲れやすいなら 、大人しく部屋で寝てろという話である 笑

 

だが、さすがにそこまでは 彼女はツッコんでこなかった。

やがて窓口に呼ばれた僕は、お金を払い、念願の切符を手に入れたのである。

まだ病み上がりながら、色々とやり取りをしたが、そのやりとりも結構楽しく、僕はより元気になっていた。

 明日は、いよいよ 電車でGO! だな!!

と思いながら僕は、そのままの余勢を駆って、うっかり小料理屋でビールを飲んでしまっていた。

 

 ん? 体調はどうしたんだ。って?

 

だっていっぱい喋って 喉が渇いたんだもの。。

 

明日へと続く。

 

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↑ 旧駅舎の目の前の線路と列車たち

 

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↑ 無事買えた明日の切符

 三等が30000ドン(150円)

 寝台が66000ドン(330円)

 確かに倍以上だが、隣町なので安い 笑

 

 

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