猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

「遺跡はもう充分」と言う謎の境地に至る

 

第90話

「遺跡はもう充分」と言う謎の境地に至る

 

朝起きた僕は、ベッドの上で寝ぐせをつけたまま、ボーっとしていた。。

三日間の遺跡周りを終えてしまった僕には、今日 特にやる事が無い。

 

(うーん。。どうしたものか…?)

 

僕は昨日、ジェイクとパブから帰ってきた後、ベットでそのまま寝てしまっていた。

 (とりあえずシャワーを浴びよう。)

とりあえずのミッションを作り、遂行することにした。バスルームに向かう。

気持ちのいい朝のシャワーを浴びながら、今日は ぷらっと街を歩くことに決めた。

 

よくよく考えてみると、この遺跡の街に来てから、僕は 旅のスタイル だった街歩きを まったくしていないことに気付いた。

シェムリアップ初日から この3日間、慌ただしく 目的地にしか向かっていなかったのだ。

 

今日は街歩きをしようと決めて、フロントに降りていく。

フロントには宿の主人の奥さんがいて、挨拶をしてくれた。

 

いつも通り、椅子で寝ている可愛い三毛猫さんを撫でていると、奥さんが近づいて話しかけてきた。

チラシを持っていて、僕が回った北の遺跡群ではなく、南側のトンレサップ湖付近のツアーを勧めてきた。

「どう?こんな景色も見れるのよ。」

とどこか別のツアー会社の作ったチラシの写真も見せてくれる(結構みんな他社のチラシを使い廻している 笑)

だが、遺跡疲れをしていた僕はカタコト英語で

 I'm very tired.  プノン is enough.

   I'm very very enough プノン&tour

 I'm not hungry ツアー.

 Todays is around the neer side.

 thank you!  oh yes!?

どれだけ充分か 物凄い勢いのカタコト英語で伝えると、

彼女は 「そう。。」と苦笑いをしていた。

 

奥さんは 中々の商売上手だが、僕が もう遺跡には興味が無いのだからしょうがない。

だが、一晩千円弱の宿に、僕はツアー代だけですでに一万円近くお金を落としているはずだ。もう充分だろう。とも思う。

最後に、善意から、夜やっているサーカスの情報とチラシをくれた彼女は、

「行ってらっしゃい。今日も楽しんで」

と気持ちよく笑顔で送り出してくれた。

商売熱心なだけで、彼女も本当にいい人だ。

「サンキュー!」  と言いながら玄関を出る。

 

外はあいかわず暑いが、予定もなくぶらつける事が、ぼくの身体と心を軽くしていた。

とりあえず、ご飯を食べようと 大通りに出る。

大通りの角での店で僕は「究極の焼き飯」に出会い、大満足し、宿の近くを散策する事にした。

 

宿周辺をゆったり散歩する。

少し細い道に入るとまだ土の道だったりする。

途中に、フットサル場があった。未來のサッカー選手たちが、結構ちゃんとした指導者から、指導を受けている。

(そういえば、俺も子供の頃本気で

 サッカー選手になりたかったなぁ。。)

と サッカー少年の頃の自分をふと思い出した。

 

さらに歩くと、コインランドリーがあったが、看板が謎だった。。

看板には、とてつもないマッチョな男性の絵が描いてある。。逆三角形なんてものではない!! 僕が古舘伊知郎さんであったら、

  まさに筋肉のバイヨン!!

  太腿は 肉のタプロームか?!

  力瘤は正に アンコール・ワットだァぁあー!!

と実況したくなるような、引くくらいのマッチョだ。

洗い物を待つ間に 筋トレでもするのだろうか?

その間のトレーニングだけで、こんなにマッチョになれるはずがない。。

どう言う事なのかは、いまだにわからない  笑

 

何はともあれ、南側を回ることにした。

一度宿に戻り、無料で借りれる例の自転車を借りた。

漕いでいくと、貧乏旅行者の僕には縁がなく、行った事がないので、どういうニーズなのかよく判らないが、ここにも「Hard Rock Cafe」がある。

凄い出店数だな。ひょっとして世界中にあるのではないか?!  とだいぶ驚いた。

 

さらに南にいくと車が止めてあり、撮影をしていた。

クルーがいっぱいいたので、ドラマの撮影だろう。どうやら、カンボジアのドラマ撮影に遭遇出来た様だ。

車の中で、若いカンボジア俳優の男女が会話をしている。きっと、若いカッコいい俳優が、カッコよく カッコいい台詞を言っているのだろう 笑

平和になったカンボジアでは、当たり前のように ドラマも撮影されている。

その事が新鮮で、面白かった。

 

さらに南へ向かう。

そんなに大きくはない川を越えると、右側にお寺さんがあった。

橙色の袈裟を着たお坊様が何人か歩いて行く。

僕はせっかくだからお参りさせてもらおうと、1人のお坊さんを捕まえて、

「お堂の中に入っても良いですか?」

と聞くと、快く「どうぞ。」と言って、わざわざ お燈明も点けてくれた。

僕は正座をして、時計を外し、きちんとご挨拶をする。遺跡周りで疲れた心が洗われる。

長い旅をしていると、澱のようなものが心に溜まってくる。そんな時は、お寺さんだったり、モスクや、教会で、その土地の神様や自分と向き合うと、スッキリする。

以前日本で、近所の美味しいカレー屋の ネパール人のシェフで、50歳の敬虔なヒンドゥー教徒の彼も

「神サマ みんなオナジだよ

 呼び方が チガウだけ。」

と言っていて、僕も(そうだよなぁ…)と思った事がある。

なので、僕は節操が無いように思われても、その土地の気になった信仰の場に "ご挨拶" に行く事にしている。その行為は、その国と土地と、そこに暮らす人達に敬意を持つ事と同義だと 僕は思うからであるし、実際、旅が上手く行くので、その土地に少しは受け入れてもらえたのかなぁと、感謝する事が多い。

 

またしばらく行くと、あまり人通りのない、車もまばらな そこそこ大きな道に、マッサージ屋さんがあった。覗いてみると、なかなか綺麗な店内である。値段を見ていると、中から女性が出て話しかけてきた。

 今ならこのスペシャルコースを、

 安くしますよ。どうですか?

笑顔の柔らかい、地元の女性だ。

僕は旅の間に不思議と身についた技術がある。それは、お店からわざわざ出てきて話しかけられると、立ち去らずに、世間話や、交渉をする事である。

日本にいた頃は、店を覗いていて、店員にさんに店から出て来られると「あ…大丈夫です。。」とそそくさと立ち去っていたのだが。

いつのまにか、交渉の余地があるのだと思うようになり、全くの冷やかしの時でも、会話をすることを覚えた。アジアの人は「売りたい!」というだけではなく、人と話すことも楽しみにして、お商売をしている人が多い。なので、話しかけられたら、値段交渉や、世間話を楽しめばいいのだ。と言う事に、ある時にふと気づいたのだ。

日本では「なんだ!冷やかしかよ?」と言う文化が(今の若い商売人にはあまりなくなってきたとは思うが…)僕が子供の自分には、そういう文化がまだ根付いていたような気がする。。

その為、 僕には 備わっていなかった能力であったが、このアジア旅の間に、不思議と身につけられた能力であった。

アジアの人たちと触れ合う内に、

商売すらも " 会話のきっかけ" でしかないのだと思えるようになっていたのだ。

 このスペシャル、元が高いし、

 僕はそんなに時間がないから

 この、1時間コースを安くしてくれない?

と聞くと、少し悩んでから彼女は、

 わかったわ、じゃあスペシャルと同じで

 30%オフの価格で、1時間コースでいいわよ。

と言ってくれた。

7ドルのコースが、5ドル程になったが、彼女達も、暇を持て余しているよりも、安くしてでも稼いだほうがいいのだろう。

日本では3000円でも安いマッサージが、700円ちょっとで受けられるのに(高いなぁ。。)と感じて値引き交渉をしている自分がいる。

(だが、こういう一つ一つが、

 限られたお金で、いつ終わるか

 わからない旅をしている

 自分のような旅人には 大事なのだ!)

そう自分に言い聞かせて、僕は2階の施術室へ向かった。

僕はベトナムでは、マッサージは2回行っているが、カンボジアのマッサージは初めてである。

(なんか。。カンボジアのマッサージ…

 す、凄そう。ちょっと怖いな…)

と思っていた、腰に不安ある僕は、いつもより大きな声で、

「ノーアクロバティック!

 そふと、ソフトぷりーず!!」

と宣言してマッサージをして貰っていた。

 

心地よいマッサージを受けながら僕は、今日は早めに例のバーで「究極の生ビール」を飲む事を想像しながら、ここ3日の遺跡周りの疲れと、気持ち良さに任せて、いつのまにか眠ってしまっていた。。

 

続く

 

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↑ 宿の三毛猫さん 

 宿の主人も猫可愛がりしている❤️


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カンボジアドラマの撮影風景


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↑ 謎のコインランドリー

     洗浄には強さと筋肉が必要だとでも

     言うのだろうか??

 

 

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