猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

ついに 幻の遺跡を発見!!

 

第88話

ついに 幻の遺跡を発見!!

 

バイヨンから北に真っ直ぐ伸びる道を、さらに進むと北西にある 象のテラスを抜けて、さらにもう一つ遺跡を周り、王のテラスをささっと見て、僕は駐車場に戻った。

 

もう十分見たな…遺跡。とも思ったのである。

駐車場に戻りながら、ふっと 僕は気付いた。そういえば、ジェイクが北東の方向を見ながら、

「パッキン」と言っていた事を思い出したのである。「パッキン遺跡」だけ、僕はやけに耳に残っていた。せっかくなので、最後にその遺跡だけ周って、アンコール・トム周りを終わらせる事にした。

駐車場で、ジェイクを見つけ、話しかけた。

 ハーイ! ジェイク。

 だいたい周って来たよ。

 後一つだけ 行きたいんだけど、

 さっき言ってた "パッキン遺跡" は

 どこにあるんだっけ?  

すると、ジェイクは怪訝な顔をし、

 

「そんな遺跡はない。」 と言う。

 

 いや、いや、さっき言ってたじゃん。

 あっちの方にあるんでしょ?

 パッキン遺跡が?

 

 いや マサミ、向こうに遺跡は無いよ!?

 そんな事を俺は言っていない!

 

 いや、確かに言ってたよ!

 

 いや! 俺は言ってない!!

 

と押し問答になった。

 

すると、彼は何かを思い付いたのか 急に

 …パッキン遺跡は ここにある。

と厳かに言ってきた。

 

とりあえず見渡してみるが、

(ええぇ…と。ここには何もないぞ…。

 ジェイクはいきなり何を言い出したんだ?

 ひょっとして、禅問答でも始めたのか?)

と、びっくりして「どこに?」と聞き返すと、

かなり激しく、

 だから!!パッキンはここなの!!

と言われた。

しきりにジェイクは「ヒアー!ヒアー!」と繰り返す。

(どゆこと???)と僕は思ったが、

少し落ち着いて考えてみる事にした

 パッキン パッキン…。うーん。。

 トゥクトゥクしかないぞ、、ここには。。

と思ったが。 少し考えて、、

 

 ん? んん?? あ、あれ (^_^;)

 

と思いついて、僕は恐る恐る聞いてみた。

 も、もしかして、パーキング?

 ここ?? 駐車場??

 

するとジェイクは、

 イエス! パッキン!

 だから ずっとそう言ってるだろう。

そう言いながら 大きく頷いた。

 

 えええー?! 俺は駐車場さがしてたの?!

 

なんと言う事であろうか?!

僕はすでに幻の遺跡「パッキン」に来ていたのだ!!

 

パッキン遺跡とは、トゥクトゥクが大量に止まっている平地の遺跡?だったのだ 笑

 

僕は頭の中で 英語の綴りを思い出していた。

 えーと…Par..king…かぁ。

英語はGを、発音しないことがあるから、ジェイクは「パッキン」と呼んでいるのだろう。

せめて「パーキン」と言ってくれれば良かったのに。。と思いながらも、とにかく

 "  謎は全て解けた! "

こうして僕は、シェムリアップ史上 最大の謎

幻の遺跡である「パッキン遺跡」の真実にたどり着いたのである!

 

お互いに理由がわかると、笑いが込み上げて来た。ジェイクを見ると、彼も笑いを堪えている。。

 クフフフ… クックックッ…

お互い我慢していたが、あまりの馬鹿らしさに僕らはもう我慢できなくなった。

爆発したように僕が笑い出すと、ジェイクも腹を抱えて笑い出した。周りの人たちは、なんだコイツら?と僕らを見ていたが、もう我慢ができなかった。

ひとしきり笑った僕らは、お互いの肩を叩き合い。

「よし!いこうか!」と

最後の遺跡、アンコール・ワットへ向かった。

 

途中、スコールに見舞われ、雨宿りをしたが、雨は10分ほどで上がり、再びトゥクトゥクは走り出した。

そしてついに、最後の遺跡に到着した。

今日の僕の遺跡周りは

アンコール・ワットに始まり

 アンコール・ワットで終わる」

というもので、僕の遺跡の旅もここで終わりだ。

到着すると、まだまだ雲行きが怪しい。

空の向こう側がかなり曇っていた。

僕は例のプカプカ橋でお堀を越えて、門から中に入る。

朝も見た、長くて広い石の参道を さらに歩く。

観光客は、さっきの雨の影響でまばらだ。空いていて、逆にありがたい。

 

歩いていると、よく日焼けした、少し太っちょの、10歳くらいの男の子が、話しかけて来た。

手にポストカードを持っているので、

(ああ、来たな。。)と思う。

例の「ワンダラー!」の呪文を唱えられるに違いない。

通り過ぎようとする僕に、彼は

「ちょ、ちょっと、まってよぉー」

と話しかけてくる。

目的がハッキリしていることもあるが、なぜか彼が言っていることがわかる。

足を止めてやると、案の定

「ワン、ツー、スリー、フォー…」

とカードを数え始めた。

僕は ちょっとした悪戯心が芽生え。

ファイブから 一緒に数えることにした。

「ファイブ、シックス、セブン、エイト

 ナイン、テン…」

と一緒に来たところで、例の呪文を解き放つ。

  同時に叫んだ。

「ワンダラー!!」と僕

「ツーダラー!!」と少年。

同時に言ってから、僕はカチンと来ていた。

(おいおい!今までみんな1ドルだったぞ?!

 こ、、こいつ、ボッタクリや!

 姉さん事件です。ボッタクリですよ!)と。

それともアンコールワット価格だとでもいうのだろうか?

僕は日本語で優しく諭した。

 おいおい、少年。2ドルは高すぎるだろ。

 みんなどこでも1ドルやったで?

 お兄さんの事、お登りさんだと思って

 ボッタくったらあかんで。

すると彼は、たぶんクメール語で、

 安いよう、おにいちゃん。

 安いよ、買ってよぉ〜。

と言ってきた。

 いや、、いらないよ。

と言っても 結構しつこくまとわりついてくる。

僕は「ボッタクラーからは買いません。」

とはっきり何度も断った。

すると彼は ため息を一つつくと、首を振り、他の観光客に声をかけ始めた。

僕は 不思議と彼に興味が湧いて、しばらく参道の 腰の高さ位の、石の手摺りに腰掛けて、彼を観察することにした。

彼は、まるで新宿歌舞伎町のティシュ配りのようにすぐ諦める 笑

声をかける方法は、歩いている人と、一緒に歩きながら話しかける、歌舞伎町のホストのキャッチ方式にも似たやり方である。

一組目のカップルは完全にシカトだ。。

2組目の白人女性に声をかけると、

「NO!」と笑顔ではっきり言われる。彼は僕に声をかけた時のように、全然粘って話しかけない。

(おいおい、俺の時だけなんでやねん?! 笑)と思わず笑いながら、

「おーい!なんで、俺の時みたいに

 追いかけながら、しつこく売らないの?!

 ほら、今の白人の彼女とか追いかけないの?」

と問い質すと、彼は疲れた態度で頭を振り、

「だって、、知ってるんだ。。

 アイツらは絶対買ってくれないんだ…」

と言いながら、うなだれて、僕の隣に座った。

 

隣に座った彼が少し可哀想になり

「疲れたのか?  大丈夫か?」と聞くと

「もう、疲れたよ…。」

と彼は ゆっくり首を振った。

まるで 人生に疲れた10歳児だ。。

凹んでいる彼には悪いが、実は彼からは、何か面白みというか、天性の愛嬌が滲み出ていて、

悪いなぁとは思うが、僕はちょっとだけ、笑ってしまっていた。

だが よく考えると、ここは日陰などない 炎天下の参道である。さっきから 少し曇っているとはいえ、彼は炎天下で、水も飲まずに200円のポストカードを延々と売っているのだ。

ペットボトルの水も60〜70円するカンボジアでは、水も勿体無いので買えないのだろう。

色々想像すると、うなだれている彼が他人事とは思えない。彼の体型や、例の愛嬌や、貧しさは、僕の少年時代に何か似ていて、何か親近感を感じてやまない。

僕は、初めて会った彼が、本音をポロリと話してくれた事で、もはや 他人とは思えなくなっていた。

僕は彼の肩を優しく叩き、立ち上がり!

「いいよ!2ドルだろ?買ってあげるよ。」

と、自然に言っていた。

 

すると「いいよ!無理しなくて!」と拗ねている所も、また自分の子供時代を彷彿とさせる。

僕は笑いながら、

「かうっつーの!!」

と、彼に笑いかけた。

彼は「本当に?」と初めて笑顔を見せた。

僕は2ドルを払い、彼の肩を軽く叩き

「頑張れよ。」と言い残してアンコールワットの中に入るべく、真っ直ぐ参道を進んで行った。

僕はこのアンコール・ワットで、子供時代の自分と話したかのような、奇妙な錯覚を覚えていた。。

 

(後から考えると、不思議な経験だった。なぜなら、彼は数字以外は、英語を知らないので、彼はクメール語だっただろうし、僕は日本語で、普通に会話していたからだ。まったく違和感なく、普通に会話が出来ていた事は、今でも思い出すと不思議だ。彼とは何かが通じていたのだと今でも思う。)

 

そんな僕は、いよいよ空を覆いだした、黒い雲から逃げるように参道抜け、建物内へと急いでいた。

 

続く

 

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いざ他の遺跡へ

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↑  移動途中の景色


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アンコール・ワットのお堀りと、

     橋工事の為、迂回する簡易のプカプカ橋


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↑ お堀を越えてすぐの参道と入り口


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アンコールワットの参道。

 

 

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