猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

2軒目はイタリアン

 

第65話

2軒目はイタリアン

 

パブストリートの、さっき通らなかった区画の道に入り、少し川沿いに戻ると…

こじんまりとした "イタリアン" の店があった。

 

「街のイタリアン」といった外観で、縦長の店内で、プノンペンでは 見かけたことの無いタイプのオシャレなお店だった。

メニューを見てみると、意外なことに 結構安い。

日本だと、ご夫婦でやってそうな、家庭的なイタリアンという感じだ。

 

「ここは良さそうだ!」 と中に入ってみると、店内は空いていて、他にお客は1人しかいなかった。

元気な小柄な30代中盤の女性が 席へ案内してくれる。高校生くらいの 娘さんらしき女性も働いている。

僕は席に座り、美味しそうなピザとビールを注文した。

注文を終えて、ふっともう1人のお客さんを見ると 目が合った。

(あれ? 日本の方っぽい…?)

と思っていると、向こうから挨拶して来た。

 

スキンヘッドのような頭の、眼鏡をかけた 少し太っている がっちりとした方だった。身長は 170センチより、やや下で、年齢は50歳くらいの元気な男性だ。

 

 日本の方ですか?

 プノンペンには いつ来たんですか?

 

 ええ、日本人です。今日来ました。

 

 そうですか!プノンペンじゃ、

 日本の方にはあまり会えないんですよ!

 良かったら一緒に呑みませんか?

 

 ええ。でしたら是非!

 

という事で、一緒に飲む事になった方は、プノンペンに住んでいる日本人で「田中さん」といった。なんでも、工場の機械の設計をやっていて、一人でその会社をやっているとの事だった。

色々話を聞くと かなりのツワモノである。

数年前までは、アフリカに 10年以上住んでいて、そこでも 今の仕事をやっていたそうだ。

プノンペンの事情にも詳しく、マスターに聞いた事は 大体あっていて、夜はとにかく気をつけた方が良いと言われた。

実は田中さんは、ひったくりも合わせて、カンボジアで すでに5回ほど強盗被害に遭っているとか。。

十数年いたアフリカより数が多いらしい。

すぐそこの道を行ったところに家があるが、家に入る直前でひったくりにあった事もあるという。

最後にバイクの引ったくりに遭った時に、持っていたカバンを引っ張られ、こちらも踏ん張って、グイっと 引っ張り返した際に 右足を着き、その時 ふくらはぎが筋断裂を起こしたとの事。。

「足をついた時にね、ブチブチブチってね!

 ガハハハハハハ!!」

と豪快に笑う なかなかの豪傑だ。

実は合気道をやっていて、段持ちらしいが、

怪我をした事を師匠に報告した所

「修行が足らん! って、怒られちゃったよ!

 ガハハハハハハ!!」

と、これまた豪快である。

僕は明るい元気な田中さんと、意気投合して、結構遅くまで話し込んでいた。

田中さんもお酒が好きで、二人で楽しいお酒になった。

その中で 出た話だが、

あまり詳しい事情は話せないが、アメリカが関わる とある捜査で、その事件には直接関わってはいないのだが、実は プノンペンに住む日本人経営者は 全員、CIA から事情聴取を受けたという。。田中さんも、会社の代表なので 事情聴取されたらしい。

なかなか人生で アメリカ中央情報局” から事情聴取されることも無いだろう。

さすがカンボジアである、スケールが違う。

もう一つ気になるのは "米ドル" という通貨だけではなく、アメリカが深く入り込んでいる事だ。なかなか 他の国に、自分の国の捜査で捜査官を送り込み 捜査をするという事は、国際法上あり得ないのでは無いか? とも思う。

僕の知る限りでは 映画「カリオストロの城」で、銭形警部が "埼玉県警" を引き連れ、外国に捜査に来た事くらいだろう 笑

 

また、田中さんも経営者であり カンボジアの商売についても詳しかった。

いま、百万程あれば、カンボジアでは 商売で勝負できるとの事。

先ほど聞いた通り、カンボジアは産業も弱く、アイデアとガッツさえあれば、もともと教育水準の高い "日本人" であれば、成功するのは難しくないと言っていた。

田中さんは僕を気に入ってくれたらしく、酔った勢いで

「商売するなら、東さんなら成功しますよ。

 その際は、いくらでも手を貸しますから!」

リップサービスしてくれたが、やはり基礎教育を受けているというのは、相当なアドバンテージなのだと、教育の大切さを 改めて感じた。

 

また、話の中で田中さんに

「なぜこのお店にしたの?」と聞かれ、

「当たりの予感がしたので。」と答えると

「それは凄い!」と喜んでいた。

田中さんがいうには、このお店は プノンペンでも 穴場のお店で、安いし、かなり美味しいお店だと教えてくれた。確かに料理は全部美味しかった!  田中さんは、もう数年通っている常連だという。

パブストリートの すぐ横にあることもあってか、閉店時間はかなり遅いようだ。

僕らが遅くまでいても、店主の女性はニコニコしている。それかお客さんに合わせて閉めるのだろうか? 僕らがいる間に もう一組お客さんも入っていた。

僕らはかなり遅くまで飲み、店を出る時 時計を見ると、もう深夜0時だった。。

 

あれほど、”気をつけろ” と言われていたのに、街に少し慣れると、いきなり深夜まで酔っぱらう僕も 大概な呑兵衛である 笑

 

宿に帰ると、マスターが店の片づけをしていて、その事を話すと 笑っていた。

僕が

「たまたまお会いした 日本の方と飲んでましたよー。」

と言うと

「おお!それは凄いですね!持ってますね!!」

とさらに笑っていた。

優しいマスターは「ビールまだ出せますよ」と、瓶ビールを売ってくれたので、マスターと少し話す。

話をすると、やはりCIAの話は本当で、マスターも宿の経営者なので CIAから事情聴取を受けたらしい。。初日から色々凄い話を聞かされ過ぎて、お腹いっぱいになってしまった僕は、ビールを飲み終えると

「ありがとうございました、おやすみなさい。」と言って、2階のドミトリーへと階段を上がっていった。

一日の間に、あまりに色々な事があった僕は、ベッドに入ると すぐに意識を刈り取られた。

 ふむ。。良いベッドだ。。

と思ったのが、カンボジア初日の、僕の最後の記憶となった。。

 

続く

 

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↑ 田中さんと僕。はいチーズ!の代わりに

 「修行の足りない顔でお願いします 笑」

 と言ったら「ガハハハハハハ!!」

 と笑っていた。

 

 

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