猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

ベトナムで本気の "追いかけっこ"

 

第52話

ベトナムで本気の "追いかけっこ"

 

せっかくなので観光をしなきゃ!

と思いながら…毎日訪れるイベントと、優雅な晩酌で いつの間にか時が経っていた。。

 

今日はモールの中のフードコートで 遅めの朝食を食べていた。

 

腹ごなしに公園を散歩していると、道を挟んで、小さなツーリストオフィスがあり、女性が1人暇そうに座っていた。

そうだ!ツアーについて聞いてみよう。

空いてるから、色々聞くチャンスだ!

と僕はそのドアの無い 小さなオフィスに入っていった。

僕はメコン川で、「蛍の木」と言われるような、日本では見れないような数の蛍を見れると聞いていたので、それを聞きたかった。

話しかけたのは、20歳位の若い おとなしそうな娘さんで、いじっていた携帯を置いて

「何でしょう?」とにこやかに聴いてくれた。

 

ツアーを探しているんです。

 

 どんなツアーをお探しですか?

 

メコンリバーに行きたいのですが。

 

 それなら、こちらのツアーなどがあります。

 

なるほど…え〜と。。ほたる?あれ?

(蛍って英語でなんていうんだっけ?)

あー、ライトニングバグ、

ユーノウ?Lightning!bags。

伝わらない。。ええと、、

ピカピカ、、おしり??ひっぷ?

 

と言うと、

 ええと。。what? なんですか? 笑

と聞かれた。。

 

(うーん。。どう説明したら良いんだろう

 ライトニングバグじゃないのか…そうだ!)

 

と僕はペンを貸して貰い、蛍の絵を描き始めた。

因みに僕は 絵があまり得意では無い。。

一生懸命描くと、やっと理解してくれたのか、

「オオー! firefly!」

とわかってくれた。

そして、絵を見て爆笑し始めた!!

たぶん、必死に「おしり、ピカピカ」とやっていた僕を思い出したのだろう。

僕も釣られて大爆笑だ!!

 

発音がおかしかったのか、蛍についていきなり聞かれる事が無いので頭に無かったのか、なぜ通じなかったかは 全く分からなかったが、

とにかく通じ、お互いに爆笑し、一気に彼女と打ち解けた!! 不幸中の幸いである 笑

 

会話は流れるようになり、色々聞いてみたが、今の時期は 蛍はあまりいないと言われた。

いたとしても少し見れる程度で、僕が見たいと思っていた "蛍の木" と言われるような現象は

「見れません。」 との事だった。

ベトナム戦争時の クチトンネルの見学が人気だと言われたが、僕は人が大勢亡くなった所には、なるべく近寄らないと決めていたので、やんわり断った。

色々話を聞けて、ツアー内容が解ったので、

「一旦また考えます。ありがとう!」

と言うと、笑顔で「是非!」と言ってくれた。

店を出ようとすると「メモを忘れてますよ!」

と、かなり笑いながら、例の蛍の絵が書いてあるメモ書きを渡してくれた。

僕はとても楽しい時間を過ごせた事に満足し、

手を振って別れた。

 

表に出ると、なにやらピンクの女性の集団がいた。その格好は ”阿佐ヶ谷姉妹” を彷彿とさせる。。よく見ると結婚式の見送りだ!

おお!珍しい!ベトナム式?阿佐ヶ谷風なのだろうか??

新郎と新婦を 阿佐ヶ谷風味の女性たちが送り出している。みんな幸せそうだ!

よく見ると、女性達が着ているのは

 "ピンクのアオザイだった"  彼女達に送られながら、新郎と新婦は幸せそうに マイクロバスに乗り込んでいく。 2次会にでも、行くのだろうか?

ともあれ、人の結婚式は、見ているこちらまで幸せな気持ちにしてくれる。

それは国など関係なく、そうなのであろう。

 

今日はバスに乗らず、宿の周りを徘徊していると、他にもツーリスト会社が色々ある。

ふと目を止めると日本語と "JAPAN" と看板に書かれたツアー会社があった。

気になって覗いてみると、なんと!日本人のスタッフさんがいた。

僕は、ベトナムに来てから初めて日本語で話せる事と、日本語で説明してもらえる事に少し興奮し、ここでツアーを決めてしまった。

メコン川のクルーズツアーに参加することにしたのだ。

割高だが、日本語ガイドの付くツアーにした。

催行は "二人から" との事だったが、今日 丁度 日本の方が もう一人申し込んでいたので、問題ないとの事。当日は宿まで迎えに来てくれる!

ベトナムに来たら これだけは観たいと思っていた「水上人形劇」のチケットもここで買えるらしい。ツアーのオプションで送迎付もあると教えてくれたが、歩けない距離ではないので、お金も もったいないので、チケットだけ用意して貰う事になった。

ツアーの終了予定時間から一時間後の、

18:30からの公演のチケットにした。

明日は日本の方にも会えるし、日本人ガイド付きだ!!

 明日は〜。

 いっぱい日本語しゃべっちゃうぞー!

とアホなことを考えながら僕は、明日は早起きなので早めに寝ようと、いつもより早めに そのままパブストリートに 吸い込まれて行った。

 

しかし。。

早めに吸い込まれた割には、僕はダラダラ遅くまで飲んでいた。

悲しいのんべぇである。。今日は何か勢いがついている。何故だか 宿に帰りたく無い。。

日本語を話した事で、少し寂しくなったのかもしれない。

この間の少女が話しかけてきてくれたが、

言われるままに、またガムを買って すぐやりとりは終えてしまったし、たまにいる とてもシャイな女の子が前でモジモジしているだけで、またガムを買ってしまう。。しかも、籠の中の4個全てである。

前の活発な コミニュケーションが上手な女の子と違って、苦手ながら頑張って売っている、この女の子に、なにか 必要以上に感情移入してしまったのだ。。それは全然良いのだが。。

 いったい、、どうしたのだろう??

なにか、、少し自分が弱っているのでは無いか?と、旅に出て 初めて感じていた。

 

そんな思いを振り払うかのように、

僕はさらにお酒を飲み、酔っ払った。。

 

どれくらい酔っていたかというと、明日は

"メコン川 デルタ" なるものに行くので、

 

 「出る出る、デルタ地帯っ!!!」

 

と言いながら コマネチをしたい欲求が湧き上がってきていたが

(だめだよマサミ、それ、絶対スベル!!)

心の中のリトルマサミが、それを必死に止めてくれていた。

 

いつもの この店を出た僕は、やはり、宿にすぐ帰る気にならずに、いつもは通らない、バックパッカーと客引きでごった返すパブストリート沿いに、宿から遠ざかるように歩き出した。

酔っ払いの喧騒と、客引きの声が心地いい。。

「ノーサンキュー」を繰り返しながら歩いていく。

とある店の前で、客引きのギャル風のベトナム

人女性に「オニイサーン!」とシャツを 思いっきり引っ張られた。

僕はお気に入りのTシャツを着ていたのだが、ビローンと、首元が伸びた。

「………。」

カチンときた。

シャツを見ながら 止まっていると、その店の男性が、その女性を気に入ったと思ったのか、馴れ馴れしく肩を抱いてきて、

「ヘイ、ブラザー、最高に可愛い子がいるぜ?

 女の子!好きだろ、ニホンジン!?」

と言って、下卑た笑顔で 指で卑猥な表現をしてきた。

 

何かが、僕の中で、久しぶりに何かが湧き上がった。

「◎⭐︎☆♀“〆⊆★!!」

何を言っているのかわからないが、何か卑猥な言葉を並べているのはわかった。。

僕は 何かが自分の中から湧き上がるのが止められなかった。さっきのコマネチの欲求など、砂のようだ。

 

僕は無意識に「零式 牙突」を繰り出していた。

  「零式 牙突」 とは…?

言わずと知れた、「るろうに剣心」の、

剣心のライバル 新撰組 三番隊組長 斎藤一 の "必殺技" である。

 

実は僕は、19歳の引っ越しのバイトの時、お客様の"ヤ○ザ様" の引っ越しで、そのお方に 顔を 目の前の "1センチ" まで近づけられて

「運んだ熱帯魚が死んだら、

 おまえも殺してやるからな!!」

とこの技を喰らった事があった。

(その後、一匹がクーラーボックスで

 うっかり浮いている事件に続くが。。)

 

それ以来この技を密かに

 「零式! 牙突!!」

と呼んでいたのだが、自然と自分も  

   悪! 即! 斬ッ!!  

とばかりに、発動していた。

そいつの顔の1センチまで顔を近付けて、

「おい…おまえ、やっちまうぞ?」

と思わず言ってしまっていたのだ!?

 

日本語で。。

 

通じたのか??と思っていると、どうやらこの 牙突は、「世界共通の技なのか…」

やがて彼は ブルブルと震え出し、、

「……、、ま、ま、マヒィアダーー!!!」

と叫んだ。

「ママ、マフィアだー!!

 ミンナ来てクレー!!ま、マフィアだー!

 殺される ミンナキテクレーー!!!!」と。

ベトナム人男性の背は低い、170センチ有るかないかの方が多い。。さらに それより背が低い その彼が、180センチある しかもゴツい僕から

牙突」を喰らったのである。

"気が触れる" のも無理もなかった。。が!!

その声を聞いた、刺青だらけのおじさんから、若者までが、その "鬨の声" に反応して、十数人が、「どうしたーー?!!!」と、僕めがけて走ってきた!!

 

 ま、マジでーーー!!!ええーーーー!!!

と僕は酔いが一気に醒めて、反対側に走り出した!!

さすがに酔っていても、一日中歩き続けられる体力を補充した俳優である。

信じられないスピードで、僕は彼らを振り切った。

人生で 一番早かったであろう "追いかけっこ"  をした。

やがてだいぶパブストリートから離れた僕は、

「二度とあそこは通らない。。」

と心に誓い、必要以上に大回りで宿に帰った。。

 

「なにをやっとんるんや、、ワシは。。」

と言いながら、僕はシャワーを浴びて、

死んだように眠りについた。。

(明日は早起きなのに。。)

と思いながら…

 

この事は、今でも本当に反省している

自業自得である。

 

この日以来 僕は「零式」を封印している。。

 

続く。

 

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↑ いただいたメモ(東画伯の蛍付き)

 

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ベトナムの結婚式 お幸せに!

 

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↑ 明日のメコン川ツアーと

     水上人形劇のチケット

 

 

次話

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