猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

ベトナムの演劇学校とユンさんの劇団

 

再び走り出したユンさんのバイクは 安全運転で道を走っていた。

だが、バスにもよく乗る僕は 知っていた。

ベトナムの道路は "弱肉強食" である事を。。

 

ベトナム交通じゃんけん では、大きい順に強い。

強さとは大きさに比例し、バスが一番強い。

ラクションを鳴らし、バイクも乗用車も

「どけっ!どけぇーー!!!」と蹴散らしながら進んでいく。

次に強いのは乗用車で

「バイクどきなさい!どかないと

 どうなっても知らんよ?!どくの?

 どかないの?!しぬの??」

という感じで少しの隙間に自分をねじ込んでいく。

次にバイクである。

「馬力あるよ!スピードでるよ!?

 どうなの?!どうなのよ!?」

と原チャリをかき分けていく。

次はやっとこさ原チャリである。

全てのツワモノを避けながら、

少しの隙間に自分をねじ込んでいく。。

 

そして…最後に人間である。

とにかく轢かれないように 移動しなければならない。。油断したら死ぬ。

常に左と右を見ていないとしぬ。

僕はこの国に来て、歩きスマホ!と言うものとは縁を切った。日本の感覚で歩いていると死ぬからである 笑

とはいえ、マレーシアよりはスピードを出さないので、大怪我くらいで済むかもしれない…

事実、ベトナムに来てから、足にギブスをしているバックパッカーを 何人か見かけるようになっていた 笑

マレーシアでは見なかった光景だ。

しかし、足の骨を折っても旅を続ける理由とはなんだろう??

骨折も旅の一部なのだろうか。。

僕にはわからない感覚だった。

 

ユンさんに「どこに行きたいですか?」と聞かれたので 僕は

「演劇のことが分かるところと

     市内観光をしたいです!」

と答えていた。

基本徒歩で移動している僕としては、原チャリで色々な所を移動出来るのは、大きく市内を周れるので "都市 ホーチミン" を捉えるいい機会だ。

点と点であったものが線に繋がるはずだ!

 

そして、ユンさんが最初に連れて行ってくれたのは、専門学校というか、私立の演劇学校だった。立派で綺麗な敷地と建物の、いかにもお金持ちしか通えないと言った風情の学校だ。。

 

入り口の警備員も、強そうな厳しめの方で、ユンさんと 何やらやり取りをして、やっと通っていい事になった。

ユンさんが事務所の受付をしてくれた。

パンフレッットを貰って、最初は学校のスタッフが一緒に周ってくれたが、途中から2人で勝手に周って良い事になった。

この学校は、ピアノや声楽など、個室で個人レッスンしてくれる等 物凄い英才教育だった。

 一体授業料はいくらなんだろう??

と僕は震えた。。

 

最後に、この学校の所有する劇場に行ったが、ミュージカルから、ストレートプレイまで出来そうな 良い劇場だったが、体育館のように、敷地内にポツンとある。なにか 野外劇場のような雰囲気があり、逆に僕は

 燃えるなここは!!

と思うような 面白い立地の劇場だった。

 

最後にユンさんに

「こんなところにコネがあるとは。

 流石ですね!ありがとうございました!」

と言うと

「実は、この学校にはコネはないの。

 あなたが日本人だから

 お金持ちの御子息で

 ベトナムに移住するから、 

 "演劇学校を探している" と言って、

 見学させて貰ってたのよー!」

といたずらっぽく 舌を出しながら言われた。

 

 なんと言う戦略!!凄いぞユンさん!!

 

 (…この人は本当にチャーミングで

    面白い女性だなぁ。。)

 

と改めて尊敬してしまった。

 

その後、ホーチミン市を ユンさんは2人乗りで大回りしてくれ、色々観光案内してくれた。

お陰で街を だいぶ把握できた!!

その後、大満足した僕を 宿まで送ってくれ

「会わせたい人がいるのでまた連絡します。

    あと、稽古に来て下さーい!!」

と言われ、それを約束をして僕達は別れた。

 

稽古というのは、即興劇(インプロ)の稽古であった。

実は、ユンさん自身も お芝居をやっていると聞いていたのだが

それが  "インプロ(即興劇)" だとは しばらく気付かなかった。

彼女とはカタコト同士でやり取りをしていたが、彼女の口から

「インプローブ!インプローブ。」

とよく耳にしていたのだが、

僕はインプロは「インプロビゼイション」の略だと日本で教わっていたので「インプローブ」といわれても、違う意味に捉えていたのだ。

 

 あれ?インプロ(即興劇)の事ですか?

 

と気付いて、そう聞くと、

「ずっとそういってるでしょーー!! 笑」

と怒られた。

詳しく聞くと、ベトナムには "2団体しかない" インプロ劇団の一つに所属していて、

もう一つは 首都ハノイにあるらしい。

お互い人数が少ないので、共同稽古もたまにするらしい。

ハノイに行った際は是非

 彼らとも稽古してほしい」 と言われ

「その為にも まず一緒に稽古をしましょう」

という事になった。

日本でも「インプロ」を専門にしている団体というか劇団は稀である。

僕は当時仲間と 「隔月の奇数月にインプロ公演」 合間に旅公演や 学校でライブなどもしている 本格的なインプロ俳優でもあった。

日本ではインプロは、稽古の一環としてはやる俳優は多いが、お客様を入れて 公演をする劇団は少ない。

ベトナムではさらに稀である。

そんな稀有な俳優同士が たまたま劇場の隣の席に座り、たまたま話をし 意気投合したのである!!

 

 本当に人の縁は不思議だ。。

 

「必ず稽古に行きます!!」

と力強く答え、ユンさんと固く握手をし、別れたのだった。

 

ホーチミンには夕闇が迫っていた。。

僕はいつものようにバックパッカー向けのパブストリートに向かった。

 

いつものように、角にあり 道の両方を眺められるテラス席に陣取ることにした。

座りたい席を指差し「ここでいい?」と店員に聞くと、気持ちよく「どうぞどうぞ」笑顔で言ってくれる。

こういうところも

「こちらのお席でお願いします!!」

と言われてしまう日本とは違う。。

 

最近日本では "ダサい"  と言われているらしい

 「とりえずビール! 笑」

と言ってようやく涼しくなった街の風を感じながら、ストリートと そこを横切る人達を眺める。

僕はここでバックパッカーや、通り過ぎる地元の人たちを眺めながら、一杯50セントの生ビールを飲むのが大好きだった。

 

色々な人が通り過ぎていく。。

 

地元の人、バイク、厳しい顔をした旅人。

陽気に呑み騒ぐ旅人。。

 

喧騒の中に、何か静寂と 風が吹く。

不思議な場所だ。

 

ここの風を感じながら ゆったりと過ごしていると、とても気持ちが落ち着く。

  柔らかな気持ちになるのだ

こんな気持ちを味わえるだけでも、日本を離れて旅をする価値は 大いにあるといつも思う。

 

ここにいるといつも、弁当売りの様に 前に籠を下げた少女たちが来る。

歯磨きガムなど、日用品等と お土産を売りに来るのだ。

 

6、7歳の女の子で、英語を喋れるわけではないが、頑張って挨拶をしてくれる。

少し離れたところに若いお母さんが、ニコニコして見守っている。

 

お店の旅人に話しかけたり、売れたりすると、お母さんに報告に行き、嬉しそうにお母さんにギュッと抱き着いている。

とても仲がよさそうで、見ているだけで優しい気持ちになる。

 

いたいけな少女が「何かいりませんか?」と来ると、さすがに 何か買ってあげたくなる。しかも別に高いものではない5000ドン~10000ドンくらいである。

しかし、僕は一回買ってしまうと また明日もここに来たいのに

「昨日買ってくれた人だ!」と 毎回来られると

(この店自体に来づらくなるからなぁ…)

と思い、笑顔でゆっくり首を振り やんわり断っていた。

 

彼女たちは非常に利発で、商売上手 というかこの仕事に慣れているのだろう。

しつこくはしないで すぐに次のお客さんのところへいく。

だから断る方もストレスは感じない。

 

この日、僕は利発そうな一人の女の子から、歯磨きガムを買ってしまっていた。

「子役」でも出来そうな、活発な 生きる力にあふれた感じの女の子からだった。

 

この日の彼女は 少女たちの中でも 特に商売熱心で いちいち自分の商品を一つづつプレゼンしてくれた。

 

「これいるでしょ?」

と可愛い笑顔で聞いてくる

「いらないよ」と笑顔で首を振ると、

 

「じゃあこれいるでしょ?」

と聞いてくる「いいえ」と答える。

 

「じゃあこれは?涼しいよ」

「ごめんね 扇子はもう持ってるんだ ほら」

「あらら、じゃ、これは美味しいよ」

「お腹はいっぱいだよ 笑」

こういう やり取りを、二人共笑顔で しばらくしていた。

お互い笑顔で 楽しいひと時だった。

まるで彼女は僕の遊び相手をしてくれているようだった。

 

僕は、彼女に 一つのお芝居を見せて貰ったような気になり お礼の気持ちと、素直に

「参りました!」と降参してしまい。

 

「やっぱり最初のガムが必要でした」

 と頭を下げた。

 

彼女は「ほら、だからそう言ったじゃない?」

と誇らしげに僕に5000ドンのガムを売ってくださった 笑

いつの間にか僕は、このお姫様の臣下となり「ははぁ~」とガムを頂いた。

 

姫様は、僕にガム売った後 母上のところに誇らしげに戻り

それを見ていた僕に 母上殿は

「すみませんねぇ。優しく遊んでいただいて」

とでもいうように、ニコニコしながら会釈をしてくれた。

まるで良く出来た インプロのワンシーンだ。

 

”ペナンでの 信号待ちでの おばあさんとのやり取り”  もそうだが、言葉が通じなくても なぜか人と人は会話が出来る。そしてその会話は 言語を使った会話よりも 深く心の琴線に触れ、深く心に残る。

 人と人は 本当に不思議な能力を

 お互いに持っているのだ。

こういう経験は、本当に役者としても、人間としても自分を成長させてくれていると 確かに感じながら、いつものベトナムの風に吹かれ、僕は 本当に満たされた気分でビールをお代わりしていた。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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↑ 私立の演劇学校の劇場
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↑ ユンさんと