猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

恐るべき! 進撃のベトナム演劇! まさかの…⚪︎本立て

携帯のアラームが鳴り響く。。

ふっと目を開ける見慣れない天井…ここはどこだろう…?

 

日本で いつもかけていた携帯のアラームで目覚めた僕は、ベトナムにいることを 一瞬忘れてしまっていた…。

  ああ 今ベトナムにいるんだった…

と気付き、気だるいままベッドから這い出してきた。時計を見ると18:15だった。

洗面所で顔を洗い、外出用の小さなカバンを、防犯の為に いつものように前に斜めがけにし、僕は部屋を出た。

フロントの横の 椅子のジョンに挨拶して、劇場へ向かう。

開演は19時なので、開場は日本と同じで大体30分前だろう。

道を渡るとすぐに劇場に着く。

入り口の周りには もう結構人がいた。

チケットオフィスが開いていたので

「今日のお芝居を観たいのですが」

と声をかけると、受付の女性が

 

 無料公演になりますので

 開場しましたら そのまま御入場ください。

 フォレスト・ガンプ」の後

 「ブロークバック・マウンテン

 の公演になります。

 

とにこやかに教えてくれた。

 (えぇっ?! 二本やるの?   む、無料??)

一度にびっくりする情報が多すぎて、僕は混乱した。

なんと!アカデミー賞 受賞作品の豪華二本立て

らしい。

僕の記憶が確かならば、映画なら

一本2時間半近い "大作" なはずである。

 一体 何時に終わるんだろう…?

 そして なぜ無料なのだろうか…?

疑問は尽きなかったが、劇場のドアが開いたので、僕はとにかく劇場内に入る事にした。

フォレスト・ガンプが終わったら帰ろう…)

 と密かに決意しながら。。

 

劇場内は昔の風情がある、僕が好きな感じの劇場だった。その昔 中野にあった「光座」ほど古くはないが、やはり「元映画館」といった作りの劇場だった。

僕は、一本観たら帰れるようにと、

申し訳ないが "無料" と聞いて 少し怖くなったので、最悪いつでも出られるように、後ろ寄りの通路側の席に座った。僕の席の右隣には 髪を後ろに束ねている、上品そうな女性が座っていた。

座ってから 周りを見渡してみると、前の席は何列か「VIP」と書かれた布が被せてある。

無料公演なのにVIP席があるとは。。

 まさか 国営? それで無料なのかしら。。?

ますます混乱するが、気にしたら負けだと、腹を据えて待つ事にした。

 

日本の劇場だと僕は、席を確保した後は 一度外に出る事が多い。お芝居の時間以外で あまりすし詰めの席にいたくないのと、同じ空間に長くいるのが苦手な為だ。

だが、日本ではカバンやコートを席に置いておけば大丈夫なのだが、ここは外国である。

カバンを置いて席を離れるという行為は かなり危ないし、そもそも日本のように「席を取っておく」と言う行為自体が 文化的に許されるのかもわからない。

僕は開演時間まで、じっと席で待つ事にした。

 

少しして、ふと視線を感じ 隣を見ると、先程の上品な女性が僕を見ていた。軽く会釈をするとニコッとしてから話しかけてきた。

 

 すいません。。

 少しお話しさせて頂いても良いですか

 

あ、はい、どうぞ。

 

 どこの国の方ですか?

 

日本から来ました。

 

 やっぱり!

 なぜこのお芝居を見ようと思ったのですか?

 

ええと、ベトナムの演劇に興味がありまして…

後、日本で少しお芝居をしているので。

 

 あぁ〜、俳優さんでしたか!

 そうだと思いました。

 どんなお芝居やられてるんですか?

 

やはり演劇と、声優と、たまにドラマにも出てます。あ、あとインプロ(即興劇)もやってます。

 

 おお!!そうですか!!

 とても興味があります!

 

そ、そうですか。。

 

彼女は30代半ばの笑顔の元気な人で、名前を「ユン」さんと言うらしい。開演まで 色々話をした。

聞くところによると、新聞で劇評を書く仕事をしていて、自身もある団体でお芝居をしているらしい。

お互い あまり英語は得意ではないが、相性が良いのか 話すのに苦労はない。

伝わりにくい所は筆談を交えて会話した。

とにかく人当たりの良い女性だ。

ライターや、インタビューを仕事にしてるだけあって非常に聞き上手だった。

話し込んでいるうちに、いつの間にか 開演時間の19時をとっくに過ぎていたが、ベトナム時間なのか、お芝居は一向に始まらない 笑

ようやく始まったのは、19:20だった。

 まずいなぁ…芝居が終わる頃は

 本当に明日になっているかも知れない。。

ユンさんから、連絡先を交換しないか?と提案され、Gmailを教えようとした時、丁度 芝居の幕が開いた。「公演後に交換しましょう」と、早口で言って二人ともステージに集中したが、僕は

(これで途中で帰れなくなってしまった。。)

と少し後悔していた。

 

舞台は暗転から明かりが入ると、かの有名なシーン。バス停のベンチで、ガンプがバスを待っている所から始まった。

始まってすぐ、何か色々違和感を感じた。

よく見ると、俳優全てが 小型マイクを口元につけている。

 ??? ミュージカルなの??

と思って見ていると、歌う様子は全くない。

まずミュージカルなら、最初に一発歌うはずである。 そして…

 んん?セリフがスピーカーから

 聞こえる気がする。。

気がするのではなく、セリフが全てスピーカーから出ている。150席くらいの小劇場だが、どうやら生声で演らないらしい。。ストレートプレイでマイク付きとは。。 あ、新しい…

しかも、役者同士が近づきすぎるとハウリングして、セリフが潰れたり、離れていても、「ガガガピー」となったりする。

そして、なぜか僕にはセリフが聞き取れ、理解ができた?

確かに内容は映画で見て知っている、それを脳内で補完しているのだろうか?

(それとも知らぬうちに

  ベトナム語を理解していた?)

何故だろう??と不思議に思って耳を澄ますと。。

「I'm リメンバー」だの、「シーユー」だの言っていることが分かった。

それはまさかの  "英語劇"  だったのだ!!

まさかベトナムの人が、わざわざ英語で 芝居をやるはずがない と言う先入観と、マイクなど、ツッコミどころが多すぎて、気付くのに時間がかかったのだ 笑

僕は俄然興味が湧いて前のめりに見始めた!

 どゆことーー??!!

と、謎解きに似た鑑賞法に変わった為である!

 

話は順調に進んでいく。

映画だと「カット割り」が出来るが、舞台だとそうはいかない。そこの場面転換などは、よく作られている。演出の人がうまいらしい。

そして、どうやら 若い子しか出てこないところを見ると学生の演劇みたいだ。

英語劇をやっている所を見ると、たぶん大学生だろう。

そういえば、散歩で見つけた大学には、よく演劇学科のポスターが貼ってあり、ホーチミンでは、演劇が盛んなのだろうと、勝手に理解していた。

見ているうちに、申し訳ないが、、

「やはり、日本の演劇はレベルが高いんだなぁ」

と改めて気付かされた、それは英語劇だからと言う事をさっ引いても、そう感じた。

 

主役のガンプ役の子はよく頑張っていて 稽古量が見えて、とても好感が持てた。

 

そして、驚愕したのは、

あの大作「フォレスト・ガンプ」が、

1時間弱で終わったことである!!

なのにストーリーはちゃんとできていた。

 

 もの凄い演出、脚本力だ!!

 

その事に僕は驚き! そして 今日中に帰れそうな事に、心底ホッとしていた 笑

 

休憩中に、席にタオルを置き、ユンさんに見てもらって、僕はトイレに行った。

 

戻ってきて、またユンさんと喋っていると、

今度はすぐに「ブロークバック・マウンテン」の幕が開いた。

 

実は僕はこの作品は見たことがない。

なんとなく内容はチラシで見たことがある。

なので、初見の上、英語なので、まぁまぁの内容しかわからなかった。

男性と男性の許されざる恋模様が牧場で起きている。

どこの世界でも学生はそうだが、同級生の男性同士が抱き合う所など、観にきた学生が「きゃー!」とか、「ヒュー!」と冷やかしたり 盛り上がっていて、僕も大学の頃を思い出した。

微笑ましい光景だ。

やがてこの大作も1時間弱という 奇跡的な時間で終わり、僕は客席に残り、ユンさんとGmailを交換して、「是非後日会いましょう」 と約束をして 劇場を出た。

 

 凄い体験をしてしまった 笑

 

とシニカルに笑いをたたえていると、

後ろから声をかけられた。

 

 んん? 誰だろう?

 ベトナムに知り合いなどいないはずだが。。

と思いながら振り返ると、可愛らしい娘さんがいた。

 あれ? どこかで見たことが。。

と思っていたが、ハッと気付いた!!

マッサージ屋さんの受付の あの娘さんだ!!

 私服の彼女も可愛い。

どうやら、彼女の大学の公演だったみたいだ。

まさかこんなところで再会するとは!?

 「運命かも知れない。。」

僕らはしばらく話をしていたが、、彼女が少しソワソワしている。

話しかけたはいいが、こんなに食い付かれるとは思わなかった。。と言う感じである。

僕は違和感を感じて、この後はどうするの?

と少し期待をかけて聞いた所

「友人が待っているので もう行かないと。。」

と断られた。

 

あぁ、それは申し訳ない事をしたと思い…

 そうなんだ? じゃあまた。

 話しかけてくれてありがとう!

とサヨナラをした。

伊達に役者をやっているわけではない。

相手を観察する事は仕事であるし、空気を感じる能力は、あるはずだ。

 

後から、劇場から出てきた ユンさんが帰り際に挨拶してくれ「連絡待ってます」と言ってから 歩き出すと、バイク置き場に、先程の彼女と、若い大学生らしい男の子が一緒にいた。

 

 あぁ、彼氏を待たせていたのかぁ..

 

と、僕は全てを理解し、何故か勝手に失恋したような気持ちになっていた 笑

 

 はやくいってよぉおお。。

 

とアホな私は ベトナムの夜空を見上げながら、何かスッキリした気持ちで、奥のパブストリートに吸い込まれっていった。。

 

 今夜のお酒は ほろ苦そうだ。。ふふふ…と。

 

続く

 

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↑ 開演前の劇場前


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↑ 劇場内(終演後)