猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

ベトナムから お呼びが掛かかる

 

第42話

ベトナムから お呼びが掛かかる

 

僕は日本で 「マレーシア行き」と、

「タイのバンコクからの帰国用」 

そして「KLIA~ベトナムホーチミン」の三つのフライトチケットをオープン・ジョーで買っていた。

 

出発前に、旅の指南書も読み漁っていた僕は、ある本に書かれていた

「大まかな予定は 立てておいた方がええよ?」

と言うアドバイスに感銘を受け。

この 3つのチケットの日付だけは決めていた!

 

子供の頃から、何故か

 人生で 一度は絶対に行きたい!

と思っていた ベトナムと、旅の達人である友人達から聞いていた タイ王国に行く事だけは決めていた。

なので この3つのチケットだけは、先に日本で買っておいた。

帰国用のチケットは、入国時に無いとダメだと言われる事があると聞いていたので、入国用に捨てチケットとして、一応買っていた。

その日に日本に帰るつもりなど、最初から無かったのだ。

 

誰にでも一つは「一度は行ってみたい国」があると思うが、僕は何故か それがベトナムだった。

 

何故か考えてみると、子供心に「ベトナム」と言う単語をよく聞いていたからだと思う。

 

ベトナム戦争  ベトちゃんドクちゃん。

歴史を調べる授業で知った、アメリカに唯一勝った国。

そして ミュージカル「ミス・サイゴン

映画「グッモーニングベトナム」など…

水が豊かで稲作がメインという、日本と共通点がある、人が良さそうな国。

 

僕はベトナムに惹かれていた。

 

その出発日が 明日に迫っていた。

出発前に買ったので、あんまり何も考えず 一番安いチケットを買ったのだが、、いざ移動を考えると、色々考えて準備しなければならない事に 今更気付いた。

 

国際便なのに僕は、朝の9時発 という、とんでもない早い便を予約してしまっていた…

 

しかも、人生初の外国〜外国の移動である。

出国手続きもあるはずだ。。出国まで、どれだけ時間がかかるかもわからない。

 

間違いなく言える事は、当日マラッカから出ても間に合わない と言う事である。

僕は空港近くで宿を探し、空港まで送迎サービスもある宿を見つけ出した。

(実はクアラルンプール国際空内に、

 泊まれるカプセルホテルのようなところも

 あるのだが、当時は見つけられなかった。)

 

僕が取ったのは、珍しく4000円以上の宿だった。

バストイレは共同とはいえ、シングルルームで 空港までの無料送迎付きである。

(送迎のタクシー代を考えると

 宿代も高すぎる事はない!)

僕はそう自分に言い聞かせた。

 

予約すると、ブッキング.comのメッセージに、宿のLINEアドレスが送られてきた。

僕はそれを登録する前に、自分のLINE登録名を、「東正実」から、宿の人が分かりやすいように「MASAMI」に変更した。

iPhoneでの処理は、全て、公共や 宿のWi-Fiでまかなっている僕は、電話は使えない。

だがこれで、空港まで行けば空港のWi-Fiで、宿の送迎の人とLINEでやりとりができる。

送迎での、詐欺や トラブルが結構あると 色々な旅人が言っていたので、これで安心だ。

 

いよいよ サムと このハーレム宿ともお別れだ。

結局 最後まで男は僕だけだった。

 

 「こんな事は珍しいよ。。 マサミ。」

 

とサムは言ってくれていたが、僕は 当時日本で、女性ばかりのカフェで働いていたので、そういう環境には丁度慣れていた。なので逆に居心地は良かった。

 

前日に、宿の皆に 明日出る旨を伝えてあった。

皆「良い旅を!」と明るく挨拶してくれた。

その時、クリスティーンは少し寂しそうにしてくれたが、最後は笑顔でハグしてくれた。

 

そして サムには、本当に良くしてもらった!

本当に 優しさが服を着て歩いているような男であった。

彼ともハグをしてからバス停に向かった。

 

バスは「黄金マッチョ」の先の、ケルビンさんの家の近くの、何の変哲もないバス停から出ているとのことだった。

時刻表などもなく、景色と同化している為、

"調べないと"  ここから出ている事は、永遠に分からないだろう。。

 

僕も、最初にケルビンさんの家に行く時に、

(こんな所に バス停 "みたいな物" がある)

くらいにしか思わなかった 笑

 

  本当にバスは来るのかしら?

 

暑いので、バス停の向かいにある小さなストアで、缶コーヒーを買い 飲んで待つ事にする。不安なまま待っていると、20分後にちゃんとバスが来た。

 

実はこの日、バスの時間まで最後の散歩をしていた。

僕は、ボブ・マーリーのお店に再度行ってみたり、

(奥にライブができる小スペースがあり、

 そんなにいかがわしい店では無かった 笑

 店主もレゲエ感はあったが良い人だった)

そして「5D  夢幻立体画世」と書かれている、3Dをはるかに超えたことを強調した!怪しい真っ赤な お店を発見したりした。

さらに、レッドハウスから少し行ったところの綺麗な教会が、いつも行くと ドアが閉まっていたが、今日は礼拝の日で入れたので、礼拝に参加させてもらった。

 

僕は子供の頃、小さな プロテスタント系の教会の隣に住んでいたことがあり、教会の人に誘われて 日曜礼拝や、ギター教室などに参加していた。

 キリスト教徒にならなくてもいいから

 遊びにおいで。

ということで、そこの牧師さんや、そこのコミュニティのおじさんや、お姉さん、よく遊んだ 石渡君など、本当にみんな優しい人たちで よくして貰っていた。聖書の勉強もした。

僕が人生で初めて飲んだコーヒーは、教会が休みの平日に遊びに行った時、迷惑がらずに遊んでくれた牧師さんから頂いたものであった。

(牧師さんは僕にも飲めるように

 「クリープ」をいっぱい入れてくれた)

 

あの くそ生意気だった僕に 優しくしてくれた皆さんには、今でも僕は 本当に感謝している。

 

僕は "讃美歌" を歌うのが好きだった。

知らない歌でも、歌詞だけもらって、周りの人の 歌の音程に合せて歌ったり、その内 このメロディだと 次は音程が上がるのか 下がるのか? ということが何となくわかるようになった。

 

なので僕はカラオケで

 ”知らない曲が入っても歌える”

という特殊能力を 神様から授かった 笑

 

僕はマラッカの教会で、25年ぶりに讃美歌を歌った。 とても気持ちのいい体験だ。

教会に流れる静謐で敬虔な空気がとても心地が良かった。気持ちが洗われていくのがわかる

 

日本のお寺でもそうだし、教会も、モスクも、ヒンドゥー寺院も 皆 来るもの拒まずである。

神様は人間という不完全なものに寛容だ。来るものを拒んだりしない。

伺うのに大事なのは 敬意だけだと僕は思っている。

 

 人を拒むのは、いつでも人間なのだ。

 

僕は 気になっていた教会に 最後の日に

「なんか呼んで貰えたなぁ。。」

と感じ、心おきなくマラッカを後にすることができた。

 

話を戻そう。

無事バスに乗れ、マラッカ セントラル バスターミナルに着いた僕は 早速、KLIA 行きのバスを探した。

大きな円を描くように窓口が20以上あり、チケット販売会社がその窓口の分だけある。値段や時刻表もマチマチで、一社しかなかった 空港の窓口とは大違いだ。

 

読者の皆様、思い出してほしい!

僕が行きのバスで魔界に堕ちた事を。。

 

僕はその行きのチケットを大事に持っていた。

「帰りは絶対に!! 

  別のバス会社にする!!!」

僕はそう決心していたからだ! 

魔界から遠そうな名前のバス会社にする。

 

面白いと思ったのは、

出発間際になると 席の埋まっていないバスは 値段が変わる事だ。 少し安くなる。

空席で走らせるより、値下げした方が、少しでもお金が入って来るから、確かに理にかなっているやり方である。

 

僕は Wi-Fiが付いているとか、バスが三列シートだとかそんな事はどうでも良かった。

とにかく静かに過ごせるバスは無いかと思い、色々値段とグレードが違うバスの中で、一番早く乗れて、前より数百円高い、一番高級なバスにした。

 

バスが出発レーンにやってきた。

恐る恐るバスに乗り込む。

「荷物を預かるよ」と言うスタッフに

「ノーサンキュー」と言って断り、車内に進む。

うっかり 隣に人が乗ってきたので、なんとか上の荷物スペースにバッグパックを押し込んだ。

 

さて、、である。。

どんな運転手が来るのだろう?

 

乗ってきたのは、いたって普通の感じのする 若いほっそりとしたドライバーだった。

 

 だが、まだ油断は出来ない!

 バスはまだ出発していないのだ。

 

やがてバスはゆっくりと走り出した。

 さらばマラッカ!!

と言う気持ちと、

 ど、ドライバー大丈夫かしら??

と言う気持ちが交錯する

 

そんな気持ちでバスに乗っているのは僕ぐらいだろう 笑

 

市街地を走っている間、運転手はBGMはかけない。

例のカラオケセットが無い仕様のバスだからかもしれない…

  ”油断は禁物である” 

マレーシアの高速バスは、一台一台 仕様が違う。

おそらく諸外国から 中古で買い取った観光バスなのだと思う。

なので内装や、座席も皆違う。

明らかに、椅子を後から動かして 広めの座席にリフォームしているバスもある、なぜなら 前の座席があった場所にそのままネジ跡があるからだ。

(その際の工事がいい加減なのか

   一部 ネジが外れかけた

     ガタガタの椅子もある)

 

やがてバスは高速道路に乗った

     さぁ、くるか?!

と身構えていたが、運転手は運転に集中し、おとなしくしている。。

 

しばらく見ていたが、、やはりおとなしくしている。。

 

 … どうやらこのバスは

          魔界とは無関係なようだ。

 

僕は心底ほっとし、ようやく自分の思考に集中できた。

しかし、こんなに気を張らなければいけないとは      

     " 物凄いトラウマである 笑 "

 

改めて窓から景色を眺めていると、色々な事が思い出される。

建設中の超高層マンションが、車窓から後ろに流れていく。

いよいよ、一つの外国の旅が終わろうとしている。

まったくの旅素人から、旅人にして貰ったマレーシア。よく考えてみたら、一人旅というものも初めてだった。

本当に濃い二週間だった。

物凄い経験値を レベル2くらいで手に入れたので、一気にレベルが15くらいUPした気がする。

ルーラとベホイミくらいは使えるようになっているはずだ 笑

 

やがてバスは無事に、KLIAに着いた。

とても静かな移動であった。少し睡眠も取れた。  …奇跡だ!! 

 

KLIA内に入り、空港のWi-Fiに繋ぐと、宿からLINEが来ていた。

大体の到着時間は セントラルターミナルのWi-Fiで出発前に伝えてあった。

迎えのドライバーに 僕が分かる様に 今の格好を自撮りして、送って欲しいとの事だった。

英語の文章なので、頑張って読んだ。

会話は何とかなるが、文章はまた別の作業だ。 結構翻訳に疲れる。。

 

僕は、LINEで写真を送り、返信を待った。

すぐ返信が来て

「すいません、15分ほど遅れるので、

 涼しい空港でお待ちください」

との事だった。

 

10分程して「着きました」LINEが来た。

車寄せに来てくれというので、車寄せに向かう。僕がキョロキョロしていると、LINE電話がかかってきた。

電話の主を探してみると、黒いセダンの横で向こうから手を振っている30代後半の女性がいる。

どうやら彼女が運転手のようだ。

話しかけてみると、その通りで、ほかのお客さんをピックアップしていたら、遅れたとの事だった。

話によると、どうやら彼女は夫婦で宿を経営している主人だった。

宿に着くと何故かでっかいアヒルが 庭にガーガーいた。。

「飼っているのか?」と聞くと、野良アヒルだという。

彼女と旦那さんで、複数 宿を経営しているらしい。

僕は ご夫婦が住んでいる宿の一室に泊まるとの事だった 笑

何かご縁があるのだろう。

 

自由に食べて良いお菓子と、朝食べて良い コーンフレーク、自由に飲んで良い牛乳。

牛乳好きの僕には嬉しいサービスだ!

お菓子入れに、メントスを発見したが、

メントスはっ!銀歯っ泥棒!!♪」

と知っているので、、好きだが我慢した。

 

この日、僕は久しぶりに、シングルルームの

ダブルベッドでゆっくり眠った。

まるで疲れが ベッドに溶けて出ていくように…

明日には きっとベトナムにいるはずである

 

続く

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↑ 最後の散歩と出会った白猫さん 黒猫さん



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↑ 5D 途轍も無く凄い小屋らしい

 

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↑ 再びマラッカセントラルターミナル


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↑ 宿に送ったKLIAの自撮り写真(完全装備)


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↑ 銀歯泥棒こと メントス

(旅の序盤で 歯をやるわけにはいかない)

 

 

次話

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