猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

17時のマレーシアと 18時の日本を繋ぐ

 

第39話

17時のマレーシアと 18時の日本を繋ぐ

 

今日は17時に ケルビンさんをピックアップする以外は 自由である。

 

遅めの朝ごはんを食べ、昼前から散歩に出ていた。

レッドハウスの上の丘に登り、川沿いに海側へ抜け、「マコタ パレード」という巨大なショッピングモールにも行った、ここは周りは超高級ホテルばかりだ。

街をだいぶ大回りで一周りしているうちに、やがてケルビン邸のある 通りに出た。。

僕は予感というか、直感が結構当たるのだが、旅に出てから それがさらに研ぎ澄まされているのを 日々感じていた。

そう、ふっと その予感がしたのだ。

 あれ?これって油断してたら

 ケルビンさんに会っちゃうんじゃない?

 もし、あっちゃったら気まずいなぁ。

 17時までまだ大分あるし。。

と思っていたら、僕のビンビンのセンサー通りに、向こうからケルビンさんが歩いてきた。。

一瞬 知らんぷりをしようかと思ったが、車一台通れるのがやっとの狭さの通りである

 

僕は空き地になっている土地を眺めてやり過ごそうとしてみたが、明らかに無理であった

普通に話しかけられた 笑

 

マサミ、何してるんだい?

もう迎えにきたのかい?

 

 いえ。。たまたま散歩しているだけです。

 

そうか、迎えにきたのか?

とりあえずお茶をしよう。

 

 ええと、まだ時間じゃ無いんですが。。

 

まぁ、あそこに良いお店があるからあそこに行こう。

 

(うーん。話がうまく噛み合わない。。)

 

とりあえず、話もじっくりしてみたかったので ケルビンさんと お店に入る事にした。

 

お店はカフェというより 高級感の漂う綺麗な、小さなホテルに併設されているような感じの喫茶店だった。

天井の高い 贅沢な空間のゆったりとした席に座る。天井にはファンがゆったりと回っている。

 

何を飲むんだい?

 

 ええと、ではコーヒーを。

 

わかった。

きみ、コーヒーと紅茶を一つづつくれないか?

 

ケルビンさんは、店員に注文してくれ、僕はメニューをちょっと見てみたが、やはり普通のカフェより高い。

一杯300円くらい。

マレーシアでは、「コッピー」と言う、一番安い、砂糖の塊のような 地元の濃すぎるコーヒーは ローカル食堂で 一杯30円しない。

普通の味のコーヒーは何故かNestlé(ネスレ)である。こちらはcopy より10円ほど高い。

 

だから、大分高級なカフェだということがわかる。

 

じっくり話をしてみると、ケルビンさんはだいぶ早口だ。中華系のマレーシア人で、どちらかと言えばシンガポール人によく言われる 早口の独特な発音の英語「シングリッシュ」に近いのでは無いかと思った。

だが、解るまで丁寧に話してくれるのと、早口だが、本人がゆったりとしているので、無理せず会話が出来る。

ケルビンさんは 社長さんだが、服装は質素だ。昨日はハーフパンツにポロシャツだったし、今日はチノパンにTシャツだ。

 

飲み物が届いてすぐ、ケルビンさんは

「さぁ ミヤシタさんに電話しよう」

と言ってきた。

 

ガーン!やっぱり伝わってなかった〜。

 

ええと…ですね。、

昨日お話しした通り、彼女は仕事なので、18時…いや、17時にならないと電話に出れないんです。。

 

「そうか。ここはWi-Fiがあるか

 聞いてみよう。」

 

いや、ですから、、Wi-Fiがあっても、

彼女は仕事中なので出れないです。。

 

僕は もてる英語力を全て駆使して、

自分がただ散歩をしていただけだった事を

理解してもらう為に全力を尽くした!

 

やがてケルビンさんは

「そうなのか。

 やけに早いなぁとは思ったんだ 笑」

とにこやかに笑ってくれた。

 

まぁ、せっかくだから話をしようと、

色々お話しした。

ケルビンさんは、ガバメント とよく言う。

政府に対しても意見を教えてくれた。

シンガポールは、マレーシアにとって重要なパートナーであるとか、あの電飾まみれのリキシャは 夜中の2時頃 彼らは仕事が終わって帰る時もBGMマックスのまま家の前を通るので、うるさくて眠れないとか、多岐にわたるマラッカの情報を色々教えてくれた。

 

時々自分のことを「ババ」と呼んでいて、

僕は心の中では、 いや、「ジジ」だろ?

と密かにツッコんでいたが、、実は古くからいる中華系のマレーシアンは、マレーシア現地の人とも結婚し、マレーシアに溶け込み、独自の文化を発展させた。

プラナカンという人達で、女性は「ニョニャ」と言い、男性は「ババ」と呼ぶことをだいぶ後で知る事になる。

それまで僕は「ババ」の謎を抱えたままずっと一緒に過ごしていた。

 

話が逸れたが、話してみると ケルビンさんは、穏やかとというか、質素というか、質実剛健で、飾らない、本当に素敵な人だと言うことがよく分かった。

カフェで1時間ほど話し、店を出ると、今度は街を案内してくれると言う。

カフェの代金は、高いので 遠慮したのだが ご馳走してくれた。 

まったく押し付けがましく無い、さりげない優しさだった。

 

ランチの約束は大丈夫なんですか?と聞くと、

 

 14時くらいまでに戻れば大丈夫。

 母親が料理を作ってくれてるんだ。

 母の料理は本当に美味しいんだ。

と教えてくれた。

 

これも後で知ったことだが、プラナカンの料理は女性のニョニャからとった

「ニョニャ料理」と言うジャンルで呼ばれる。

KLIAにも、そのお店があったりする。

 

時間まで僕を案内してくれたケルビンさん。

まずは、レッドハウスの上の丘に連れて行ってくれた。

 どうだい。とても素敵な景色だろう?

 ここは僕もとても好きなところなんだ。

 ここにはもうきたかい?

と嬉しそうに 聞いてきた。

 

僕は 今朝登ったばかりの丘だったが、

「今朝来た」と言うのも、嬉しそうなケルビンさんに悪い気がして、、

気を遣って "初めて来たふり" をしてしまった。。

「素晴らしい景色です!

 連れてきてくれてありがとう!」 と。

 

言いながら

 (ああ、俺は つくづく日本人だなぁ。。)

と少し笑ってしまった。

 

こういう時、外国の人なら逆に

「もう来たことがあるから大丈夫。

 次に行こう!!」

とでも言って その方がお互いの為に良いから "言った方が良い!!"

となるのだろうか。。

そんな自問自答をしながらも、他も案内してもらった。

 

ケルビンさんと話しながら歩くマラッカは、1人で歩いたマラッカとは、また違って見え、とても有意義な時間となった。

ケルビンさんは、一通り案内してくれた後、ランチへと向かった。

「17時に また迎えに行きます」と再び約束を交わして。

 

僕はその後、ケルビンさんを誘ったが

「地元だから 今更乗りたく無い 笑」と言われた、川を行く遊覧船に乗る事にした。

 

遊覧船は海と反対側の、北側に川を昇って行く。レッドハウスの前の いつも渡っている橋の下を通り、途中にある家には壁にペイントがあったり、綺麗な家がある。

やがて公園の広場に出ると、謎の遊具で遊ぶ子供がいた。 鉄棒にぶら下がった "左右にだけ" 高速で揺れる 健康器具のような遊具で ひたすら左右に振れることを楽しんでいる。。

日本ではおよそ見ない遊具である。

さらに船は北上し、やがて右手に 大きなスーパーが見えた辺りで  Uターンし、元の船着場に戻った。

歩くだけでは分からないマラッカを見れて 新鮮で貴重な周遊だった。

僕は川遊びをしっかり堪能した後、暑い中を歩き回った疲れを宿で ゆっくり癒し 17時に間に合うように宿を出た。

 

実は昨日、WiFiが良く繋がる、話もしやすそうな 良い感じの BAR を見つけていた。

こういう店を見つけるのは、日本にいた時から得意であったし、間違いのない様に、前日にもWi-Fiの具合や 店の騒音具合なども、一杯やりながらリサーチしておいた。

僕はなんだかんだで 用意周到なのだ。

 

ケルビンさんを自宅からピックアップし、そのバーに入った。

17時10分にWi-Fiを繋ぎ、LINE電話を開始する。勿論僕は ビールを片手にである。

ケルビンさんはお酒を飲まないらしく お茶である。

 

いよいよである。。

LINE電話をスピーカーにしてかけた。

LINEのテレビ電話に宮下さんが出る。

ついに、マラッカと日本が繋がった!!

 

少し話してから、ケルビンさんに携帯を渡す。そして、ケルビンさんと宮下さんの感動の対面を1人眺める。

 

2人は笑いながら、楽しそうに話している

 

うーん。やはり こういうやりとりは良いものだ

 

ビールを飲みながら、僕はメッセンジャーとして、役割を果たせた事に安堵していた。

 

2人はさらに、30分程楽しそうに話し、やがて携帯が返ってきた。

 

宮下さんから、お礼を言われる。

 

 話したい事は話せましたか?

 

はい!ありがとうございました!

本当に色々話せました。感動です!

 

 良かった!

 じゃあ、もう切りますよ。

 

はい! 本当に!

本当にありがとうございました!

また、旅の連絡下さいねー!

 

と話し、電話を終わらせた。

 

その後、ケルビンさんと遅くまで話した。

「彼女が元気で良かった!」とケルビンさんも嬉しそうだった。

宿まで送って頂き 「また会いましょう!」 と固い握手をして 僕は宿へ戻った。

 

爽やかな感動を身体に残し、僕のマラッカでの大冒険は、こうして幕を閉じたのである。

 

続く

 

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↑ レッドハウスの上の丘から


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ケルビンさんをやり過ごそうとした空き地
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↑ 優雅な船旅


 

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