第24話
空飛ぶフェリー
いよいよ今日はランカウイ島へ行く
昨日買っておいた チケットの時間通りに僕は
朝早く 高速フェリー乗り場へ向かった。
僕は "高速フェリー" と書いてあったので
勝手に "結構いい船" だと勘違いしていた。
乗り場からは "豪華客船" と "中型の客船" が見えていた。
僕は流石に 巨大な豪華客船では無いだろうと思っていたが 多分 中型の客船だと思っていた。
豪華な航海をした バタワースまでのフェリーは「50セント」という驚きの安さの割には結構しっかりした船で、
全く酔わなかったので 「2000円」も払えば
あの客船で優雅にランカウイ島へ行けると信じ込んでいた。
高速船乗り場に 早めに着いていた僕は
改札から 乗り場まで向かう途中にあった
キオスクのような小さな個人経営のコンビニで
朝食用に 赤赤しいチキンプレート弁当を買って待合のベンチで食べていた。
しかし、、これが間違いの元だった。。
いざ乗り場へ案内され船に着くと
背の低い 平たい船が停泊していた。
車やバイクなどを乗せる大きさではなく。
本当に人だけを運ぶ小型船である。。
チケット売り場からは "船体が低過ぎて" 存在自体見えなかったのだ。。
普通に考えたら この船なのが当たり前なのだが
僕はなんだか 詐欺にあったような気分でいた。
お客さんは続々乗り込んでいく
僕もそれに続いて後ろの方の席を確保した
前の席は 20代後半の ヨーロピアンらしい
となりは。。
と、、、トト、、と、となりは。。。??
…僕は生まれて初めて
"天使" という生き物を見た。
ロシアの娘さんだろうか?
16歳くらいの女の子と12歳くらいの姉妹が乗っていた。
それは見た事がないくらい綺麗な人間だった。。
クアラルンプールで魔界の修行をしっかりやり通した僕は。。
ついに!天界に来てしまったのだ!!
と思ってしまうくらい。
妖精さんか天使さんだった。
思わず パトラッシュに
「ついにルーベンスの絵を見たんだ。。
なぜかペナンで。。」
と呟いて 一緒に天界に連れて行かれるところだった。
断っておくが僕は 30歳半ばを過ぎたあたりの
「男って偉そうだけど弱いしバカよね。。
まぁ、そこが可愛いんだけど(*゚▽゚*)」
くらい アホな俺たちを包んで下さる
大人な女性の方が大好きだし大好きだ!!
綺麗な人を見ても 尊敬してしまうし
別にどうこうなりたいとは
思わないタイプの人間である。
僕は「女性」を女性である それだけで
"尊敬しているし" だからこそ
付き合う人とも "心のつながり" を1番大事にしている 真っ当な人間だと自負している!!! (大分言い訳が長いな 笑)
だが、僕にとってこの隣の女性は
オードリー・ヘップバーンを初めて見た時や
山口智子さんを初めて見た時くらいの衝撃だった。。
単純に 本当に美しい女性を。。
美しい人間を見た。。
という事である。
中学生の僕なら
「け、けっこんして下さい。。」
と言っていたかも知れない 笑
僕はまるで中学生に戻ってしまったかのように
隣の女子をドキドキしながら盗み見ていた。
そこには
決して邪な気持ちを抱いてはいけない
神聖な「女性像」を体現した
マリア様の様な 女性(ひと)が居たからである。
女性読者の方からすると
「コイツ、マジで何言ってんの?!」
と思われるかも知れないが、
そういう事が男子にはあるのダァ!!
とだけ勇気を出して書いておきたい!! 笑
そんな馬鹿な私を載せて舟は動き出した。
…最初のうちは良かったのだが。。
やはり外海をザッパンッ!ザッパん!!
と高速で飛んでいく舟はヤバい。。
天界にいたはずの僕は
親しみのある "魔界" を通り過ぎて
地獄に落ちていた。。
吐き気が止まらない。。
うぉえっ。。おぇ。、ぅおぇん。。
と えずいていたが。。
限界の来た僕は 一番後ろにある
トイレとトモダチになる事となってしまった。
お世辞にもキレイとは言えないトイレに、しがみついて戻していた。。
。。船酔いの直前に、なぜ?? しかも胃に悪そうな赤赤しい食べ物Woo。。食べて。。しまったのだ。。
しかも常温に置かれていた。。?!の か?
それで気持ちが。。悪いのか??。。違うの??。。か。。
もう何が原因か分からないほど
頭も回らず ゲーゲー吐いた。。
もちろん便器も真っ赤に染まっている
朝の "赤赤しい" キオスク弁当のおかげだ。
一通り吐いた後。。
僕はヨロヨロと席に戻った。
不思議なもので 人間というものは具合が悪くなると、隣にどんな綺麗な人がいても興味が無くなるらしい 笑
もう 興味は 自分がどこまで 吐かずに耐えられるか。。と「内に内に」しか意識が向かなくなる。
またしばらくして "気持ち悪さ" の波が来て
トイレに行く。。
周りの人たちは皆「超人」なのか
平然としている。
嘘だろ?! おい?おい?
なぜ皆平気なんだ?!
と恨めしげに またトイレに行く。。
本当に死ぬかと思った。
あまりに皆が平気そうなので
キオスク弁当に 毒が盛ってあったのでは無いかと マジで一瞬疑ったくらいだった。。
3回吐いてようやく落ち着いた僕は。
早く。。なんでもいいから着いて欲しい。。
と思いながらも 少しだけ周りを見る余裕ができた。
青い顔で時計を見るとまだ1時間半乗ってなければいけない。。
早く着いて欲しいという思いと、、
急ぐと波にガツガツぶつかるので やめて。。
との二つ思いが闘いながら 椅子にしがみついていると
ゴタン!
と音がした。
前のカップルが 何かを落としたらしい。
下を見ると前の椅子の真下に 携帯電話が落ちている。
カップルは女の子の方が 急に寂しくなったのか、隣の席から彼氏に甘える様に 寝るように抱きついている。
彼は慰めるように髪と頭をヨシヨシと撫でている。。
勿論 携帯電話を落としたのには
全然気付いていない。
彼女の目にはうっすら涙が光っていた。
映画好きの僕はそれを見て
ヒッピー時代を描いたアメリカ映画や
「オン ザ ロード」を思い出していた。
退廃的というか。。
長い長い旅をする2人
旅の間 本当に頼れるのはお互いしかいない
"つがい" の2人が。。
最初の旅の目的すら忘れて
薄汚れた格好で、、いつしか旅をする事自体が "目的" となってしまった
"つがいの人間たち "
僕は「携帯落ちましたよ」 とも言えず
それを眺めていた。。
携帯が 目の前に転がってきていたので拾っておいてあげた。
その後吐き気で
記憶が何回か飛びそうになりながら
フェリーにしがみついている間に
ようやく舟はランカウイ島に着いた。
やがて舟が着岸しようとした時
カップルの彼氏が携帯が無いのに気付いた。
肩を叩いて 拾っておいた携帯を渡してあげると
「オォウ サンキュウゥ。。」
と彼女の方が 目を見開いて
びっくりしたように お礼を言ってくれた。
大丈夫だよ。頑張って。
と思いを込めて 僕は頷きニッコリと微笑んだ。
彼女はさらに目を丸くして
"何この人??"
という顔したが僕は気にしない。
それより早く船から降りたかった 笑
列に並び船を出る。
陸地に立った僕は
この「天国と地獄」を生き抜き!
ついにランカウイ島に辿り着いたのだった。
続く
↑ 船旅。。
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