猫好き俳優 東正実の またたび☆

俳優 東正実の東南アジア旅

魔窟へ

 

第10話

魔窟へ

 

ついに私は人生初のドミトリー体験をすべく

パサール・セニ駅へ向かった

ドミトリーとは、ひとつの部屋に大体2段ベットが4つか、3つ置いてあり、ベッドの数だけ知らない人と相部屋になる。その分一泊の料金が安いのである

このシステムがある宿は大体「ホステル」か「ゲストハウス」と名前が付いている。

シングルルームで荷物をまとめ       また "魔王を倒せそうな完全装備" となった僕はKLセントラル駅から、だいぶ乗るのに慣れてきたモノレールではなく、わざわざ市バスに乗ることにした。

これもまた沢木耕太郎氏の旅への憧れの一つだった。それでnuモールで痛い目に遭ったのに、僕はそれでも憧れを優先していたかった。

それは外国で、"普通のバス" で移動するというものである

深夜特急

「もしバスに乗って行き先が間違っていたら、戻れば良いのだ。バスにどんどん乗ろう。また私は、もう一つ自由になれた気がした。」

的な事が書いてあったので。

外国に行ったらいつか市バスで移動してやる!! と僕は意気込んでいたのである。

 

地下の高速バス乗り場ではなく、nu モールの前の地上のバスセンターの乗り場を色々見て回ってみると、ある乗り場の標識に

でっかく 「Pasar Seni 」という

大きな四角で囲まれた表示があった。そこを血管のように、大量のいろいろな色の路線が吸い込まれている

 

なるほどこのバス乗り場からは、ほぼ全てと言って良いほどのバスが、パサール・セニ駅を通るらしい。

と感心したところに丁度、バスのフロント部分に電工掲示で 

「Pasar Seni 」 と表示されたバスが来た!!

が、僕は

  うん。。なるほど…

とひとまずスルーした。

 「間違えたら戻れば良い」

という考えは、どこに行ったのか?まぁ、人間そんなにいきなり挑戦できないものである。。はやい話が いきなりバスが来たので、びびっていたのである。

周りの人間に聞いてみると、やはりほとんどのバスがパサールセニ駅に行くらしい。次に来たバスの運転手にPasar Seniに行くかを何度も何度もしつこいぐらい確認し。

もはや「間違える気」が一切ない僕は、

バスに乗った。

 いよいよ市バスだ!油断するなよ!!

車内のアナウンスもよくわからない僕は、

そう自分に言い聞かせ

車内の電光掲示板を凝視していた。

やがて。。

5分経つかたたないかのうちに

そのままバスはパサールセニ駅に到着してしまった。。!? 、、いや、、した。

 めっちゃ近所じゃん!!

 というか、一駅??

あまりの事に拍子抜けしたが、

無事に着いた事は感謝しなければならない。

僕は颯爽とパサールセニ駅に降り立った!

川沿いにあるパサールセニ駅

とにかく宿を探さなければならない。

ガイドブックで、 "日本人もよく泊まる" と紹介されていたゲストハウスに、僕は向かった。

僕は早くも日本人に飢えていたのだ。

しかし、、あ、暑い、。

完全装備で歩くには、本当に暑い。

僕はパサールセニ駅に着いて5分も歩かないうちにもう汗だくになっていた

スクリーンショットで撮っておいた、Google マップを見ながら探してみる。

似たようなビルが多く、迷いながら探してみる

途中、ヒンドゥーのお寺に誘われて寄ったり

、他のゲストハウスで一晩いくらか聞いてみたらしながら、なんとか、そのゲストハウスにたどり着いた。

古びた雑居ビルの上の方にあるらしく

ビルの階段入り口で看板を見つけた、斜め上を指す矢印の通り、階段で上がっていく。

本当にここにホテルがあるのだろうか?

と疑うほど壁紙もはげかかった古びた階段である。。

三階まで何も無い

4階にやっとこさ何か気配を感じる。。

  大丈夫かしら?ここ?。。

そう思いながら入り口に着く、入り口はガラスのドアが開けっぱなしで

足元にはいろいろな靴やサンダルが散乱している。

どうやらここは土足厳禁らしい。

受付らしき小さなカウンターには、パソコンを見ているちょっと強面の白人の男性がいた。

 へロぉ。。

と恐る恐る話かけると

OH! hello! welcome!!

と最高の笑顔で話しかけてきてくれた。

 (あれ?いい人そう)

とりあえずBooking.comで予約した旨を伝えると、パスポートを求められた。

ビビりの僕は、こういう時パスポートはなるべく出したくなかったので

日本でカラーコピーした物を、百均の透明なパスポートケースに入れ、簡易のパスポートもどきを作っていたので

それを提示し、 これでいいか? と聞くと。

前の宿と同じく、これでいいと言ってくれた。

日本人だね! と喜んでいた。聞くと日本が大好きだそうだ。

パソコンで調べてもらうと予約はないという。

  えええ?そんなはずはないよ?

いきなりのトラブルか?とびっくりして、携帯の画面を見せると

パソコンでガシガシ調べてくれた。

そして彼が言うには、このゲストハウスは本館と別館の2号館があり

どうやら迷っていた僕は、近くの2号館に来てしまったらしい…

気のいい彼は

 同じボスがやっているから、俺が言って

 ここに同じ値段で泊まれるように交渉してあげるよ

と言ってくれた。

この暑さの中、もう一度外に出て、新しく本館を探すのは、正直かなり精神的にもきつかったが

、帰ってくるたびに4階に上がって来なければいけない事と、今は日本人の宿泊者がいない事が決定的になり、

 こっちの方が新しいよ!

 是非日本人の君に泊まってほしい!

という彼の申し出を残念ながら断ることにした。

彼は最後までいい人で、何度見ても辿り着けない地図を描いて、僕に渡してくれた。

 サンキュウ!次は泊まりに来るからね!  と約束し階段を下りた。
…正直なところ彼が、

「ここに泊まれ。ここに泊まりなよ!」 とあまりに強く引き留めてくるので、ちょっと怖くなっていたのだった。。

 

Googleマップの写メールを凝視し、看板がないか、よく見ながら前に通った通りに出ると。

風景に溶け込んだような、見つけづらい看板を発見した。

 これだ!ここが本館に間違いない!!

ぼくはインターホンを鳴らし、ドアを遠隔操作で開けてもらい、二階へと上がっていった。

階段には段ごとに、右端に靴が置いてある。

ここも土足厳禁らしい。

二階へ上がると、やはりカウンターと、

共用のスペースらしく椅子と机があり、宿泊客らしい、黒人の男性が、パソコンをいじっていた。

フロントにいる20代後半の中国人ぽい女性に、予約している旨を伝えると、パソコンで調べて手続きしてくれた。

現在時刻は午後1時、チェックインできるのは午後2時からなので、1時間くらい、この共用スペースのロビーで待って下さいとのこと。

「今細かいお釣りがないので、後ですぐ返しますので、ちょっと待っててね」といわれ。

やっとこさ椅子に座れ、待つこととなった。

隣ではでっかい黒人さんがずっとパソコンで

「バハハハ! ブハハハ!!」

と笑ったかと思うと。

「チッ!」とか、「ダム!!」とか

「フ⚪︎ック!!」とか言ってはまた

「バハハハ! ブハハハ!!」

と笑っている。

とても こんにちは とは言えない。。

そして今度は奥からトイレットペーパーを片手に、ペンギンみたいに、ペタペタと裸足で、事あるごとに鼻をかみながら、赤っ鼻の、白髪の白人さんがやってきた。

背は170センチいかないくらい。

彼に挨拶すると

「オー ハロー!」

と、挨拶を返してくれた。

ここは、トイレットペーパーは自分で買ってきて使うシステムだと説明されていた。

彼はトイレットペーパーを片手にずっと持っていて、事あるごとに鼻を噛んでいる。きっと蓄膿だと思う。早く病院に行ったほうが良い、絶対。

だけど、そんな事を言える雰囲気ではない。。

 こんなところに、本当に僕は泊まるのだろうか…?

と思っていると、インドネシア人っぽい、明るく旅慣れた感じのがっちりした体の若者がやってきた。

彼は、部屋を見せてくれない? と、フロントの女性に、爽やかに聞いている。

 おお!知り合いになれそうな人が来た!

と喜んでいたのも束の間、

彼は部屋を見て、最高の笑顔で、

「また来るよ!」と階段を降りていってしまった。

 おいおい、この宿、上級者向けすぎじゃね?

 あんな強者でも帰るのかよ?!!

と後悔に苛まれていたが、既にお金も支払い、とても"他を探すからお金を返して"と言う勇気は僕にはない。。

またしても、

 皿まで、、いや、机まで喰らってやるわ!

と、腹を決めた。

1時間待っても、忙しいのか、全然案内してくれない。。

しかも、「すぐに返すわね」と言っていた

お釣りもかえしてくれない。。

僕はだんだん腹が立ってきた!

こっちは、机まで喰う覚悟で泊まるつもりでいるのにどういうつもりだと!!

バタバタ動いている先程の女性スタッフに、

「へい!フォーティーンオクロック!!ナウ!いや、オーヴァー!」

と言った。

彼女は、あら、もうそんな時間?

そんなに怒らないでよ?!的なことを優しく言って案内しようとしてくれたが、

もう不信感の塊の僕は、

"お釣りやられたなたぶん"と思っていたので、「マイマネーは、どうなったんだ?!」

と、きつめに聞いた。もう戦う気満々である。

すると彼女は、 あっ、という顔をし、

 very sorry !!

と、きちんと謝り、お金をすぐ持ってきてくれた。

本当に忘れていたようだ。。

気まずくなった僕は、これから泊まるところのスタッフに、やっちまったと思い、なぜか僕も

 ん。。ノープロブレム。ソーりー。too. と、謝った…?

案内された部屋は、4つの二段ベッドが有り、既に5人が泊まっていた。

もちろんカーテンなどはない、剥き出しである。

上のベッドを使えと言われ、よじ登ったぼくがやっと一息ついた時、向かいのベッドから

「ハロー!」と声が聞こえ、

先程のペンギンの白人さんが、前歯の一つ欠けた、最高の笑顔で迎えてくれた。

 

続く

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↑魔窟近くのストリート

 

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↑ありがたいけど辿り着けない地図

(まず、同じ通りに本館はない。。)

 

 

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