第2話
準備という名の旅
2017年春。新横浜駅に僕はいた。 一度に6本もの注射を打つために。
ん、もう、、、、 「一本」射つくらいじゃ、到底満足出来なかったのだ。。
自身の身体に起こる… 欲してる効果を得る為に!!
本当にギリギリのタイミングであった。。
…そう。 予防注射である!
この春37歳になった僕は、ついに憧れ続けた東南アジアへ行くために、「生まれて初めて」日本を出ることにしたのだ。。
行こうと決めて、いろいろ準備した。
やると決めたら、俳優としての性(サガ)なのか? 徹底的にやる僕は、
「地球の歩き方 東南アジア編」と
「マレーシア ブルネイ編」を買い、
日差し対策に、コールマンのサングラスを買い、帽子を買い、日焼け止めを買い、
グレゴリーのバッグパックを買い、爪切りを買い、
洗濯用の洗濯ばさみとロープを買い、
ビオフェルミンSを買い
ドラッグと間違われないよう、鼻炎の薬の、英語の処方箋を郵送してもらい、
緊急時用に米ドルで100$をパスポートに入れ、パスポートのカラーコピーをし、
海外旅行保険に入り、
盗難防止用の腹巻きを買い、
沢木耕太郎の「深夜特急」を全巻読み直し、
その本に出て来た「トラベラーズチェック」を買おうと調べ、日本ではもう扱ってないことにびっくりし、
代わりにプリペイド式のクレジットカードを作り、
帰ってきてから生活できるように、2本のCMのギャラが、旅の間には入っていると計算し、帰国後の準備も万全にしていたのだ 、、、が!!
ふと町で、「ワホワホ」と歩いている大型犬を見たときに、
”気付いたのである ”
(あれ。。? 海外って、
たしか野良犬いるよな!?
あっ?! おれまだ狂犬病の、
予防注射してないっ!?)
焦って調べてみると、肝炎やら破傷風やら、日本脳炎やら、出るわ出るわ!!
可能性の宝庫!!
「とりあえず、打てるだけ打とう!」
お金で買える安全は、「全部買う」と決めていた僕は、スケジュールを組み、三週間弱で、8つの感染症と戦う事を決意したのだ!!
何回も病院に足を運び、とにかく
うて! 打て! 射て! である。
皆さんは人生で、一度に6本もの注射を打たれた経験はあるだろうか。。?
いや、多分ないと思う。僕も初めての経験だった。
どうするのかと見ていたら…
美人な女医さんが、気のよさそうなおばさんを隣に呼び、説明してくれた。
右腕の、肩の上と下、ひじの内側。
左手も、右手にならえで 計六か所射つらしい。
さすがにちょっと後悔したが…(美人な女医さんだから少しラッキー)と思っていたら、 どっこい隣に立っているおばさまが射つという。。
ん、、もう! 好きにして下さい!
と、じっとしていると、まずは肩の上。。
(?! 。。ん。?
、、そんなに痛くない。。)
おばさまは、
「これが一番痛いところだから、他も大丈夫ね。」
と、どんどん打ってくれた。。
後から考えると、この医院で、一番注射のうまい人を、わざわざ呼んでくれていたようだ。
射たれながら、美人女医に
「こんなに予防注射打って、
一体どこ行くんですか?! 笑
これは、昆虫博士とか、
相当な奥地に行く人のが打つ数ですよ。」
と笑われる始末だったが。。
”いったいどこに行くんですか? ”
これが、僕の旅を ”不思議と、言い当てていたのである。
「半年NG下さい!いや一年かもしれないので、帰ってきたら連絡します。」
と所属芸能事務所に、ありえない休みを頂き、従姉妹の姉さんに、7年ぶりに再会するためマレーシアへ。
俳優仲間が来る日を決めたら、ベトナムで落ち合うという以外、、行く場所も、期間もなにも決まっていない。。
生まれて初めての、自由すぎる旅の始まりだったからである。
つづく
↑まだ呑気だった僕
↑ やる気MAXになった僕
↑ 他にC型E型肝炎の合同ワクチンを摂取
次話